表示段落: 第2部
第2部 平成11年度において防災に関してとった措置の概況
第1章 概要
1 法令の整備等
原子力災害対策特別措置法を制定し,また,それに伴い,防災基本計画の修正を行った。
2 科学技術の研究
各研究機関においては,国費約781億円をもって,震災に関する研究,風水害に関する研究,火山災害に関する研究等の各般にわたる科学技術の研究,開発に努めた。
3 災害予防
防災施設等の整備を図るとともに,大都市震災に対処するため防災拠点等の整備等を推進した。また,初動体制の充実強化,中央防災無線網の拡充整備,地震防災情報システムの整備等を推進したほか,各種施設・設備の耐震補強等を行った。その他,災害対策の計画の樹立に資するための各種調査等を行ったほか,総合防災訓練等を実施した。
これらの対策に要した国費は約1兆1,422億円,融資実行額は約3,415億円であった。
4 国土保全
防災上緊急を要する地域に重点を置き,河川事業,河川総合開発事業,砂防事業,急傾斜地崩壊対策事業,治山事業,海岸保全事業,農地防災事業,災害関連事業,地盤沈下対策事業,下水道事業等を国費約2兆4,005億円をもって実施した。
5 災害復旧等
(1) 災害応急対策
平成11年度に発生した災害に対して,被害情報の収集,被災者の避難誘導・救護等の活動の実施,災害救助法の適用,激甚災害の指定等各種援助措置を講じた。
(2) 災害復旧事業
公共土木施設災害復旧事業及び農林水産業施設災害復旧事業は,直轄事業については2箇年,補助事業については3箇年で復旧するという基本方針に基づき,平成10年災害の直轄事業及び平成9年災害の補助事業を完了した。
その他の災害復旧についても,それぞれ所要の復旧を行った。
(3) 財政金融措置
国民金融公庫,住宅金融公庫等からの融資,災害保険金の支払い並びに地方交付税及び地方債による措置など財政金融上の措置を講じた。
(4) 災害復興対策
阪神・淡路大震災に対しては被災者の救済,被災地の再建を推進した。このほか,雲仙岳噴火災害等に対する措置も講じた。
これらの災害復旧等に要した国費は約9,419億円,融資実行額は約3兆6,640億円であった。
6 平成11年度における防災関係予算額等
平成11年度における防災関係予算額等は,次のとおりである。(表1-1-1)
第2章 法令の整備等
原子力災害対策特別措置法(平成11年12月17日法律第156号)
平成11年9月のウラン加工工場臨界事故への対応において,初期動作における国,地方公共団体の連携強化,原子力災害の特殊性に応じた国の緊急時対応体制の強化,原子力事業者の防災対策上の責務の明確化等の課題が顕在化した。このような認識のもと,同年12月に原子力災害対策特別措置法が成立し,原子力施設や放射性物質の運搬時の災害対策について抜本的強化を図ることとなった。
本法は,災害対策基本法を補完する特別法として,原子力災害予防に関する原子力事業者の義務,原子力災害対策本部の設置等について特別の措置を講じることにより,原子力災害対策の強化を図り,原子力災害から国民の生命,身体及び財産を保護することを目的としている。
具体的には,下記の項目について定めている。
・ 迅速な初期動作の確保
・ 国と地方公共団体との有機的な連携の確保
・ 国の緊急時対応体制の強化
・ 原子力事業者の債務の明確化
・ 原子力安全委員会の役割の明確化
防災基本計画の修正
上記法律の制定により,関係する防災基本計画の修正を行った。
第3章 科学技術の研究
1 災害一般共通事項
(1) 北海道における港湾・海岸防災に関する研究
北海道開発庁北海道開発局開発土木研究所においては港内への流氷流入,港内結氷等の対策及び高波による施設被害や海岸護岸の背後における利用障害を防止するための技術開発を行った。
(国費 9,149千円)
(2) 防災科学技術の総合的推進
科学技術庁においては,防災に関する研究開発基本計画に基づき,科学技術に関する経費の見積り方針の調整及び科学技術振興調整費による総合推進調整を図るとともに,防災科学技術を通じた国際協力を推進した。
防災科学技術研究所において,防災科学技術に関する総合的,共通的研究(特別研究は別掲)を行うとともに,防災科学技術資料の収集・整理及び提供を行った。
(国費 1,387,554千円)
(3) 地球観測データによる災害監視技術の開発
宇宙開発事業団においては,地球観測衛星等を複合的に活用した災害監視システムの研究等を実施した。
(国費 38,020千円)
(4) 自然災害に関する研究
文部省においては,科学研究費補助金により大学等による自然災害の予防・軽減策の確立に資する課題の基礎的研究を助成した。
(国費 594,000千円)
(5) 砂防,海洋災害,防災材料等に関する研究
文部省においては,国立大学の研究所等で,砂防,海洋災害,防災材料,水文学及びオホーツク海沿岸の流氷等に関する基礎的研究を行った。
(国費 352,183千円)
(6) 農作物及び森林の災害防止等に関する研究
a 農作物の災害防止に関する研究
耐冷性,耐寒性,耐湿性,耐干性品種の育成,冷害,雪害,風害等の作物の気象災害防止技術に関する研究を行った。
また,道府県に委託し,農作物の耐冷性品種等の育成のための品種改良試験を進めた。
(国費 426,434千円)
b 農業用施設等に関する研究
農業工学研究所等において,農地の地すべり防止に関する研究,異常降雨・大規模地震による災害の軽減対策に関する研究等を行った。
また,農業工学研究所を中心に,フィルダム等の進行性破壊現象の解明を行った。
(国費 98,831千円)
c 治山技術の確立及び森林災害の防止に関する研究
農林水産省森林総合研究所において,山地荒廃の予防及び復旧,治山技術の確立に関する研究並びに森林災害の防止等に関する調査研究を行った。
(国費 33,269千円)
(7) 船舶における防災技術の研究
運輸省船舶技術研究所においては,次世代海洋汚染監視システムに関する研究,深海モニター用小型ロボットシステムの技術開発等に関する研究を行った。
(国費 46,661千円)
(8) 流出油防除技術に関する研究
運輸省においては,油流出事故による被害を最小限に抑えるため,荒天下で高粘度油を回収できる大型油回収装置等の研究開発費の一部補助を行った。
(事業費 200,000千円 国費 100,000千円)
(9) 港湾・海岸及び空港における防災技術の研究
運輸省港湾技術研究所においては,津波・高潮等海の波に関する研究,耐波構造物に関する研究,漂砂に関する研究等を行った。
(国費 49,980千円)
(10) 知能化材料を用いた港湾構造物の信頼性向上に関する研究
運輸省港湾技術研究所においては,耐久性にすぐれた知能化材料を用いた構造部材の変状のセンシング技術の開発及び情報の伝送システム,処理システムの検討を行い,港湾構造物の総合的モニタリングを構築する研究を行った。
(国費 11,527千円)
(11) 波による地盤の液状化・変形メカニズムの解明とその対策・利用技術の確立に関する研究
運輸省港湾技術研究所においては,液状化を中心とした,波と構造物そして地盤の相互作用を解明する基礎的研究,そしてそれに基づいた構造物の設計法の確立,さらには地盤技術を利用した研究開発を行った。
(国費 7,125千円)
(12) 浮体式防災拠点に関する調査研究
運輸省においては,メガフロート(超大型浮体式海洋構造物)を移動式防災拠点として利用する場合の機能用件,技術課題に係る調査研究を実施した。
(国費 157,658千円)
(13) 寒冷域における油防除手法の調査研究
海上保安庁では,サハリン東方沖掘削基地での油の暴噴事故に備えて,11年度から「寒冷域における油防除手法の調査研究」を実施している(2カ年計画)。
(国費 3,000千円)
(14) 気象・水象に関する研究
気象庁においては,気象研究所を中心に,大気中の温室効果ガス濃度の増加に伴う地球温暖化の予測技術の高度化を図り,この成果を基に,地球温暖化に伴う気温の日変化の全球的な変動の予測を行った。
(国費 1,100,024千円)
(15) 非常時通信技術の研究開発
郵政省通信総合研究所においては,電気通信設備が大規模に被災している状況下においてもインターネット技術による通信の確保を可能とし,また,電話が輻輳によって使えない状況下においてもマルチメディア通信による伝達を可能とするための研究開発を行った。
(国費 28,995千円)
(16) 地域非常通信のためのネットワーク技術の研究開発
郵政省においては,耐震性の高い地域非常通信ネットワークを実現するめ,映像等の多様な情報を一つのシステムで伝達するとともに,通信の集中度合に応じて通信路を割り当てる等により,重要な通信を確保できる無線通信技術の研究開発を行った。
(国費 104,859千円)
(17) 多次元GISによる地理情報解析に関する研究
建設省国土地理院においては,地震や集中豪雨に伴う地盤災害の危険度評価等を例として,多次元GISによる地理情報解析技術に関する研究を行った。
(国費 1,957千円)
(18) 火山性地殼変動のダイナミックモデルに関する研究
建設省国土地理院においては,火山地域におけるGSP連続観測等の地殼変動データを解析して,火山活動の推移を逐次予測するシステムの開発に関する研究を行った。
(国費 1,288千円)
(19) 次世代衛星通信システムを活用した防災情報通信ネットワークのあり方の研究
消防庁においては,今後のシステム機能の高度化及び運用体制等について,新たな通信衛星の利用を視野に入れた防災情報通信ネットワークのあり方について検討を行った。
(国費 2,058千円)
(20) 探査衛星の防災上の利用のあり方についての研究
消防庁においては,打ち上げられている探査衛星の防災上の活用方策等について研究を行った。
(国費 7,477千円)
(21) 衛星データ放送等を用いた緊急支援情報システムの整備
消防庁においては,衛星データ放送を活用した情報伝達システムを構築するための試作機の製作と高度防災情報システムの整備を行った。
(国費 789,963千円)
(22) 消防・救急無線のデジタル化に関する研究
消防庁においては,無線システムを高度利用するために求められている消防・救急無線のデジタル化について,伝送方式等の技術的検討及び運用面の検討を行った。
(国費 354,769千円)
2 震災対策
2-1 地震に関する調査研究
(1) 地震に関する調査研究の推進
科学技術庁においては,地震調査研究推進本部の方針の下,高感度地震観測施設,広帯域地震観測施設の整備等を推進した。また,地方公共団体が行う活断層調査等に対する地震関係基礎調査交付金の交付,地震調査観測施設の整備に対する財政的な支援を行った。
(国費 13,114,197千円)
(2) 地震総合フロンティア研究の推進
理化学研究所,宇宙開発事業団,核燃料サイクル開発機構,及び海洋科学技術センターにおいては,それぞれ「地震国際フロンティア研究」,「地震リモートセンシングフロンティア研究」,「陸域地下構造フロンティア研究」及び「海底下深部構造フロンティア研究」を実施した。
(国費 1,093,090千円)
(3) 海底地震総合観測システムの開発・整備
海洋科学技術センターにおいては,海底地震総合観測システム(2号機)を開発するとともに,高知県室戸岬沖に設置した海底地震総合観測システム(1号機)及び,相模湾初島沖に設置した初島沖システムによる観測研究を行った。
(国費 528,652千円)
(4) 地球深部探査船の研究開発
海洋科学技術研究センターにおいては,海底下地層から良質の試料を採取できる地球深部探査船の開発研究の一環として科学研究掘削のためのシステムとなる海底掘削システム試験機の製作等を引き続き行うとともに,国際大陸掘削計画に参加した。
(国費 10,443,327千円)
(5) 海洋底ダイナミクスの研究
海洋科学技術センターにおいては,地殼変動現象メカニズムを解明するために,海洋性プレート沈み込み帯メカニズム,進化,生成域メカニズム等の調査研究を行った。
(国費 140,326千円)
(6) 南海トラフにおける海溝型巨大地震災害軽減のための地震発生機構のモデル化・観測システムの高度化に関する総合研究
科学技術庁研究開発局・防災科学技術研究所・海洋科学技術センター,通商産業省工業技術院地質調査所,海上保安庁水路部,気象庁気象研究所,建設省国土地理院においては,科学技術振興調整費総合研究により,南海トラフにおける海溝型巨大地震発生を定量的に評価するため,震源域近傍での観測・調査技術の研究開発,地震発生機構のモデル化に関する研究を行った。
(国費 190,688千円)
(7) 陸域震源断層の深部すべり過程のモデル化に関する総合研究
科学技術庁研究開発局・防災科学技術研究所,建設省国土地理院・建築研究所,通商産業省工業技術院地質調査所,気象庁気象研究所においては,科学技術振興調整費総合研究により,陸域震源断層に関する観測,物質科学的分解,及び室内実験の組み合わせによる陸域の断層深部のすべり過程をモデル化するための研究を行った。
(国費 227,703千円)
(8) 地震に関する調査研究
科学技術庁防災科学技術研究所においては,次の研究を行った。
a 首都圏南部における地震活動に関する研究
東京及び周辺地域の直下型地震の調査研究に資するため,深層地殼活動観測施設(岩槻,下総,府中,江東の4か所)及びケーブル式海底地震観測施設(相模湾)により,微小地震及び地殼傾斜の観測研究を実施した。
(国費 168,197千円)
b 関東・東海地域における地殼活動に関する研究
関東・東海地域の地殼活動を一体的に把握するため,ケーブル式海底地震計を含む約100か所の観測点からなる地殼活動観測網により,微小地震及び地殼傾斜の観測研究を行うとともに,「地殼活動解析システム」により,集中的な観測データの処理解析,情報流通を行った。また,GPSによる広域地殼変動の研究を行った。
(国費 634,120千円)
c 地震発生機構に関する研究
種々の活断層を対象にボーリングを行い,内陸地震の発生機構に関する研究を進めるとともに,長野県西部の浅発地震発生域における地震活動等の観測を行った。
(国費 218,442千円)
d 地震素過程と地球内部構造の解明に関する総合的研究
地震波形データの詳細な解析や広帯域地震計等の全国的な観測等により,震源過程の解明を行うとともに,観測データに基づき,周辺プレート構造及び地殼,上部マントル構造を解明するための研究を行った。
(国費 99,311千円)
e 地震調査研究観測施設・設備の整備等
地震調査研究に必要な観測設備等の整備を行った。
(国費 85,737千円)
f 地震のデータ利用
一般の利用に供するデータ流通サービスを推進するため,全国に整備される高感度地震観測施設等から得られるデータのつくばへの集中を行うとともに,波形データ等の保管機器類を整備・運用を実施した。
(国費 935,315千円)
g 地震発生と広域地殼変動との関連に関する研究
科学技術振興調整費重点基礎研究により,群発地震活動や地殼変動等の資料を収集し,影響の規模等について研究を行った。
(国費 9,086千円)
h 強震動予測のための解析技術に関する研究
科学技術振興調整費二国間型国際共同研究により,我が国首都圏と米国アンカレッジ首都圏を対象として,強震動予測のための共同技法の研究を行った。
(国費 5,884千円)
(9) 1999年トルコ北西部の地震に関する緊急研究
科学技術庁研究開発局・防災科学技術研究所,通商産業省工業技術院地質調査所,建設省国土地理院においては,科学技術振興調査費緊急研究により,トルコ北西部の地震について,地震断層の分布と変位量分布の調査等を行った。
(国費 58,753千円)
(10) 地震予知に関する基礎的研究
文部省においては,観測研究体制の整備を図るとともに,特別観測事業等による観測研究の充実強化及び地震予知観測設備の整備を行った。
(国費 1,671,248千円)
(11) 活断層等による地震発生ポテンシャル評価の研究
平成11年度は,以下のサブテーマごとに5カ年計画を立てて調査研究を実施した。
a. 重要活断層についてのトレンチ調査等に加え,液状化・津波堆積物調査等の古地震調査を実施した。
b. 地下水等の観測を実施するとともに,データの質的向上を目指して改良・高度化に務めた。活断層周辺に設置した歪計,地震計等により,歪蓄積過程を把握した。
c. 摩擦実験により断層運動の物理・化学過程の解明と摩擦校正則の定式化に役立つデータを取得した。
d. 観測強化地域4地域の地質図幅作成を目指し,地質調査等を行った。
e. 海底地質調査等を行い,海底における活構造の分布を把握した。さらに,沿岸海域において音波探査・堆積物調査等による活断層調査を実施した。
f. 地震災害の地質要因に関し,神戸地域等の調査と成果のとりまとめを行った。
g. S波速度構造推定についての基礎実験として,基盤形状急変部における精度良い重力解析の手法を開発し,深谷断層周辺において重力調査を行った。
(国費 457,150千円)
(12) 海底地形地質構造の調査等
海上保安庁においては,沿岸海域海底活断層調査,海底活構造調査,海底地殼変動監視観測,レーザー測距観測,海底地殼活動の長期観測技術に関する研究等を実施した。
(国費 229,864千円)
(13) 港湾・海岸及び空港土木施設の地震災害防止に関する研究
運輸省港湾技術研究所においては,港湾地域における強震観測の実施ならびにこれに関する研究,港湾基礎地盤の地震時安定性に関する研究等,港湾・海岸及び空港の諸施設における地震災害の防止に関する研究を行った。
(国費 37,000千円)
(14) 地震に関する調査研究
気象庁においては,気象研究所を中心に,地震発生過程の詳細なモデリングによる東海地震発生の推定精度向上に関する研究及び,内陸部の地震空白域における地震・地殼変動に関する研究を行った。
(国費 42,903千円)
(15) 地震観測施設の整備等
気象庁においては,全国における地震観測,地殼岩石歪観測等を行うとともに観測施設の整備等を行った。また,地震に関する基盤的調査観測網のデータを収集し,防災情報等に活用するとともに,地震調査研究推進本部地震調査委員会に提供した。また,ナウキャスト地震情報(地震発生直後の即時的情報)提供の実用化調査を実施した。
[国費 2,254,619千円]
(注)
[ ]書きは4章2-2(15)に計上したものと同じである。
(16) 宇宙電波による高精度時空計測技術の研究開発
郵政省通信総合研究所においては,日本周辺でのプレート運動・地殼変動の研究を実施した。また,更なる精度の向上を目指した技術開発を行った。
(国費 111,012千円)
(17) 首都圏広域地殼変動の観測
郵政省通信総合研究所においては,VLBI(超長基線電波干渉計)のリアルタイム定常観測及びSLR(衛星レーザ測距)の観測実験を行った。
(国費 152,055千円)
(18) 地震予知研究の推進
地震予知連絡会(事務局:建設省国土地理院)においては,観測強化地域である東海・南関東地域及び8ヶ所の特定観測地域を含む全国の地震予知観測研究に関する情報交換と学術的見地での検討を行った。また,建設省国土地理院においては,同連絡会に報告された観測データ等を地震予知連絡会会報として編集した。
(国費 28,204千円)
(19) 測地的方法による地殼変動調査
建設省国土地理院においては,全国を対象とした高精度三次元測量,高度基準点測量等を定期的に実施したほか,全国に展開する電子基準点(GPS連続観測施設)で連続観測を行い,地殼変動の監視を実施した。また,観測強化地域及び特定観測地域において,高密度で短周期の地殼変動観測を実施した。
さらに,機動的な地殼変動連続観測及び重要活断層の地形学的調査等を実施した。
その他,定常観測として地磁気観測,地殼変動連続観測,潮位の連続観測及びGPS衛星の精密軌道決定を行った。
(国費 1,788,088千円)
(20) 活構造調査
建設省国土地理院においては,地震予知の評価精度を向上させるため,活構造地形の精密な位置,地形区分等の調査を行い2万5千分の1都市圏活断層図を作成した。
(国費 1,771千円)
(21) 地殼変動データベース整備
建設省国土地理院においては,測量・調査結果等についてデータベース化し,関係機関,研究者等への地震調査関連情報の提供・流通を促進した。
(国費 9,364千円)
(22) 地殼活動総合解析
建設省国土地理院においては,GPS等の地殼変動観測データ等各種データを総合解析し,地殼活動の予測分析を行い,地震調査委員会に報告した。
(国費 90,193千円)
(23) スローアースクエイクの検出に関する研究
建設省国土地理院においては,GPS連続観測データ等の地殼変動連続観測データを用いてスローアースクエイク(ぬるぬる地震)の検出に関する研究を行った。
(国費 2,024千円)
(24) 合成開口レーダの解析モデルに関する研究
建設省国土地理院においては,合成開口レーダによる地殼変動解析の高速化・高精度化に関する研究を行った。
(国費 2,423千円)
(25) 地殼活動観測データの総合解析技術の開発
建設省国土地理院及び建築研究所においては,GPS等地殼活動観測データを用いて地殼の変形のモデル化及びシミュレーション技術の開発を推進するための研究を行った。また,モデルの解析によりデータ取得条件及び観測点配置の最適化を行い,効率的な監視手法を開発するための研究を行った。
(国費 111,621千円)
2-2 震災対策一般の研究
(1) 橋梁等の耐震設計法及び施工法に関する研究
