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平成28年版 防災白書|第1部 第2章 第1節 1-1 南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動に関する検討


第2章 発生が危惧される災害種別ごとの対策取組状況

第1節 地震・津波災害対策

1-1 南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動に関する検討

地震動の揺れが1往復する周期が長い「長周期地震動」は、震源が浅く、規模の大きな地震で強く励起される。長周期地震動には、周期が短い地震動に比べ遠くまで伝わり、超高層建築物や大型の石油タンク等を大きく揺らすなどの特徴がある。

平成23年東北地方太平洋沖地震は、日本海溝沿いのやや深い場所で発生した地震であったことなどにより、地震の規模に比べて長周期地震動を強く励起した地震ではなかったが、震源から遠く離れた大阪の超高層建築物でも長周期地震動による特徴的な揺れが報告されており、社会的に注目された。

南海トラフ沿いの巨大地震は、震源が浅く、規模が大きいため、長周期地震動が強く励起されることが懸念される。地震調査研究推進本部によれば、南海トラフ沿いでマグニチュード8~9クラスの地震が発生する確率は、今後30年以内に70%程度としており、近い将来に発生が懸念される。このため、内閣府の「南海トラフの巨大地震モデル検討会」及び「首都直下地震モデル検討会」(両検討会座長:阿部勝征 東京大学名誉教授)は、南海トラフ沿いの巨大地震が発生した場合に想定される長周期地震動について合同で検討を進め、平成27年12月17日に「南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動に関する報告」として取りまとめ、公表した。

この報告によって、南海トラフ沿いでマグニチュード9程度の最大クラスの地震が発生した場合には、長周期地震動による地表の揺れが継続する時間は、三大都市圏で長くなり、長周期地震動が卓越することが明らかになった(図表1-2-1)。

図表1-2-1 最大クラスの地震による長周期地震動の継続時間図表1-2-1 最大クラスの地震による長周期地震動の継続時間
(1)超高層建築物の構造躯体への影響

長周期地震動によって大きな揺れが想定される超高層建築物の構造躯体への影響については、南海トラフ沿いで最大クラスの地震が発生した場合でも、「建物が倒壊するまでには強度的に一定の余裕があるのではないか」と整理された。しかしながら、個々の超高層建築物の構造躯体への影響は、個別に詳細な検証を行い、必要に応じて改修等の措置を講ずることが望ましい。このため、国土交通省では、超高層建築物における構造設計の手法など、南海トラフ沿いの巨大地震を対象とした長周期地震動対策の検討を進めている。

(2)超高層建築物の室内への影響

超高層建築物の室内では、長周期地震動によって大きな揺れが想定される。最大クラスの地震を想定した場合、三大都市圏における超高層建築物の最上階の揺れは、沿岸部を中心とする地域で100~200cm程度が推計された。更に、固有周期5~6秒(高さ200~300m程度)の建物では、中部圏及び近畿圏の一部で最大300cm以上と推計されている(図表1-2-2)。

図表1-2-2 超高層建築物における最上階の揺れ(最大変位)図表1-2-2 超高層建築物における最上階の揺れ(最大変位)
(3)長周期地震動への備え

南海トラフ沿いの巨大地震が発生した場合、三大都市圏の広い範囲で背の高い家具等が転倒する可能性が高く、一部地域では、背の低い家具等であっても、転倒を引き起こす程度の揺れが発生することが想定される。さらに、キャスター付きで滑りやすい場合には、建物の揺れの変位量と同程度もしくはそれ以上に移動する可能性があり、極めて危険な凶器となる。このため、家具等の転倒や移動、落下の防止対策は、短周期の揺れへの対策だけでなく長周期地震動対策としても非常に重要である。

また、南海トラフ沿いの巨大地震が発生すると、三大都市圏の広い範囲で、船に乗っているような揺れが長く続き、歩いたり動いたりすることにやや支障が生じ、一部地域では、立っていることが困難になる。さらに、揺れに翻弄され、自分の意志で何も行動できないような状況が生じることも想定される。このため、超高層建築物内で緊急地震速報などの大きな地震の発生を知らせる情報を見聞きした場合や揺れを感じた場合には、長周期地震動による大きな揺れに備え、頭部を保護し、揺れに飛ばされないよう体勢を低くして身の安全を確保することが重要となる。


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