1−5 自然災害による途上国への影響
過去9年間に世界全体で自然災害により死亡した人は約78万人(年平均約8.7万人)であるが,その大半が低所得国,中低所得国に集中している(図4−1−3)。
また,開発途上国においては,一度の災害がその国の年間GDPを超える経済被害をもたらすこともある。例えば,2004年のハリケーン・アイバンによってカリブ海の島々は大きな打撃を受け,グレナダの経済被害はGDPの約2倍にも及んでいる。そして2004年のインド洋地震津波によるモルディブの被害額はGDPの60%を超えている。我が国の阪神・淡路大震災の経済被害がGDPのおよそ2%であったことを考えると,その影響の大きさがわかる。特に,グレナダ,モルディブのような小さな島嶼国にとっては,自然災害が経済活動に与える影響は深刻な問題であるといえる(表4−1−2)。
このように自然災害による経済被害は開発途上国の持続可能な開発の大きな障害となっている。開発途上国の持続可能な開発を達成するためには,災害に対する社会の脆弱性を減らし,災害による被害を減少させていくことが喫緊の課題となっている。