北海道開発庁北海道開発局開発土木研究所においては,次の研究を行った。
a 地震の幾何学的特性及び耐震設計法等に関する研究
地震動の特性に関する研究及び地震時における構造物基礎の安定に関する研究を行った。
(国費 13,721千円)
b 構造物の耐震性向上及び地震対策に関する研究
科学技術振興調整費重点基礎研究により,北海道において地震時における岩盤の挙動を解析し,急崖斜面の地震時挙動に関する研究を行った。また,盛土構造物の評価手法の解明,耐震対策の効果に関する研究を行った。
(国費 9,081千円)
(2) 地震総合フロンティア研究の推進
日本原子力研究所及び理化学研究所においては,流動的な研究システムを活用して,「耐震安全・防災フロンティア研究」及び「地震防災フロンティア研究」をそれぞれ推進した。
(国費 508,252千円)
(3) 震災対策に関する研究
科学技術庁防災科学技術研究所においては,次の研究を行った。
a 震災のリスク評価に関する研究
強震動の地域特性を評価し,震災のリスク評価手法を開発する研究を行った。また,全国強震ネットワークの運営を行った。
(国費 184,327千円)
b 強震観測事業の推進
強震観測事業の推進を図るため連絡会議の運営を行った。また強震動の特性を解明するため,全国の強震観測記録の収集を行い,資料として取りまとめを行った。
(国費 9,168千円)
c 大型耐震実験の推進
共同利用施設として設置した大型耐震実験施設による構造物等の耐震性評価に関する基礎的,応用的研究を行うとともに,必要な装置の更新等を行った。
(国費 121,665千円)
d 実大三次元震動破壊実験施設の整備
構造物等の耐震性向上等を目的とした実大三次元震動破壊実験施設の整備を行った。
(国費 7,991,041千円)
e 木質構造の動的耐震性に関する研究
科学技術振興調整費二国間型国際共同研究により,カナダと共同で,輸入住宅工法の耐震性に関する基礎的データを得るための実験を行った。
(国費 6,567千円)
(4) 構造物の破壊過程解明に基づく生活基盤の地震防災性向上に関する研究
科学技術庁研究開発局・防災科学技術研究所・金属材料研究所,建設省建築研究所・土木研究所,農林水産省農業工学研究所,運輸省港湾技術研究所においては,科学技術振興調整費総合研究により,構造物の大規模破壊実験に必要な測定法や高度な加振手法,既存構造物の耐震性調査法,地盤・基礎系を含めた構造物の塑性領域での挙動と破壊過程解明の研究を行った。
(国費 292,136千円)
(5) アジア・太平洋地域に適した地震・津波災害軽減の開発とその体系化に関する研究
科学技術庁研究開発局・防災科学技術研究所・理化学研究所,建設省土木研究所・建築研究所,運輸省港湾技術研究所においては,科学技術振興調整費多国間型国際共同研究により,災害軽減技術の開発研究を行うとともに,総合防災力向上のためのマスタープラン構築の研究を行った。
(国費 219,631千円)
(6) 社会経済基盤施設の安全性向上と長寿命化のための性能評価システムと設計・計画法に関する調査
科学技術庁においては,科学技術振興調整費総合研究の課題設計のため,社会経済基盤施設の事前性能予測手法と施工時・施工後の検査法の精度を検証するための課題を抽出するとともに,安全設計と耐久設計の統合の可能性を調査した。
(国費 7,977千円)
(7) 強震観測
建設省土木研究所においては,地盤内の三次元的な地震動の伝播及び地形・地盤条件の変化が地震動に与える影響の調査研究,全国の強震観測記録の収集及び解析,観測記録から地震動の伝播現象を抽出する方法に関する研究を行った。
(国費 11,829千円)
(8) 浸透水の作用を受ける盛土の耐震性評価法に関する研究
建設省土木研究所においては,浸透水の影響を受ける盛土の崩壊防止のため,遠心実験により地盤の傾斜等の盛土の耐震性への影響に関する研究を行った。
(国費 5,959千円)
(9) インテリジェント耐震構造技術に関する日米共同研究
建設省土木研究所においては,土木構造物の被災度を容易に診断する事ができるインテリジェント材料を用いた耐震構造技術の開発に関して米国と共同研究を行った。
(国費 13,389千円)
(10) 断層をまたぐ土木構造物の防災上の研究
建設省土木研究所においては,活断層の客観的認定法及び伏在断層による地表面変位に関する研究を行った。
(国費 7,850千円)
(11) 公共土木施設の耐震性水準の横断的整合に関する研究
建設省土木研究所においては,地域内の公共土木構造物の耐震性水準を合理的に設定するための手法に関する研究を行った。
(国費 6,441千円)
(12) 耐震設計の性能規定化に関する研究
建設省土木研究所においては,新しい技術の円滑な導入等を目的として,耐震設計の性能規定化に関する研究を行った。
(国費 9,475千円)
(13) 大規模地震災害等における迅速な応急復旧技術の開発
建設省土木研究所においては,大規模地震災害時に運搬架設機械の制約条件下で,速やかに交通経路を応急復旧するための技術開発に関する研究を行った。
(国費 9,548千円)
(14) 既設構造物直下地盤の液状化対策技術の開発
建設省土木研究所においては,地盤補強効果の高い液状化対策技術及び耐震補強技術に関する研究開発を行った。
(国費 18,949千円)
(15) 建築構造物の損傷制御設計法の研究
建設省建築研究所においては,建築構造性能に要求される様々な性能の劣化を予測,制御し,持続性の高い建築物の実現に資する研究を行った。
(国費 17,032千円)
(16) 仮動的実験による建築物のねじれ震動に起因する破壊過程の解明
建設省建築研究所においては,災害時に適応可能な建築物の耐震性を向上させるため,ねじれ震動を伴う建築物の地震時挙動を実験的に再現し,その破壊過程の解明を図るための研究を行った。
(国費 4,649千円)
(17) 日欧共同耐震研究
建設省建築研究所においては,欧州と国際共通基準等の将来の統合を視野におき,日欧の耐震建築基準の比較等,建築物の耐震技術に関する共同研究を行った。
(国費 7,040千円)
(18) 日米共同構造実験研究
建設省建築研究所においては,高知能建築材料を用いた知的材料・構造部材の性能を把握するための研究を日米共同で行った。
(国費 32,531千円)
(19) 免震住宅の地震時・強風時特性に関する研究
建設省建築研究所においては,科学技術振興調整費重点基礎研究により,実現象から地震時における免震住宅の有効性を確認する研究を行った。
(国費 2,945千円)
(20) 極低降伏点鋼等を用いた耐震用エネルギー吸収システムに関する研究
建設省建築研究所においては,科学技術振興調整費重点基礎研究により,地震動によって発生する木造建築物の応答エネルギーを,極低降伏点鋼等の構造用材料を用いて安定吸収するシステムを構築した。
(国費 2,889千円)
(21) 強震動の実用的数値計算法の調査・開発
建設省建築研究所においては,科学技術振興調整費重点基礎研究により,超大型並列計算機による数値シミュレーションを地震外力の評価に用いるための研究を行った。
(国費 1,192千円)
(22) 消防活動支援情報システムに関する研究
消防庁消防研究所においては,現場における無線通信を確保し,災害情報をリアルタイムに消防本部等へ伝達するとともに,収集された災害情報と消防水利等の防災資源を含む地理情報等を統合することが可能なシステムの開発を行った。
(国費 22,816千円)
3 風水害対策
(1) 北海道における風水害対策に関する研究
北海道開発庁北海道開発局開発土木研究所においては,次の研究を行った。
a 河川災害防除に関する研究
洪水の制御・予測・堤防強化といったハード,ソフト両面での研究を進めるとともに,洪水発生時の危機管理システムの研究を行った。また,河川を利用する側から見た川の安全性向上に関する研究を行った。
(国費 18,300千円)
b 斜面災害防止に関する研究
積雪寒冷地における,光ファイバーを用いた風雪や凍上凍結に耐え得る斜面変状監視システムの確立,力学的観点による急崖斜面の解析・検討及びハザードマップの作成等に関する研究を行った。
(国費 53,049千円)
c 農地保全に関する研究
泥炭地域における農地の沈下量を推定・把握するとともに,沈下量に影響する泥炭層の性状との関連を究明し,地盤沈下対策に資する研究を行った。
(国費 4,576千円)
(2) 降雨災害防止に関する研究
科学技術庁防災科学技術研究所においては,大型降雨実験施設及び同施設に必要な計測器の整備並びに同施設を用いた豪雨による斜面崩壊に関する実験的研究を行った。
(国費 39,139千円)
(3) 局地的なシアーラインの発現・強化とこれに伴うシビアウェザーの発生過程に関する基礎的研究
気象庁気象研究所においては,科学技術振興調整費重点基礎研究制度により,「局所的なシアーラインの発現・強化とこれに伴うシビアウェザーの発生過程に関する基礎的研究」を引き続き行った。
(国費 10,333千円)
(4) 非均衡状態の海浜過程に関する研究
建設省土木研究所においては,海岸浸食に対する海岸保全に関して,大型2次元実験により,海浜安定化に関する研究を行った。
(国費 9,493千円)
4 火山災害対策
(1) 火山噴火の予知及び防災に関する研究
科学技術庁防災科学技術研究所においては,火山噴火予知の研究,火山噴火調査研究等を推進するため,三宅島等の火山活動に関する観測研究を行うとともに,三宅島の火山活動観測施設の整備を行った。また,火山専用空中赤外映像装置による観測を実施するとともに,火山活動の総合評価等のためのシステム開発の研究を行った。
(国費 154,763千円)
(2) 雲仙火山:科学掘削による噴火機構とマグマ活動解明のための国際共同研究
科学技術庁研究開発局・防災科学技術研究所・海洋科学技術センター,通商産業省工業技術院地質調査所,建設省国土地理院,気象庁気象研究所においては,科学技術振興調整費総合研究により,山麓での山体掘削等による噴火活動史の解明,マグマ供給や噴火のモデルの構築等,研究を行った。
(国費 192,000千円)
(3) 火山噴火予知に関する基礎的研究
文部省においては,関係国立大学における火山噴火予知に関する基礎的研究を推進するため,観測研究体制の整備を図るとともに,特定火山集中総合観測及び火山噴火予知観測設備の整備を行った。
(国費 265,790千円)
(注)
予算額のうち47,763千円は3章2-1(10)の再掲である。
(4) 火山噴火予知に関する研究
通産省工業技術院地質調査所においては,火口噴火予知研究の推進のため,活動的火山の地質学的調査および観測研究を行った。
(国費 18,528千円)
(5) 海底火山噴火予知の推進
海上保安庁においては,海底火山活動海域の調査及び磁気測量を行った。また,人工衛星から取得したデータの解析技術の開発を引き続き行い,火山噴火予知技術の向上を図った。さらに,海域における火山噴火の予知に関する的確な情報収集と提供を図るため,海域火山基礎情報の整備を行った。
(国費 11,336千円)
(6) 火山噴火予知に関する研究
気象庁においては,気象研究所を中心に火山に関する研究を行うとともに,火山噴火予知連絡会を通じて,関係機関と緊密な連携を図り,火山噴火予知に関する研究を行った。
(7) 火山観測施設の整備等
気象庁においては,火山常時観測及び火山機動観測等を行うとともに,桜島,安達太良山の火山観測施設の改良更新を行ったほか,三宅島の火山観測施設の整備等を進めた。
[国費 515,306千円]
(注)
予算額については4章4-2(2)に計上したものと同じである。
(8) 火山活動と火山周辺の地殼活動に関する基礎的研究
気象庁気象研究所においては,科学技術振興調整費重点基礎研究により,噴火の発生機構や火山活動の推移を予測する「火山活動と火山周辺の地殼活動に関する基礎的研究」を引き続き行った。
(国費 8,515千円)
(9) 火山噴火予知に関する研究
建設省国土地理院においては,火山噴火予知の基礎資料とするため,火山変動測量及び機動連続観測を行った。
(国費 10,968千円)
5 雪害対策
(1) 北海道における雪害対策に関する研究
北海道開発庁北海道開発局開発土木研究所においては,冬期道路交通の安全確保を目的とした安全走行支援システムの開発,及び冬期道路維持管理の効率化・高度化のためのインターネット技術を活用した都市圏道路情報システムの開発に関する研究を行った。
(国費 23,790千円)
(2) 雪害対策に関する研究
科学技術庁防災科学技術研究所長岡雪氷防災実験研究所及び新庄雪氷防災研究支所においては,雪害防止技術に関する次の研究を行った。
a 雪氷とその変動に伴う災害防止技術の高度化に関する研究
降積雪とその量的及び質的変動がもたらす災害を防止するために,山地積雪情報及び雪崩危険度評価に関する研究を行った。
(国費 20,033千円)
b 雪害研究の推進
雪崩災害に関する基礎的資料収集・整理を行うとともに,大型野外実験施設による雪崩に関する研究等を行った。また,様々な雪氷災害のプロセスを再現できる雪氷防災実験棟の設備の整備を行った。
(国費172,563千円)
(3) 富山県域の雪の特性解明と利雪に関する高度利用研究
科学技術振興調整費により,富山県域における雪の地域特性の総合的解明,利雪技術開発に関する基礎研究を行った。
(国費 79,996千円)
(4) 雪崩に関する研究等
文部省においては,国立大学の研究所等で,雪崩に関する基礎的研究を行った。
(国費 9,147千円)
6 火災対策
(1) 日米共同防火実験研究
建設省建築研究所においては,住宅個々の防火対策や都市的な防災対策,住宅団地等の防災計画に資する研究を日米共同で行った。
(国費 2,931千円)
(2) 建物火災による焼死者の実態と建材の燃焼毒性の影響の把握
建設省建築研究所においては,科学技術振興調整費重点基礎研究により,建材の燃焼毒性の焼死に及ぼす影響について,実態に則した研究を行った。
(国費 3,167千円)
(3) 連続繊維補強コンクリートの防耐火性能に関する研究
建設省建築研究所においては,科学技術振興調整費重点基礎研究により,連続繊維補強材の各種高温力学特性の評価方法と許容温度の提案,及び耐火設計手法に関する研究を行った。
(国費 3,854千円)
(4) 火災に関する一般的研究
消防庁及び消防研究所においては,火災の予防,警防に関し次の研究を行った。
a 中高層建物における延焼性状に関する研究
中高層共同住宅火災の延焼性状を解明し,延焼拡大防止上,避難安全上さらには消防活動上有効な対策を確立するための研究を行った。
(国費 18,875千円)
b プラスチック材の難燃化及び防炎材料の評価法に関する研究
環境への影響が少ないノンハロゲン難燃材を開発し,その燃焼性状及び毒性ガスを測定するとともに,総合的な評価法を確立するための研究を行った。
(国費 23,226千円)
c 住宅火災総合監視システムの開発
住宅の居住空間に自主的に設置しやすく,かつ機能の維持管理が容易な住宅用火災総合監視システムの開発を行った。
(国費 17,984千円)
d 放出されたガス系消火剤の流動と混合に関する研究
防護区画内に放出されたガス系消火剤の流動と混合過程についての模型実験と数値シミュレーションの結果を比較検討し,ガス系消火設備の設計の合理的評価が可能なシミュレーションコードの開発を行った。
(国費 22,343千円)
e 地下施設における消防活動のための排煙技術に関する研究
地下施設における消火・救急活動が視界不良等により阻害されないよう,消防活動を支援するための排煙技術に関する研究を行った。
(国費 22,136千円)
f 市街地火災時の空中消火による延焼阻止効果に関する研究
空中消火について,大震火災時の市街地火災に対する延焼阻止効果に関する研究を行った。
(国費 36,739千円)
g ウォーターミストによる電気火災の消火に関する研究
消火に適するウォーターミストの発生実験,実大規模の空間における消火実験を実施して,ウォーターミストによる電気火災の消火に関する研究を行った。
(国費 71,408千円)
h 消防用設備等に係る環境・省エネルギー対策に関する調査検討
今後の消防用設備等に係る環境・省エネルギー対策の推進を図るため,技術的・制度的な観点から総合的な調査検討を行った。
(国費 135,548千円)
i 防火対象物の火災危険性に応じた総合防火安全設計法に関する研究
技術基準の性能規定化が求められている状況に鑑み,防火対象物の火災危険性に応じて消防用設備等,防火管理,建築構造等を総合的に勘案した防火安全設計手法に関する研究を行った。
(国費 14,832千円)
j 深層化した防火対象物の地下階に係る防火安全対策のあり方に関する調査研究
地下階が多層化することによる火災危険性の増大への対策のあり方について調査研究を行った。
(国費 5,007千円)
k 燃焼の抑制機構に関する研究
フッ化炭化水素化合物は,従来のハロン消火剤に比べ消火性能が劣ることから,新たな消火剤を開発するため,各種消火剤の燃焼抑制機構に関する研究を行った。
(国費 4,305千円)
l 大震火災時における市街地の延焼性状に関する研究
火災熱気流の流動性状及び火の粉の拡散性状を検討し,大震火災時における市街地の延焼性状に関する研究を行った。
(国費 4,504千円)
7 危険物災害対策
(1) 爆発防止等に関する研究
通商産業省においては,次の研究を行った。
a 高エネルギー物質の爆発反応機構と安全性評価に関する研究
工業技術院物質工学工業技術研究所においては,起爆過程の反応機構をレーザ等による分光学的手法等で解明するとともに,実規模で起こる爆発現象を予測する手法の開発研究を行った。
(国費 25,200千円)
b 液化石油ガス供給事業安全管理技術開発
液化石油ガス設備の腐食等による事故を防止するため,供給・消費設備の維持管理技術に関する調査研究等を行った。
(国費 190,668千円)
(2) 危険物災害の防止に関する研究
消防庁においては,危険物災害の防止に関し次の研究を行った。
a 危険物の判定試験法に関する研究
消防研究所において,引火性物質,酸化性物質,自己反応性物質等危険物の危険性に関するより簡便で合理的な試験方法を開発するための研究を行った。
(国費 20,011千円)
b 危険物災害等情報支援システムの作成
著しく消火が困難な物質や人体に有害な物質の性状及び消防活動上必要な情報のうち国民に有益な情報を公開する仕組みを整備するとともに,他省庁との情報交換を進めた。
(国費 38,275千円)
8 原子力災害対策
(1) 原子力の安全のための研究
[1]原子力施設等安全研究,[2]環境放射能安全研究,[3]放射性廃棄物安全研究の3分野について,それぞれ,日本原子力研究所,核燃料サイクル開発機構,放射線医学総合研究所等を中心に研究を実施した。
(国費 24,762,821千円)
(2) 原子力施設における火災安全に関する研究
消防庁消防研究所においては,原子力施設において使用されるアルカリ金属類について,反応暴走の起こりうる条件,完全消火の条件等火災安全に関する研究を行った。
(国費 17,952千円)
9 その他の災害対策
(1) 地球温暖化に関する研究
科学技術庁防災科学技術研究所,環境庁国立環境研究所,農林水産省農業環境技術研究所,通商産業省工業技術院資源環境技術総合研究所・電子技術総合研究所,気象庁観測部・気象研究所及び郵政省通信総合研究所においては,海洋開発及び地球科学技術調査研究促進費により,「地球温暖化の原因物質の全球的挙動とその影響等に関する観測研究」,「雲が地球温暖化に及ぼす影響解明に関する観測研究」及び「地球温暖化の原因物質,雲の相互作用及びそれらが地球温暖化に及ぼす影響解明に関する研究」を行った。
(国費 366,680千円)
(2) 成層圏の変動に関する研究
環境庁国立環境研究所,気象庁気象研究所においては,科学技術振興調整費総合研究により実施している「成層圏の変動とその気候に及ぼす影響に関する国際共同研究」の一環として,成層圏の変動の実態把握とその変動機構及び気候への影響に関する研究を行った。
(国費 14,048千円)
(3) 熱帯林変動に関する研究
科学技術庁防災科学技術研究所,農林水産省国際農林水産業研究センター・農業環境技術研究所・森林総合研究所,通商産業省工業技術院資源環境技術総合研究所,気象庁気象研究所及び建設省土木研究所においては,海洋開発及び地球科学技術調査研究促進費により,「熱帯林の変動とその影響等に関する観測研究」を行った。
(国費 96,278千円)
(4) 海底ケーブルを用いた地震等多目的地球環境モニターネットワークの開発に関する研究
科学技術庁研究開発局・海洋科学技術センター,通商産業省工業技術院地質調査所・電子技術総合研究所,海上保安庁水路部,気象庁気象研究所及び郵政省通信総合研究所においては,科学技術振興調整費総合研究により,観測システムネットワークの開発に関する研究,海底ケーブル海中接続及び接続操作技術に関する研究,海底ケーブルシステム運用・管理技術及びデータ管理手法の高度化に関する研究を行った。
(国費 235,000千円)
(5) 地球科学技術に関連した防災科学技術
科学技術庁防災科学技術研究所においては,次の研究を行った。
a 全球水文過程における災害予測に関する研究
全球水文過程変化と災害ポテンシャルを予測するための数値シミュレーションモデルの開発等の研究を行った。また,数値モデルの高度化に必要な熱帯域,雪氷域,半乾燥域における観測研究及び地表面乱流風洞等を用いた実験研究を行った。さらに降水量変動,海面変動の災害への影響評価に関する研究を行った。
