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平成27年版 防災白書|第1部 第2章 第1節 1-1 南海トラフ地震対策について


第2章 発生が危惧される災害種別ごとの対策取組状況

第1節 地震・津波災害対策

1-1 南海トラフ地震対策について

(1)被害想定等の検討

駿河湾から四国沖を経て日向灘に至る「南海トラフ」沿いで発生する大規模な地震については、これまで、その地震発生の切迫性等の違いから「東海地震」と「東南海・南海地震」のそれぞれについて計画を策定し、個別に対策が進められてきた。

このような中、平成23年3月に発生した東日本大震災の教訓を踏まえ、今後の想定地震・津波の考え方として「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大地震・津波」を検討すべきであるとされたことを受け、平成23年8月に「南海トラフの巨大地震モデル検討会」を内閣府に設置し、最新の科学的知見に基づき想定すべき最大クラスの地震・津波モデルの検討が行われた。

震度分布を推計するための強震断層モデルについては、中央防災会議(2003)モデル、東北地方太平洋沖地震等の特徴を踏まえ、強震動生成域を設定し(4ケース)、それぞれのケースについて震度を推計した。また、津波高、浸水域等を推計するための津波断層モデルは、東北地方太平洋沖地震や世界の巨大地震の特徴等を踏まえ、大すべり域、超大すべり域を持つ最大クラスの津波断層モデルを設定し(11ケース)、それぞれのケースについて、津波高、浸水域等を推計した。

また、この結果を受け、平成24年4月に中央防災会議に設置された「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」において南海トラフ巨大地震の被害想定と対策に係る検討が進められ、平成25年5月に最終報告が取りまとめられた。

被害想定の概要は以下の通りである(図表1-2-1~1-2-5)。

図表1-2-1 1600年以降に南海トラフで発生した巨大地震図表1-2-1 1600年以降に南海トラフで発生した巨大地震
図表1-2-2 震度の最大値の分布図図表1-2-2 震度の最大値の分布図
図表1-2-3 最大クラスの津波高図表1-2-3 最大クラスの津波高
図表1-2-4 人的被害・建物被害の想定(平成24年8月)図表1-2-4 人的被害・建物被害の想定(平成24年8月)
図表1-2-5 経済被害の想定(平成25年3月)図表1-2-5 経済被害の想定(平成25年3月)
(2)南海トラフ地震対策特別措置法

南海トラフ巨大地震の被害想定等の公表を受け、特に人命を守る観点から、その最大の課題である津波避難対策をはじめハード・ソフト両面からの総合的な地震防災対策の推進を図るため、平成25年11月、「東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(平成14年法律第92号)」の改正がなされ、法律の対象地震が東南海・南海地震から南海トラフ地震に拡大されるとともに、津波避難対策を充実・強化するための財政上の特例措置等が追加された(図表1-2-6)。

また、国、地方公共団体、ライフライン・インフラ事業者等の関係機関の相互連携を強化することを目的に「南海トラフ巨大地震対策協議会」を設置しているが、南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法の施行に伴い、南海トラフ地震防災対策推進協議会が法律に位置付けられたため、今後、法定の協議会への移行に向け、関係者等の調整を図っていくこととしている。

図表1-2-6 南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法の概要図表1-2-6 南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法の概要
(3)南海トラフ地震対策推進区域及び特別強化区域

南海トラフ巨大地震の震度分布や津波高等を踏まえ、南海トラフ地震に係る地震防災対策を推進すべき地域として1都2府26県707市町村を「南海トラフ地震防災対策推進地域」に、また、南海トラフ地震に伴う津波に係る津波避難対策を特別に強化すべき地域として1都13県139市町村を「南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域」に指定している。具体的には、南海トラフ巨大地震の被害想定を行う上で設定した地震モデル(11ケース)について、それぞれの地震が発生した場合に、次のいずれかの条件を満たす地域を指定している。なお、地域指定されていない場合でも、強い揺れや火災等により大きな被害を受けることが想定されるため、十分な防災対策を講じる必要がある(図表1-2-7、1-2-8)。

《南海トラフ地震防災対策推進地域》

  • 震度6弱以上となる地域
  • 津波高3m以上で海岸堤防が低い地域
  • 広域防災体制の一体性の確保、過去の被災履歴への配慮の観点から指定が望ましい地域

《南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域》

  • 津波により30cm以上の浸水が地震発生から30分以内に生じる地域
  • 特別強化地域の候補市町村に挟まれた沿岸市町村
  • 同一府県内における津波避難対策の一体性の確保の観点から指定が望ましい地域
図表1-2-7 南海トラフ地震防災対策推進地域図表1-2-7 南海トラフ地震防災対策推進地域
図表1-2-8 南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域図表1-2-8 南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域
(4)南海トラフ地震防災対策推進基本計画

