次頁 ３−２ 平成２１年台風第９号
（１）災害の状況
８月８日に日本の南で発生した熱帯低気圧は，北上しながら９日１５時に台風第９号となり，１０日には紀伊半島の南へ進み，１１日には東海，関東地方の南を東に進んだ。この熱帯低気圧と台風周辺の非常に湿った空気の影響で，中国，四国地方から東北地方にかけて大雨となり，１時間雨量の観測史上１位の値を，徳島県那賀町の木頭（１００．５mm），高知県津野町の船戸（９５．０mm），兵庫県佐用町の佐用（８９．０mm）で更新し，２４時間雨量でも，佐用（３２７．０mm），岡山県美作市の今岡（２３２．０mm）で，観測史上１位の値を更新した。
この災害により死者２５名，行方不明者２名，負傷者２３名の人的被害が発生した。特に兵庫県佐用町では，冠水した道路で流されるなど，１８名の死者が生じ，依然２名が行方不明となっている。また，住家被害としては，兵庫県など１９都府県で住家全壊１８３棟，住家半壊１，１３０棟，住家一部損壊３３棟，床上浸水９７３棟，床下浸水４，６２９棟などが発生したほか，５０，６１６世帯に避難指示・勧告が出された。
土砂災害については，１９県の５０市町村で１５５件発生した。
河川については，那賀川水系那賀川等２水系２河川ではん濫危険水位（危険水位）を越えたほか，１水系２河川で避難判断水位（特別警戒水位）を越え，各地で浸水被害等が発生した。
ライフライン関係においては，四国電力・関西電力・東京電力の各管内を中心に延べ約１万６，０００戸が停電となったほか，上水道は，兵庫県，岡山県などで約８，０００戸が断水した。電気通信関係では，兵庫県等において携帯電話基地局６２局が停波した。
道路については，高速道路，国道，県道で，最大時の合計で７５区間の通行止めが発生した。
鉄道については，２５区間が運転中止となった。
公共土木施設では，河川１，９０２箇所，砂防１９７箇所，道路（橋梁含む）１，１２１箇所，下水道６施設，公園８施設に被害が発生した。
農林水産関係では，農地４，１５０箇所，農業用施設等３，０１３箇所，林地荒廃３０３箇所，治山施設１６箇所，林道施設１，００７箇所に被害が発生した。
文教施設では，国立学校施設１校，公立学校施設２３校，社会教育・体育，文化施設等１９施設，文化財等６件で被害が発生した。
社会福祉施設等では，２９施設に被害が発生した。
（２）国等の対応状況
内閣官房や内閣府など関係省庁は情報収集体制を強化するとともに，防災担当大臣を団長とし，関係省庁からなる政府調査団を８月１１日に兵庫県と岡山県へ派遣した。この調査終了後には，災害対策関係省庁連絡会議を開催し，調査結果の報告と被害・対応状況の情報共有を行い，行方不明者の捜索に全力を挙げるとともに，復旧・復興対策に万全を期すことなどを申し合わせ，対応にあたった。また，内閣総理大臣による兵庫県の現地調査が８月２２日に実施された。
自衛隊は，兵庫県知事及び岡山県知事からの災害派遣要請を受け，捜索・救助活動（兵庫県佐用町，岡山県美作市），給水支援活動（兵庫県佐用町，宍粟市，岡山県美作市）などを行った。
８月９日を適用日として，兵庫県では，佐用町，宍粟市，朝来市に災害救助法を，県内全域に被災者生活再建支援法に基づく支援金支給制度を適用し，岡山県では美作市に災害救助法と被災者生活再建支援法に基づく支援金支給制度を適用した。
なお，「平成２１年８月８日から同月１１日までの間の豪雨及び暴風雨による災害についての激甚災害並びにこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令（平成２１年９月１１日閣議決定，平成２１年９月１５日公布・施行）」において激甚災害に指定し，農地等の災害復旧事業等に係る補助の特別措置等を適用するとともに，兵庫県佐用町（旧上月町）及び高知県三原村について公共土木施設災害復旧事業等に関する特別の財政援助等，兵庫県佐用町について中小企業関係の特例措置を適用した。また，この政令を一部改正（平成２２年３月１２日閣議決定，平成２２年３月１７日公布・施行）し，兵庫県朝来市等について，農林水産業共同利用施設災害復旧事業費の補助の特例等を追加した。
各府省の対応は， 附属資料３ のとおり。