4−7 火災対策



4−7 火災対策

(1)災害の現況

近年の都市化の急速な進展に伴う人口の密集化,建築物の高層化・大規模化の進展,地下街の発達や,本格的な高齢化社会の到来などにより,火災による被害発生の危険性が増大している。

平成21年度においては,11月に東京都杉並区の飲食店(居酒屋)において,死者4名,負傷者12名の被害を出す火災が発生したほか,平成22年3月には,札幌市北区の認知症高齢者グループホームにおいて,死者7名,負傷者2名の被害を出す火災が発生している。また,住宅火災による死者数(放火自殺者を除く)は依然として多く,平成21年中の同死者数は1,025人(平成22年4月時点での概数)となっており,平成15年以降連続して1,000人を超える高水準で推移している。

(2)火災対策

a 防火安全の確保

国及び地方公共団体では,火災の発生を予防し,被害を最小限に抑えるため,火災予防運動や民間防火組織の活動を通じ,防火意識の普及宣伝に努めている。また,多数の者が利用する旅館,病院,地下街等の防火対象物においては,消防法により,消防用設備等の設置,防火管理者の選任,防火管理業務の実施等が義務づけられている。

特に,平成13年9月に発生した東京都新宿区歌舞伎町の火災直後に実施した調査において全国の小規模雑居ビルの約9割に消防法令等(火災予防条例を含む)違反,4割に建築基準法の違反があること等が判明したことから,消防庁においては,平成14年度に消防法を改正し,消防法令違反等の是正の徹底を図るとともに,違反処理データベースの充実等により違反処理体制の強化を図った。また,平成18年4月1日から一定の防火対象物に係る防火管理者への甲種防火管理者再講習を義務付ける等所要の整備を行い,防火管理制度の充実を図った。国土交通省においては建築基準法を遵守させるための方策の検討を行った。

また,平成18年1月の長崎県大村市における認知症高齢者グループホーム火災を受けて,平成19年6月13日に消防法施行令の一部が改正され,防火管理及びスプリンクラー設備,自動火災報知設備,消防機関へ通報する火災報知設備等の設置などの防火安全対策について,火災発生時に自力で避難することが著しく困難な者が入所する社会福祉施設等について基準の強化が行われた(平成21年4月1日施行)。また,平成19年1月の兵庫県宝塚市におけるカラオケボックス火災を受けて,平成20年7月2日に消防法施行令の一部が改正され,個室型遊興店舗(カラオケボックス,複合カフェ,個室ビデオ店等)については,全ての店舗に対して自動火災報知設備の設置が義務付けられた。更に,平成20年10月1日の大阪市浪速区の個室ビデオ店火災を受けて,平成21年9月30日に消防法施行規則等の一部が改正され,個室型遊興店舗における自動火災報知設備や誘導灯等について,更なる基準の強化が行われた(平成21年12月1日施行)。

b 消防力の強化

国及び地方公共団体は,より一層の消防力の強化を図るため,はしご付消防ポンプ自動車,化学消防ポンプ自動車,救助工作車,消防・防災ヘリコプター等の重点的な整備を図るとともに,消防水利の多元化,消防団の充実強化を推進している。

また,総合的な消防力の強化を図るための平成18年の消防組織法の改正に伴い,市町村の消防の広域化を推進しようとする都道府県が定める推進計画を策定した都道府県は,平成22年3月末現在,44団体である。国においては,消防の広域化に伴って必要となる経費に対し,所要の財政支援措置を講じるとともに,消防広域化セミナーの開催や消防広域化推進アドバイザーの派遣等により,消防の広域化の実現に向けた取組みを積極的に支援している。

c 建築物の不燃化の推進

従来より防火地域の指定等による建築物の構造規制,市街地再開発事業,住宅地区改良事業,住宅市街地総合整備事業,住宅金融支援機構融資等による耐火建築物への建替えの促進,公営住宅等公共住宅の不燃化,都市防災総合推進事業による避難地・避難路周辺等の不燃化等各種の対策を進めてきている。

d 住宅防火など火災予防対策の推進

住宅火災による死者数は建物火災による死者数の約9割を占めている。また,特に高齢者の割合が他の年齢層に比べ高い現状にある。

この低減を図るため,消防庁においては,これまで広報・普及啓発運動を中心に取り組んできたところであるが,平成16年の消防法改正により,全ての住宅に住宅用火災警報機等の設置・維持が義務付けられた。これにより,新築住宅は平成18年6月1日から,既存住宅は平成23年6月までの各市町村条例で定める日から住宅用火災警報器の設置が義務付けられる。消防庁では,住宅用火災警報器の設置を推進し,もって住宅火災による死者の低減を図ることを目的として,平成20年12月に「住宅用火災警報器設置推進会議」を開催し,「住宅用火災警報器設置推進基本方針」を決定したところであり,基本方針に基づいた住宅用火災警報器の早期普及に係る取組みを強力に推進している。

また,放火及び放火の疑いによる火災は,全火災の2割以上を占め,依然として高い割合となっている。消防庁では,平成16年に,個人,事業所,自治会・町内会,商店街等が,地域の放火火災に対する危険度を自ら評価分析し,放火火災防止対策を実行し,継続的に状況の検証をするといったサイクルに沿った取組み等を内容とする「放火防止対策戦略プラン」を策定し,このプランに基づき,「放火されない環境づくり」による安全で安心な暮らしづくりを進めている。さらに,平成17年に,戦略プランの中で放火火災防止対策に有効とされた放火監視機器について,「放火監視機器に係る技術上のガイドライン」を策定するとともに,検証試験(平成21年度までに延べ17都市)を行っている。

e 林野火災対策

出火多発期である春先を中心とした行楽期等における林野周辺住民・入山者等に対する広報,火災警報発令中における火の使用制限の徹底・監視パトロールの強化,火入れを行う者に対する適切な指導等,出火防止の徹底を重視して実施している。

また,林野火災の危険度が高い地域においては,林野火災特別地域対策事業を推進しており,平成21年度までに38都道府県の526市町村にわたる234地域において実施されている。


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