2-3 防災に対する意識と行動
(1) 災害の危険度や防災に関する取組に対する意識
防災意識等調査では、災害の可能性に関する意識や災害への備えの重要度の認識について聞いている。
「ほぼ確実に発生する」「発生する可能性は大きいと思う」を合わせ、大災害が発生する可能性があると考えている者は、6割を超えている(図表19)。一方、災害への備えについて聞いたところ「十分に取り組んでいる」「日常生活の中でできる範囲で取り組んでいる」を合わせ、4割以下にとどまっている(図表20)。大災害が発生する可能性は認識しているものの、取組が足りないと考えている人々がいる傾向が見て取れる。
今後、意識を備えに結び付けるための周知活動等を検討する必要がある。
次に、災害への備えの重要度をどう感じているのかについて、年齢階層別に集計した。年代が上がるほど災害への備えに取り組み、若年層ほど取り組んでいない傾向がある(図表21)。
さらに、図表19の災害の可能性に関する意識「ほぼ確実に発生する」「発生する可能性は大きいと思う」と回答した層を「可能性が高い」、「可能性は少ないと思う」、「可能性はほぼないと思う」と回答した層を「可能性が低い」と2つに分け、災害への備えの重要度に対する認識を集計した。
災害の「可能性が少ない」とする層ほど、防災に取り組んでいない傾向が見て取れる(図表22)。災害への可能性と災害への備えの取組とには強い相関があることから、災害への備えを進めるには、防災意識の啓発、特に若年層への啓発を検討する必要がある。
[地域別の災害に対する危機意識]
災害が発生する可能性に関する意識の設問は「自分が今、住んでいる地域に将来、大災害が発生すると思うか」を聞いていることから、地域別の集計を試みた。集計の方法は、回答の傾向が似ている都道府県を集約し、それぞれの地域の回答数が1000以上になるように地域を組み合わせた。よって、地域の取扱いには上記の留意が必要である。
地域別の傾向としては、太平洋側の地域で「可能性が高い」と感じている人々が多い傾向が見られた(図表23)。南海トラフ地震等に関する周知等により、災害に対する危機意識が浸透している可能性がある。今後の普及啓発活動の検討に当たって、示唆的な結果を得られた。
[防災に取り組まない理由]
災害への備えに対する啓発活動の力点を検討するために、「災害に備えることは重要だと思うが、日常生活の中でできる範囲で取り組んでいる」もしくは、「ほとんど取り組んでいない」と回答したものに、災害に対する備えを行っていない理由について尋ねた。
集計結果は、「時間がない」、「コストがかかる」、「機会がない」、「情報がない」が理由の多くを占めている(図表24。以下同じ)。
時間がないと回答した層には、職場や趣味のサークル等、既に時間を使っている活動で接触するようにすることが、情報がないと回答した層には、よりわかりやすい情報提供が、機会がないと回答した層には、簡便な冊子のインターネット上での配布、災害を身近に感じない層には、災害の危険性等についての呼びかけ等の施策が考えられる。また、「特に理由はない」という回答は、約2割を占めており、このような人々には災害リスクの啓発等の動機づけを図ることにより、防災に関する取り組みが進む可能性がある。
次に、災害危険度の認識に応じた災害対策に取り組まない理由を見ると、大災害の「可能性が低い」と考えている層は、高いと考えている層に比べて、機会がない、身近な問題と感じない、特に理由がないの割合が高くなっている。この層には防災に関する取組の動機付け必要であり、災害リスクの啓発等が有効である可能性がある。
(2) 防災に取り組むグループ
防災意識等調査では、家族以外で、日常的な意思疎通をする相手やグループを聞いている(図表16)。その設問と合わせ、防災活動に取り組むことのできると思う相手やグループについても聞いている。
まずは、日常的な意思疎通に関する結果である。「職場・アルバイト先・パート先の人」が39.6%で一番多く、次いで「近所の人」28.5%、「趣味のグループやサークル活動の人」16.4%、「居住地域の自主防災組織や自治会・町内会などの人」12.3%の順に多い(図表24。以下同じ)。
次に、防災活動についての結果を示す。防災活動に取り組むことができると思う相手やグループの割合は、「近所の人」が41%で一番多く、次いで「職場・アルバイト先・パート先の人」32.4%、「居住地域の自主防災組織や自治会・町内会などの人」28.8%、「趣味のグループやサークル活動の人」12.6%の順に多い。
「近所の人」や「居住地域の自主防災組織や自治会・町内会などの人」は、防災活動への期待がある一方で、意思疎通を行っている人は、それよりも少ない。「職場・アルバイト先・パート先の人」や「趣味のグループやサークル活動の人」は、日常生活の中で意思疎通を行っている人々同士で防災活動にも取り組むことが期待される。
次に図表22と同様に、大災害の「可能性が高い」と答える層と「可能性が低い」と答える層に分類して、どのようなグループと最も防災活動に取り組めるのかについて集計した。「可能性が高い」と答える層の方が、特になしと回答するものが少なく、具体的な活動相手を想像していることがわかる(図表26)。
さらに、日常的に意思疎通を行っているグループで、防災に関するどのような取組ができるかを聞いたところ、「自宅でできる日頃の備えをグループのみんなで行う」ことが一番多く、意思疎通しているグループで互いに自らの取組を紹介しながら防災に取り組める可能性がある(図表27)。