令和2年版 防災白書|第1部 第1章 第2節 2-4 防災におけるICTの活用


2-4 防災におけるICTの活用

近年の災害においては、被災者が避難所に滞在せず、車中泊等をしていた多くの例が見受けられた。これらの人々の動向をはじめ、避難所における被災者のニーズや物資の配送状況等、情報の把握が困難になる場合もある。このような課題を解決するためには、平常時から国や地方公共団体、民間企業・団体等による官民連携による円滑な情報の共有化を行い、災害時に迅速に対応することが必要である。

このため、内閣府では、情報の共有を図るために効果的な手段と考えられる情報通信技術(ICT:Information and Communication Technology)の活用、また、関係機関間における情報共有の方法や期間等のルール及びこれを通じた情報のやりとり(以下「災害情報ハブ(図表2-4-1)という。」を推進するため、平成29年度から中央防災会議防災対策実行会議災害対策標準化推進ワーキンググループの下に、「国と地方・民間の『災害情報ハブ』推進チーム」を設置し、検討を進めている(参照:https://www.bousai.go.jp/kaigirep/saigaijyouhouhub/index.html)。

図表2-4-1 「災害情報ハブ」のイメージ図
図表2-4-1 「災害情報ハブ」のイメージ図

平成30年度に、ISUT(アイサット)(Information Support Team)という大規模災害時に被災情報や避難所などの情報を集約・地図化・提供して、地方公共団体等の災害対応を支援する現地派遣チームを試行的に立ち上げ、令和元年度から本格的に運用を開始した。災害現場では、被害状況や災害廃棄物の情報等、時々刻々と変化し事前にデータで共有する体制が整えられないもの(動的な情報)も存在する。災害対応者の的確な意思決定には、これら情報を地図上に重ね合わせ、状況を体系的に把握することが大変重要である。このため、ISUTがそのような情報を収集・整理・地図化し、関係機関へ共有することで、災害対応者の迅速かつ的確な意思決定を支援することができる。

ISUTはこれまで、平成30年7月豪雨や令和元年東日本台風など、7回にわたり災害対応にあたってきた。特に、令和元年東日本台風においては、宮城県庁・福島県庁・茨城県庁・栃木県庁・埼玉県庁・長野県庁の6県に派遣し、情報の収集・整理を支援するとともに、作成した地図(図表2-4-2)を用いた被災県・市町村の災害対策本部での状況説明や、実働機関、他の地方公共団体からの応援職員への状況説明などに活用され、地方公共団体の効果的な災害対応に貢献することができた。

図表2-4-2 令和元年台風第19号で作成した地図の例(長野県災害廃棄物臨時置場対策地図)
図表2-4-2 令和元年台風第19号で作成した地図の例(長野県災害廃棄物臨時置場対策地図)

一方で、必要なデータを手作業で加工する必要が生じたりするなど、情報集約、整理に時間がかかり地方公共団体をはじめとした関係機関への地図情報の共有が円滑に進まないという課題があった。今後はより迅速な地図情報の作成・提供に向けて、データの入手・入力作業を極力自動化する仕組みを検討するなどISUTのより効果的な運用を図っていくとともに、関係者へ共有可能な情報の拡充に向けて、関係機関との調整を継続していく。


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