9−3 有珠山噴火災害の復興対策



9−3 有珠山噴火災害の復興対策


 平成12年3月31日の有珠山噴火災害では,最大で15,815人が避難指示・勧告の対象となったものの,3月29日には全国で初めて噴火前に国や地方公共団体,関係機関の41機関で構成する「有珠山現地連絡調整会議」(噴火後,「有珠山噴火非常災害現地対策本部合同会議」に変更)が設置される等行政の迅速な対応がとられたことや,火山噴火予知連絡会,火山学者等の的確な助言を受けて噴火前の迅速な避難が実施されたことにより,人的な被害はなかった。
 政府は,3月31日13時07分頃の最初の噴火後,直ちに関係閣僚会議を開催し,「平成12年(2000年)有珠山噴火非常災害対策本部(本部長:国土庁長官,場所:国土庁)及び現地対策本部(本部長:国土総括政務次官,場所:伊達市)」の設置等を決定,その後の本部会議において決定した災害応急対策に関する基本方針に基づき,各種の応急対策が実施された。
 被災地の復興のため,北海道が平成12年12月に「2000年有珠山噴火災害復興方針」を,平成13年3月には,地元の市町が策定する復興計画の指針となる「2000年有珠山噴火災害復興計画基本方針」が策定され,復興の方向性と施策の概要が示された。これに基づき,同年7月には地元の伊達市,虻田町及び壮瞥町が,それぞれ「復興計画」を策定し,被災地域の本格的な復旧・復興対策が進められている。
 政府としても,平成13年6月23日に「タウンミーティングイン北海道」を虻田町で開催し安全性のPRを行うとともに,6月28日には,「有珠山噴火非常災害対策本部」の廃止に併せ,村井防災担当大臣を議長とする「有珠山墳火災害復旧・復興対策会議」を設置するなど,被災地の「火山との共生」を目指した復旧・復興への取り組みを支援している。
 なお,現在も引き続き行われている主な復興事業等については以下のとおりである。

(1) 砂防・治山事業

 砂防施設については,平成13年度から,火山砂防激甚災害対策特別緊急事業により,西山川においては平成15年度,小有珠川,小有珠右の川においては,平成17年度までに整備を完了する予定で遊砂地等の泥流対策が進められている。
 また,治山事業については,平成13年度から,国有林,民有林とも火山地域防災機能強化総合治山事業により,新たな治山ダムの設置や既設ダム・導流工の嵩上げ等,土砂災害等に対する防災機能強化対策を5カ年計画で進めている。

(2) 交通ネットワークの整備

 今回の噴火により,道央自動車道,国道230号及び37号等が長期にわたり寸断又は交通規制され,住民生活や地域の経済活動さらには道央と道南を結ぶ広域的な物流等にも大きな影響を与えたばかりでなく,避難に際して周辺道路が渋滞するという事態も発生した。このため,道路上に噴火口が出現した国道230号の新ルートでの整備や避難路の整備など,防災対策を考慮した道路ネットワークの構築に向けた整備が進められている。

(3) 生活関連施設等の整備

 上下水道については,虻田町において恒久的な施設を整備することとしており,上水道については平成14年度,下水道については平成16年度の完成をめざし整備が進められている。
 また,仮設校舎で授業を行っている洞爺湖温泉小学校については,月浦地区への移転新築が決定し,平成13年10月に移転復旧工事に着工,14年11月の完成を目指して整備が進められている。
 なお,洞爺湖協会病院については,移転改築場所が虻田町高砂町に決定し,平成14年1月に着工,15年春の完成を目指して整備が進められている。

(4) 生活の再建支援

 災害により住家が全壊した世帯及び避難が長期化することが見込まれる世帯等に対して,被災者生活再建支援法に基づき,延べ262世帯に対し合計約2億1千万円の被災者生活再建支援金が支給されている(平成14年1月31日現在)。
 また,噴火後1年以上が経過し,被災離職者の再就職も進んでいるが,依然として再就職に至っていない被災離職者がいることから,平成13年度においては,当面の対策として5つの交付金事業が実施され,臨時応急の雇用機会が確保された。

(5) 住宅対策

 住宅対策としては,立入制限区域内の居住者の優先的な入居を進めることを目的とした,虻田町内5ヶ所の公営住宅148戸が平成13年末に全て完成し,希望者全員が入居可能となっている。
 また,自力で住宅を再建する被災者への支援として,住宅金融公庫において,災害復興住宅資金貸付が行われている(受付期限:平成14年10月10日)。
 なお,災害危険区域に指定された区域内の公営住宅や泉北地区の住宅などを対象として行われる防災集団移転事業が,平成13年11月から開始されている。

(6) 活動火山対策特別措置法に基づく避難施設緊急整備地域の指定

 住民の安全を確保するためには,避難道路など避難施設の整備や土石流対策等を緊急に進めることが必要であることから,被災した伊達市,虻田町及び壮瞥町のうち火砕流及び火砕サージ,噴石,融雪型火山泥流,二次泥流の災害予想範囲を重ね合わせた最大範囲の地域 (表2−9−1) を,平成13年12月26日に活動火山対策特別措置法に基づく避難施設緊急整備地域に指定した。
 これにより,北海道知事が内閣総理大臣に協議し,その同意を得て避難施設緊急整備計画を作成し,具体的な対策が実施されることとなった。

(表2−9−1)避難施設緊急整備地域に指定された有珠山周辺地域

(表2−9−1)避難施設緊急整備地域に指定された有珠山周辺地域

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