3−1 福岡県西方沖を震源とする地震



3 平成17年に発生した主要な災害とその対策等

 平成17年は,3月に福岡県西方沖を震源とする地震,7月に千葉県北西部を震源とする地震,8月に宮城県沖を震源とする地震が発生し,最大で震度5強もしくは震度6弱を観測,また,梅雨前線や台風等に伴う風水害が発生し,いずれも人的被害・住家被害をもたらした。千葉県北西部を震源とする地震では,13年ぶりに東京23区で震度5以上を観測した。台風については,発生数は23個と平年より少なかったものの,台風第14号の上陸により,九州地方を中心に大きな被害があった。また,林野火災による焼失面積は1,116haに達した。さらに,12月から平成18年にかけて,日本海側を中心に大雪となり,気象庁が積雪を観測している339地点のうち,全国の23地点で年間の最深積雪の記録を更新した。この大雪により,除雪作業中の人的被害等が多く発生した。平成17年に発生した災害のうち激甚災害に指定されたものは, 表1−3−1及び表1−3−2のとおり。

平成17 年激甚災害適用措置及び主な被災地

平成17 年局地激甚災害適用措置及び対象区域

平成17 年以降に発生した主な災害

3−1 福岡県西方沖を震源とする地震

(1)災害の状況
 平成17年3月20日10時53分頃,福岡県西方沖の深さ約9kmでマグニチュード7.0の地震(本震)が発生し,福岡県福岡市,前原市及び佐賀県みやき町で震度6弱,福岡県須恵町,新宮町,志摩町,大川市,碓井町,春日市,久留米市,久山町,粕屋町,二丈町,穂波町,佐賀県上峰町,七山村及び長崎県壱岐市で震度5強を観測したほか,関東地方から九州地方にかけて震度1以上を記録した。
 また,4月20日6時11分頃,福岡県西方沖の深さ約14kmでマグニチュード5.8の地震(余震)が発生し,福岡県福岡市,春日市,新宮町,碓井町で震度5強を観測したほか,九州地方から近畿地方の一部にかけて震度1以上を観測した。
 主に3月20日の本震により,死者1名,負傷者1,087名,住家全壊133棟,住家半壊244棟,住家一部破損8,620棟の被害が発生したほか,合計で81人に避難勧告が出され,最大で2,999人が自主避難した。特に福岡市西区の玄界島においては住家の全壊が107棟にのぼる等被害が著しく,大多数の島民が福岡市中央区の九電記念体育館に避難した。
 土砂災害については,がけ崩れ22件が発生した。
 ライフライン関係においては,九州電力管内で3月20日の本震により延べ約2,600戸が停電となったほか,4月20日の余震により延べ約22,100戸が停電となった。都市ガスについては福岡県内の256戸で供給停止し,上水道については福岡県,佐賀県,大分県内の849戸が断水した。
 また,電気通信関係では,福岡県内の携帯電話基地局10局が停波した。
 道路については,福岡高速道路4区間で点検のため一時通行止めとなるとともに,一部の橋梁の支承に破損が生じる等の被害が発生した。鉄道については九州及び西日本のJR等の各線で点検のための運転中止が発生した。
 公共土木施設では,河川13か所,海岸10か所,砂防設備等2か所,道路(橋梁を含む)84か所,港湾98か所,下水道11か所,公園5か所で被害が発生した。
 農林水産業関係では,農地58か所,農業用施設141か所,林地荒廃等14か所,林道等30か所,漁港83か所に被害が発生した。
 文教施設では,国立学校施設7校,公立学校施設469校,私立学校施設164校,社会教育・体育,文化施設等57施設,文化財等37件に被害が発生した。
 社会福祉施設等では,老人福祉施設38か所,児童福祉施設65か所,障害者施設52か所,その他福祉施設10か所に被害が発生した。
 医療施設関係では76施設に被害が発生した。
(2)国等の対応状況
 地震発生後ただちに,各省庁の防災担当者が官邸危機管理センターに参集し,警察,消防,自衛隊,海上保安庁,国土交通省などのヘリコプターからの映像等により迅速な情報収集を行うとともに,内閣府の地震防災情報システム(DIS)を稼働させて,建物被害や人的被害などを推計し,概括的な被害規模の把握に努めた。また,官邸危機管理センターに参集した関係省庁の局長級職員などによる緊急参集チームによって,収集された情報を集約・確認することにより,政府として被害の実態把握と対応方針の決定を早期に行うことができた。発災直後には,関係省庁合同の情報先遣チームを福岡県へ派遣,その後,林田内閣府副大臣と合流し3月21日まで政府調査団として活動した。
 3月20日20時,同月21日15時,同月22日18時及び同月25日18時に,内閣府において災害対策関係省庁連絡会議を開催し,被害状況や各省庁の対応状況についての情報を共有,災害応急対策及び情報収集に万全を期すことを確認した。
 3月24日には村田防災担当大臣による現地視察,3月26日には小泉内閣総理大臣による現地視察を実施した。
 玄界島については,離島振興法による補助の特例を活用し,公共土木施設や公立学校施設の災害復旧事業を行った。
 また,3月20日,福岡県が福岡市に災害救助法を適用した。これに基づき福岡県は仮設住宅230戸を建設したほか,住宅の応急修理等について弾力的な運用を行った。
 さらに,被災者生活再建支援法に基づく被災者生活再建支援金支給制度を,適用日を3月20日として福岡県全域に適用した。
 内閣官房は,3月20日11時,官邸対策室を設置した。
 内閣府は,3月20日11時,情報対策室を設置し,関係機関から情報収集を行うとともに,官邸,関係省庁との情報連絡を行った。
