平成28年版 防災白書|特集 第2章 第1節 1-1 「防災4.0」とは


第2章 「防災4.0」未来構想プロジェクト~一人一人が災害リスクに向き合い、社会全体で災害に備える~

内閣府防災担当では、平成27年(2015年)12月、河野太郎内閣府特命担当大臣(防災)を座長として「『防災4.0』未来構想プロジェクト」を立ち上げた。このプロジェクトは、地球温暖化に伴う気候変動により激甚化する災害に対し、企業や国民一人一人にとって真に必要な防災対策は何か、骨太の提言を行うとともに、災害リスクと向き合う国民運動へと展開し、社会全体の意識改革とその取組の推進を目的としている。

第1節 「防災4.0」未来構想プロジェクトの背景

1-1 「防災4.0」とは

(1)これまでの教訓を踏まえた防災対策の歩み

我が国は、その自然的条件から、様々な災害による被害を受けやすい特性を有しており、これまで、度重なる大災害を踏まえ、様々な取組が行われてきた。

特に、これまで我が国の防災に関する取組の大きな転換点となってきた3度の大災害があった。1959年(昭和34年)の伊勢湾台風、1995年(平成7年)の阪神・淡路大震災、そして2011年(平成23年)の東日本大震災である。

本プロジェクトでは、これらの大災害を通じ、得られた反省点や教訓は何かという点を再度、見直した上で、その間の考え方の変化や、段階的に講じられてきた措置について、それぞれ「防災1.0」「防災2.0」「防災3.0」と捉え、気候変動がもたらす災害の激甚化に備えるための契機とする今般の取組を「防災4.0」と称することとした。

「防災1.0」から「防災3.0」の概要は以下のとおりである。

<1>「防災1.0」:伊勢湾台風(昭和34年(1959年))

大規模な台風による多数の人的・物的被害をもたらした本災害であるが、当時、政府における大規模災害時対応に係る体制が未整備であったこと、また、災害関係の法律が一本化されておらず、各機関の役割や責任の所在も不明確であったこと等の点において、緊急時に効率的かつ効果的に機能しえない体制にあった。

こうした状況を改善するため、我が国の戦後災害対策の第1段階として、以下の措置が講じられた。

  • 国、地方公共団体、公共機関等の統一的かつ計画的な防災体制の整備を図るため、災害対策の最も基本となる法律である「災害対策基本法」の制定
  • 同法に基づく中央防災会議の設置、防災に関する総合的かつ長期的な計画である防災基本計画の作成

<2>「防災2.0」:阪神・淡路大震災(平成7年(1995年))

都市の直下を震源とする大規模地震により、住宅の倒壊、ライフラインの寸断、交通システムの麻痺、膨大な被災者の発生など都市型災害による甚大な被害をもたらした。また、官邸における危機管理の体制、初期情報の把握・連絡体制の不全が当時より指摘されており、これらを受けて、以下の措置が講じられた。

  • 官邸における緊急参集チームの設置など政府の初動体制の整備
  • 建築物の耐震改修促進法、被災者生活再建支援法の制定

<3>「防災3.0」:東日本大震災(平成23年(2011年))

マグニチュード9.0という我が国観測史上最大の巨大地震、大津波の発生により、東北地方の沿岸部を中心に、甚大かつ広域的な被害をもたらした。最大クラスを想定した災害への備えが不十分であったこと、自然災害と原子力事故災害の複合災害の想定が不十分であったこと等が指摘されており、以下の措置が講じられたところである。ただし、引き続き、復興をも見据えた関係者の努力が必要である。

  • 大規模地震の被害想定、対策の見直し、はじめて「減災」の考え方を防災の基本理念として位置付け、想定し得る最大規模の洪水等への対策
  • 原子力規制委員会発足など原子力政策の見直し

「防災4.0」は、気候変動がもたらす災害の激甚化に備えるため、国民の一人一人が災害のリスクに向き合う契機となるようなメッセージを打ち出していく決意が込められている。

(図表1)戦後における災害の教訓を踏まえた防災政策の歩みと「防災4.0」(図表1)戦後における災害の教訓を踏まえた防災政策の歩みと「防災4.0」

(2)「防災4.0」の目指す姿

上記のとおり、我が国では過去の痛ましい災害による被害を教訓として発展してきた。一方、東日本大震災から5年が経過し、今でも、最大規模の災害を想定した防災対策における取組は途上の段階であり、特に、国民、企業等が災害リスクに主体的に向き合い、災害に対する「備え」の意識は十分とはいえないのが現状である。

また、地球温暖化に伴う気候変動がもたらす災害の激甚化も懸念されているところである。昨年(平成27年)12月、COP21において、全ての国が参加する気候変動対策のための新たな枠組みとなるパリ協定が採択された。このように、地球温暖化による影響を食い止めることが最優先であることはもちろんのこと、すでに極端な集中豪雨が発生するなど、気候変動がもたらす災害の激甚化に備えるために、どのようなことに取り組まなければならないのか、企業や国民一人一人のあらゆる目線で必要な対策を検討することが必要である。

こうした背景を踏まえ、「防災4.0」では、地域、経済界、住民、企業等の多様な主体のそれぞれが、防災を「自分ごと」として捉え、相互の繋がりやネットワークを再構築することで、社会全体のレジリエンスを高め、自律的に災害に備える社会を、「防災4.0」の目指す姿と捉えている。

(図表2)「防災4.0」の目指す姿(図表2)「防災4.0」の目指す姿

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