3 防災とボランティア
(1)ボランティアの位置付け
さらに,同年12月には災害対策基本法が改正され,国及び地方公共団体が「ボランティアによる防災活動の環境の整備に関する事項」の実施に努めなければならないこと(同法第8条)が法律上明確に規定された。「ボランティア」という言葉が,わが国の法律に明記されたのはこれが初めてのことである。
(2)平成16年度のボランティア活動

(3)平成16年7月豪雨ボランティア懇談会
内閣府は,この経験を今後の施策やボランティア活動に活かすため,井上防災担当大臣(当時)の参加のもと,平成16年9月17日,東京において「16年7月豪雨ボランティア懇談会」を開催した。これら豪雨災害の現地で活動したボランティア,広域的に活動したボランティア等74名のボランティア関係者が集い,活動を振り返って教訓等を明らかにし,ボランティア活動の一層の発展に資するべく熱心な議論が行われた。
懇談会では,ボランティアセンターの立上げや運営など,災害ボランティア活動の実施には市町村とボランティアの連携ができるかどうかが重要なポイントであるとの指摘や,ボランティアの活動資金として基金が存在した地域では大変迅速な活動開始ができ,資金不足の地域では立上げに苦労したという報告があった。また,災害が起きてからではなく,災害が起きていない日常においても,ボランティア,行政,社会福祉協議会等の連携が必要との指摘があった。
(4)防災とボランティアのつどい
内閣府では,毎年1月の「防災とボランティア週間」に,「防災とボランティアのつどい」をはじめ普及・啓発行事を開催すること等により,防災ボランティア活動や自主的な防災活動の重要性に対する認識を一層深めることとしている。
「平成16年度防災とボランティアのつどい」は,1月に「国連防災世界会議」が開催されたことから,12月4日に東京都内で内閣府主催により開催した。全国からボランティア関係者約130名などが一堂に会した。
当日は,「中越地震及び新潟豪雨のボランティア活動」,「今年の各地の台風・豪雨水害におけるボランティア活動」,「被災地活動を支える広域的な支援活動のあり方(ボランティアバスを含む)」,「ボランティア活動を担う人材育成及びボランティア活動の経験の地元での活かし方」の4つのテーマで分科会を設け,議論が行われた。
その中で,ボランティアと地元公共団体,社会福祉協議会等との連携が円滑に進んだ例や課題を残した例の報告,ボランティアの人材育成の重要性の指摘,活動の初動資金の確保に関する問題点の指摘などがあった。また,ボランティアの安全・衛生対策を行うべきとの声もあった。
COLUMN 国連防災世界会議での「災害ボランティア世界会議」 平成17年1月に兵庫県神戸市で開催された国連防災世界会議のパブリックフォーラムとして,「災害ボランティア世界会議」がボランティア団体等の主催で開催された。基調講演としてアメリカの災害救援ボランティア機構のこれまでの取組みや今後の展望・課題などが報告されたほか,トルコ,メキシコ,韓国など海外からの参加者を交えて,災害救援に関わる活動内容や課題について,活発な意見交換がなされた。 また,防災・減災のために国内のNPOなどが中心となって準備を進めてきた「知恵のひろば」の趣旨(過去の災害で蓄積された経験やノウハウを収集・共有し,次の災害に生かしていこうというもの)が発表され,参加者から多くの賛同を得た。 さらに,「災害のリスクの軽減や救援に関し,知恵を共有し,助け合う」などとする「災害ボランティア世界会議神戸宣言」を採択した。 |
(5)防災ボランティア活動検討会
内閣府は,上記(3)(4)におけるボランティア関係者の報告や意見も踏まえ,更なるボランティア活動の環境整備を進めるため,「防災ボランティア活動検討会」を開催することとし,これまで平成17年3月7日及び28日の2回の会合を開いた。防災に係るボランティア関係者30数名,ボランティア活動に詳しい学識経験者9名,さらに村田防災担当大臣をはじめ,関係省庁も参加している。