(国費 1,474,949千円)
b 衛星搭載レーダ等による災害・地球環境変動の観測研究
地球規模の環境変動を広域的に把握するシステムの構築に資するため,マイクロ波によるリモートセンシング技術の研究を行った。
(国費 28,589千円)
(6) 斜面災害の発生機構に関する研究
科学技術庁防災科学技術研究所においては,大規模崩壊の発生場及び崩壊土砂流動に関する研究を行うとともに,ハザードマップの高度化に関する研究を行った。
(国費 46,961千円)
(7) 沿岸防災に関する研究
科学技術庁防災科学技術研究所においては,波浪特性・風の特性に関する観測研究,津波の発生伝播の研究,沿岸異常波浪の特性と予測手法に関する研究を行った。
(8) 津波災害軽減のためのレーザ式津波検知システムの基礎研究
科学技術庁防災科学技術研究所においては,科学技術振興調整費重点基礎研究により,レーザー津波計の改良とケーブル式津波検知システムの最適配置に関する研究を実施した。
(国費 9,654千円)
(9) 漁船の転覆事故防止に関する研究
農林水産省においては,漁船の省エネルギーのための船型改良に伴う転覆事故防止のための研究を行った。
(国費 15,077千円)
(10) 気候変動に関する研究
水産庁北海道区水産研究所,東北区水産研究所,中央水産研究所,遠洋水産研究所,気象庁気候・海洋気象部,気象庁気象研究所においては,科学技術振興調整費により「北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際共同研究」を行った。
(11) 鉱山保安技術対策に関する研究
通商産業省においては,次の研究を行った。
a 鉱山保安技術対策
金属鉱業事業団において,高効率廃水処理技術,坑廃水最適中和処理システム技術の鉱害防止技術に関する調査研究を行った。
(国費 50,088千円)
b 鉱山保安技術に関する研究
工業技術院資源環境技術総合研究所においては,傾斜坑道における坑内火災時の熱気流の挙動と各種消火法の現場適応性に関する研究を行った。
(国費 10,197千円)
(12) 砂浜海岸の諸機能の評価とコースト・マネジメント手法に関する研究
運輸省港湾技術研究所においては,砂浜の防災,海水浄化機能,親水性の機能を総合的にマネジメントするための技術およびその最適化手法についての研究を行った。
(国費 10,841千円)
(13) CATV等を利用した住宅等の情報化実証実験
郵政省においては,通信・放送機構に出資し,防災対応マルチメディアモデル住宅を整備し,防災情報等様々な情報が入手可能なシステムの研究開発を実施した。
(国費 71,000千円)
(14) 衛星利用の高度化・普及促進のための調査研究
郵政省においては,大規模な災害等の発生時に,迅速な対策を可能とするための衛星通信ネットワークの活用について検討した。
(国費 9,433千円)
(15) 労働災害防止に関する研究
労働省産業安全研究所においては,次の基礎的,応用的研究を行った。
(国費 683,923千円)
a 順応型アクチュエータによる協調制御に関する研究
人間と協調的作業を行うロボットに,接触時に安全が保障できる人体への衝撃を軽減する装置を開発し,その特性について検討した。
b マルチサイト疲労損傷部材の寿命予測手法の開発
繰り返し荷重を受けるボルト接合部などにおいて,ボルトの締め付け力のバラツキ,締め付け力が応力分布に及ぼす影響を求めた。
c つりチェーンの疲労破壊特性と損傷検出技術に関する研究
つりチェーンの破損による労働災害の防止を目的として,つりチェーンの応力解析を実施し,疲労強度についての知見を得た。
d 人体と物体の識別装置の開発
製品の搬入・搬出用の開口部において,人体が進入したときに直ちに機械を停止するためのセンサについて検討を加え,光線式安全装置を開発した。
e 建設用タワークレーンの振動性状に関する研究
建設中の建物に結合されて使用されるタワークレーンの耐震性能に関して,建物の振動特性が及ぼす影響について検討した。
f 掘削溝に設置したエア封入袋体に関する土止め効果の遠心模型実験による検証
掘削中の溝に対してエア封入袋体により地盤崩壊を防止する性能について土止め効果が大であることを確認した。
g すべりの時間経過パターンを考慮したすべり評価法に関する基礎的な研究
歩行中の転倒・転落災害のもととなるすべりの発生について,すべり発生後にバランスを失って倒れる状態を再現する実験を実施した。
h ガス爆発駆動式火炎抑止装置の開発
化学設備におけるガス爆発を抑制するため,消火剤高速噴霧式の火災抑止装置の開発を行った。
i 石松子粉じん雲中の火炎伝ぱ機構
粉じん爆発災害の防止を目的として,可燃性粒子群中における火炎伝ぱ機構について,粒子間の火炎伝ぱのモデル化を行った。
j 結合・減結合回路の任意電気ノイズ波形印加への適用
電磁ノイズによる電子機器の誤差動防止を目的とした研究の一環として,電磁環境に即した任意の電磁ノイズを印加可能な装置の開発を行った。
k 視覚情報を用いた作業空間内の危険領域の抽出
人間や機械などの移動する物体が危険領域内に侵入していないか実時間で把握するための装置として,双曲面鏡とCCDカメラを用いたシステムを開発した。
l 建設作業員への質問紙調査による墜落災害の背景分析
墜落災害防止に関連したアンケート調査により,安全帯の不使用に関しては,日常的不使用,疲れ・あせり,作業能率の主要な人的要因が抽出された。
m 掘削機との接触災害の防止対策
掘削機と人間の接触災害の防止を目的として,後方確認を補助するためTVカメラの画像から接近する像を対象に人間を判別する方法について検討した。
(16) 仮設構造物の耐風安定性に関する基礎研究
労働省産業安全研究所では,科学技術振興調査重点基礎研究により仮設構造物の倒壊防止・崩壊防止技術を確立するため,耐風安定性に関する基礎研究を行っている。
(国費 6,034千円)
(17) 化学物質安全特性予測基盤の確立に関する研究
労働省産業安全研究所では,科学技術振興調整費知的基盤整備により化学物質安全特性予測基盤の確立に関する研究において,爆発燃焼反応挙動の解明を実施した。
(国費 9,073千円)
(18) 先端技術を活用した国土管理技術の開発
建設省土木研究所,建築研究所及び国土地理院においては,GISなどの先端技術を活用した広域的かつ定常的な監視・管理を実現する技術の高度化のための研究開発を行った。
(国費 141,705千円)
(19) 災害等に対応した人工衛星利用技術に関する研究
建設省土木研究所,建築研究所及び国土地理院においては,人工衛星技術を活用した災害情報等の収集,リモートセンシングの実用化に関する研究を行った。
(国費 203,973千円)
(20) まちづくりにおける防災評価・対策技術の開発
建設省建築研究所及び土木研究所においては,耐火性能を有する建築物等の整備,地区防災性能向上のための効果的対策技術の研究開発を行った。
(国費 167,012千円)
(21) 高度情報処理技術等を活用した都市・建築防災関連技術の開発
建設省建築研究所においては,GISデータベース等の高度情報処理技術等を活用した被災情報把握・提供・活用システムの開発を行った。
(国費 3,956千円)
第4章 災害予防
1 災害一般共通事項
1-1 教育訓練
(1) 警察庁における教育訓練
警察庁においては,次のとおり教育訓練を行った。
(事業費 167,552千円 国費 163,000千円)
a 都道府県警察の幹部に対して,災害応急対策等についての教育訓練を行った。また,各管区警察局単位で広域緊急援助隊の広域派遣訓練,救出救助訓練等を実施した。都道府県警察においては,関係機関と連携した災害警備訓練を行った。
b レンジャー訓練等災害救助のための特殊技術訓練を行った。
c 災害発生時における迅速な映像情報等の確保のため,ヘリコプターテレビ等の各種情報通信システムを活用した実践的な災害警備通信訓練を行った。
(2) 防衛庁における教育訓練
防衛庁においては,9月1日の防災の日に訓練防衛庁災害対策本部を設置し,自衛隊各部隊等との間で,要請された災害派遣実施のための調整等を伝達する訓練等を実施した。また,自衛隊の部隊等は,各地方公共団体の実施する防災訓練へ積極的に参加し,自衛隊の集結地の確保等について調整を行い,迅速かつ適切な災害派遣の実効性の確保を図った。
(3) 法務省における教育訓練
法務省においては,災害等非常事態における法務省関係機関相互の情報連絡手段を確保するため,「法務省緊急連絡体制網」通信訓練を行った。
(国費 27,527千円)
(4) 防災・ボランティアハンドブックの作成
防災知識,避難方法及び震災発生時のボランティアの活動方法等について啓発するため,全国立大学等の学生にハンドブックを配布した。
(国費 22,064千円)
(5) 安全教育の充実
文部省においては,学校における安全教育の充実を図るため小学校1,2,3年生用防災教育教材の作成・配布等を行った。
(国費 68,267千円)
(6) 日本赤十字社の救護員養成事業に対する補助
厚生省においては,日本赤十字社の非常災害に係る救護班要員等に対する研修に要する経費について補助を行った。
(事業費 43,442千円 国費 15,114千円)
(7) 都道府県の災害救助対策事業に対する補助
厚生省においては,都道府県が行う市町村災害救助法担当職員に対する研修等の災害救助対策事業に要する経費について補助を行った。
(事務費 22,082千円 国費 11,041千円)
(8) 海上保安庁における教育訓練等
海上保安庁においては,巡視船艇,航空機等による各種災害対策訓練を実施したほか,機動防除隊,特殊救難隊等を対象とした高度な防災技術・救難技術の訓練・研修を行った。また,海難防止思想の普及・高揚等を図るため,海難防止講習会等を開催したほか,タンカー等危険物積載船舶の乗組員,危険物荷役事業者等を対象に訪船指導,タンカーバースの点検等を行うとともに,カーフェリー等旅客船の事故対策訓練を実施し,運航関係者に対して事故時の措置等を指導した。
(国費 13,896千円)
(9) 気象庁における教育訓練
気象庁においては,各地で防災気象講演会を主催し,気象等に関する知識の普及及び気象予報,警報等の利用方法等の周知を図った。また,防災機関の担当者を対象に,予報,警報その他の情報の伝達等に関する説明会を適宜開催した。一方,気象大学校大学部及び研修部で,それぞれ気象業務遂行に必要な知識及び技術の教育を行い,気象庁職員の資質の向上を図った。
(国費 140,644千円)
(10) 郵政省における非常通信訓練の指導
郵政省においては,非常通信協議会に対し非常通信体制の整備について指導を行うほか,無線局の免許人に対しても非常通信の訓練の実施及び通信施設の総点検について指導を行った。
(国費 21,477千円)
(11) 日本放送協会における教育訓練等
日本放送協会(以下「NHK」という。)においては,大規模災害等における放送確保等のため,広域応援体制も織り込んだ総合訓練を実施するとともに,各放送局においては,個別訓練等を実施した。さらに,「防災週間」を中心に,防災知識の普及に資する放送を行った。
[公団等支出額 25,537千円]
(12) 建設省建設大学校における教育訓練
建設大学校においては,建設行政を担当する国,地方公共団体,公団等の職員に対し,各研修コースにおいて,防災及び災害復旧事業に関する研修を実施した。
(13) 消防庁における教育訓練
a 消防庁消防大学校における教育訓練
都道府県の消防の事務に従事する職員及び市町村の消防職団員に対し災害の防止や応急対策に関する高度の教育訓練を行った。また,航空消防防災講習会及び緊急消防援助講習会を実施するとともに,地方公共団体の防災担当者に対し防災に関する実務講習を行った。
(国費 139,886千円)
b 防災訓練の実施の推進
地方公共団体が,総合防災訓練や広域応援訓練,参集訓練,情報伝達訓練などを実施するよう要請・助言等を行った。
1-2 防災施設設備の整備
(1) 災害警備活動用資機材の整備
警察庁においては,都道府県警察の災害警備活動に必要なヘリコプター等の整備を行った。
(事業費 3,913,134千円 国費 3,902,706千円)
(2) 警察情報通信システムの整備
警察庁においては,災害発生時に効果的な災害警備活動を行うための通信手段の確保に資する衛星携帯電話端末の整備を行った。
(国費 42,151千円)
(3) 防災情報システムの整備
北海道開発庁北海道開発局においては,情報伝達を行う防災情報システムの整備及び防災情報データベースを構築した。
(国費 11,956千円)
(4) 中央防災無線網の整備
国土庁においては,首都直下型地震に備えた衛星地球局の配備,固定通信系のデジタル化整備,移動通信系の高度化更新等の調査研究を行った。
(国費 2,137,101千円)
(5) 貴重な文化財の保存機能の強化(埋蔵文化財センターの建設)
文化庁においては,防災機能に配慮した施設を前提に,拠点施設を整備するための補助を行った。
(事業費 1,399,431千円 国費 662,700千円)
(6) 日本赤十字社への補助金等
a 日本赤十字社への災害救護活動用通信指令車輛整備費補助
厚生省においては,日本赤十字社に対し災害救護活動用通信指令車輛を整備するために補助を行った。
(事業費 64,113千円 国費 31,500千円)
b 災害救助物資保管倉庫の設置等
日本赤十字社においては,災害救助物資保管倉庫,救急車等の配備を行ったほか,被災者配布用物資を購入した。
(7) 災害拠点病院の整備
厚生省においては,災害時の患者受入機能(ヘリポート等),水・医薬品・医療材料の備蓄機能等を備え,耐震性能が強化された災害拠点病院の整備について補助を行った。
(事業費 3,554,760千円 国費 1,744,395千円)
(8) 広域災害・救急医療情報システムの整備
厚生省においては,災害時において医療機関の稼働状況,受入れ機能等災害医療にかかる総合的な情報収集を行うため,厚生省,消防本部,病院等とのネットワーク化を図るための整備について補助を行った。
(事業費 6,737,209千円 国費 2,245,719千円)
(9) 緊急時の農業水利施設の活用
農林水産省においては,緊急時に消防用水,雑用水利用を容易にするための防火水槽等の施設整備を行った。また,消防車の進入スペースの確保等の水路周辺の整備を行った。
(事業費 1,020,000千円 国費 510,000千円)
(10) 漁港漁村の防災対策
農林水産省においては,漁港施設の耐震性の確保等災害に強い漁港漁村づくり事業を行うとともに,災害時の救援活動等の拠点となる漁港において防災拠点漁港整備事業を行った。
(事業費 39,497,000千円 国費 23,725,000千円)
(11) 農山村の防災機能強化の促進
農林水産省においては,農村総合整備事業(緊急防災型)等により,緊急車両の通行や避難路の確保等のための農道・農業集落道等の整備を行った。
(事業費 6,270,000千円 国費 3,135,000千円)
(12) 巡視船艇の整備等
海上保安庁においては,次のとおり巡視船艇等の整備を行った。
a 巡視船艇・航空機等の整備
継続分も含め,ヘリコプター1機搭載型巡視船,大型巡視船等の整備を行った。
b 通信施設の整備
老朽化した陸上通信回線の抜本的な見直しを行い,大容量高速データ通信に対応でき,耐震性に強い高度情報通信網の整備を実施した。
c 電子海図システムの整備
航海の安全に必要な情報を表示できる電子装置に必要な航海用電子海図を作製するためのシステムの整備を引き続き行い,航海用電子海図を刊行した。
d 航路標識の整備
海難を未然に防止するため,灯台の設置等の航路標識の整備について,24件の新設整備及び794件の改良改修を行った。
(国費 68,145,294千円)
(13) 海上防災体制の整備
海上保安庁においては,防災資機材の整備,機動防除隊の充実強化,及び巡視船艇,航空機等の常時出動体制の確保等を図った。また,船舶所有者,油保管施設設置者等に防災資機材を備えさせる等海上防災体制の整備に努めた。さらに,海上災害防止センターの行う防災に関する調査研究等の各種事業に対し指導等を行った。
(国費 101,110千円)
(14) 気象観測施設の整備等
気象庁においては,主に次の整備を行った。
(国費 22,066,385千円)
a 台風・集中豪雨雪監視体制の整備
(a) 静止気象衛星業務の整備
静止気象衛星5号の運用等を行うとともに,静止気象衛星5号の後継機である運輸多目的衛星新1号(平成14年度打上げ予定)の製作に着手した。
(b) 地上気象観測施設・地域気象観測施設・気象レーダー観測施設の整備
地上気象観測の精度向上を図るため地上気象観測装置24台の更新を行った。また,地域気象観測システム(アメダス)の観測精度の向上を図るため,積雪深計の更新を行ったほか,富士山レーダーの代替として長野県車山及び静岡県牧之原に気象レーダーを整備した。
(c) 気象資料伝送網(福岡Lアデス)の更新整備
防災情報の高度化等のために福岡管区気象台管内に気象資料伝送網(福岡Lアデス)を更新・整備した。
(d) 緊急防災ネットワークの整備
地震情報,津波予報及び気象警報等の伝達の迅速・確実化を図ると共に,各種防災情報の提供機能を強化した「緊急防災情報ネットワーク」を整備した。
(e) 局地的気象監視システムの整備
集中豪雨雪等の局地的現象をいち早く捉えるために,全国にウインドプロファイラ(電波を用いて,観測点上空の風向風速を測定する装置)を設置し,高層風観測を自動的に行い,観測データを気象庁に伝送するシステムの整備を開始した。
b 航空気象業務の整備
空港気象ドップラーレーダー(新千歳)の整備を開始した。空港における新たな気象観測システムの導入(東京国際ほか10空港),静止気象衛星資料受信装置の更新(大阪国際ほか3空港)及び気象資料伝送網の更新(福岡ほか16空港)等を行った。また,航空路における火山灰の拡散予測データを航空局の洋上可変経路発生システムへ提供するため,航空路火山灰監視装置の機能充実を図った。
c 海洋気象業務の整備
沿岸波浪観測装置(鹿島)及び検潮所の遠隔自記検潮装置を更新した(日向白浜,鹿児島)。また,海難事故等で流出した重油等に関する海上浮遊物移動拡散予測業務を開始した。
(15) 無線局における災害対策
郵政省においては,防災関係の無線局の免許等に際し,災害に対する保安対策,地域防災関係機関等との連携等を行うよう指導した。
(16) 電気通信網の確保
a 東日本電信電話株式会社,西日本電信電話株式会社
安定した電気通信サービスを提供するため,次の整備を行った。
[公団等支出額 21,800,000千円]
(a) 都市部におけるとう道の建設,屋外設備の耐震対策等を実施した。
(b) 孤立防止用衛星通信装置及び移動電源車の配備を実施した。
b NTTドコモグループ
安定した電気通信サービスを提供するため,次の整備を行った。
[公団等支出額 11,087,000千円]
(a) 通信網の信頼性向上対策として,伝送路の多ルート化等を実施した。
(b) 早期復旧対策として,移動基地局車及び移動電源車の配備等を実施した。
c その他の第一種電気通信事業者
伝送路の多ルート化,設備の二重化及び非常用電源等の各種非常災害対策機器の配備等を実施した。
(17) NHKにおける非常用電源設備等の整備
NHKにおいては,放送局の非常用電源設備等の整備を行った。
[公団等支出額 10,557千円]
(18) 河川・道路管理用無線通信の整備
建設省においては,次の無線通信設備の整備を行った。
a 多重無線通信設備
本省,地方建設局,事務所及び出張所間を連絡する多重無線回線のディジタル化整備及び通信容量の増強を引き続き行った。
b 移動無線通信設備
複信方式による通話,データや写真の伝送が可能な建設省移動通信システム(K-COSMOS)の整備を引き続き行った。なお,ヘリコプター画像固定受信設備は,東北,四国及び九州地方建設局で整備を行った。
c 衛星通信設備
災害画像の迅速な収集配信を行うため,衛星通信車2局及び衛星小型画像伝送装置(Ku-SAT)46局の整備を行った。
(19) 宅地防災工事資金の融資
住宅金融公庫においては,宅地造成等規制法,急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律及び建築基準法による勧告又は命令を受けて,擁壁又は排水施設の設置等を行う宅地防災工事に対して必要な融資を行った。
[融資実行額 88,300千円]
(20) 地域衛星通信ネットワーク整備構想の推進
自治省及び消防庁においては,地域情報通信基盤整備事業等を活用して,地方公共団体における衛星通信地球局の整備を進めた。
(21) 緊急防災基盤整備事業の推進
自治省及び消防庁においては,大規模な地震等の発生時に住民の安全が確保できるよう緊急に防災機能の向上を図るため以下の事業を推進した。
a 公共施設等の耐震改修
避難地や災害対策拠点等となる公共・公用施設,不特定多数の者が利用する公共施設等について耐震性の強化を図った。
b 防災基盤の整備
防災拠点,ヘリポート,防災情報通信施設等,地域防災計画に基づき整備すべき防災基盤の整備を推進した。
(22) 防災まちづくり事業の推進
