3-3 開発途上国における防災の課題 ~災害と貧困の悪循環~
過去30年間(1984年~2013年)に世界全体で自然災害により死亡した人は約248万人であるが、その約半数が低所得国、約3割が中低所得国に集中しており、所得の低い国ほど自然災害による死者が多いという、負の連鎖があることが分かる。
被害額を見てみると、約65%が高所得国に集中しているが、図表8の被害額の対GDP比を見てみると、低所得国や中低所得国においては、一度の災害がその国の年間GDPの2割を超え、また、一度の災害がその国の年間GDPを超える経済被害をもたらすこともあることが分かる。例えば、2010年のハイチ地震によって、首都ポルトープランスに加え、近郊の主要な都市にも被害が広がり、ハイチの経済被害はGDPの約1.2倍にも及んでいる。2005年の米国のハリケーン・カトリーナの経済被害がGDPの1%、我が国の東日本大震災の経済被害がGDPの3.5%であったことを考えると、その影響の大きさが分かる。
このように自然災害による経済被害は開発途上国の持続可能な開発の大きな障害となっている。開発途上国の持続可能な開発を達成するためには、災害に対する社会の脆弱性を減らすとともに、開発政策とあいまって、ハザードに対する暴露を減少させることにより、災害による被害を減少させていくことが喫緊の課題となっている。