1−2 中国・四川省における地震



1−2 中国・四川省における地震

(1)災害の発生と被害の概要

2008年5月12日午後2時28分(日本時間午後3時28分),中国四川省川県を震源地とするマグニチュード7.9(米国地質調査所発表)の地震が発生した。被害範囲は四川省に加え,重慶特別市,甘粛,陝西,雲南,山西,貴州,湖北,湖南の各省にまで及んだ。断層の長さは約280kmに達し,多数の地すべりが発生,天然ダムの出現が34箇所で確認された。

被害は死者6万9,227人,行方不明者1万7,923人に及び,建物への被害は,全壊約536万棟,半壊2,100万棟を超えた(中国国務院9月18日発表)。

また,学校,病院,道路,橋梁,水道管等の社会基盤・公共施設に深刻な被害が生じ,市民生活に甚大な影響を与えた。

(2)中国政府の対応

中国政府は,地震発生直後から17万人以上の職員,警察,軍隊を派遣し,救援活動,緊急物資(テント,食料品等)の提供,住宅再建に向けた資金提供,医療活動等を行った。

また,中央政府及び地方政府から復旧,復興に向け98億8,000万ドルが資金提供された。

(3)国際社会の主な対応

日本,米国,欧州各国,韓国,オーストラリア等を含む数十か国の政府が,資金・物資,医療,救助,輸送等の協力を行った。また,国連は,国連開発計画(UNDP),UNICEF,WFP等を通じた救援活動のため,国連中央緊急対応基金(UN/CERF)から800万ドルを拠出した。

(4)我が国の主な対応

a 国際緊急援助隊の派遣

5月15日に救助チームを派遣,61名が四川省青川県及び北川県で捜索救助活動に当たった。また,20日には医療チーム23名を派遣し,同省成都市で医療活動に当たった。

b 無償資金協力及び緊急援助物資の供与

日本政府は,5月13日,総額5億円相当の無償資金協力及び緊急援助物資の供与を発表し,約6,000万円相当の援助物資(テント,毛布,発電機等)を19日までに成都市に輸送した。また,2億円相当の無償資金協力を供与し,血液透析機材50台を上海で調達し,19日までに成都市に輸送した他,テント1,500張等についても中国国内で調達した。21日には,国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)を通じて1億9,200万円の緊急無償資金協力を決定し,この資金はIFRCでの食糧,毛布,調理用品等の購入に充当された。23日にも,特に不足しているとして中国側から要望があったテント600張を調達した。

更に日本政府は,5月30日,中国側よりテント等の救援物資の要請があったことを受け,総額5億円を上限とする追加支援を決定し,6月2日に兵庫県及び愛知県から提供のあったテント各200張,計400張を,4日には内閣府PKO事務局のテント700張,防衛省自衛隊のテント100張を輸送した。また,11日には地方公共団体36団体から提供されたテント566張,水道関連団体から提供のあった浄水器6台と関連機器80台及び飲料水1万1,520本,21日には地方公共団体47団体から提供されたテント538張を輸送した。

c NGO等の活動

被災地への救援物資(蚊帳,テント,調理器具等)の配布活動等,災害対応の初期段階から,様々な団体が救援物資の配布や義援金の募金活動を行ったのをはじめ,山間被災地域の被災者の越冬支援活動など,長期にわたる,幅広い分野での支援がなされた。

d 復興支援

日本政府は,6月29日〜7月2日,外務省のアジア大洋州局参事官を団長に12の府省庁・機関等から28名が参加した調査団を派遣し,現地調査を行うとともに,国家発展改革委員会,住宅都市建設部(中国の「部」は我が国の「省」に相当),科学技術部,地震局等中国中央政府及び四川省人民政府と協議を行った。