自治省及び消防庁においては,防災まちづくり事業として,地方公共団体が行う防災センター,コミュニティ消防センター,防災無線施設等の消防防災施設,避難路,避難地等の防災基盤及び閉塞区域情報システム等震災対策に有効な施設・設備の整備を推進した。
(23) 消防防災無線通信施設の整備
消防庁においては,次のとおり,消防防災無線通信施設の整備を推進した。
a 国・都道府県・市町村相互間を結ぶ消防防災無線の強化充実
国・都道府県・市町村相互間における情報の収集伝達の確実化及び迅速化を推進するため,全国的な消防防災通信ネットワークの整備等機能の高度化に努めた。
b 市町村防災行政無線の整備促進
同報系無線,移動系無線,地域防災無線など,市町村防災行政無線網整備を国庫補助金及び単独事業に対する支援により推進した。
(事業費 6,238,532千円 国費 1,987,291千円)
(24) 画像伝送システムの整備
消防庁においては,高所監視カメラやヘリコプターテレビ電送システムからの映像を消防本部においてリアルタイムで把握するとともに,その映像情報を国,都道府県及び他の消防本部等へ伝送するための施設整備を推進した。また,山間部等の災害でもリアルタイムでの映像情報を送信できる可搬型画像伝送システムの導入を推進した。
(事業費 920,810千円 国費 321,359千円)
(25) コミュニティ防災資機材
消防庁においては,地域の防災力を向上させるため,市町村が行う315組織に対するコミュニティ防災資機材等整備事業について補助を行った。
(事業費 305,895千円 国費 101,965千円)
(26) ヘリコプター,救急用ヘリコプター離着陸場及びヘリコプターテレビ電送システムの整備
消防庁においては,ヘリコプター,救急用ヘリコプター離着陸場及びヘリコプターテレビ電送システムの整備について,地方公共団体に対し補助を行った。
(事業費 826,837千円 国費 284,272千円)
(27) 救助・救急施設設備の整備
消防庁においては,災害の複雑多様化に対応して救助体制の整備・拡充を図るため,救助工作車,救助資機材の整備について,地方公共団体に対し補助を行った。
また,救急業務の高度化を推進し,傷病者の救命効果をより一層向上させるため,救急隊員が高度な応急処置等を行うために必要となる高規格救急自動車及び高度救命処置用資器材の整備について,地方公共団体に対し補助を行った。
(事業費 6,391,143千円 国費 2,130,381千円)
(28) 緊急消防援助隊関係資機材の整備
消防庁においては,全国の消防機関相互の援助体制として創設された緊急消防援助隊が使用する救助工作車,災害応急対策救急自動車等の車両及びファイバースコープ等の高度救助用資機材等の整備について,地方公共団体に対して補助を行った。
(事業費 818,558千円 国費 409,279千円)
1-3 災害危険地住宅移転等
(1) がけ地近接等危険住宅移転事業
建設省においては,がけ地近接等危険住宅移転事業により,全国各市町村で実施した危険住宅の除去174戸及びこれに代わる住宅建設(購入を含む。)162戸に対して補助を行った。
(事業費 868,602千円 国費 435,256千円)
1-4 その他
(1) 国際防災の10年の推進
a 科学技術庁においては,災害軽減に取り組む科学技術の現状と課題について討議を行った。
(国費 4,382千円)
b 国土庁においては,政府の推進本部の運営等国際防災の10年を推進した。
(国費 26,951千円)
c 外務省においては,国際防災の10年事務局に対して支援を行った。
(国費 64,500千円)
d 気象庁においては,津波,火山,地震及び気象の各災害についての調査結果をもとにして,アジア・太平洋諸国における総合的な災害防止システムの改善に寄与する報告書を作成した。
(国費 3,152千円)
e 建設省においては,国際防災の10年建設省推進本部を運営するとともに,建設省国際防災の10年シンポジウム等の事業を実施した。
(国費 8,381千円)
f 消防庁においては,我が国の防災技術関係資料を取りまとめ,我が国の防災分野における技術協力に対するニーズの把握に努めた。
(国費 3,021千円)
(2) 大規模災害対策の推進
警察庁及び管区警察局においては,大規模地震対策特別措置法に基づく警戒宣言の発令時及び大規模災害発生時における災害応急対策等について検討を行った。また,災害時には,画像伝送等による迅速な現場情報の収集,伝達に努めるなど,災害警備対策の強化推進を図った。
(国費 702,584千円)
(3) 防災意識の高揚
a 警察庁及び都道府県警察においては,過去の災害発生状況,防災に関する知識等について各種広報紙で紹介するなど,国民の防災意識の高揚に努めた。
b 国土庁においては,防災週間,防災の日を中心に,防災フェア,「防災とボランティアを考えるつどい」等の行事を実施すること等により,防災知識の普及と防災意識の高揚を図った。
(国費 27,640千円)
c 消防庁においては,テレビやインターネットによる広報活動を実施するとともに,地方公共団体に対し「防災週間」等の機会を通じ,広報活動や啓発行事を実施するよう要請した。
(国費 54,747千円)
(4) 防災関連情報の総合的活用の推進
国土庁においては,防災関連情報の高度利用を目的とした基本システムの運用及び高度化の検討を行った。また,危険箇所,避難地等の防災関連情報を図面化した防災マップのモデルを作成した。
(国費 11,865千円)
(5) 防災分野における国際協力等の推進
国土庁においては,開発途上国における防災体制の整備の促進を図るための調査を行った。また,アジア地域を対象にしたリスクアセスメントの検討を行った。
(国費 20,165千円)
(6) 防災基本計画の推進
国土庁においては,事故災害対策を編として追加するなど防災基本計画を改訂し,その普及・推進を行った。
(7) アジア防災センターにおける多国間防災協力の推進
国土庁においては,アジア防災センターにおける多国間防災協力として,防災情報の収集・提供,防災協力の推進に関する調査等を行った。
(国費 107,100千円)
(8) 企業における防災対策と職場での防災活動の推進
国土庁においては,企業の防災活動の参考となる事例を収集するなど,企業防災に関する普及啓発を行った。
(国費 4,577千円)
(9) 阪神・淡路地域の防災関係情報の分析・活用
国土庁においては,阪神・淡路大震災に関する情報を広く収集し,教訓情報資料集としてインターネットによる情報発信を行っている。
(国費 49,882千円)
(10) 復興対策の調査検討
国土庁においては,被災地方公共団体が復興計画を策定する場合の指針となるマニュアル策定のための調査を行うとともに,あらかじめ発生の切迫性が指摘されている災害に対して,被災地の迅速的確な復興に資するための調査を行った。あわせて,海外における復興施策の実態調査を行った。
(国費 30,939千円)
(11) 特定地震防災対策施設(阪神・淡路大震災メモリアルセンター(仮称))の整備
国土庁においては,地震災害に関する資料の収集・保存・展示,防災に関する総合的・実践的な能力を有する人材の育成等を行う特定地震防災対策施設の整備費を補助した。
(事業費 6,005,442千円 国費 3,002,721千円)
(12) 土地保全基本調査の実施
国土庁においては,土地保全基本調査を鳥取県において実施するとともに,平成9年度に調査を行った山口県について,縮尺15万分の1の土地保全図を作成した。また,異常な自然現象を類型ごとに詳細に調査を行った阪神・淡路地域について,縮尺5万分の1の土地保全図を作成した。
(国費 50,261千円)
(13) 文教施設の防災対策
文部省においては,文教施設の耐震性能の向上対策等,文教施設の総合的な防災対策を推進した。
(国費 7,224千円)
(14) 学校等における防災体制の充実
文部省においては,地域防災組織や関係機関との連携方策,災害時の情報連絡体制の整備等に関する実践研究を市町村教育委員会に委嘱した。
(国費 29,007千円)
(15) 食料等の備蓄
a 乾パン及び乾燥米飯の備蓄
災害対策用乾パン及び乾燥米飯合わせて約26万食を政府倉庫等に備蓄するとともに,食糧庁備蓄分に不足が生じた場合等には,防衛庁が備蓄している乾パンの供給を受けられるよう措置した。
(国費 5,082千円)
b 種子の備蓄
災害発生時における代作用種子の確保を図るため,社団法人日本種苗協会備蓄部会に所属する種苗業者の所有する13種類の野菜種子約46klを同協会に備蓄させた。
また,被災農業者が必要とする代作用種子の配布に備えて,種苗管理センターにおいて,そば及び大豆の種子約31トンを予備貯蔵した。
(国費 1,268千円)
(16) 山地防災体制の整備
農林水産省においては,山地災害等に係る情報収集能力を強化するため,市町村職員,地域における治山技術者OB等を山地防災ヘルパーとして認定するとともに,講習会,現地研修会を実施した。
(国費 11,880千円)
(17) 農林水産省における情報収集・伝達体制の整備
農林水産省においては,災害に強い通信手段として農林水産本省と各地方農政局等とを結んだ衛星通信施設等を整備した。
(国費 27,886千円)
(18) 沿岸防災情報図の整備
海上保安庁においては,離島や半島域において災害が発生した場合における海上からの救難・救助活動を迅速かつ適切に実施するため,自然情報,社会情報及び災害危険地等の防災情報を網羅した沿岸防災情報図の整備を行った。
(国費 7,770千円)
(19) 予報,警報その他の情報の発表,伝達
気象庁においては,適時適切な予報,警報その他情報を発表するとともに,防災関係機関,報道機関に伝達して,災害の防止・軽減に努めた。また,各種天気図や静止気象衛星雲写真,台風予報図等について,気象無線ファクシミリ放送等によって提供を行った。
(20) 災害時における無線通信の高度化・多様化に関する調査研究
いつ発生するかわからない広域災害に備え,喫緊に広域防災無線網の構築を図り,近隣都道府県のシームレスな接続するための諸条件について調査検討を行った。
(国費 2,654千円)
(21) 「防災と放送についての連絡会」の開催
郵政省においては,放送事業者やケーブルテレビ事業者の団体と関係省庁が定期的に防災に関する情報交換等を行う連絡会を開催し,防災に対する放送の役割の向上を積極的に推進した。
(22) 地方自治体との防災協定の締結
郵政省においては,各郵便局と地方公共団体とが災害時に連携して災害対策を行うための防災協定等を締結するなど,地域における防災体制を引き続き整備している。
(平成11年度末 2,196件)
(23) 災害の場合の放送についての要請
郵政省においては,放送事業者に対して,非常災害時において放送が果たすべき重要な役割を確保できるよう万全の措置を講じると共に,外国人,視聴覚障害者等に対する配慮を行うよう要請した。
(24) 沿岸海域基礎調査
建設省国土地理院においては,沿岸海域の各種防災・保全等の基礎資料とするため,天草中部地区について2万5千分の1の沿岸海域地形図,沿岸海域土地条件図を作成した。
(国費 68,299千円)
(25) 土地条件調査
建設省国土地理院においては,岸和田地区について,災害対策及び土地の開発・利用計画の基礎資料とするため,地形の分類,低地の地盤高等に関する事項等を調査し,2万5千分の1土地条件図作成を行った。
(国費 16,710千円)
(26) GIS基盤情報整備
建設省国土地理院においては,GISの利用に不可欠な全国の道路,河川・海岸線,鉄道等の国土に関する骨格的な地理情報をディジタル化し,GIS基盤情報の整備を実施した。
(国費 1,329,101千円)
(27) 被災宅地危険度判定制度の整備
建設省においては,宅地災害が広範囲に発生した場合に,被害の発生状況を迅速かつ的確に把握するための危険度判定を実施することによって,二次災害を軽減・防止するため,被災宅地危険度判定制度を創設し,危険度判定を行う技術者の養成登録を行い,危険度判定を実施できるよう整備を進めた。
(28) 宅地災害の防止対策の推進
建設省においては,地方公共団体等に対して,宅地防災マニュアルの普及を図ったとともに,宅地造成工事規制区域指定要領を参考に適正な指定地域の見直しを指導した。また,宅地開発に伴い設置される地下調整地における安全性の確保や完成後の適正な維持管理を確保するとともに,土地の高度利用に資することを目的とした,宅地開発に伴い設置される地下調整地の技術的な指針の整備を進めた。
(29) 道路交通情報の充実
災害情報,工事・交通規制情報等の情報をリアルタイムにカーナビゲーション等の車載機へ提供するVICS(道路交通情報通信システム)の整備を,警察庁,郵政省,建設省において推進し,平成11年度にはサービスエリアを16都道府県と全国の高速道路に拡大するとともに,情報内容の充実を図った。また,警察庁及び建設省においては,交通情報板,道路情報板や(財)日本道路交通情報センター等を通じて,道路交通情報を道路利用者に提供するため,情報収集・提供業務の高度化を図った。
(30) 災害に対応した道路管理情報システムの整備
建設省においては,防災カルテ等の防災情報をデータベース化した新たな道路防災管理システムの導入を図った。また,防災情報と道路施設管理に関する情報を有効に組み合わせるための地理情報システム(GIS)の活用について検討を進めるとともに,衛星を活用した災害情報収集方式,災害復旧用資機材の調達を迅速化するためのデータベースの構築について推進を図った。
(31) 地域防災計画の見直しの推進
消防庁においては,地方公共団体に対し,防災アセスメントや被害想定の実施等により,地域防災計画を抜本的に見直すよう要請・助言等を行った。また,地方防災計画の未策定市町村に対し,策定の要請を行った。
さらに,平成9年6月の防災基本計画の修正を踏まえ,地域防災計画における各種事故災害対策の充実を図るよう地方公共団体に対し,要請・助言等を行った。
(国費 2,395千円)
(32) 広域応援体制の整備推進
消防庁においては,職員の派遣,資機材の提供等防災活動全般にわたる地方公共団体の広域応援協定の締結を促進するとともに,広域防災拠点の整備促進や必要な情報のデータベース化等により,広域応援体制の整備を図った。
(国費 3,189千円)
(33) 緊急消防援助隊派遣体制の整備
消防庁においては,緊急消防援助隊の出動が円滑に行われるよう,早期出動体制,活動マニュアル,関係機関との連携体制,緊急消防援助隊が装備する資機材に関する調査研究等を行った。
(国費 9,488千円)
(34) 緊急消防援助隊の高度情報通信体系の整備
消防庁においては,緊急消防援助隊が被災地に派遣された場合,効率的に活動できるようにするため,多用な情報通信機器システムの実用性を検証し,情報通信系の確保について総合的に調査研究を行った。
(国費 20,542千円)
(35) コミュニティ防災の推進
消防庁においては,都道府県,市町村における推進計画への策定を要請するとともに安全なまちづくり等を含めた自主防災組織のあり方を考慮し,「自主防災組織の手引き」の改訂について検討した。
(国費 3,349千円)
(36) 自主防災組織の活性化
消防庁においては,自主防災組織の防災活動を効果的かつ組織的に行うためのリーダーを養成するため,自主防災組織リーダー研修会を開催した。
(国費 2,594千円)
(37) 防災ボランティアの活動環境の整備推進
消防庁においては,次の方策を講じることにより,防災ボランティアの活動環境の整備を推進した。
a 災害ボランティアテータバンクの準備
「災害ボランティアデータバンク」の設置に向けた準備を行うため,防災ボランティア団体に対し,団体の概要に関する調査を実施した。
b 情報通信の活用による防災ボランティアの活性化の推進
情報通信の活用による防災ボランティアの活性化を推進するため,防災ボランティアの普及啓発番組を制作し,衛星放送により全国放送を行った。
(国費 17,896千円)
(38) 防災対策の点検システムに関する調査研究
消防庁においては,地方公共団体が行う防災対策に関するチェックリストを作成し,より実効性のある防災対策が行えるよう調査研究を行った。
(国費 4,244千円)
(39) 防災情報の積極的な公開・提供の推進
消防庁においては,地上波デジタル放送による災害・防災情報等の提供の実現に向けて,デジタル放送の特性を考慮した,防災情報の効果的な提供方法を検討した。
(国費 4,248千円)
(40) 防災情報通信体制の整備
消防庁においては,防災情報システムにインターネットの技術を導入するとともに登録データの充実を図り,利便性を向上させた。また,大規模災害発生時に災害現場の最前線に出動し,被災状況等の収集,消防庁との連絡調整を行う前線基地ともなる現地活動支援車の運用訓練を行った。
(国費 477,800千円)
(41) 消防団の充実強化
消防庁においては,消防団の一層の充実強化を図るため,地域における消防団の活動拠点となる施設の整備を行う消防団拠点施設等整備事業及び消防団に必要な設備等の総合的な整備を行う消防団活性化総合整備事業により,計181団体に対し補助を行うとともに,消防団と地域の自主防災組織等との連携のあり方に関する検討等を行った。さらに,補正予算において消防団基盤緊急総合整備事業を実施し,184団体に対し補助を行った。
(事業費 3,209,999千円 国費 1,382,928千円)
(42) 救急業務高度化の推進
消防庁においては,救急搬送に係る傷病者の救命効果の向上を図るため,救急業務の高度化に関する諸施策を積極的に推進した。
(国費 8,552千円)
(43) 救助技術高度化の推進
消防庁においては,救助技術の高度化を図るため,救助技術に対する新たな科学技術の導入を検討するとともに,第2回全国消防救助シンポジウムを開催した。
(国費 4,767千円)
(44) 航空消防防災体制の整備
消防庁においては,重症患者等の救命効果の向上を図るため,救急ヘリコプター出動基準ガイドラインを作成し,救急業務における消防・防災ヘリコプターの活用を促進した。
(国費 6,070千円)
(45) 国際消防救助隊の海外派遣体制の整備
消防庁においては,海外において大災害が発生した場合に,被災国の要請に応じ,市町村の消防隊員等で構成される国際消防救助隊を派遣する体制を整備しているが,国際消防救助隊の教育訓練,情報収集体制等の整備等を行った。また,平成11年1月に発生したトルコ西部及び台湾における地震災害の救助活動を行うため,国際消防救助隊を派遣した。
(国費 1,145千円)
(46) 消防に係る国際協力の推進
消防庁においては,国際協力事業団等と協力して,開発途上国を対象に,消防研修員の受入れ,消防専門家の派遣,プロジェクト方式技術協力を実施するとともに諸外国の消防事情に関する調査等を行った。
(47) 防災まちづくりの推進
消防庁においては,地域コミュニティ等における防災に関する取組のうち,特に優れた取組を防災まちづくり大賞として,自治大臣賞等により表彰し,防災上の効果を解説したパンフレット等により幅広く紹介した。
(48) 災害対策総合推進調整費による調査
国土庁においては,災害対策総合推進調整費を別表の調査等に配分した。(表4-1-1)
(国費 131,625千円)
2 震災対策
2-1 教育訓練
(1) 震災対策訓練
政府においては,大規模地震対策特別措置法等に基づき,9月1日に東海地震及び南関東地域直下の地震を想定した総合的な地震防災訓練を行った。
(国費 93,113千円)
(2) 警察庁における教育訓練
警察庁においては,次のとおり教育訓練等を行った。
a 災害警備担当幹部教養等
都道府県警察の幹部に対して,震災発生時の災害応急対策等についての教育訓練を行うとともに,各管区警察局単位で広域緊急援助隊の広域派遣訓練等を実施した。また,都道府県警察に対して震災対策上必要な教育訓練に関する指導を行った。
b 東海地震及び南関東地震対策
広域緊急援助隊の広域派遣訓練,総理大臣官邸等への映像伝送等応急対策通信手段の確保のための訓練等を実施したほか,警察庁等において大震災対策総合警備訓練を実施し,判定会招集連絡報等の受理及び伝達,救出救助等の各種訓練を行った。
c 運転者のとるべき措置の周知徹底
東海地震に係る警戒宣言発令時及び大規模地震発生時における運転者のとるべき措置について,防災訓練等に際し,周知徹底を図るよう都道府県警察に対し指導した。
(3) 海上保安庁における震災対策訓練
海上保安庁においては,国の総合防災訓練及び各地で実施された大規模地震災害対策訓練に積極的に参加し,警戒宣言・津波警報等の伝達,人命救助等の訓練を実施するとともに,巡視船艇及び航空機の動員等の机上訓練を実施した。
(4) 津波注意報,警報の伝達訓練等
気象庁においては,地震発生時における震源の決定及び津波判定並びに津波注意報,警報の発表の迅速化を図るため,全国及び津波予報中枢ごとに津波予報作業等について訓練を行うとともに,地方公共団体が行う訓練にも積極的に参加協力した。また,地震予知情報を報告するための異常発見,地震防災対策強化地域判定会等に係る業務の円滑な遂行を期するための訓練を実施した。
(5) 建設省における震災対策訓練
建設省においては,非常参集訓練,災害対策本部・現地対策本部の設置・運営訓練等の各種訓練を行った。
(6) 消防庁における教育訓練
a 消防庁消防大学校における教育訓練
消防庁消防大学校において,都道府県の消防の事務に従事する職員及び市町村の消防職団員に対し震災対策に関する高度の教育訓練を行うとともに,都道府県及び市町村の防災担当者に対し実務講習を行った。
