5 民間と市場の力を活かした防災力向上 5−1 企業の防災活動の促進



5 民間と市場の力を活かした防災力向上

「災害に強い国」の実現に向けて,民間や市場の力の活用をテーマに,企業や地域の諸団体の活動を支援する方策の検討を行うため,平成15年に中央防災会議に「民間と市場の力を活かした防災力向上に関する専門調査会」が設置された。平成16年には,個人,地域諸団体,NPOや企業等の多様な主体による災害対策への参加の重要性を明確に位置づけ,必要な官民連携策を示した「民間と市場の力を活かした防災戦略の基本的提言」が取りまとめられたが,これに盛り込まれた,事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)のガイドラインや企業の防災力の評価方法,防災まちづくりの支援策については,更に具体化に向けた検討が必要とされた。平成17年には,同ガイドラインの策定や全国防災まちづくりフォーラムの開催等を経て,こうした成果も盛り込んだ同専門調査会報告書が取りまとめられ,現在に至る取組みの方向付けがなされた。

5−1 企業の防災活動の促進

(1)実態調査で把握された現状

内閣府が昨年実施した「企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」(以下『企業実態調査』)の結果によれば,企業の防災に関する取組みに関して,防災計画を策定済みの企業が,大企業で68.2%,中堅企業で45.9%となっている。

また,地域や自治体との日頃からの連携を行っている企業は,大企業で54.7%,中堅企業で37.6%となっている。地域や自治体と連携を取っていないと回答した理由の中で,大企業・中堅企業とも「地域貢献の具体策が思いつかない」とする企業が最も多く(大企業33.7%,中堅企業35.6%),次に「地域や自治体の窓口がわからない」(大企業29.5%,中堅企業29.7%),「人材がいない」(大企業27.5%,中堅企業29.5%)などとなっている。

また,企業の事業継続に関する取組みに関しては,大企業では「BCPを策定済みである」との回答は18.9%,中堅企業では12.4%にとどまるが,これを業種別にみると,金融・保険業では,BCPの策定率は42%と最も高く,次いで情報通信業の策定率が24%である。

これを企業の本社等が地震防災活動強化・推進地域指定されている地域等に所在しているか否かの地域別に見ると,大企業では東海地震の対策強化地域にある企業のBCPの策定率は20.1%,東南海・南海地震の対策強化地域にある企業の策定率は19.3%,首都直下地震の被害想定の範囲内に所在している企業の策定率は21.7%となっており,それ以外の地域に所在していない企業の策定率15.7%と比較して,差が見られる。

また,上場企業の中で,防災・事業継続の取組みを「公表をしている」企業が15.6%,「現在検討中である」企業は10.9%,「公表していない」企業73.5%となっており,既定の地震防災戦略に共通する目標になっている「防災に関する取組を評価・公表している企業(上場企業)の割合が5割程度」に対し,それに次ぐ「現在検討中」のものまで含めて,ようやく半分の水準に至る程度に止まる。

また「BCPを知らない」とする企業も,未だ大企業では23%,中堅企業では61%にも及んでおり,策定に直結する専門的・実践的な内容に関わる施策のみならず,まずBCPについて「知る」といった観点を重視した普及・啓発にも並行して取り組まなければならない。

図3−5−1 地域や自治体との連携 地域や自治体との連携の図
図3−5−2 地域や自治体との連携をとっていない理由 地域や自治体との連携をとっていない理由の図
図3−5−3 地震防災活動強化・推進地域指定されている地域等に所在している大企業のBCP策定率 地震防災活動強化・推進地域指定されている地域等に所在している大企業のBCP策定率の図
図3−5−4 防災・事業継続の取組みの公表について 防災・事業継続の取組みの公表についての図
(2)企業の事業継続における最近の取組み

企業実態調査によれば,BCPを策定済み又は策定中の大企業の25.0%・中堅企業の29.1%が事業者団体のガイドラインを参考としたとしており,国や地方公共団体の公表文書などに次ぐ状態からすれば,事業者団体を通じての取組みは効果的であることが考えられる。

事業者団体のガイドラインを策定済みの団体では,ガイドラインに関する説明会,セミナー等の開催はもとより,団体として会員企業の経営者への働きかけをするなど活発な普及・啓発の動きがみられ,結果として,会員企業のBCP策定率が高い団体も見受けられる。中には会員企業のBCP策定率が5割近くまで及んでいる団体も複数見られ,業種の特性に適った対応や身近な主体による普及啓発,また同業他社の動向が見えるなどの理由から,業界全体で取り組む事が有効と考えられる。

又,各省庁によるBCPに関するガイドライン等の策定も進んでおり,経済産業省が平成17年3月に策定した「事業継続計画策定ガイドライン」を策定し,また平成20年9月には,ITにかかる部分についてより具体的に実践するための指針として詳細な実施策を記載した「ITサービス継続ガイドライン」を策定した。また国土交通省関東地方整備局が平成19年12月に,BCP及び災害復旧活動に関して建設会社が最低限策定しておくべき事項を手引き書として記載した「建設会社のための災害時の事業継続簡易ガイド〜事業継続計画(BCP)策定・実施に向けて〜」を策定し,また厚生労働省が平成21年2月に策定した「事業所・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン」は,新型インフルエンザの流行に備えた感染防止策の指針と事業継続の留意点を示す中で,BCPの策定にあたっては中央防災会議の「事業継続ガイドライン」を参照するよう言及している。

(3)事業継続策定促進方策に関する検討会の開催

企業実態調査によれば,事業継続計画を「策定中である」および「策定予定がある」と回答した企業が事業継続計画策定時の問題点・課題として挙げた理由として最も多かった,「策定に必要なノウハウ・スキルがない」とする回答(40.4%)など「BCPの専門的・実践的な内容に係わるもの」や,次に多かった「策定する人手を確保できない」(37.9%)とする回答などの「経営者の意識に係るもの」の大きく2つの要因に分けられる。

BCPの策定率の向上のためには,これらの問題点・課題に対応し,BCP策定が促進される環境の整備を進めることを目的として,平成20年12月から「事業継続計画の策定促進方策に関する検討会」を開催している。

まずは,BCP策定時の問題点・課題の一つである「BCPの専門的・実践的な内容に係わるもの」に対応するため,「BCP策定に係る専門的・実践的なノウハウ・スキルの向上に向けた環境の整備」として検討を進めているところである。

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