第5章 まとめと今後の方向性
東日本大震災等では、行政が全ての被災者を迅速に支援することが難しいこと、行政自身が被災して機能が麻痺するような場合があることが明確になったことから(「公助の限界」)、首都直下地震、南海トラフ地震等の大規模広域災害時の被害を少なくするためには、地域コミュニティにおける自助・共助による「ソフトパワー」を効果的に活用することが不可欠である。
この点、以下のような点が分析から明らかになった。
<1>一般的な地域活動(地縁活動)の活性化が防災活動の活発化・地域防災力の強化にもつながる可能性。
<2>行政が、地域コミュニティにおける防災活動の体制づくりを支援するとともに、積極的に関連情報の提供を行う等地域コミュニティと行政が連携して対応していくことが重要になる可能性。
<3>事業者と地域住民との連携・共生の促進が、地域コミュニティ全体の防災力の向上につながる可能性。
このような状況において、地域住民や事業者による防災活動を活性化させるには、地区の居住者及び事業者(地区居住者等)による自発的な防災計画であり、地域コミュニティと行政の連携によって地域防災力の向上を図るための制度である地区防災計画制度を普及させていく必要がある。
また、地域コミュニティの活性化と地域防災力の向上は、表裏一体の関係にあることから、今後、地区防災計画制度が、地区居住者等主体で、地域防災力の向上だけでなく、地域コミュニティの活性化を通して、地区の実情に応じたきめ細かいまちづくりにも寄与する可能性がある。
1 「公助の限界」と自助・共助による「ソフトパワー」の重要性
第1章・第2章で紹介したように、東日本大震災等の大規模広域災害の発災時には、行政が全ての被災者を迅速に支援することが難しいこと、行政自身が被災して機能が麻痺するような場合があることが明確になった(「公助の限界」)。
そのような場合には、発災後しばらくの間は、行政の支援を受けることなく、地域住民が自発的に避難行動を行ったり、地域コミュニティで助け合って、救助活動、避難誘導、避難所運営等を行うことが重要になってくる。また、災害からの復興に当たっても、地域住民一人ひとりや地域コミュニティ全体が主体的にかかわることが「よりよい復興」にとって不可欠である(自助・共助)。
また、首都直下地震、南海トラフ地震等の大規模広域災害での被害を少なくするためには、地域住民一人ひとりや地域コミュニティ全体が、「災害はひとごと」と思わず、いつ発生するかわからない災害に備え、自分でできること、家族でできること、隣近所で力を合わせてできること等を考え、また、相互に助け合うことが重要であり、地域コミュニティにおけるこのような自助・共助による「ソフトパワー」を効果的に活用することが不可欠である。