b 消防庁及び地方公共団体における訓練等
消防庁においては,地方公共団体に対し,様々な条件を想定して,関係機関及び地元住民と連携した総合防災訓練など実践的な訓練を実施するよう要請を行った。
2-2 防災施設設備の整備
(1) 広域防災基地の整備
a 国土庁においては,南関東地域に広域な災害が発生した場合の災害応急対策活動の拠点となる立川広域防災基地について,整備を行った。
(国費 58,677千円)
b 建設省においては,広域防災活動の拠点となる古仁屋海上保安署について整備に着手し,中央合同庁舎第2号館等については引き続き整備を行った。
(事業費 72,064,053千円 国費 24,808,017千円)
(2) 地域防災拠点施設の整備
国土庁においては,地域防災拠点施設の整備を図るため,全国8箇所の地域防災拠点施設整備モデル事業に対して補助を行った。
(事業費 1,823,055千円 国費 854,635千円)
(3) 地震防災情報システム(DIS)の整備
国土庁においては,地震防災情報システム(DIS)について,関係省庁等とのネットワーク化や近畿圏等における詳細な防災情報の整備等に資する「応急対策支援システム」の充実等のシステム強化を行った。
(国費 460,617千円)
(4) 地域一体型防災街づくり推進事業
国土庁においては,江戸川区篠崎北部地区等において,避難地・避難路の機能と延焼遮断帯の機能をあわせもつ防災緑地網整備の促進を図る地域一体型防災街づくり推進事業を実施した。
(事業費 285,000千円 国費 95,000千円)
(5) 国立学校施設の整備
文部省においては,地震による建物への被害等を防止するため,校舎等の耐震補強整備を行い,防災機能の強化を図った。
(国費 35,332,500千円)
(6) 公立学校建物の改築及び補強の整備
文部省においては,公立学校等の防災機能の強化の観点から以下の施策を行った。
a 公立の小中学校の改築や耐震補強の整備を優先的に補助採択するとともに,「地震防災緊急事業五箇年計画」等の円滑な実施を図るため,早期実施を指導した。
b 備蓄倉庫等,防災広場及び浄水型プール等の整備並びに学校給食施設の防災機能の整備を図った。
(事業費 177,432,000千円 国費 72,613,000千円)
(7) 私立学校施設の整備
文部省においては,私立学校の施設について,防災機能の強化のための施設整備事業に対する国庫補助を行った。
(事業費 3,980,000千円 国費 1,540,000千円)
(8) 社会体育施設の整備
文部省においては,水泳プールに貯められた水を活用し,災害時における飲料水及び生活用水を確保するため,浄水機能を有する水泳プールの整備促進を図った。
(事業費 1,325,900千円 国費 662,950千円)
(9) 緊急時・給水拠点確保等事業
厚生省においては,従来の配水池容量の増大及び連絡管整備に加え,地震の被害が予想される地域において,配水管等管路を利用した貯留施設及び緊急遮断弁の整備を実施した。
(事業費 8,292,612千円 国費 2,764,202千円)
(10) ライフライン機能強化事業
厚生省においては,復旧した管から直近の制水弁までの間の管について耐震化のための更新が必要な事業に補助を行った。
(事業費 334,254千円 国費 167,126千円)
(11) 海岸保全施設の整備
a 農林水産省においては,地震・津波対策として三陸地域,東海地域等の農地海岸,漁港海岸を対象に,堤防・護岸等の整備を行った。
b 運輸省においては,東京港海岸等三大湾などにおける耐震性を強化した護岸の整備,三陸地域等の港湾海岸における堤防等の整備,釜石港等における津波防波堤の整備を行った。
c 建設省においては,ゼロメートル地帯等における海岸堤防等の耐震対策を行うとともに,東海地域,三陸地域及び奥尻島,渡島半島西部地域において堤防・水門等の整備を行った。
(12) 石油精製業地震対策の推進
通商産業省においては,既存の高圧ガス配管(既設配管等)についての対策を講じるため,既設配管等において必要となるハード・ソフトの対震対策に関する検討を行った。
(国費 88,900千円)
(13) 大規模地震対策施設の整備
運輸省においては災害に強い港湾システムを構築するため,次の整備を行った。
a 耐震強化岸壁の整備
大規模な地震が発生した際に,緊急物資等の輸送機能及び幹線貨物輸送機能を確保するため,平成11年度は横浜港等43港で耐震強化岸壁の整備を行った。
b 臨海部防災拠点等の整備
被災地の復旧・復興の支援拠点として,臨海部の防災拠点を整備するとともに,市民の生活を守るための避難緑地の整備を実施しており,平成11年度は小名浜港等14港で防災拠点緑地を,呉港等12港で避難緑地の整備を行った。
c 既存岸壁の液状化対策防止対策の実施
昭和60年度から液状化の可能性が高いと認められた岸壁等について,順次液状化防止対策などを実施してきており,平成11年度は伏木富山港等7港で実施した。
(事業費 30,690,085千円 国費 16,900,911千円)
(14) 既存の鉄道構造物の耐震補強
運輸省においては,鉄道の安全確保等を図るために鉄道事業者が緊急的に実施する鉄道構造物の耐震補強に要する費用に対し補助を行った。
(国費 549,207千円)
(15) 空港・航空保安施設の震災対策
運輸省においては,空港・航空保安施設の耐震対策を強化するため,既存施設の耐震補強および管制施設の多重化等の推進を行った。
(国費 17,101,000千円)
(16) 地震観測施設の整備等
気象庁においては,地震等による災害の防止・軽減を図るため,次の整備を行った。
a 地震津波監視システムの更新
地震・津波に関する的確な防災情報を提供するため,地震津波監視システムを更新した。(札幌)
b 地震調査観測データ収集一元化システムの強化
地震調査研究推進本部の計画に基づき科学技術庁が整備を進めている地震に関する基盤的調査観測網のデータ収集のためのシステムの強化等,業務体制を強化整備した。(大阪,福岡)
c 津波地震観測網の強化
南西諸島における地震・津波に関する情報の迅速化を図るため,南西諸島に3ヶ所地震観測施設の整備をすすめ,業務体制を強化した。
(国費 2,254,619千円)
d 検潮観測の整備
地盤の異常傾斜及び昇降に伴う地殼変動を検潮記録により常時監視するとともに,津波の状況を迅速かつ的確に把握するため,検潮所の遠隔自記検潮装置を更新した。(日向白浜,鹿児島)
(17) 郵便局舎等の耐震対策
郵政省においては,既存の郵便局舎等の耐震点検調査を実施し,必要と認められる施設について,補強工事等の耐震対策を実施した。
(国費 3,794,435千円)
(18) 建設機械の整備
建設省においては,災害時の緊急輸送路確保等に必要な車両として,パトロールカー,対策本部車,照明車等の増強・更新を実施し,合計約1,300台の配備体制を整備した。また,トンネル等のコンクリート構造物の安全対策を実施するためのトンネル点検車を補正予算により緊急増強した。
(事業費 2,569,000千円 国費 1,530,000千円)
(19) 河川施設の整備
建設省においては,河川事業による震災対策として,信濃川,木曽川,太田川,吉野川等の河川堤防,護岸等の耐震対策を行うとともに,荒川,加古川等の高水敷に震災時の救援,復旧活動等に利用可能な緊急用河川敷道路の整備等を行った。
(20) 道路における地震対策
建設省においては,代替性・多重性に配慮した幹線道路ネットワークの整備を行うとともに,緊急輸送道路のうち,対策を要する橋梁の耐震補強等の震災対策を実施した。また,ライフライン共同収容施設としての共同溝,電線共同溝の整備を行った。
(事業費 152,056,000千円 国費 53,057,000千円)
(21) 官庁施設の耐震補強整備
建設省においては,官庁施設の総合耐震診断結果に基づき,門司港湾合同庁舎等の緊急性の高い要整備施設11件の耐震補強等整備を行った。
(国費 4,265,632千円)
(22) 震災に強いまちづくりの推進
建設省においては,震災に強いまちづくりを図り,以下の通り事業を実施した。
a 都市の防災性向上のための根幹的な公共施設の整備
(a) 避難地及び防災活動の拠点として機能する都市公園を整備するため,三木総合防災公園等で公園事業を実施した。
(事業費 186,786,000千円 国費 62,298,000千円)
また,防災公園予定地を避難地等として先行取得し,防災上最小限必要な施設の整備を行う防災緑地緊急整備事業を川名公園(名古屋市)等において実施し,都市公園予定地の取得を行う地方公共団体に対し都市開発資金45億円の貸付けを行うとともに,施設費補助を行った。
[融資額 4,492,000千円]
[事業費 560,000千円 国費 280,000千円]
(注)
予算額は,上記都市公園事業予算の内数である。
(b) 避難路として活用される都市計画道路を整備するため,環状8号線等で街路事業を実施した。富山駅北地区等においては,避難地・避難路の整備を都市の防災構造化と併せて行うため土地区画整理事業等を実施した。また道路の未整備による消防活動の困難な区域の解消を図るため,三大都市圏等の密集市街地において街路事業を実施した。
(事業費 201,260,000千円 国費 104,798,000千円)
(c) これらと関連して,避難地として都市機能更新用地,街路予定地及び都市公園予定地等の取得を行う地方公共団体に対し,都市開発資金237億円(防災緑地緊急整備事業に係る65億円を除く。)の貸付けを行った。
[融資額 23,705,000千円]
(d) 東京都江東区について,防災拠点の整備を図るため,白鬚西地区等において市街地再開発事業を実施した。
(事業費 2,310,840千円 国費 1,016,980千円)
また,防災拠点整備の一環として,白鬚西公園,大島・小松川公園において公園事業を実施した。
(事業費 102,000千円 国費 34,000千円)
b 災害に強い都市構造の形成
(a) 避難地・避難路周辺等の建築物の不燃化,道路・公園・防災まちづくり拠点施設等の整備により都市の防災構造化を図るとともに,災害危険度判定等調査,都市防災構造化推進事業を不忍通り地区等において実施した。
(事業費 1,381,000千円 国費 643,000千円)
(b) 三大都市圏等の木造密集市街地等において,安全な市街地の形成を図るため,都市再生区画整理事業を実施した。
(事業費 5,668,000千円 国費 2,408,000千円)
(c) 低層木造建築物の密集した既成市街地において,都市災害を防止し,土地の合理的利用と建築物の耐震不燃化を図るため,市街地再開発事業等を実施した。
(事業費 208,305,132千円 国費 48,789,275千円)
(23) 住宅市街地の防災性の向上の推進
建設省においては,次の事業を実施した。
a 住宅地区改良事業等
不良住宅が密集した地区の環境の整備改善を図るため,横浜市新山下二丁目地区等において,住宅地区改良事業等を実施した。
(事業費 53,030,182千円 国費 33,465,091千円)
b 住宅市街地整備総合支援事業
住宅建設と道路,公園等の公共施設の整備を一体的・総合的に行うため,荒川区南千住地区等において,住宅市街地整備総合支援事業を実施した。
(事業費 211,626,000千円 国費 72,349,000千円)
c 密集住宅市街地整備促進事業
老朽住宅等が密集して防災上危険な住宅市街地において,密集住宅市街地整備促進事業について補助内容の拡充を行うとともに,平和の森公園周辺地区等において実施した。
(事業費 62,553,000千円 国費 14,595,000千円)
(24) 地震計ネットワークの整備
建設省においては,初期対応における被害予測,初動体制の確立等を図るため,広域の地震加速度等を把握できる地震計ネットワークシステムの整備を図った。
(25) 土砂災害に対する整備
建設省においては,地震に伴う土砂災害を防止するため,以下の措置を講じた。
a 地震による山腹斜面の崩壊等が多発する危険性の高い地域や,土砂災害の危険箇所が集中して存在する都市部における砂防事業,地すべり対策事業等を実施した。
b 土砂災害に対する安全性を高めること等を目的に,市街地に隣接する山麓斜面に樹林帯の形成を図る「都市山麓グリーンベルト整備事業」を砂防事業,地すべり対策事業等により実施した。
c 砂防えん堤等への地震計の設置,現行の設計基準を満たさない砂防設備の補強対策,取水用ピットの整備,また緊急路として使用可能な管理用通路の整備を実施した。
(26) 下水道における震災対策
建設省においては,地震時に浸水被害が予想される地区の排水施設整備を図るため,三大都市圏の既成市街地等において,雨水ポンプ場の新設及び改築等を行う下水道事業を行った。また,新耐震基準に基づく下水道施設の整備,改築及び下水道施設のネットワーク化を推進するとともに,緊急時に下水処理水等を活用するための高度処理施設等の整備及び下水処理場等の避難地等としての活用を推進した。
(27) 大震火災対策施設等の整備
消防庁においては,震災時に予想される同時多発火災に対処し,初期消火,避難誘導等の体制の整備等を促進するため,耐震性貯水槽,震災初動対応資機材35式等の整備について,地方公共団体に対し補助を行った。
(事業費 4,676,422千円 国費 2,336,565千円)
2-3 その他
(1) 大震災警備対策の推進
警察庁においては,東海,南関東等主要地域の実地調査を行ったほか,大震災警備計画の総合的な調整を行った。
(国費 1,373千円)
(2) 交通対策の推進
警察庁においては,次のとおり交通対策を推進した。
a 緊急通行車両等の事前届出制度の推進
緊急通行等の交通需要をあらかじめ把握し,かつ,緊急通行車両等の確認の事務処理を簡素化するための事前届出制度の推進を図った。
b 東海地震に係る交通対策
東海地震に係る警戒宣言発令時における緊急輸送車両の円滑な通行を確保するとともに,広域交通規制対象道路及び広域検問所の見直しを行った。
c 交通安全施設等の整備
緊急交通路・輸送路の確保等の交通管理を行うために,ITV(交通監視用テレビ),光ビーコン等の車両感知器の整備等を図るとともに,交通情報板,光ビーコン等の整備を行うなど,新交通管理システム(UTMS)の整備を推進した。
(3) 大都市震災対策の推進
国土庁においては,広域的な被害想定実施のための検討等の大都市震災対策の推進を図った。特に,南関東地域の地震対策については,「南関東地域直下の地震対策に関する大綱」等に基づく施策の具体化及び推進を図った。
(4) 大規模地震対策等の推進
政府においては,地震防災対策強化地域を取り巻く社会経済情勢が大きく変化したこと等を踏まえ,平成11年7月に地震防災基本計画を修正した。また,国土庁においては,地震防災対策特別措置法に基づく地震防災緊急事業五箇年計画の推進を図った。
(国費 138,502千円)
(5) 津波対策の推進
国土庁においては,津波浸水予測図を活用した津波対策の普及・啓発を行うなどの津波対策の推進を図った。
(国費 8,855千円)
(6) 都市開発と一体的な首都圏防災拠点整備方策検討調査
国土庁においては,首都圏での大地震に際し,国内外の広域的な支援活動の拠点となる「首都圏防災拠点」を,大規模な都市開発と一体的に整備する方策について検討を行った。
(国費 5,763千円)
(7) 阪神・淡路地域の復興過程を踏まえた大都市圏整備のあり方の検討
国土庁においては,特に大都市圏の骨格を成す広域的根幹的な公共施設等に関する震災からの円滑な復興のあり方について検討を行った。
(国費 7,240千円)
(8) 文化財建造物の耐震指針の策定
文化庁においては,文化財建造物等の耐震性能の向上及び地震時の安全性に係る方策について,調査研究協力者会議を開催した。
(9) 鉄道施設の地震防災対策
運輸省においては,鉄道の地震による被害の軽減及び早期復旧のための対策指針の検討を行った。
(国費 9,274千円)
(10) 津波注意報,警報,地震情報等の発表,伝達
気象庁においては,地震の観測を行い,その観測結果をもとに地震情報等を発表し,防災関係機関,報道機関に伝達して,災害の防止・軽減に努めた。なお,平成11年度は,津波注意報,警報の発表はなかった。
(11) 建築物の耐震診断・耐震改修の促進
建設省においては,建築物の耐震改修の促進に関する法律の的確な施行,政府系金融機関による融資及び補助制度等により,建築物の耐震診断・耐震改修の促進を図るとともに,マンションの耐震改修に対する国庫補助の対象の拡充を行い,又地方公共団体が行う住宅の耐震診断等の支援事業に対する国庫補助制度の拡充を行った。
(12) 被災建築物の応急危険度判定体制の整備及び活動支援
建設省においては,余震による二次災害を防止するため,被災建築物の応急危険度判定に関する人材の育成,実施体制の整備を推進した。また,トルコ西部地震及び台湾中部地震において,応急危険度判定の専門家派遣を支援した。
(13) 大震火災対策の推進
消防庁においては,消防施設設備,資機材等の整備・充実に努めるほか,震災対策に係る国と地方公共団体及び地方公共団体間の連絡,地域防災計画(震災対策編)及び地震防災強化計画等の見直しに関する要請・助言,防災訓練の要請及び実施,防災知識の普及啓発等の推進を図った。また,震災時に必要となる緊急物資の確保・提供方策等の震災対策のあり方について検討を行った。さらに阪神・淡路大震災の教訓等初動時から復旧・復興における各種記録を収集・分析し,データベースとして整備した。
(国費 174,593千円)
3 風水害対策
3-1 教育訓練
(1) 警察庁における教育訓練
警察庁においては,都道府県警察の幹部に対して,風水害発生時の災害応急対策等についての教育訓練を行うとともに,各管区警察局単位で広域緊急援助隊の広域派遣訓練等を実施し,災害警備活動に関する知識・技術の向上と住民等の防災意識の高揚に努めた。
(2) 消防大学校における教育訓練
消防庁消防大学校においては,都道府県の消防の事務に従事する職員及び市町村の消防職団員に対し風水害対策に関する高度の教育訓練を行うとともに,都道府県及び市町村の防災担当者に対し風水害対策に関する実務講習を行った。
3-2 防災施設設備の整備
(1) 風水害対策用資機材の整備
警察庁においては,風水害対策に必要なレスキューロケット等の整備を行った。
[国費 306,771千円]
(注)
[ ]書きは,第4章1-2(1)に計上したものの内数である。
(2) 建設機械の整備
建設省においては,風水害等の災害対策に必要な機械として,パトロールカー,対策本部車等の増強・更新を実施した。また,内水が頻発する未対策地区における緊急対策として,排水ポンプ車,照明車を増強し,合計約700台の配備体制を整備した。
(事業費 7,874,000千円 国費 4,426,000千円)
(3) 水防施設の整備
建設省においては,水防設備等の整備を次の通り行った。
(事業費 171,130千円 国費 161,906千円)
a 洪水予報施設の整備
一級河川北上川等26河川において,無線式テレメータ局26局,気象ファックス2式,水位予測機器2機,警報装置4局を更新した。
b 水防資材の整備
出水等に際して,水防活動に使用した水防資材について北海道喜茂別町等15市町及び福島県に対し補助を行った。
(4) 安全で信頼性の高い道路整備
建設省においては,代替性・多重性に配慮した幹線道路ネットワークの整備を行うとともに,道路防災総点検や岩盤斜面等の緊急調査を踏まえ,緊急的に対策が必要な法面等における落石防護工等の対策を推進した。また,事業の実施に当たっては,治山事業(林野庁)と連携した落石対策等を行うなど,より効果的な対策に努めた。
(事業費 370,742,000千円 国費 217,842,000千円)
(5) 建設省防災用通信システムの整備
建設省においては,次の防災用通信システムの整備を行った。
a テレメータ
雨量,水位,水質等の水文データ及び雨量,路温等の道路気象データを収集するためのテレメータを引き続き整備した。
b 警報設備
ダムや堰等の放流による河川水位上昇を付近の住民に警報するための警報設備を引き続き整備した。
c レーダ雨雪量計
雨量,雪量をリアルタイムで広域に捉えるためのレーダ雨雪量計を,四国地方建設局において2基目の整備を行ったほか,近畿,九州地方建設局及び北海道開発局において更新を行った。
d 河川情報システム
雨量,河川水位等を関係事務所,地方建設局,本省へ伝達するシステムについてデータの充実,Web化等の機能強化を図った。
(6) 土砂災害に対する整備
建設省においては,土砂災害から人命を守るために砂防設備等の整備を図るとともに,雨量計,ワイヤセンサー,監視カメラ等の各種観測機器及び監視装置等の整備や土砂災害予警報システムの構築,融雪を考慮した土石流警戒避難体制の整備,ダイレクトメールによる危険箇所の周知を推進した。
(7) 災害弱者関連施設に係る総合的な土砂災害対策
建設省では,災害弱者関連施設を保全対象に含む土砂災害危険箇所を重点的に整備するとともに,災害弱者関連施設の施設管理者に対する緊急点検調査結果の通知を推進し,土砂災害危険区域図の作成・公表等を支援した。
3-3 その他
(1) 風水害に対する警戒体制の強化
警察庁においては,管区警察局及び都道府県警察に対し,災害危険箇所の事前把握,災害の発生が予想される場合における警備体制の早期確立及び早期避難誘導の徹底を指示するなど,警戒警備体制の強化を図った。
