2−4 災害応急対策の実施



2−4 災害応急対策の実施

(1)災害発生時の措置,応急対策
 災害発生時においては,発災直後の情報の収集・連絡,活動体制の確立と並行して,人命の救助・救急,医療,消火等の応急対策活動を迅速かつ的確に講ずることが求められる。
 災害応急対策は,一次的には基礎的な地方公共団体である市町村において災害対策本部を設置して対応することとなるが,災害の状況に応じ,国の機関,地方公共団体,公共機関がそれぞれ相互に緊密な連携のもとに協力して実施することとなる。
 国においては,以下のとおり体制を整備し,災害応急対策を講ずることとしている。
a 情報収集・連絡等体制
 応急対策を講ずるうえで最も重要となる情報収集・連絡体制に関しては,内閣総理大臣官邸の内閣情報集約センターが窓口となり,24時間体制で情報の収集・伝達等の対応に当たることとし,関係省庁における情報の共有化を図っている。
大規模地震や社会的影響の大きい突発的災害が発生した場合,内閣としての初動措置を迅速に始動するため,関係省庁の局長等の幹部が官邸危機管理センターに緊急参集し,情報集約を行うこととしている。
また,内閣府においては,被害規模の早期把握に関して,地震発生直後,概ね30分以内に被害の大まかな規模を把握するための「地震被害早期評価システム(EES)」を整備し稼働させている。一方,被害規模の早期把握のため,各省庁はそれぞれの立場において現地の関係者からの情報を集約するほか,警察庁,防衛庁,消防庁,海上保安庁においては,一定規模以上の地震の場合における航空機,船舶等を活用した情報収集体制の整備を行っている。
  さらに,被災地のより詳しい状況把握と的確な災害応急対策を講ずるため,状況により,防災担当大臣又は内閣府副大臣を団長とし,関係省庁の要員で構成する政府調査団を派遣することとしている(緊急災害対策本部が設置されている場合等は,内閣総理大臣が団長となることがある)。
b 災害応急対策の活動体制
 地方公共団体の対応能力を超えるような大規模災害の場合,警察,消防,自衛隊及び海上保安庁の実動部隊を広域的に派遣し,災害応急対策活動を行う。
警察庁及び都道府県警察においては,都道府県の枠を超えた広域的な災害対策の専門部隊として,広域緊急援助隊(規模:約4千人(警備部隊約2,500人,交通部隊約1,500人))を確立している。
 消防庁及び地方公共団体においては,全国から高度な資機材を装備した救助隊等が出動し効果的な消防応援活動を行うために,全国の消防機関による緊急消防援助隊(規模:2,963部隊約3万6千人)を派遣することを確立している。
 また,防衛庁自衛隊においては,都道府県知事等の要請に基づく災害派遣により,救出・救助等の災害応急対策活動を行うこととしている。
 なお,平成15年度の自衛隊の災害派遣は811件に上り(救急患者の搬送件数も含む。)延べ約2万4千人の人員が派遣された。
 これらの機関の職員の総数は,以下のとおりである( 表2−2−2 )。

実働部隊の派遣体制(定員制)
c 災害対策本部の設置
 災害の規模その他の状況により,国が災害応急対策を推進するため特別の必要があると認めるときは,災害対策基本法第24条第1項の規定に基づき,防災担当大臣を本部長とする「非常災害対策本部」を,また,著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合においては,同法第28条の2第1項の規定に基づき,内閣総理大臣を本部長とし,全閣僚等を本部員とする「緊急災害対策本部」を内閣府に設置することとしている。
非常災害対策本部又は緊急災害対策本部は,政府の災害対策本部と被災地方公共団体との連絡調整等を行い,災害応急対策の円滑な実施の支援・協力を行う。
このため,必要に応じ,被災地等に内閣府副大臣を本部長とする現地災害対策本部を設置し,迅速な災害応急対策を講ずることとしている。
なお,過去10年間における国の非常災害対策本部等の設置状況は 表2−2−3 のとおりである。平成17年4月1日現在において,災害対策基本法に基づく非常災害対策本部は,「平成16年(2004年)台風第23号非常災害対策本部」と「平成16年(2004年)新潟県中越地震非常災害対策本部」が設置されている。

非常災害対策本部等の設置状況(過去10年間)

(2)防災に関する人材の育成・活用について
 災害発生時に迅速・的確な対応ができるかどうかは,災害対応に携わる人材に依るところが大きい。特に,国,地方公共団体の防災担当職員は,災害発生時においては,想定外の事態へも即座に対処する能力や,様々な関係機関との調整・連携能力等,平常時と異なる状況下での対応が求められる。
 このような防災に関する人材の育成・活用方策全般について調査審議するため,平成14年7月,中央防災会議に「防災に関する人材の育成・活用専門調査会」が設けられ,検討が行われた(平成15年5月に報告取りまとめ)。
 上記専門調査会の報告を受け,内閣府では,平成15年度から,各省庁の防災担当職員を対象とした合同研修を実施し,平成16年度は,平成17年2月7日から8日までの2日間,中央合同庁舎第5号館(内閣府防災会議室)及び内閣府災害対策本部予備施設(立川)において,17省庁等から40名が参加して行われた。
○平成16年度防災担当職員合同研修
【目的等】
 各省庁の防災担当職員を対象とした集合研修を行うことにより,災害への対応能力の向上を図るとともに,政府全体として施策に取り組めるよう,研修員相互の理解と信頼を促進することを目的とし実施した。
 対象者としては,大規模災害発生時に政府本部(非常災害対策本部,緊急災害対策本部)の事務局要員として災害応急対策活動に当たることが見込まれる各省庁の課長補佐以下クラスの防災担当職員とした。
【内容】
 研修参加者の多くが今年度発生した災害を経験していることを踏まえ,国全体と各省庁の災害対応における教訓の共有に重点を置いた内容した。
 [1] ワークショップ「昨年多発した災害経験をもとに今後のわが国における防災体制を考える」(2月7日)
   林春男 人と防災未来センター上級研究員(京都大学防災研究所教授)監修のもと,参加者が6人程度のグループに分かれ,政府の災害対応について各種観点から検証し,政府の災害対応が置かれている状況を明確化することで,今後取り組むべき課題及び対策を検討した。
 [2] 平成16年度災害の対応についての反省教訓の発表と意見交換(2月8日)
   警察庁,防衛庁,消防庁,海上保安庁が台風23号や新潟県中越地震などの災害対応における反省教訓を発表した後,各省庁の参加者から平成16年度災害への政府の対応について活発に質問や意見が出され,災害対応における共通の理解を深めた。

 また,地方公共団体の防災担当職員・消防職団員や地域の防災リーダー等に対しては,消防大学校や都道府県等において研修等が実施されているが,さらに,平成15年度からは消防庁において,地方公共団体の首長等幹部職員に必要な災害対応能力の強化を図るための消防大学校における「危機管理セミナー」や,住民や地方公共団体の防災担当職員に対する防災に関する体系的な知識等の修得機会を増大させるためのe−ラーニング教材の作成によるインターネットを活用した防災・危機管理教育を実施している。



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