4 防災ボランティア活動の環境整備



4 防災ボランティア活動の環境整備

(1)被災地での防災ボランティア活動

災害救援,避難生活の支援,家屋の泥かきなどの復旧支援,被災地や被災者の活力を取り戻すための生活再建支援,町おこし・村おこし等の復興支援,災害被害を軽減するための事前の備えの普及啓発など,近年,防災の様々な局面において,数多くのボランティアの方々による防災活動が,様々な主体との協働の下で,活発に行われている。

被災地における公助ではカバーしきれないきめ細かなニーズにも目を向けた活動が行われており,家屋の片付けや炊き出しなどの直接的な活動だけでなく,被災者への寄り添いや地元のお祭り等の催事の開催のお手伝いなどの間接的な活動まで,被災者本位の復旧・復興のために不可欠な支えにもなり得る存在として大きな役割を果たしている。


【被災地で行われた防災ボランティア活動の例】

●避難所でのお手伝い(炊き出し,洗濯など)

●相談,話し相手

●子どもの遊び相手,託児代行

●ペットの世話

●家の片付け,泥だし

●暮らしのお手伝い(お買い物,家事手伝い,家庭教師など)

●生活物資等の訪問配布

●被災者に元気になっていただくための交流機会作り,イベント開催

●暮らしの再建のための専門家の相談会,勉強会

●復興期における地域興しの手伝い など

(2)防災ボランティア活動の広がりのきっかけ

このような活動は,古くは関東大震災時,近年でも平成2年雲仙普賢岳噴火災害や平成5年北海道南西沖地震災害などの際にもみられていたが,平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災の際に,若者を中心とした多くの人々が全国各地から被災地に駆けつけ,延べ約130万人以上がボランティア活動に参加したことをきっかけに,防災ボランティア活動の重要性が広く一般に認識されるようになった。

この動きを受け,同年7月,我が国の災害対策の基本となる防災基本計画の中に,「防災ボランティア活動の環境整備」及び「ボランティアの受入れ」に関する項目が設けられ,同年12月には,災害対策基本法が改正され,国及び地方公共団体は「ボランティアによる防災活動の環境の整備に関する事項」の実施に努めなければならないことが法律上明確に規定された(同法第8条)(なお,「ボランティア」という言葉が,我が国の法律に明記されたのはこれが初めてのことである。)。

また,同年12月15日の閣議において,政府,地方公共団体等防災関係諸機関を始め,広く国民が,災害時におけるボランティア活動及び自主的な防災活動についての認識を深めるとともに,災害への備えの充実強化を図ることを目的として,「防災とボランティアの日」(毎年1月17日)及び「防災とボランティア週間」(毎年1月15日〜21日)の創設が了解された。これに基づき,本期間に関連して,内閣府が主催する「防災とボランティアのつどい」をはじめとして,国や地方公共団体等において,「防災」と「ボランティア」に関する様々な普及啓発活動が全国各地で実施されている。

(3)近年の防災ボランティア活動の動向

阪神・淡路大震災の際には,被災地内外のボランティア団体,国内外のNGO,宗教団体,医師・建築士等の技能団体,大学・企業のボランティアグループなど多種多様な方々が防災ボランティア活動に参加した。その人数の内訳をみると,学生が全体の約6割を占め,また,全体の約7割が初めてボランティア活動を経験する方々であり,多くの被災者があふれかえる地域に,多くのボランティアが集まり,現場の混乱は非常に大きなものであった。また,意気込んで被災地へ入ったボランティアの方々の善意も常に活かされるとは限らず,想いだけが先走り,被災者の感情との摩擦,ボランティア同士の意見の食い違いなど,十分に活躍できないこともあった。

こうした阪神・淡路大震災時の教訓や,阪神・淡路大震災以降の新潟県中越地震等での災害での教訓を踏まえ,近年は,刻々と変わる被災地のニーズを的確に把握し,被災地の受入負担増を招かず,被災地で喜ばれる活動を持続させる仕組づくりが重要となってきている。また,場所的にあるいは日程的に偏在しがちなボランティア希望者と潜在化しがちな支援ニーズとの相互調整,それらを調整するスタッフの継続的な確保,行政や各機関との連携等が課題となっており,これらの解決のために,より有効な防災ボランティア活動のための仕組が求められている。

このため,近年は,被災地において,ボランティア希望者の受付の円滑化や情報発信,被災地の支援ニーズの調整等,被災地における防災ボランティア活動を円滑に進めるための拠点となる「災害ボランティアセンター」が設置されるようになってきている(複数の府県においては「災害ボランティアセンター」が常設化されている。)。開設初動時の資金面については,例えば必要経費(資機材の確保,保険加入等)について概算払いで助成を受けることができる「災害準備金制度」を都道府県共同募金会が運営している。

また,被災地外の団体が,被災地の負担を軽減しつつ効果的にボランティア活動に参加するための仕組として,被災地の要望にあわせて必要な人数や活動内容などを整理してボランティアを募集し,バスをチャーターして被災地内外を行き来する「ボランティアバス」という取組が行われている。

このように,阪神・淡路大震災から15年を経て,また,新潟県中越地震から5年を経て,ボランティア団体等の試行錯誤の中での努力により,防災ボランティア活動への参加を希望する者の意志を尊重し,自発性・自律性を確保しつつ,かつ,被災地の受入負担を軽減し,安全で有効なボランティア活動を実現する仕組づくりや知恵の共有が進みつつある。

(4)平成21年度の災害時における防災ボランティア活動の状況

平成21年度においては,「平成21年7月中国・九州北部豪雨」,「平成21年台風第9号」等において,災害ボランティアセンターが開設され,家屋の片付けや泥のかきだし等,活発な防災ボランティア活動が展開された。また,以前に被災した地域においても,生活再建支援や町おこし・村おこし等の復旧・復興に関する支援活動が継続して展開されている。