7月9日の福田総理(当時)と胡錦濤国家主席との日中首脳会談においては,中国四川省における大地震の復興計画について,日中間の協力を推進していくことで一致した。日本側からは,阪神・淡路大震災の復興計画を参考にした一つの全体計画と5つの柱((1)健康・福祉(2)社会・文化(3)産業・雇用(4)防災(5)まちづくり)の下で,我が国が有する震災復興の経験,知識,技術等ソフト面での協力を重点とする具体的支援プロジェクトを提示したところ,中国側から,約50項目について協力要請があり,これを受け,各分野での復興支援が行われている。

このほか,中国政府の要請に応え,7月,12月及び2009年1月の3度にわたって「中国四川川地震復興日本視察団」の受け入れを行い,震災対策全般にわたり活発な意見交換等を行った。また,視察団は,兵庫県,新潟県を訪れ,阪神・淡路大震災及び新潟県中越地震の被災地等を視察した。(第1陣:7月27日から8月2日まで,仇保興(きゅうほこう)・住宅都市農村建設部副部長(副大臣クラス)を団長とする計44名が来日。第2陣:12月14日から12月20日まで,斉驥(せいき)住宅都市農村建設部副部長を団長とする一行81名が来日。第3陣:1月11日から1月17日まで,郭允沖(かくいんちゅう)住宅都市農村建設部規律検査組組長(副部長級)を団長とする一行79名が来日。

e その他

アジア防災センターは,人と防災未来センターと協力して,5月25日から30日までの日程で現地調査を実施した。当該調査は,被災状況及び現地の対応状況を把握し,復旧・復興に際して阪神・淡路大震災の経験と教訓を生かした貢献の可能性について探ることを主眼とした。調査は,アジア防災センター主任研究員2名,人と防災未来センター研究調査員1名が被災地の都江堰市,綿竹市等を訪れ,被害状況調査や被災者の聞き取りとともに,四川省人民政府,中国地震局,民政部国家減災中心等の関係機関を訪問して情報収集・意見交換を行った。

独立行政法人国際協力機構(JICA)は,中国の迅速で円滑な復旧・復興計画の立案と実施を支援するため,我が国から講師団(国土交通省,兵庫県,神戸市,長岡市等から9人)を派遣し,中国政府と共同で「日中復旧・復興支援セミナー」を7月1日,2日に北京市内で開催した。このセミナーの中では,中国政府における具体的な復興計画の策定を支援するため,阪神・淡路大震災及び新潟県中越地震による被害からの復旧・復興の経験を,住宅等の再建,コミュニティ・生活再建,まちづくり計画策定,市民参加・行政連携などの面について紹介が行われ,まちづくり分野等における支援ニーズが存在することが明らかになった。

また,JICAでは,9月21日から27日までの日程で調査団(外務省,国土交通省,JICA等から6名で構成)を北京及び四川省に派遣し,住宅都市農村建設部,建築設計研究院及び四川省建設庁との意見交換,被災地の現場踏査を行い,この結果を踏まえて,2009年度から建築耐震技術者の育成プロジェクトを実施することが決定された。

更に,被災者への精神的なケアに関して,中国側のニーズに基づき,臨床心理士,看護師などに対する技術協力を行うための調査団を,11月9日から15日までと2009年2月21日から27日までの2回,成都市等に派遣した。第一次調査団は兵庫県の医学・臨床心理,教育心理,災害看護分野の有識者で構成され,四川省被災地の仮設住宅・学校や被災者向け職業訓練所を訪問して被災者の現状を把握するとともに,被災者向けに活動する医療従事者や行政関係者との意見交換を行った。第二次調査団は先の有識者に加えて防災教育に関わる兵庫県の小学校教員やスクールカウンセラーを派遣し,被災者に対するこころのケアに従事する関係者を対象にしたセミナーを,成都市にて中華全国婦女連合会と共同で開催した。このセミナーでは,日本の地域支援活動や教育現場におけるこころのケア対策の経験,実践的な手法を紹介するとともに,中国で行っている活動や課題について紹介がなされ,意見交換を行った。この結果,中国政府からはこころのケアを行う人材育成に係る技術協力の要請が出されており,これに対応していくこととしている。


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