同検討会では,ボランティア活動が円滑かつ有効に行われた例のポイントやノウハウを抽出・整理し,また,課題を残した例について解決策を検討し,これらの知見を有効に共有化することを基本方針としている。また,主な検討項目は,「ボランティアセンター立上げ及び運営の円滑化」,「災害対応時の活動資金の支援」,「ボランティアに紹介する業務の範囲」,「ボランティア活動時の安全確保」である。議論の概要を関連データとともに紹介する。
a 災害ボランティアセンターの円滑な立上げ及び運営のノウハウの普及
平成16年度の災害に際して設置された災害ボランティアセンターを対象にしたアンケート調査(「災害ボランティアセンターに関するアンケート調査」平成17年1〜2月。内閣府が実施)の結果では,ボランティアセンターの設置及び運営に「マニュアルを活用した」,「マニュアルを参考にした」というケースは,3割程度にとどまっている( 図3−3−1 )。
マニュアルを使わなかった代表的な理由としては,「マニュアルがなかった」,「マニュアル自体を認知していない」,「経験を踏まえ微調整していった」,「その日,その日の活動がマニュアルになった」ことがあげられている。このほか,「既存のマニュアルが想定した災害の種類が異なった」,「センター立上げの経緯が違うため町の受入れ体制に合わなかった」などの理由から,参考にするにとどめたとのコメントもあった。
このアンケート結果を踏まえ,防災ボランティア活動検討会では,既存のボランティアセンターの設置・運営に関するマニュアルを参考にしやすくすべきであり,また,今後は地域の特性を踏まえ自らの地域にあったマニュアルを持てる環境整備が必要であるとの意見が大勢を占めた。そこで,内閣府は,既存のマニュアルを収集・整理し「情報・ヒント集」と詳細資料としてまとめ内閣府HPで公表すること,主要なボランティアセンターの設置・運営に係るマニュアルは同HPからアクセス可能とすること,さらに,受付票や健康チェックリスト,ボランティアニーズ票などの様式集やセンターの配置図等の実例を何種類か内閣府のHPからダウンロードできるようにすることを提案し,賛同を得た。
b 災害ボランティアセンターの立上げ及び運営の資金の確保
上記アンケート調査のうち,災害ボランティアセンターの設置及び運営のためにかかった金額についての結果をみると,災害の種類や災害の規模によってその活動が大きく変わるため,0円から1,000万円以上まで金額の幅が広いが,一番多いのは101万円〜300万円であり,次に多いのが1万円〜50万円となっている( 図3−3−2 )。
災害ボランティアセンターの立上げ及び運営には一定の経費がかかるのが通常であり,同検討会では,例えば,「スコップやデッキブラシなど初動期に必要なものの購入のために,瞬間的にお金が動かせる仕組みが必要」との指摘がなされ,資金の確保方策をあらかじめ考えておくことが必要との認識で一致した。
内閣府は,どのような資金需要が生じるか,どの程度の額が必要か,さらに資金確保方策の事例を紹介する「情報・ヒント集」を作成すること,及び,初動資金の迅速な現金支出方策を各地域であらかじめ明確にしておくことが必要であるので,その方策について消防庁,厚生労働省,全国社会福祉協議会等とも連携して都道府県等と議論を始めることを提案し,賛同を得た。
c 災害ボランティアの活動の安全管理及び業務の範囲
同検討会では,ボランティア関係者より,「各ボランティアセンターが活動時に安全管理のマニュアルをつくる能力を持つべき。安全管理は,気をつけるべきことを文書にしていく努力が重要。」といった意見も出るなど,安全管理やボランティアに紹介する業務の範囲について参加者の関心が高かった。
内閣府は,災害ボランティア活動での安全管理,業務の範囲を各災害ボランティアセンターが判断する際に考慮すべき論点,留意事項などをまとめた「情報・ヒント集」を作成すること,例えば医療関係者や労働安全衛生担当部局に対して災害ボランティア活動における安全確保の問題につき必要な助言をもらえるよう働きかけを始めることを提案し,賛同を得た。