内閣府では,平成21年に設置された災害ボランティアセンターに対して,活動人数,活動内容及び活動資金等の活動実態について,また,安全面・衛生面に問題のない環境で防災ボランティア活動が行われたかどうかについて,それぞれ「平成21年度災害ボランティアセンター調査」,「平成21年度災害ボランティアの安全衛生に関する調査」を実施した。その調査項目,調査結果等はホームページで公表している。

表3−4−1 平成21年度に開設された主な災害ボランティアセンター 表3−4−1 平成21年度に開設された主な災害ボランティアセンターの表
(5)防災ボランティア活動の環境整備に向けた取組

内閣府防災担当は,総務省消防庁(地方公共団体との連絡調整等)や厚生労働省社会・援護局(社会福祉協議会への運営費助成等)等と連携しつつ,ボランティア団体や防災ボランティア活動を行う方々等への必要な情報提供を行うとともに,これらの方々の間での多様な情報の共有に寄与するほか,生じた課題を解決するために必要な意見交換や交流の場づくりや受け入れ側の地方公共団体等への情報提供などを通じて,防災ボランティア活動の環境整備に取り組んでいる。

a 活動関係者からなる「防災ボランティア活動検討会」の開催

平成16年度に相次いで発生した災害の際に,全国各地で多くのボランティア活動が行われ,防災ボランティア活動の環境整備についての様々な課題や論点が浮き彫りになってきたことを契機として,全国各地の防災ボランティア関係者が,ボランティア活動における課題や成果を持ち寄り,知識を共有化できるよう,防災に関するボランティア及びボランティア活動支援者30数名,学識経験者10名,オブザーバー,関係省庁が参加する検討の場として「防災ボランティア活動検討会」を内閣府主催により立ち上げ,(1)普及啓発等資料の取りまとめ( 参照 ),(2)近年発生した災害時の防災ボランティア活動に関する情報提供・共有,(3)先進的な取組事例等の紹介・共有,(4)防災ボランティア活動に係る課題等についての意見交換等を行っている。

平成21年度においては,平成21年11月8日(日)(通算第10回),平成22年3月18日(木)(通算第11回)に,東京都千代田区において開催し,全体会及びテーマ別の分科会にて意見交換等を行った。これらの検討会では,平成21年度に取りまとめた「防災ボランティア活動に関する論点集〜よりよい活動環境に向けてみんなで考えよう〜」と「防災ボランティア活動の多様な支援活動を受け入れる〜地域の『受援力』を高めるために」についても意見交換を行った。

防災ボランティア活動検討会の様子 全体会 防災ボランティア活動検討会の様子(全大会)の写真
防災ボランティア活動検討会の様子 分科会 防災ボランティア活動検討会の様子(分科会)の写真

b 相互交流を図る「防災とボランティアのつどい」の開催

「防災とボランティアのつどい」は,「防災とボランティアの日」及び「防災とボランティア週間」に関連して,広く一般の方々に,防災ボランティア活動及び自主的な防災活動についての認識を深めていただくとともに,災害への備えの充実強化が図られることを目的として,内閣府主催により平成7年度から毎年度開催している。平成21年度は,阪神・淡路大震災から15年,新潟県中越地震から5年の節目を迎え,これまで行われた防災ボランティア活動を総括し,「防災ボランティア活動の意義をみんなで考える」をテーマとして開催した。当日は,全国各地から,防災ボランティア活動に関心を持つ200名を超える方々が参加し,活発な意見交換が行われた。

午前の部ではパネルディスカッション形式で,平成7年阪神・淡路大震災,平成16年新潟県中越地震の際に活動者の立場から関わった方とそれを支援する立場で関わった方の双方から,当時の被災地の現場や活動の状況を振返りながら,いま感じている「防災ボランティア活動の意義」について意見交換を行った。また,午後からは,3つのテーマでセットされた分科会(<1>平時からのボランティア活動,<2>地域の『受援力』とネットワークづくり,<3>復興に向けた被災地での取組)において意見交換を行った。午後の全体会においては,分科会での議論の報告を受けて参加者で情報共有を図り,その後,午前のパネルディスカッションを聴いて感想等を記入してもらったメッセージカードの紹介等を通して活発で有意義な意見交換を行った。

防災とボランティアのつどいの様子 全体会 防災とボランティアのつどいの様子(全大会)の写真
防災とボランティアのつどいの様子 各分科会からの報告 防災とボランティアのつどいの様子(各分科会からの報告)の写真

c 「災害ボランティアの活動環境整備に関する連絡協議会」の開催

地方公共団体によるボランティアの活動環境の整備を通じた側面的な支援の促進を目的として,各都道府県・政令指令都市等で構成する「災害ボランティアの活動環境整備に関する連絡協議会」を消防庁主催により平成11年度から毎年開催している。この協議会では,地方公共団体におけるボランティア関連施策等についての情報交換,調査検討をはじめ,取組事例の紹介やボランティア団体からの活動状況に関する講演等を実施し,都道府県・政令指令都市等の担当者間で情報共有を図っている。

d 普及啓発等資料の取りまとめ

「防災ボランティア活動検討会」での意見交換をベースとして,平時からの各地における防災ボランティア活動に関する企画・運営の検討の参考とするために,各回の会議資料・議事録等を公開するとともに,普及啓発等資料として,表3−4−2の資料を取りまとめてホームページに掲載し,ボランティア側及び受け入れ側の双方に向けて情報提供を行っている。

表3−4−2 防災ボランティア活動に関する普及啓発等資料 表3−4−2 防災ボランティア活動に関する普及啓発等資料の表

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