 警察庁は,3月20日11時15分,災害警備本部を設置して,関連情報の収集,関係機関との連絡調整及び警察広域緊急援助隊や警察用航空機の派遣調整等に当たった。また,機動警察通信隊は災害発生直後から警察通信の確保に当たり,ヘリコプターテレビシステムや衛星通信システム等を使用して,警察庁,官邸等へ危機管理上重要な現場映像の伝送等を実施した。さらに,3月20日,福岡県公安委員会及び佐賀県公安委員会からの援助要求を受けて,広島・山口・熊本・長崎各県警察広域緊急援助隊延べ約180名を同県内に派遣した。
 防衛庁は,3月20日11時,災害対策室を設置,同日12時30分及び15時30分には災害対策会議を開催,同日福岡県知事からの災害派遣要請を受け,3月20日から4月25日までに,人員約4,200名,車両約540両,航空機約150機,艦艇18隻により,人員・物資の輸送,玄界島島民の避難支援,給水・給食・入浴支援,玄界島において半壊家屋等へのビニールシートの展張・被覆作業及び医療活動等を実施した。
 消防庁は,3月20日10時53分,災害対策本部を設置し,関係機関との連絡調整に当たるとともに,緊急消防援助隊の福岡県への出動を要請した。同隊は防災ヘリ2機により情報収集活動・人員輸送を実施した。
 海上保安庁は,3月20日11時,地震対策本部を設置し,巡視船艇・航空機により,被害状況調査及び沿岸状況調査を行ったほか,巡視船艇による玄界島島民の搬送,避難支援等を行った。また,3月20日から測量船により博多港内の航路及び岸壁周辺における障害物の調査及び玄界灘の余震が分布する周辺海域における海底の地形調査を実施した。
 総務省は,3月20日11時に災害対策本部を設置した。また,3月22日以降,福岡市の九電記念体育館に臨時の行政相談所を開設した。さらに,福岡市に対し,4月4日,6月に定例交付すべき普通交付税の一部を繰上げて交付した。
 金融庁は,3月20日,福岡銀行協会等12団体等に対し地震により災害救助法が適用された市町村の被災者に対し,状況に応じ災害関係の融資に関する措置,預金の払戻及び中途解約に関する措置,手形交換,休日営業等に関する措置等金融上の措置を適切に講じることを要請した。
 文部科学省は,3月20日11時45分,災害情報連絡室を設置,翌3月21日16時,応急災害対策本部に格上げし,教育委員会等の関係機関から被害情報を収集するとともに,児童生徒の安全確保及び二次災害の防止等適切な対応をとるよう指示した。3月21日には地震調査研究推進本部の地震調査委員会が臨時会を開催し,今回の地震について分析と評価を実施した。
 厚生労働省は,3月20日12時30分,災害対策本部を設置し,国立病院機構九州医療センター及び福岡東医療センターにおいて,負傷者の受入を行った。
 農林水産省は,3月20日11時,関係局庁連絡会議を設置した。また,被害漁業者等に対する経営資金等の融通及び既貸付金の償還猶予等を図るよう関係金融機関に依頼した。
 経済産業省は,3月20日11時15分,防災連絡会議を設置した。
 資源エネルギー庁は,災害救助法適用地域及び隣接地域において被災した住家に対して,電気料金及びガス料金の支払期限の延長等の災害特別措置を認可した。
 中小企業庁は,3月22日,福岡県の政府系中小企業三機関,信用保証協会,主要商工会議所,商工会連合会及び九州経済産業局に対し,災害に係る特別相談窓口設置を指示するとともに,政府系中小企業金融機関に災害復旧貸付の適用,政府系中小企業金融機関及び信用保証協会に既往債務の条件緩和等を指示した。
 国土交通省は,3月20日10時53分に非常体制をとり,ヘリコプターの活用等による情報収集を実施,照明車,衛星通信車を玄界島に派遣した。また,被害状況把握のため担当官及び専門家を玄界島に派遣,災害状況の緊急調査等を実施した。住宅・宅地関係では被災建築物応急危険度判定業務(3,148件実施,うち玄界島は225件),被災宅地危険度判定業務(3月20日〜28日で454か所実施,うち玄界島は172か所)の支援を実施した。また,福岡市博多区天神においてビルの窓ガラスが割れ,道路に大量に落下したことを受け,全国の地方公共団体に対して,類似の建築物を調査し,改修の指導などについて通知した。
 国土地理院は,3月20日11時,災害対策本部を設置し,電子基準点観測データの緊急解析を実施するとともに,空中写真撮影や現地緊急測量調査を実施し,地殻変動の把握及び災害状況図等の作成を行った。
 気象庁は,3月20日11時に非常体制をとり,地震機動観測班等による被害状況の調査及び玄界島において臨時の計測震度計の設置等を実施,震度5強以上の揺れを観測した地域を中心に被害拡大のおそれのある地域では,暫定的に大雨の注意報・警報基準を引き下げて運用した。
(3)復興状況
 災害の被害を受けた玄界島の復旧・復興については,玄界島の斜面部を含む被災住宅の密集地区の面的整備が課題であったが,福岡市は,地質調査の結果と島民の意向とを踏まえ,小規模住宅地区改良事業を実施することとし,本年2月28日に事業計画を決定した。
 今後は,本計画に基づき,土地の買収や建物の除却を行い,その後,改良住宅の建設や戸建て用地の造成,道路・公園等の公共基盤整備を実施する予定である。
 また,本事業と合わせて,福岡県営住宅を50戸建設するとともに,斜面部の安全確保を図る治山・砂防施設,基幹産業たる漁業を支える漁港施設,小中学校等の公共施設の災害復旧事業を総合的に実施する予定である。

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