(2) 総合的な土砂災害対策の推進
国土庁においては,近年多大の被害を生じている土砂災害の予防及び軽減を図るため,総合的な土砂災害対策の推進を図った。
(国費 17,430千円)
(3) 土砂災害防止のための啓発普及活動
建設省においては,土砂災害に関する国民の理解と関心を深め,人命,財産の被害の防止に資するため土砂災害防止月間を実施した。月間中には,がけ崩れ防災週間を実施し,土砂災害防止月間推進の集い(全国大会)を開催したほか,広報活動の推進,土砂災害防止功労者の表彰等を実施した。
また,農林水産省においては,山地災害の未然防止についての住民への周知徹底及び防災意識の高揚に資することを目的に,山地災害防止キャンペーンを実施した。
(4) 砂利採取に伴う災害防止のための措置等
通商産業省及び建設省においては,砂利採取に伴う災害を防止するため,砂利採取業者の指導,砂利採取業務主任者等の啓蒙指導を目的とした講習会,砂利災害防止月間を実施したほか,砂利採取場の立入検査を実施した。
(国費 5,044千円)
(5) 鉄道施設の落石事故等防止対策
運輸省においては,落石等の危険箇所等の実態調査を行い,落石事故等防止対策について検討し,鉄道事業者に対して指導を行った。
(国費 1,416千円)
(6) 予報,警報その他の情報の発表,伝達
気象庁においては,水防活動の利用に適合する予報及び警報を発表するとともに,洪水予報指定河川については,建設省と共同で洪水予報を発表し,災害の防止・軽減に努めた。
(7) 総合治水対策の実施
建設省においては,浸水被害の著しい既成市街地が大部分を占める河川流域等について,治水施設の整備,流域の保水・遊水機能の確保等を行う総合治水対策を推進した。特に,総合治水対策特定河川については,総合治水対策特定河川事業による河川改修の重点的実施,流域の保水・遊水機能の確保等を実施した。また,上記以外の河川においても,浸水実績の公表を推進した。
(8) 河川情報伝達体制の推進
建設省においては,(財)河川情報センターを通じて地方公共団体,報道機関等に対して,洪水・渇水情報など,河川・流域に関する情報の提供を行った。
(9) 災害危険区域図等の作成,公表の推進
建設省においては,洪水による浸水実績を図示した浸水実績図,洪水氾濫により浸水する可能性がある区域とその程度を図示した洪水氾濫危険区域図等の作成,公表を図っているところである。さらに,平成6年度より洪水ハザードマップの作成を積極的に推進し,平成12年3月までに,81市町村において公表した。
(10) 水防災対策の推進
建設省においては,安全で快適な地域づくりをめざして,地域の選択により,土地の有効利用を図りつつ住宅等を洪水から防御する地域水防災対策を実施した。
(11) 水防に関する啓蒙普及活動
建設省においては,水防月間において,都道府県,水防管理団体等とともに各種の行事及び活動を実施した。特に,水防団員等に対して水防工法,情報伝達,救援・救護等の総合的な訓練を実施した。また,都道府県及び市町村の職員に対し,関係団体と連携の下に水防研修を実施した。
(12) 建設省と気象庁との河川及び気象等に関する情報のリアルタイム交換の整備
建設省と気象庁は,建設省の保有する河川情報システムと気象庁の保有する気象資料伝送網(L-ADESS)との接続を進めた。
a 技術交流の促進
建設省と気象庁は,観測の方法,データの精度等,情報の内容や質に関する基礎資料を相互に交換するとともに,交換情報の利用について技術的な助言を相互に行い,技術交流を促進した。
(13) 郵政省・建設省・林野庁との連携による土砂災害・山地災害警戒避難体制の強化
郵政省・建設省・林野庁においては,各地の郵便局を窓口に地域住民への土砂災害・山地災害関連情報の提供を行うなどの基本協定を締結し,土砂災害・山地災害警戒避難体制の強化を行った。
(14) 災害弱者関連施設に係る防災対策の推進
建設省においては,被害想定区域内にある災害弱者関連施設の管理者等に対して,警戒避難体制の整備を行うよう指導するとともに,緊急的に対応すべき箇所について警戒避難体制を確立する情報基盤の整備や砂防設備等の整備を実施した。
(15) 風水害対策の推進
消防庁においては,地域防災計画の充実,防災知識の普及,災害危険箇所の把握及び周知等について,地方公共団体に対し要請・助言を行った。また,災害弱者施設に係る地域防災計画の点検の実施,地下空間における緊急的な浸水対策の実施について,地方公共団体に対し要請・助言を行った。
4 火山災害対策
4-1 教育訓練
(1) 警察庁における教育訓練
警察庁においては,都道府県警察の幹部に対して,火山災害発生時の災害応急対策等についての教育訓練を行うとともに,各管区警察局単位で広域緊急援助隊の広域派遣訓練,救出救助訓練等を実施した。
(2) 海上保安庁における教育訓練
海上保安庁においては,地方公共団体等と合同で桜島等において,噴火災害を想定した実働訓練を実施した。
4-2 防災施設設備の整備
(1) 活動火山周辺地域における農林水産業防災施設の整備
農林水産省においては,次の事業を行った。
a 防災営農施設整備事業
活動火山の降灰による農作物の被害に対処するため,防災営農施設整備計画に基づき,次の事業を行った。
(a) 活動火山周辺地域防災営農対策事業
降灰による土壤の酸性化等の矯正に必要な石灰質資材等の共同購入を行う降灰地域土壤等矯正事業,降灰被害の防止又は降灰除去のため野菜,茶,果樹等について被覆,洗浄等の施設を整備する降灰防止・降灰除去施設等整備事業等を行った。
(事業費 3,825,446千円 国費 1,900,059千円)
(b) 畑地かんがい施設の整備
降灰対策を含む多目的かんがいを行うことを目的として,深層地下水の有無及び利用の可能性を確認する畑作振興深層地下水調査を実施するための経費の助成を行った。
(事業費 16,200千円 国費 8,100千円)
b 活動火山周辺地域防災林業対策事業
しいたけ等特用林産物について,降灰の防止又は降灰の除去のために必要な機械施設を整備する事業を行った。
(事業費 7,360千円 国費 3,680千円)
c 火山地域防災機能強化総合治山事業
火山地域において,荒廃地の復旧整備及び山地災害の未然防止を図るため,治山ダム観測施設の設置等を行う事業を4地区について実施した。
[事業費 3,389,853千円 国費 2,429,989千円]
(2) 火山観測施設の整備等
気象庁においては,桜島,安達太良山を常時観測するための火山観測施設の改良更新を行ったほか,三宅島の火山観測施設の整備等を進めた。
(国費 515,306千円)
(3) 火山砂防事業の推進
建設省においては,以下の事業を推進した。
a 火山砂防事業の推進
火山地,火山麓地,又は火山現象により著しい被害を受ける恐れのある地域において,土石流,溶岩流,火山泥流等に対する砂防設備の整備を実施した。
b 火山噴火警戒避難対策事業の推進
24活火山について火山災害予想区域図の作成を促進するとともに,火山活動の状況や異常な土砂の動き等の監視,情報伝達するために必要な監視カメラ,光ファイバー網等を整備して火山噴火対策情報ネットワーク整備の促進を図った。
(4) 降灰対策用機械の整備
建設省においては,桜島降灰除去事業に必要な機械の更新を実施し,合計25台の道路降灰対策用機械による降灰除去作業を実施した。
(事業費 28,000千円 国費 15,000千円)
4-3 その他
(1) 活動火山対策の総合的推進
国土庁においては,地理情報システム(GIS)を活用したシステムを構築するための調査を行うとともに,活動的な火山に係る防災対策の整備の促進を図った。
(国費 12,553千円)
(2) 火山情報の発表,伝達等
気象庁においては,常時観測火山については定期的に,また,各火山について火山活動の活発化等変化が生じ,発表の必要を認めた場合には,臨時に火山情報を発表して一般及び防災関係機関への周知に努めた。有珠山の火山活動では,適時適切に緊急火山情報を北海道知事に通報した。なお,必要に応じて,火山機動観測班を現地に派遣し,各種の観測及び調査を行った。
(3) 火山情報整備
建設省国土地理院においては,樽前山地区について,2万5千分の1火山土地条件図の作成を行い,また,焼岳,磐梯山について,既存の火山基本図の数値化を行った。
(国費 19,227千円)
(4) 伊豆半島東方沖火山活動に関する連続監視
建設省国土地理院においては,伊豆半島東方沖の火山活動に伴う地殼変動の動向を的確に把握するため,電子基準点(GPS連続観測施設)等による地殼の三次元的な連続監視を行った。
[国費 1,500千円]
(注)
[ ]書きは,第3章2-1(19)に計上したものの内数である。
(5) 火山災害防止のための啓発普及活動
建設省においては,火山砂防事業の推進に寄与することを目的とした火山砂防フォーラムの開催を支援し,火山災害防止のための啓発普及活動を行った。
(6) 活動火山対策の推進
消防庁においては,地域防災計画の充実,関係機関との連携,広域的な防災体制の確立等について,関係地方公共団体に対し要請・助言を行った。
5 雪害対策
5-1 教育訓練
(1) 警察庁における教育訓練
警察庁においては,都道府県警察に対して雪害防止対策の推進を指示した。都道府県警察では,これを受けて関係機関との連携による救助訓練を行うとともに,警戒警備及び救助のための体制を確立するなど地域の実情に合わせた施策を推進した。
5-2 防災施設設備の整備
(1) 豪雪地帯対策
国土庁においては,克雪活動の推進を図るために必要な施設等を整備する補助事業について,3地域の整備を完了し,4地域の整備を継続するとともに,新たに2地域の整備に着手した。また,特別豪雪地帯において,先導的克雪施設等を整備する補助事業について,1地域の整備を完了した。
(事業費 598,396千円 国費 216,907千円)
(2) 空港の雪害防止
運輸省においては,積雪寒冷地における航空交通を確保するため,空港の除雪,除雪機械等の整備を行った。
(国費 1,462,499千円)
(3) 冬期における道路交通確保
建設省においては,新積雪寒冷特別地域道路交通確保五箇年計画に基づき,以下の事業を推進した。
(事業費 147,127,000千円 国費 97,065,000千円)
a 除雪,防雪,凍雪害防止
拠点間を結ぶ主要な広域幹線道路について,重点的な除雪・防雪事業を実施した。また,凍結路面箇所等おける消雪施設の整備,流雪溝の整備を実施するとともに,歩道除雪の充実や消雪施設の重点整備を実施するなど歩行者空間の確保を行った。さらに,気象観測装置,情報収集・提供機器の整備を行った。
b 除雪機械整備
除雪機械については,積雪寒冷特別地域の除雪に必要なロータリー除雪車等の車道用除雪機械の整備とともに,歩道用除雪機械や,凍結路面対策のための薬剤散布用機械の増強・更新を実施し,合計約8,900台の除雪体制を整備した。
(事業費 15,543,000千円 国費 10,777,000千円)
(4) 雪崩対策事業
a 雪崩対策事業
集落における雪崩による災害から人命を保護するため,雪崩防止施設の整備を促進した。
b 総合的な雪崩対策の推進
雪崩が頻発する地域においては,雪崩防止施設を整備するとともに警戒・避難体制の整備等を目的とした総合雪崩対策モデル事業を推進した。
c 雪崩対策事業調査
現地観測等を通して雪崩の被害予測法,防止施設の合理的な設計・施工についての調査研究を行った。
(事業費 6,120,000千円 国費 3,060,000千円)
(5) 雪に強いまちづくりの推進
建設省においては,秋田県湯沢市等で積雪・堆雪に配慮した体系的な街路整備を行うスノートピア道路事業を行った。また,居住地内の積雪を速やかに排除するために新世代下水道支援事業制度-リサイクル推進事業-再生資源活用型を北海道札幌市等において実施した。
5-3 その他
(1) 雪害予防のための広報啓発活動
警察庁においては,都道府県警察に対し,雪害防止対策の推進を指示した。都道府県警察では,これを受けて部内外の広報紙,パトロール等を通じた広報啓発活動を行った。
(2) 雪崩災害対策の推進
国土庁においては,雪崩災害の予防及び軽減を図るため,総合的な雪崩災害対策を推進した。
(3) 予報,警報その他の情報の発表,伝達
気象庁においては,降積雪やなだれ等に関する適時適切な予報,警報その他の情報を発表して,防災関係機関,報道機関等に伝達し,災害の防止・軽減に努めた。
(4) 集落における雪崩災害防止のための啓発活動
建設省においては,雪崩災害に対する理解と関心を深め,雪崩による人命,財産の被害防止に資するため,雪崩防災週間を実施し,雪崩防災シンポジウムの開催や講習会等各種取り組みを実施した。
6 火災対策
6-1 教育訓練
(1) 消防大学校における教育訓練
消防庁消防大学校においては,都道府県の消防の事務に従事する職員及び市町村の消防職団員に対し火災予防・火災防御等に関する高度の教育訓練を行った。
(2) 消防団員の教育訓練に対する補助
消防庁においては,消防団員のための各種教育訓練に要する経費について,財団法人日本消防協会に対し補助を行った。
(国費 11,743千円)
6-2 防災施設設備の整備
(1) 国立学校の防火施設の整備
文部省においては,国立学校等の火災予防又は,その被害を最小限にとどめるため,自動火災報知設備等の防火施設の整備を行った。
(国費 823,400千円)
(2) 文化財の防火施設等の整備
文化庁においては,文化財の火災予防のため,自動火災報知設備,貯水槽等防災施設等105件の整備を実施した。
(事業費 2,279,990千円 国費 1,489,502千円)
(3) 林野火災予防施設の整備等
農林水産省においては,森林を火災から防護するため,森林保全推進員等による森林パトロールや林野火災予防資機材の配備等の保全管理活動,防火林道・防火森林の整備等を実施する都道府県等に対し,その経費の助成を行った。また,国有林においても防火線の整備,森林の保全巡視等を実施した。
(事業費 5,560,325千円 国費 2,540,816千円)
(4) 空港における消防体制の整備
運輸省においては,東京国際空港,福岡空港の高速化学消防車等を更新するとともに,主要空港については,指揮指令及び通信連絡体制の強化を図るため通信指令卓の整備を行った。また,鹿児島空港に「空港保安防災課」を新設するとともに,主要空港3空港に専門職員を配置した。さらに,長崎空港の隣接地に「空港防災教育訓練センター」を,平成12年度の運用開始を目途に継続的な整備を進めた。一方,空港救急医療体制については,老朽化した空港救急医療用資器材の更新等を計画的に行った。
(国費 2,077,000千円)
(5) 海上消防能力の整備
海上保安庁においては,海上火災に,より的確に対処するため,消防能力を備えた巡視船艇を整備した。
(6) スーパー堤防区域内における中高層耐火建築物への融資
建設省においては,スーパー堤防の整備を推進するとともに,スーパー堤防の区域内における中高層耐火建築物の建設に係る融資制度を推進した。
(7) 再開発住宅等の建設・購入資金融資
住宅金融公庫においては,再開発住宅等の建設・購入資金として市街地再開発等及び中高層建築物について融資を行った。
[融資契約額 317,696,600千円]
(8) 消防施設設備の整備
消防庁においては,防火水槽,消防広域化推進事業,消防ポンプ自動車,消防艇,はしご付消防ポンプ自動車及び消防緊急通信指令施設等の整備について,市町村等に対し補助を行った。
(事業費 23,174,809千円 国費 9,347,954千円)
(9) 林野火災用消防施設等の整備
消防庁においては,市町村に対し林野火災用防火水槽,林野火災用活動拠点広場,林野火災対策用資機材等の整備について補助を行った。
(事業費 394,681千円 国費 203,968千円)
6-3 その他
(1) 林野火災予防のための啓発普及活動
農林水産省においては,消防庁と協力して,全国山火事予防運動を実施する等林野火災の予防思想の啓発普及を行った。
(事業費 6,175千円 国費 6,175千円)
(2) 地下鉄道の火災対策
運輸省においては,既設地下鉄道の火災対策設備の改良方策の検討を行った。
(国費 4,981千円)
(3) 火災気象通報等
気象庁においては,気象状況が火災予防上,危険であると認めるときは,直ちに都道府県知事に通報し,地方公共団体の火災予防対策に協力した。一般に対しては,乾燥注意報,暴風警報等を適時発表して注意・警戒を喚起した。
(4) 建築物の安全対策の推進
建設省においては,多数の者が利用する特定の特殊建築物等に対して,維持保全計画の作成,定期調査,検査報告,防災査察等を推進し,適切な維持保全及び必要な改修を促進した。
(5) 火災予防体制の整備等
消防庁においては,次の施策を講じた。
a 消防計画の作成及び修正
市町村の消防計画の作成及び修正等について,市町村に対し助言等を行った。
b 消防の広域再編の推進
消防広域化推進事業等の各種財政支援措置,消防広域化意見交換会の開催,都道府県に対する消防広域化基本計画の策定に対する助言等を行うことにより消防本部の広域再編を推進した。
(国費 4,141千円)
c 消防用設備等の設置の促進及び政府系金融機関による融資制度
消防用設備等が未設置である防火対象物の是正指導を行った。特に,悪質なものについては措置命令等厳正な措置を講ずるよう引き続き全国の消防機関に対して周知した。また,消防用機器等に係る融資制度の活用を図り,その整備促進に努めた。
d 消防用設備等の維持管理の徹底
消防用設備等の適正な維持管理を図るため,定期点検の実施の徹底を推進するとともに,点検・維持管理に必要な知識や技能を有する人材の育成を図った。
e 自主防火管理体制の整備促進
百貨店,旅館,地下街等における消火訓練,避難訓練及び消防用設備等の点検整備の実施等を促進するとともに,事業所等における自衛消防組織の育成強化を行った。また,旅館,社会福祉施設,百貨店等における防火安全対策の推進を図るため,避難訓練のあり方等についてのマニュアルに基づき実態に即した防火対策を促した。
f 表示・公表制度の推進
防火基準適合表示制度の周知徹底を図り,「適マーク」未交付の旅館,百貨店等における不備事項の是正を促進した。
g 全国火災予防運動等の実施
火災予防や初期消火の心構え等防火知識の普及啓発を行うほか,春と秋の2回,全国火災予防運動を実施し,防火思想の高揚を図るとともに,車両火災予防運動,全国山火事予防運動などの予防運動を関係省庁と共同で実施し,関係者に対する防火思想の普及を図った。
h 消防防災システムのインテリジェント化の推進
建築物の高層化,深層化,複雑化に伴って多様化,複雑化する火災に的確に対処するため,消防防災システムのインテリジェント化を図った。
i 住宅防火対策の推進
高齢化の進展を踏まえ,住宅火災による死者の大幅な低減を図るため,「地域主導型の住宅防火対策の推進」,「住宅用防災機器等の実効ある普及」等を主要施策として積極的な展開を図った。
(国費 1,439千円)
j ハロン消火剤の使用抑制に関する対応
オゾン層保護及び地球温暖化防止を図るため,ハロン消火剤及びハロン代替消火剤の使用抑制に関する具体的方策等を検討した。
(国費 2,995千円)
k 文化財保護のための総合的防火対策の推進
文化財保護の特性を踏まえ,地域協力体制の構図を図るなど効果的な防火対策の推進を図った。
l 放火火災予防対策の推進
平成9年以降,火災原因の第一位となっている放火による火災を予防するために,放火火災予防対策マニュアルを作成した。
m 警報設備のあり方に関する調査研究
近年の警報設備における技術開発の進展等の動向を踏まえ,非火災報対策等,警報設備のあり方について検討を行った。
(国費 2,314千円)
n 消防用設備等の国際化への対応
国際規格策定作業への積極的な参画,外国検査機関の検査データの受け入れ等を推進するため,国際規格等の情報収集等を行いデータベースの形で分類整理を行った。
(国費 4,524千円)
o 林野火災防止対策の推進等
林野庁と共同して全国山火事予防運動を実施し,林野火災の発生又は拡大の危険度の高い地域を対象とする林野火災特別地域対策事業の一層の推進に努めた。
(国費 754千円)
p 自主防災組織,民間防火組織の育成等による防火思想の高揚
自主防災組織,民間防災組織等を通じ,防火思想の高揚を図った。
(国費 1,605千円)
q 火災予防ポスター及び雑誌「日本消防」の発行等に対する補助
消防庁においては,火災予防ポスター及び雑誌「日本消防」の発行等に要する経費について,財団法人日本消防協会に対し補助を行った。
(国費 17,332千円)
r 統計情報等
火災報告の形式及び方法の改訂,消防白書,火災年報及び火災四半期報等各種消防統計の分析整理並びに消防行政に必要な資料の編さんを行った。また,火災・救急統計のオンライン化について検討を行った。
(国費 12,457千円)
7 危険物災害対策
7-1 教育訓練
(1) 警察庁における教育訓練
警察庁においては,都道府県警察の危険物担当幹部に対し,消防危険物等による災害防止等の保安対策推進のため,指導取締り要領等について教育訓練を実施した。
(2) 危険物運送事業者の研修等