平成26年3月28日、政府は、「南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」に基づき、「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」を中央防災会議において決定した(図表1-2-9)。同計画においては、南海トラフ地震防災対策の基本的な方針として、極めて広域にわたって強い揺れと巨大な津波が発生するなどの南海トラフ地震の特徴を踏まえ、国、公共機関、地方公共団体、事業者、住民など様々な主体が連携し、計画的かつ速やかに、ハードとソフトを組み合わせた総合的な防災対策を推進することとしている。また、この方針を踏まえて、今後10年間で達成すべき減災目標を、死者数を概ね8割、建物被害を概ね5割減少させることとし、建築物の耐震化・不燃化や津波ハザードマップの作成、地域コミュニティの防災力の向上といった減災目標を達成するための具体的な施策をその目標及び達成期間とともに示している。

本計画に基づき、地方公共団体等において「南海トラフ地震防災対策推進計画」及び「津波避難対策緊急事業計画」を、民間の施設管理者等において「南海トラフ地震防災対策計画」を作成することとしている。内閣府においては、これらの計画が速やかに作成されるよう、必要な助言などの支援を行うとともに、本計画の適切なフォローアップを通じて、関係者が一体となった南海トラフ地震対策の推進を図っていくこととしている。

図表1-2-9 南海トラフ地震防災対策推進基本計画の概要図表1-2-9 南海トラフ地震防災対策推進基本計画の概要
(5)南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画(具体計画)

平成27年3月30日、「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」第4章において作成するとされた「南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画」を中央防災会議幹事会で決定した(図表1-2-10)。同計画は、「南海トラフの巨大地震モデル検討会」において最新の科学的知見に基づき想定した最大クラスの地震・津波の震度分布及び津波高の推計結果並びに「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」が報告した被害想定に基づき、国が実施する災害応急対策に係る緊急輸送ルート、救助・消火活動等、医療活動、物資調達、燃料供給及び防災拠点に関する活動内容を具体的に定めたものである。活動分野毎の概要は以下のとおりである。

<1>緊急輸送ルート計画

発災直後から、部隊等の広域的な移動など人命の安全確保を主眼とした全国からの人員・物資・燃料の輸送が迅速かつ円滑に行われるよう、あらかじめ通行を確保すべき道路を定めた計画である。発災時には、被害の全容把握に時間を要することが予想される中にあっても、あらかじめ必要最低限に絞って選定した緊急輸送ルートについては、他の道路に優先して通行可否情報(通行不可の場合における迂回ルート情報を含む。)を遅滞なく集約し、防災関係機関間で情報共有を速やかに行うとともに、早期に通行確保を行うことが必要である。このための備えとして、あらかじめ地図情報も含めて防災関係機関間で広く情報共有を図るとともに、発災時の情報共有のための具体的な手順も含めて定めている。

<2>救助・救急、消火活動等に係る計画

南海トラフ地震による甚大な被害に対して、人命救助のために重要な72時間を考慮しつつ、被災府県内の警察・消防機関の部隊は、発災直後から救助・救急、消火等に必要な部隊を最大限動員するとともに、国は、被害が甚大と見込まれる地域に対して、全国から最大勢力の応援部隊を可能な限り早く的確に投入する必要がある。このため、被災地域内で動員する警察・消防機関の被災府県内の部隊に加えて、全国からの警察災害派遣隊、緊急消防援助隊、自衛隊の災害派遣部隊の初動期における派遣の方針と具体的な手順等を定めている。

<3>医療活動に係る計画

南海トラフ地震では、建物倒壊等による多数の負傷者の発生、医療機関の被災に伴う多数の要転院患者の発生により、医療ニーズが急激に増大し、被災地内の医療資源のみでは対応できない状態となることが想定されている。このため、全国から災害派遣医療チームをはじめとする医療チームによる応援を迅速に行い、被災地内において安定化処置など救命に必要な最低限の対応が可能な医療体制を確保するとともに、被災地で対応が困難な重症患者を被災地外に搬送し、治療することを定めている。

<4>物資調達に係る計画

南海トラフ地震では、被災地方公共団体及び家庭等で備蓄している物資が数日で枯渇する一方、発災当初は、被災地方公共団体において正確な情報把握に時間を要すること、民間供給能力が低下すること等から、被災地方公共団体のみでは、必要な物資量を迅速に調達することは困難と想定される。このため、国は、被災府県からの具体的な要請を待たないで、避難所避難者への支援を中心に必要不可欠と見込まれる物資を調達し、被災地に物資を緊急輸送するものとし、発災直後に行うこのプッシュ型支援による物資調達・供給の内容、手順を定めている。

<5> 燃料供給に係る計画

南海トラフ地震の発生により多くの製油所・油槽所・LPガス輸入基地等が被災する状況にあっても、全国的な燃料供給を確保しつつ、災害応急対策活動に必要な燃料や、重要施設の業務継続のための燃料を確実に確保し、迅速かつ円滑に供給する必要がある。このため、<1>石油精製業者等が自社の「系列BCP」や石油備蓄法上の「災害時石油供給連携計画」に基づき進める災害時石油供給体制の考え方、<2>防災拠点等に存する給油施設への「重点継続供給」や、業務継続が特に必要な重要施設への「優先供給」の手順、<3>災害時の燃料輸送・供給体制の確保のため被災都府県や関係省庁等が担う役割等を定めている。

図表1-2-10 南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画の概要図表1-2-10 南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画の概要

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