平成27年版防災白書への国連事務総長特別代表(防災担当)メッセージ
第3回国連防災世界会議(3月14日~18日)は、国連と日本の緊密な協力のもと成功裡に終了し、意義ある成果を得ることができました。特に、本会議で国連加盟国が採択した「仙台防災枠組2015-2030」は、今後15年間にわたり、災害リスクや災害による影響の軽減を目指す継続的な取り組みのための強力な基盤を提供するものです。この枠組はポスト2015年の開発アジェンダの不可欠な要素であり、今年後半の気候関連の合意、および持続可能な開発に関する新たな目標に関する合意に向けて現在進行中の議論を加速するものです。
日本は、3度にわたり国連防災世界会議のホスト国をつとめ(1994年横浜、2005年兵庫、2015年仙台)、災害リスク軽減・防災へのコミットメントを表明し続けるとともに、過去の災害から日本が蓄積してきたさまざまな教訓や優れた事例を国際社会へ発信してきました。
「防災白書」の発行は、災害リスク軽減や災害リスク管理における日本のイニシアティブの中でも注目すべきものの一つです。この年次報告書では、災害損失に関するデータや統計、特定の災害に関する復旧復興の現状、災害種別ごとの管理施策や対策、地域・コミュニティレベルでの災害リスク軽減や防災に関する取り組みや優良事例など、幅広い事項が報告されています。
日本においては、この防災白書は定期的に発行される報告書として確立していますが、このように災害リスク管理・防災に完全に特化した報告書を定期的に発行している国は、世界的にもあまり例がありません。この報告書は、日本が過去から現在にわたり、どのように災害リスク管理の政策や対策を発展・進化させてきたかを理解する助けとなるものでもあります。他の国々も日本の例に倣い、仙台防災枠組の実施進捗、特に下記の4つの優先行動の実施状況についてのモニタリングを行うという観点からも、自国のニーズに合わせた独自の報告書を作成することができるのではないでしょうか。
- Understanding disaster risk;
優先行動1 災害リスクの理解 - Strengthening disaster risk governance to manage disaster risk;
優先行動2 災害リスク管理のための災害リスクガバナンス - Investing in disaster risk reduction and resilience;
レジリエンス(強靱化)に向けた防災への投資 - Enhancing disaster preparedness for effective response, and to “Build Back Better” in recovery, rehabilitation and reconstruction.
効果的な応急対応に向けた備えの強化と「より良い復興(ビルド・バック・ベター)」
国連防災世界会議では、国際協力とグローバル・パートナーシップを強化することの重要性が改めて確認されました。UNISDRのトップとして、災害リスク軽減・防災分野における日本の継続的な支援とコミットメントに改めて感謝の意を表するとともに、日本が今後も国際社会の多様なステークホルダー(関係主体)と協働し、仙台防災枠組で示されている目標の達成を目指した世界的な取り組みの中でリーダーシップを発揮されることを大いに期待しています。

マルガレータ・ワルストロム
国連事務総長特別代表(防災担当)
兼 国連国際防災戦略事務局(UNISDR)ヘッド