運輸省においては,危険物輸送事業者への監査の実施のほか,運行管理の徹底,関係法令の遵守等の指導,関係民間団体による自主パトロールの推進を図る等,イエローカード(緊急連絡カード)のより一層の普及を図るため研修等の機会をとおして指導を行った。また,放射性物質等の安全輸送に関する知識普及のため,運送事業者等の関係者に対する研修を行うとともに,運搬の事故防止等を図るため,立入検査を行った。
(3) 海上防災訓練等
海上保安庁においては,石油コンビナート等の周辺海域を中心に,油等排出事故対策訓練及び消防訓練を実施するとともに,海上災害防止センターの行う海上防災訓練に対する指導を行った。また,危険物管理施設の従業員等を対象に,危険物排出時や海上火災発生時の通報等について海上防災講習会等を通じて指導した。
(4) 消防大学校における教育訓練
消防庁消防大学校においては,都道府県の消防の事務に従事する職員及び市町村の消防職団員に対し危険物災害防止対策等に関する高度の教育訓練を行った。
7-2 防災施設設備の整備
(1) LPガス用安全器具及び高圧ガス保全設備の設置推進
通商産業省においては,LPガス集中監視システムの導入促進をするため,LPガス販売事業者に対し中小企業金融公庫及び国民金融公庫から融資を行った。
(2) 大規模石油災害対策
通商産業省においては,大規模な石油災害に対応するため,災害対策用資機材の整備等に補助を行った。
(事業費 1,056,717千円 国費 978,800千円)
(3) 排出油災害防止のための設備の整備
海上保安庁では,外洋における大量の流出油事故に対処するため,高粘度油対応油回収装置等必要な防除資機材の整備を実施した。
(国費 251,614千円)
(4) 工業地帯及び石油コンビナート地帯と市街地との緩衝地帯整備
建設省においては,石油コンビナート地帯等における公害,災害の市街地への拡大を防止するため,緩衝緑地を整備する事業を行った。
(事業費 11,409,400千円 国費 4,590,000千円)
(5) 石油コンビナート等災害用消防施設等の整備
消防庁においては,石油コンビナート等特別防災区域等における危険物災害に対処するため,当該区域所在の市町村等に対し,大型化学消防ポンプ自動車,大型高所放水車等の整備について補助を行った。
(事業費 1,512,447千円 国費 515,044千円)
7-3 その他
(1) 火薬類の安全管理対策
警察庁においては,全国の都道府県警察一斉に火薬類取扱場所への立入り検査を実施するよう指示するとともに,火薬類の不適切な取扱いによる事故の防止等についての啓発活動を推進した。
(2) 消防危険物等の災害防止対策
警察庁においては,都道府県警察に対し,消防危険物等の運搬車両等に対する指導取締りを実施するよう指示するとともに,安全基準の遵守,安全思想の普及についての指導を行った。
(3) 高圧ガス保安対策の強化と拡充
通商産業省においては,次の事業を行った。
(国費 29,577千円)
a 高圧ガス保安技術基準作成事業
技術進歩に即応して,計画的な保安基準の作成,整備を行った。
b 事故調査解析事業
高圧ガスに係る事故の原因調査,分析を行った。
(4) 高圧ガス及び火薬類による災害防止の指導等
通商産業省においては,製造事業者等に対する立入検査及び保安教育指導,都道府県取扱担当者に対する研修,事故調査等を行った。
(国費 21,373千円)
(5) 石油コンビナート等防災対策についての指導
a 新設事業所等のレイアウト規制
通商産業省及び消防庁においては,石油及び高圧ガスを併せて取り扱う事業所の新設等に際し必要な指導を行った。
(国費 5,835千円)
b 石油コンビナート等防災本部等の指導
消防庁においては,石油コンビナート等防災本部等に対し石油コンビナート等防災計画の策定及び運用等について指導を行った。
(国費 8,570千円)
c 石油コンビナートの防災アセスメントに係る調査研究
消防庁においては,大規模地震による災害の発生を踏まえた石油コンビナートの防災アセスメント指針を作成するための検討を行った。
(国費 5,005千円)
(6) 危険物の海上輸送の安全対策の確立
運輸省においては,危険物の多種多様化及び海上輸送量の増加にかんがみ危険物をばら積み船等で運送するための要件を評価検討し,危険物の特性に応じた安全対策を行った。また,危険物の海上運送における国際基準を定めている海上人命安全条約の改正に伴い,国内規制を整備した。
(国費 6,921千円)
(7) 危険物運搬船の立入臨検等
運輸省においては,危険物の海上輸送による事故を防止するため,危険物運搬船に対し立入臨検を行うとともに危険物コンテナの安全基準適合性について確認を行った。
(国費 3,704千円)
(8) 沿岸海域環境保全情報の整備
海上保安庁においては,沿岸海域の自然的・社会的情報等をデータベース化し,海図データ及び油の拡散・漂流予測結果と併せて電子画面上に表示できる沿岸海域環境保全情報の整備を引き続き行った。
[国費 21,812千円]
(9) 危険物積載船舶及び危険物荷役に関する安全防災対策
海上保安庁においては,危険物による災害を防止するため,次の施策を講じた。
a 危険物積載船舶に関する交通安全対策
停泊場所の指定,進路警戒船や消防設備船の配備,航行速力,航路入航予定時刻の変更等の指示を行った。
b 危険物荷役に関する安全防災対策
荷役・運搬許可等による規制・指導を行ったほか,荷役の安全管理に係る事業者側の体制について指導するとともに,各事業所等に対する点検指導を行った。
c 大型タンカーバースの安全防災対策
大型タンカーバースの建造に際しては,安全防災上の見地から所要の指導を行うとともに,全国の大型タンカーバースの一斉点検を行い,安全防災対策に関する指導を行った。
d 国家石油備蓄の安全防災対策
国家石油備蓄に関しては,安全防災体制の強化について関係者を指導した。
e 排出油の防除対策
油保管施設設置者等に排出油防除資機材の備付けに関する指導を行った。
(10) 漂流予測体制の強化
海上保安庁においては,現場の巡視船からリアルタイムに海象,風等のデータが収得できる「船舶観測データ集積・伝送システム」の整備を実施したほか,データアシミレーションによる海況把握手法の研究,外洋域の潮流を考慮した漂流予測モデルの開発研究を行った。
(国費 11,449千円)
(11) 危険物規制についての指導等
消防庁においては,消防法に基づき,次の予防対策を推進した。
(国費 117,350千円)
a 危険物の規制に関する指導等
危険物規制事務が適正に行われるよう,その運用に係る指導を行った。特に,試験による危険物の判定事務が円滑かつ公正に行われるよう,その指導を徹底するとともに,都道府県担当者を対象として危険物規制事務に係る研修会を開催した。
b 危険物等に係る調査の実施
危険物施設,危険物取扱者等の実態を把握するため,危険物規制事務調査等の調査を行った。また,危険物施設における事故事例の収集及び液化石油ガス,都市ガス等に係る事故状況調査を行った。
c 危険物の安全を確保するための技術基準等の整備
(a) 危険物防災に関する基準の作成
予防規程の有効活用について実態調査を行い,その分析を行った。
(b) 高引火点危険物に関する調査検討
高引火点危険物に係る規制の緩和について,安全性を損なわないことを前提に検討を行った。
(c) 移動タンク貯蔵所の基準に関する調査検討
移動タンク貯蔵所について,国内外の実態を調査し,移動タンク貯蔵所の基準のあり方について検討を行った。
(d) 新技術を活用した石油タンクの検査・判定方法に関する研究
特定屋外タンク貯蔵所の底板溶接部の試験方法として,コーティングの剥離を必要としない非破壊検査システムの導入が可能であるか否かについて,判定基準の検討を行った。
d 危険物データベースの活用
危険物データベースのデータの一層の充実を図り,そのデータを消防機関に対し積極的に提供した。
8 原子力災害対策
8-1 教育訓練
(1) 警察庁における教育訓練
警察庁においては,都道府県警察の幹部に対して,原子力に関する知識,原子力災害発生時の災害応急対策等についての教育訓練を行った。
(2) 原子力防災施設のための研修等
a 科学技術庁においては,原子力防災関係者等を対象に日本原子力研究所等において,防災対策に係る研修等を行った。
(国費 855,525千円)
b 通商産業省においては,原子力緊急時に救済活動に携わる消防等の関係防災機関職員に対し,放射性物質等についての研修を実施した。
(国費 242,742千円)
8-2 防災施設設備の整備
(1) 原子力災害警備活動用資機材の整備
警察庁においては,原子力災害対策に必要な放射性粉じん用防護服等の防護用機材,サーベイメータ,ポケット線量計等の整備を行った。
[国費 2,014,956千円]
(注)
[ ]書きは,第4章1-2(1)に計上したものの内数である。
(2) 原子力関係施設等の防災対策
科学技術庁においては,原子力防災対策の充実強化を図るため,緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステムの整備,各種防災資機材の整備,緊急事態応急対策拠点施設の整備,緊急時の連絡体制の整備等を行った。
(国費 49,381,971千円)
(3) 原子力施設設備の整備
a 通商産業省における設備等の整備
実用原子力発電所において緊急事態が発生した場合に備え,緊急時対策支援システムの整備を行った。
(国費 361,580千円)
b 通商産業省における緊急時連絡体制の整備
緊急時の連絡体制を強化するため,本省—道府県—市町村間並びに本省—運転管理専門官事務所,発電所及び通商産業局間を結ぶ連絡通報設備の設置及び維持を図った。
(国費 431,919千円)
8-3 その他
(1) 原子力施設の安全管理等
a 科学技術庁においては,試験研究用原子炉・核燃料施設等の安全審査,検査等を行った。
(国費 2,250,241千円)
b 原子力災害対策の推進
消防庁においては,地方公共団体における地域防災計画に基づく諸対策の推進の指導等原子力防災対策の推進を図った。
(国費 5,404千円)
c 消防活動の充実等
消防庁においては,原子力事業者等が消防機関に出動を要請する場合には,被ばくの可能性について併せて通報すべき旨を周知徹底すること等を関係都道府県に通知した。また,防災行政無線及び放射線防護資機材の整備のための補助を行うとともに,原子力災害時の消防活動マニュアルの見直し等についての検討を実施した。
(事業費 1,125,210千円 国費 473,055千円)
(2) 海上保安庁における原子力安全対策資機材の整備
海上保安庁においては,原子力発電所を管内に有する部署等に対し,原子力安全対策資機材の整備を図った。
(国費 168,600千円)
9 その他の災害対策
9-1 教育訓練
(1) 漁船災害防止のための研修等
農林水産省においては,漁船損害等補償法に基づく漁船保険加入漁船のうち,20トン未満の小型漁船の機関事故の発生を予防するため,主要漁船保険組合に検診技術員26人を常駐させるための経費の助成を行った。
(国費 1,416千円)
(2) 鉱山における災害防止のための教育等
通商産業省においては,鉱業労働災害防止協会鉱山保安センターにおいて実施する石炭鉱山の救護隊訓練教育及び重要鉱山保安教育に対し,助成を行った。
(事業費 258,696千円 国費 218,422千円)
(3) 船員の災害防止のための教育
運輸省においては,一般公共メディアを通じて船員等に対し安全衛生教育を行った。
(国費 7,890千円)
(4) 労働災害防止のための教育
労働省においては,次により労働災害防止のための教育,研修等を推進した。
(国費 3,644,968千円)
a 安全衛生教育の推進
労働安全衛生法に基づく技能講習を行う指定教習機関の充実強化に努めるとともに,能力向上教育実施の促進を行った。
b 安全衛生専門研修の実施
産業安全専門官等の資質の向上をはかるため,安全衛生に関する専門的事項について研修を行った。
c 安全衛生意識の高揚
全国安全週間,全国労働衛生週間の実施,安全衛生活動の功績者の表彰,安全優良職長の顕彰等を行った。
d 労働災害防止協会の活動の促進
安全管理士,衛生管理士の活動及び地区サービスセンターの活動その他労働災害防止協会の各種事業に対して援助を行った。
9-2 防災施設設備の整備
(1) 石炭鉱山保安確保施設整備の促進
通商産業省においては,石炭企業が実施する保安専用機器の整備,ガス抜き及び先進ボーリング工事,採掘跡等の充てん工事等に対し助成を行い,保安確保事業の促進を図った。
(事業費 2,016,037千円 国費 1,608,399千円)
9-3 その他
(1) 産業防災危機管理対策推進
通商産業省においては,産業における防災対策の現状等を調査するとともに,総合的な防災対策を確立するための検討を行った。
(国費 1,837千円)
(2) 鉱山に対する保安上の監督等
通商産業省においては,全国の鉱山に対して巡回検査,災害特別検査を実施し,監督指導の充実化を図った。
(国費 363,422千円)
(3) 岩石採取に伴う災害防止のための教育等
通商産業省においては,各都道府県に対して採石業者の監督を指導するとともに,岩石採取場の現地調査を実施し,さらに,採石災害防止月間には災害防止意識の高揚を図った。また,採石業務管理者等の災害防止技術等の技能の向上を図ることを目的とした講習事業に補助を行った。
(事業費 3,666千円 国費 2,444千円)
(4) 電気・ガス災害の予防
通商産業省においては,電気・ガス施設の耐震対策の向上のため次の措置を講じた。
a 電気・ガス災害の予防
電気工作物及びガス工作物の検査その他の監督指導を実施した他,電気用品及びガス用品について,製造事業者等への立入検査,不良品の取締り等を行った。また,ガス消費機器業務用需要家安全調査を実施するとともに,ガス消費機器設置工事監督者の認定等を行った。
(国費 54,686千円)
(5) 船員労働災害防止対策
運輸省においては,平成12年度船員災害防止実施計画を作成し,各企業における自主的な船員災害防止体制の確立等を図るとともに,船員労務官等による船舶及び事業場の監査指導を行った。
(国費 34,577千円)
(6) 外国船舶の監督の強化(ポートステートコントロール:PSC)
運輸省においては,海上人命安全条約等の国際基準に適合しない船舶(サブスタンダード船)を排除し,海難事故を未然に防止するため,「外国船舶監督官」の組織により,外国船舶に対する監督(PSC)の強化を推進した。
(国費 84,559千円)
(7) 労働災害防止対策
労働省においては,次のとおり監督指導等を行った。
(国費 2,915,990千円)
a 労働災害防止計画
労働災害防止計画に基づき,計画的な労働災害防止対策の展開を図った。
b 監督指導等
大規模建設工事等に対し安全衛生管理の徹底のため,監督指導を行うとともに計画の事前審査を強化し,自主的労働災害防止活動の促進を図った。重大災害の原因究明及び労働災害防止対策の確立のための必要がある場合には,専門家を派遣した。
c 検査・検定等
ボイラー・クレーン等特に危険な機械等について検査,検定制度の適切な運用を図るとともに,プレス等危険な機械等の定期自主検査制度の定着を図った。
(8) 特殊災害対策の充実強化
消防庁においては,特殊災害に係る防災対策について,災害防止対策及び消防防災対策の充実強化を図るため,消防活動や防災体制の検討を行うとともに,地方公共団体における災害対策の推進を図った。
(国費 4,662千円)
第5章 国土保全
1 河川事業
我が国は,洪水時の河川水位より低い沖積平野を中心とした高度な土地利用が行われており,国土面積の約1割にすぎない河川の氾濫区域に,現在,人口の約50%,資産の約75%が集中するなど我が国の経済・社会活動の中枢になるべき地域の多くが水害及び土砂災害の危険性を内包している。
このため,古くから治水事業の重要性が認識され着実に実施されてきたところであり,浸水面積は減少傾向にある。しかしながら,国土保全施設の整備状況はまだ低い水準にあり,さらに,洪水等の危険区域における資産が増大しているため,単位面積当たりの水害被害額はかえって増加する傾向にある。このような状況の中で,建設省においては第9次治水事業七箇年計画に基づき,安全な社会基盤の形成,水と緑の水辺の創出,活力ある地域づくりの支援の展開を図ることとしている。
(事業費 1,372,467,784千円 国費 803,864,000千円)
1-1 河川事業
建設省においては,平成11年度において,大規模治水事業を始めとして,基幹大河川の整備を重点的に進めるとともに,近年,激甚な災害が発生した河川等について再度災害の防止対策及び慢性的な床上浸水被害の解消を図るための治水対策を推進した。さらに,下水道整備等とあいまって,流域が一体となって総合的な治水安全度の向上を図るための河川事業や良質な住宅・宅地供給を図るための河川事業を推進した。また,社会・経済の中心的役割を担っている大都市地域等を破堤による壊滅的被害から防御するとともに併せて水と緑に親しめる良好な都市空間の形成を図る高規格堤防の整備を推進した。
(1) 直轄事業
a 直轄河川改修事業
一級河川117河川及び北海道の指定河川3河川について実施した。
b 直轄床上浸水対策特別緊急事業
床上浸水被害が頻発している地域に関係する河川のうち,特に対策を促進する必要がある14か所について実施した。
c 直轄河川維持修繕
河川管理施設の機能を維持するため,水閘門,堤防,護岸等の維持修繕を実施した。
d 直轄河川工作物関連応急対策事業
前後の一連区域の治水機能に比較して,工作物周辺の治水機能が劣っているものについて,応急的に改良並びに新・増設の改善措置をとった。
e 直轄流水保全水路整備事業
流入支川等の水質が著しく汚濁している河川について流水の適切な保全を図るため,新たな低水路等を整備した。
f 直轄消流雪用水導入事業
消流雪用水の確保が可能な河川から市街地を流れる中心河川等に消流雪用水を導入するため導水路を整備した。
g 直轄河川災害復旧等関連緊急事業
上流部での災害復旧等による下流部での流量増への対策を機動的,集中的に実施する必要がある9河川について実施した。
h 直轄河川激甚災害対策特別緊急事業
3河川3か所について実施した。
(2) 補助事業
a 河川改修事業等
広域河川改修事業等を次のとおり実施した。
・基幹河川改修事業 | 560河川(うち新規17河川)実施, 63河川完了 |
・一般河川改修事業 | 425河川(うち新規2河川) 実施,173河川完了 |
・局部改良事業 | 377河川 実施,192河川完了 |
・宅地等水防災対策事業 | 13か所 実施, 2か所完了 |
・救急内水対策事業 | 2か所 実施, 2か所完了 |
・消流雪用水導入事業 | 3か所 実施, 1か所完了 |
・耐水型地域整備事業 | 2か所 実施, 1か所完了 |
・河川再生事業 | 10か所 実施, 2か所完了 |
・田園地域等集落治水事業 | 1か所 実施 |
・河川構造物改築事業 | 6か所(うち新規1か所) 実施, 2か所完了 |
このほか河川工作物関連応急対策事業及び情報基盤緊急整備事業を実施した。
b 床上浸水対策特別緊急事業
継続事業として24河川及び新規事業として3河川について実施し,6河川を完了した。
c 河川災害復旧等関連緊急事業
平成11年度に本制度が創設されたことにより20河川で実施した。
d 河川激甚災害対策特別緊急事業
継続事業として10河川及び新規事業として1河川について実施し,1河川を完了した。
1-2 都市河川事業
建設省においては,都市化の進展等に対処し,水害の防止を図るため,市街化地域等に関連する都市河川の治水対策を重点的に推進することとし,特に流域の保水・遊水機能の維持増進,水害に対して安全な土地利用の誘導等と併せて,治水施設を総合的,計画的に整備する総合治水対策特定河川事業,地域のまちづくりと一体となって浸水被害の防止,軽減を図る都市水防災対策事業や市が施行主体となって河川改修を行う都市基盤河川改修事業等を実施した。
さらに,床上浸水被害が頻発している地域に関係する河川のうち,特に対策が必要な河川を対象として,床上浸水対策特別緊急事業を実施するとともに,周辺の市街地整備等と一体となり,安全かつ良好な水辺空間の創出を図る特定地域堤防機能高度化事業(スーパー堤防整備事業)を実施した。
(1) 直轄事業
a 直轄河川環境整備事業
117河川(うち新規2河川)について実施した。
b 総合治水対策特定河川事業
5河川について実施した。
(2) 補助事業
a 都市河川改修事業
広域河川改修事業として193河川について実施し,うち29河川を完了し,局部改良事業として65河川について実施し,うち32河川を完了した。
b 総合治水対策特定河川事業
17河川について実施した。
c 都市基盤河川改修事業
171河川(うち新規1河川)について実施し,うち5河川を完了した。
d 河川再生事業
5河川について実施した。
e 都市水防災対策事業
1河川について実施した。
f 調節池整備事業
22河川(うち新規1河川)について実施し,うち3河川を完了した。
g 流域貯留浸透事業
34河川(うち新規1河川)について実施し,うち2河川を完了した。
h 低地対策河川事業
31河川について実施し,うち1河川を完了した。
i 特定地域堤防機能高度化事業
8河川について実施し,うち1河川を完了した。
j 河川環境整備事業
96河川(うち新規3河川)について実施し,うち11河川を完了した。
k 床上浸水対策特別緊急事業
31河川について実施した。
l 準用河川改修事業
