平成26年版 防災白書|特集 第3章 平成25年災害対策基本法改正と地区防災計画制度


第3章 平成25年災害対策基本法改正と地区防災計画制度

平成25年の「災害対策基本法」の改正では、地区における自発的な防災活動に関する地区防災計画制度が創設された。

地区防災計画制度の特徴は、<1>計画提案制度が採用される等ボトムアップ型の計画であること、<2>地域に詳しい地区居住者等が作成する「地区の特性に応じた計画」であること、<3>計画に基づく活動の実践、定期的な評価や見直し、活動の継続等を重視した「継続的に地域防災力を向上させる計画」であることの3点があげられる。

過去の大規模広域災害時には、自助、共助及び公助がうまくかみあわないと災害対策がうまく働かないことが強く認識された。

そのため、市町村の行政機能が麻痺(「公助の限界」)するような大規模広域災害が発生した場合には、まずは自分自身で自分の命や身の安全を守ることが重要である(自助)。その上で、地域コミュニティでの相互の助け合い等が重要になってくる(共助)。


そして、過去の教訓を踏まえて、これまでの「災害対策基本法」の改正においては、自助・共助に関する規定が追加されてきている。以下では、それらを振り返りながら、平成25年改正で盛り込まれた地区防災計画制度について紹介したい。


もともと「災害対策基本法」には、自主防災組織(現第2条の2第2号)や住民等の責務に関する規定(現第7条第3項)が置かれていた。

そして、平成7年の阪神・淡路大震災において、学生を中心としたボランティアの活動が注目されたことを踏まえ、ボランティアによる防災活動の環境整備に関する努力義務規定が盛り込まれた(第8条第2項第13号)。

その後、東日本大震災後の平成24年改正では、住民による教訓伝承(現第7条第3項)に関する規定が入り、また、都道府県防災会議の委員に、自主防災組織を構成する者を指名することができるようになった(第15条第5項第8号)。

平成25年改正では、基本理念に、住民による防災活動のほか、自主防災組織等多様な主体による自発的な防災活動を規定した(第2条の2第2号)。この多様な主体とは、地域住民や自主防災組織のほか、ボランティア、NPO、事業者等を含んだ概念である。

また、行政とボランティアの連携(第5条の3)、事業者の事業継続の努力義務(第7条第2項)等が盛り込まれたほか、地域住民の責務として、生活必需物資の備蓄や防災訓練への参加等を明記した(第7条第3項)。


さらに、東日本大震災においては、地震や津波によって、市町村長が亡くなったり、多くの市町村職員が被災する等本来被災者を支援すべき行政自体が被災してしまい、行政機能が麻痺してしまった(公助の限界)ことから、自助・共助による「ソフトパワー」の重要性、特に地域コミュニティにおける共助の重要性が強く認識されたことを踏まえ、市町村内の一定の地区の居住者及び事業者(地区居住者等)による地域コミュニティレベルでの防災活動を促進し、ボトムアップ型で地域防災力を高めるために、地区居住者等による自発的な防災活動に関する計画制度である地区防災計画制度が創設された(第42条3項、第42条の2)(図表17)。

図表17 地区防災計画制度の全体像図表17 地区防災計画制度の全体像

本制度は、地区居住者等による自発的な防災活動を対象とした計画制度であるが、住民参加によるボトムアップ型の手法を取り入れており、地区居住者等による計画提案の仕組みを採用した。具体的には、地区居住者等は、市町村防災会議に対して地区防災計画を定めることを提案することができることとした。なお、市町村防災会議には、提案に対する応諾義務が課せられている。

地区防災計画制度の特徴としては、<1>ボトムアップ型の計画(計画提案もボトムアップ型を象徴する手法の一つである。)であることのほか、<2>地域に詳しい地区居住者等が作成する計画であるため、「地区の特性に応じた計画」であるということ、<3>単に計画を作成するだけでなく、計画に基づく活動の実践、定期的な評価や見直し、活動の継続等による「継続的に地域防災力を向上させる計画」であるということがある(図表18)。

図表18 地区防災計画の特徴図表18 地区防災計画の特徴

この地区防災計画制度については、平成25年6月の「災害対策基本法」の改正法の成立(公布)後、平成25年10月に、「災害対策基本法施行規則」を改正し、計画提案の手続に関する規定を追加した。また、平成26年3月には、地区居住者等向けに「地区防災計画ガイドライン」を作成し、計画作成の方法、計画提案の方法等について解説を行った。そして、同年4月から同制度が施行されている。


なお、前述の「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律」では、市町村は地区防災計画を定めた地区について、地区居住者等の参加の下、地域防災力を充実強化するための具体的な事業に関する計画を定めること等が規定されている(第7条第2項・第3項)。


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