374河川(うち新規5河川)について実施し,うち47河川を完了した。
2 河川総合開発事業
建設省においては,近年の災害発生状況にかんがみ,洪水被害の軽減を図るとともに,ひっ迫基調にある水需給に対処し,安定した水供給を確保するため,利根川,淀川等重要水系において,多目的ダム,流況調整河川等の建設,湖沼の開発及び水利用高度化事業を推進し,特に水需給のひっ迫する地域において水資源開発公団事業を推進した。
中小河川流域における治水対策及び各地域における水資源の確保を図るため,補助事業として多目的ダム,治水ダム,雪対策ダム,生活貯水池等の建設を推進した。
(事業費 571,782,503千円 国費 398,475,000千円)
2-1 直轄事業
80事業(建設工事63事業,実施計画調査17事業)を実施した(休止事業を除く)。
2-2 補助事業
155事業(建設工事120事業,実施計画調査35事業)を実施した(休止事業を除く)。このほかに生活貯水池59箇所の建設工事を実施した。
2-3 水資源開発公団事業
12事業(建設工事10事業,実施計画調査2事業)を実施した。
3 砂防事業
建設省においては,第9次治水事業七箇年計画に基づき,平成11年度は,激甚な土砂災害から人命・財産を守る土砂災害対策を強化するため,緊急土砂災害防止対策,交通網集中地域等に係る土砂災害対策,自力避難が困難な災害弱者関連施設における土砂災害対策,都市山麓グリーンベルト整備事業等のハード対策を推進するとともに,土砂災害予警報システムの構築,及び「ダイレクトメールによる危険箇所の周知」等の危機管理体制の強化に資するソフト対策を推進した。
また,砂防設備の整備にあたっては,野外活動拠点整備や総合的な土砂管理対策の推進等地域の活性化や自然環境との調和に配慮するとともに,間伐材を有効利用した木製防災施設整備等の他省庁との連携,公共工事に係るコスト縮減の推進,砂防ボランティアとの連携等により効率的・効果的実施を図った。
(事業費 431,149,900千円 国費 260,113,000千円)
3-1 直轄事業
利根川等34水系について,重荒廃地域,火山地域,都市地域等に重点において事業を実施した。
3-2 補助事業
a 通常砂防事業
近年の災害による荒廃の著しい溪流や土石流の発生により人命,財産に大きな被害を及ぼす危険性が高い溪流及び都市区域等に重点を置き,全国1,627溪流において事業を実施した。
また,情報基盤緊急整備事業によりテレメータ雨量計やワイヤセンサーなどの観測機器や,これらのデータを処理する監視装置,情報の伝達等に関する機器の設置,及びこれらを統合する土砂災害警戒避難システムの整備を推進した。
b 火山砂防事業
火山地,火山麓地,又は火山活動により著しい被害を受ける恐れのある地域における,泥流,土石流等に関する対策を全国371溪流において実施した。
また,活火山20火山22地区において火山地域における警戒避難体制を整備する火山噴火警戒避難対策事業を実施した。
c 砂防環境整備事業
上流に砂防設備が整備され,土石流等による直接的な土砂災害のおそれがなくなった都市及び都市周辺の13溪流において実施した。
d 溪流再生事業
すぐれた自然的環境や,良好な町並みなどの社会的環境を持つ地域等の溪流において,景観や親水性の向上,生態系の回復等を図り,周辺の地域環境に相応しい良好な溪流を再生することを目的に7溪流において実施した。
e 砂防設備修繕事業
老朽化した既設の砂防設備について,修繕を行うことにより機能維持・回復を図ることを目的として事業を実施した。
f 砂防激甚災害対策特別緊急事業
平成10年度に土石流等により激甚な災害が発生した栃木県那須地区において,再度災害を防止するための整備を緊急に実施した。
4 急傾斜地崩壊対策事業
a 急傾斜地崩壊対策事業補助
建設省においては,がけ崩れから安全で安心して暮らすことのできる生活基盤の確保を図るため,第4次急傾斜地崩壊対策事業五箇年計画に基づき急傾斜地崩壊防止施設の整備を計画的かつ効果的に実施した。
特に危険箇所の集中した地区や災害多発地区,がけ崩れにより著しい被害が想定されている地区,重要交通網にかかる地区,老人福祉施設等の災害弱者に関連した施設にかかる地区等を中心に急傾斜地崩壊対策事業を推進した。
また,急傾斜地崩壊危険箇所の増加の抑制に努めるとともに,ボランティア団体と連携した「斜面カルテ」「土砂災害110番」の充実等,警戒避難体制の整備を促進した。
一方,緑豊かな斜面空間を創出するため,既存樹木を残しつつ斜面の安全度の向上を図る「緑の斜面工法」を積極的に導入したほか,地域活性化を支援する急傾斜地崩壊対策事業を推進した。
(事業費 124,770,000千円 国費 62,385,000千円)
b 急傾斜地崩壊対策事業調査
事業の効率的な執行を図るため,地震による急傾斜地の崩壊機構,並びに自然を活かした斜面安定化工法等に関する調査研究を行った。
5 治山事業
農林水産省においては,災害に強い安全な国土づくり,水源地域の機能強化,豊かな環境づくりを基本方針とする第九次治山事業七箇年計画の3年度として,都市及び集落の周辺,国土保全上重要な流域の山地等の保全に重点を置いて次の事業を実施した。
(事業費 363,860,529千円 国費 216,195,387千円)
(注)
地すべり防止事業分を除いた額である。
5-1 国有林治山事業
国有林野内における荒廃地を対象として,復旧治山事業を実施した。
また,山地荒廃危険地のうち,緊急を要するものについて予防治山事業を実施したほか,水源地域整備,環境保全保安林整備,保安林整備,防災対策総合治山等の各事業を実施した。
5-2 民有林治山事業
(1) 直轄事業
a 治山事業
継続21地区において事業を実施した。
b 地すべり防止事業
後掲(5章6-1(1))
c 治山計画等に関する調査
山地保全調査,地すべり対策調査,治山事業積算基準等分析調査及び森林生態系を重視した公共事業導入手法調査を実施した。
(2) 補助事業
a 山地治山事業
(a) 都市及び集落の周辺,国土保全上重要な流域の山地等における荒廃地復旧を図るため,復旧治山事業を緊急度の高い2,795箇所において実施した。
(b) 都市及び集落の周辺,主要道路,国土保全上重要な流域の山地等における荒廃危険地を対象として,災害の未然防止を図るため,予防治山事業を緊急度の高い1,254か所において実施した。
(c) 新技術による省力・機械化工法,低コスト工法,自然環境に配慮した工法等の開発,普及,定着を図る森林土木効率化等技術開発モデル事業を6地区において実施した。
(d) 激甚災害により被災した地域において,風倒木・流木等に起因する山地災害を未然に防止するため,山地災害危険地対策に係る林地荒廃防止事業を99か所において実施した。
(e) 老朽化等により機能が著しく低下している治山施設の機能回復を図るため,治山施設修繕事業を21か所において実施した。
b 防災林造成事業
飛砂,潮風,高潮等の被害を防止する海岸防災林,強風による被害を防止する防風林,なだれの被害を防止するなだれ防止林,山火事等が発生し機能の失われた森林からの土砂の崩壊・流出を防止する土砂流出防止林を造成する事業を337か所において実施した。
c 保安林整備事業
被災した保安林の機能の回復・強化を図る復旧整備,特定保安林内における機能の低位な保安林の整備,治山事業を施行した箇所等の保育,及び周辺に開発が及ぶなど滅失の危機に直面している保安林の適切な維持を図るための買入を行う事業を3,506か所において実施した。
d 保安林管理道整備事業
治山事業の計画的かつ効率的な実施及び保安林の適正な維持管理に資するために,恒久的な車道の開設・改良を50地区において実施した。
e 防災対策総合治山事業
(a) 荒廃山地,荒廃危険山地等が存する集落周辺において,山地災害の未然防止を図るため,治山施設の設置及び災害緩衝林の造成等を行う地域防災対策総合治山事業を233地区において実施した。
(b) 火山地域において,荒廃地の復旧整備及び泥流,土石流等による山地災害の未然防止を図るため,治山ダム,観測施設等の設置等を行う火山地域防災機能強化総合治山事業を4地区において実施した。
f 水源地域整備事業
(a) ダム上流等の水資源確保上重要な水源地域において,水資源の確保と国土の保全に資するため,荒廃地等の復旧整備及び荒廃森林等の整備を面的,総合的に実施する水源森林総合整備事業を229地区において実施した。
(b) 集落等の後背小流域において,森林の有する水源かん養機能等を高度に発揮させるため,荒廃森林の整備,荒廃地等における水土保全施設等の整備等を行う集落水源山地整備事業を80地区において実施した。
(c) 良質な生活用水の確保・保全と併せ保健休養にも資するため,荒廃森林や水質保全施設とともに,溪畔森林等の整備を行う森林水環境総合整備事業を62地区において実施した。
g 環境保全保安林整備事業
(a) 地域住民の生活周辺において,防災機能と保健機能を高度に発揮する保安林を整備するため,自然林の造成,改良等を行う生活環境保全林整備事業を171地区において実施した。
(b) 自然環境が優れた地域において,森林の有する国土保全機能,自然環境保全機能等を高度に発揮させるため景観・生態系等に配慮した工法や森林整備等を行う自然環境保全治山事業を40地区において実施した。
(c) 都市周辺の山麓部等において,山地災害の防止等と併せて生活環境を保全・形成するため,自然林の造成,改良等を行う環境防災林整備事業を128地区において実施した。
h 国有林野内補助治山事業
国有林野に係る治山事業のうち,集落,公共施設等と密接な関連を有する53箇所について国有林野内補助治山事業を実施した。
i 地すべり防止事業
後掲(5章6-2(1))
6 地すべり対策事業
6-1 直轄事業
(1) 農林水産省所管事業
農林水産省においては,次の事業を実施した。
a 地すべり調査
地すべりの抜本的防止と土地の有効利用を図るための斜面改変技術の開発,地すべり危険地の分布・対策の必要性等の把握,地震による地すべり発生の危険度評価手法の確立,地下水探査・解析の新技術を用いた地すべり地の地下水流動解析手法の確立及び低コスト型の地すべり観測技術の開発に係る調査を実施した。
(国費 141,000千円)
b 直轄地すべり対策事業
継続8地区のほか新たに1地区について事業を実施した。
(国費 8,292,415千円)
c 地すべり防止事業
継続11地区(直轄治山と重複している6地区を含む。)において事業を実施した。
(事業費 8,446,978千円 国費 6,304,556千円)
(2) 建設省所管事業
a 地すべり調査
継続11地区において,地すべり機構の解明と,地すべり対策の計画・立案に資するための基礎的な調査を実施した。
(事業費 56,600千円 国費 52,200千円)
b 地すべり対策事業
継続12地区において事業を実施した。
また,警戒避難等ソフト対策に資する地すべり監視モデル事業,地すべり防止工事により排出される地下水の有効利用を図る特定地下水関連地すべり対策事業等を推進した。
(事業費 12,111,600千円 国費 8,681,000千円)
6-2 補助事業
(1) 農林水産省所管事業
農林水産省においては,次の事業を実施した。
a 地すべり対策事業
農地及び農業用施設に被害を及ぼすおそれのあるもののうち,緊急度が高くかつ事業効果の大きい地区に重点を置き,事業を実施した。
(事業費 23,030,033千円 国費 11,466,752千円)
b 地すべり防止事業
集落,公共施設等に被害を及ぼすおそれが大きくかつ緊急に対策を必要とする地区に重点を置き,事業を実施した。
(事業費 27,776,001千円 国費 13,846,000千円)
(2) 建設省所管事業
建設省においては,次の事業を実施した。
(事業費 47,176,600千円 国費 23,590,800千円)
a 地すべり対策事業
地すべりにより人家,公共施設等に被害を及ぼすおそれが大きく,かつ,近年の豪雨等により地すべり被害のあった区域など緊急に対策を必要とする区域及び治水上影響が特に大きい区域,並びに老人福祉施設等の災害弱者施設を保全対象に含む区域に重点を置き事業を実施した。
また,地すべり防止工事により排出される地下水の有効利用を図る特定地下水関連地すべり対策事業,地すべり斜面の有効利用を図る特定利用斜面保全事業,警戒避難等ソフト対策に資する地すべり監視モデル事業等を推進した。
b 地すべり防止施設修繕事業
既設の地すべり防止施設の機能回復を図る事業を実施した。
7 海岸保全事業
7-1 直轄事業
(1) 農林水産省所管事業
農林水産省においては,4地区について海岸保全施設の整備を行うとともに,その適正な実施を図るために必要な調査を行った。
(国費 4,469,044千円)
(2) 運輸省所管事業
運輸省においては,7海岸について,津波防波堤等の海岸保全施設の整備を行うとともに,事業の円滑な実施を図るため,海象調査等の海岸事業調査を行った。
(国費 6,524,988千円)
(3) 建設省所管事業
建設省においては,13海岸において,海岸保全施設の整備を行うとともに,全国の代表的海岸において海象調査等の海岸事業調査を行った。
(国費 21,555,426千円)
7-2 補助事業
(1) 農林水産省所管事業
農林水産省においては,高潮対策事業を266地区(農地113地区,漁港153港),侵食対策事業を136地区(農地83地区,漁港53港),海岸環境整備事業を148地区(農地43地区,漁港105港),公有地造成護岸等整備事業を7地区(農地3地区,漁港4港)についてそれぞれ実施したほか,局部改良事業,補修事業を実施した。
(事業費 65,558,770千円 国費 31,825,500千円)
(2) 運輸省所管事業
運輸省においては,高潮対策事業を155海岸,侵食対策事業を56海岸,海岸環境整備事業を100海岸,公有地造成護岸等整備事業を9海岸でそれぞれ実施したほか,局部改良事業,補修事業を実施した。
(事業費 83,444,376千円 国費 38,160,883千円)
(3) 建設省所管事業
建設省においては,高潮対策事業を100海岸,侵食対策事業を98海岸,海岸環境整備事業を56海岸,海域浄化対策事業を2海岸,公有地造成護岸等整備事業を2海岸についてそれぞれ実施したほか,局部改良事業,補修事業を実施した。
(事業費 56,511,701千円 国費 27,226,000千円)
8 農地防災事業
農林水産省においては,農地,農業用施設等の災害を未然に防止し,農業生産の維持及び農業経営の安定を図るとともに,国土の保全に資するため,次の事業を実施した(地すべり対策事業及び地盤沈下対策事業は別掲)。
8-1 直轄事業
a 国営総合農地防災事業
農村地域の地盤沈下等外的要因により生じた農地及び農業用施設の機能低下又は災害のおそれに対処するため,農業用用排水施設等の整備を19地区で実施した。
(事業費 38,612,720千円 国費 29,003,992千円)
8-2 補助事業
a 農地防災事業
洪水被害や土壤の侵食被害等を未然に防止するため,防災ダム事業,ため池等整備事業,湛水防除事業,農地保全整備事業,中山間地域総合農地防災事業等について,緊急度が高くかつ事業効果の大きいものに重点を置いて実施した。
(事業費 166,920,862千円 国費 92,884,589千円)
b 地すべり対策事業
前掲(5章6-2(1))
c 地盤沈下対策事業
後掲(5章10(3))
9 災害関連事業
(1) 農業用施設災害関連事業等
農林水産省においては,次の事業を実施した。(表5-9-1)
(事業費 55,865,068千円 国費 42,408,041千円)
a 農業用施設災害関連事業
農業用施設の効用を増加し,再度災害を防止するため,災害復旧事業と併せて改良工事を実施した。
b ため池災害関連特別対策事業
ため池の効用を増加し,再度災害を防止するため,災害復旧事業と併せて改良工事を実施した。
c 農地災害関連区画整備事業
著しい被害を受けた農地について,再度災害を防止するため,災害復旧事業と併せて区画整備を実施した。
d 災害関連農村生活環境施設復旧事業
農村生活環境施設の災害に対処する事業を実施した。
e 災害関連緊急地すべり対策事業
豪雨等による地すべりに緊急に対処する事業を実施した。
f 直轄治山等災害関連緊急事業及び災害関連緊急治山等事業
激甚な災害により発生した土砂の崩壊,雪崩,地すべり等のうち,緊急度が高く,民生安定上放置し難い箇所について,公共土木施設等の災害復旧事業と並行して災害発生年度内に復旧する事業を実施した。
g 森林災害復旧造林事業
平成10年及び平成11年の激甚災害により発生した被害森林の復旧を図る事業を実施した。
h 林地崩壊対策事業
平成10年及び平成11年の激甚災害により発生した林地荒廃地のうち,早期に復旧する必要のある個所について事業を実施した。
i 漁港施設災害関連事業
著しい被害を受けた漁港施設について,再度災害を防止し,施設の効用を増加させるため,災害復旧事業と併せて改良工事を実施した。
(2) 港湾施設災害関連事業
運輸省においては,著しい被害を受けた港湾施設等について,再度災害を防止し,施設の効用を増加させるため,災害復旧事業と併せて改良工事を実施した。
(事業費 1,309,950千円 国費 655,459千円)
(3) 河川等災害関連事業
建設省においては,次の事業を実施した。(表5-9-2)
a 直轄河川等災害関連緊急事業
再度災害防止のため,災害復旧と併せて改修計画に基づく改良事業を99河川で実施した。
b 河川等災害復旧助成事業・河川等災害関連事業
災害復旧事業のみでは十分な効果を期待し得ない河川等について,再度災害を防止するため,災害復旧と併せ,未被災箇所も含めた一連区間について改良復旧事業を行った。
c 河川等災害関連特別対策事業(災特)
河川の災害復旧関連事業等の改良復旧効果を確保するため,障害物の除去等の事業を実施した。
d 河川等災害特定関連事業(特関)
河川の災害復旧事業に関連して,災害発生の原因となった障害物の除去・是正を行った。
e 特定小川災害関連事業(小川関連)
河川の災害復旧に関連して,小規模な河川において,再度災害を防止し,積極的に河川機能の確保を図るため,未被災箇所も含めて緩勾配護岸等により改良復旧事業を行った。
f 災害関連地域防災がけ崩れ対策事業・災害関連緊急砂防等事業
風水害,震災,山林火災,火山活動等による土砂の崩壊等に緊急に対処するため,砂防工事,地すべり防止工事及び急傾斜地崩壊防止工事等を実施した。平成11年は,6月末から7月はじめの梅雨前線豪雨に伴う広島県を中心とした激甚な土砂災害をはじめ,全国各地で土砂災害が発生した。このため,二次災害に備える砂防関係施設の整備を行った。
10 地盤沈下対策事業
(1) 地盤沈下対策調査
環境庁においては,次の調査を実施した。
a 地盤沈下監視測定調査
工業用水法及び建築物用地下水の採取の規制に関する法律に基づく地下水採取規制地域等において,地盤高,地下水位の変動状況及び地質に係る調査に要する経費に対し,補助した。
(事業費 105,774千円 国費 35,258千円)
b 地下水揚水量等実態調査
地盤沈下地域及びその周辺の地下水理上密接な関連を有する地域内の主要な事業所等を対象に,地下水揚水量等の実態調査を行い,その結果について解析した。
(国費 11,384千円)
c 関東平野北部地盤沈下防止等広域対策調査
地盤沈下の防止等に係る各般の対策を調整し,総合的に推進するため,関東平野北部地域について,地下水の大量採取が続く場合の沈下量の予測と地下水採取を抑制するための方策の検討・調査した。
(国費 7,294千円)
(2) 地下水対策調査
国土庁においては,濃尾平野,筑後・佐賀平野及び関東平野北部について,地盤沈下防止等対策要綱に基づく対策を推進したほか,平成12年度に目標年度を迎える関東平野北部地盤沈下防止等対策要綱の見直しに向けての検討調査,地域固有の水循環システムの再生・構築に関する調査を実施した。
(国費 53,140千円)
(3) 地盤沈下対策事業等
農林水産省においては,次の事業を実施した。
a 地盤沈下防止対策としての水源転換並びに地盤沈下により低下した農地及び農業用施設の効用回復を図るため,緊要度が高くかつ事業効果の大きい地区に重点を置き事業を実施した。
(事業費 13,932,792千円 国費 7,593,000千円)
b 地盤沈下調査
農地,農業用施設等について,相当な範囲にわたり地盤沈下による被害が発生している地区を対象として,地盤沈下機構を解明し,その防止対策を検討するための調査を実施した。
(国費 42,500千円)
c 保全かん養調査
地下水の過剰揚水等により,水位の異常低下,水質の悪化等の障害が生じている地域について,地下水機構(かん養機構,障害発生機構等)を明らかにして地下水の保全と適正利用のための計画を策定するための調査を4地区において実施した。
(国費 20,250千円)
d 地下水位長期観測調査
主要な農業用地下水利用地域において,地下水障害の未然防止と地下水資源保護のため,地下水位の長期的な監視とその動向分析を行い,地下水の最適利用システムを樹立するための調査を11地区において行った。
(国費 22,300千円)
e 地下水強化実用化調査
農業用地下水の安定的な利用に障害が生じ,又は地盤沈下により農地及び農業用施設に被害が生じている地域において,効果的な地下水かん養技術の確立及び実用化のための計画策定手法を明らかにするための調査を行った。
(国費 30,000千円)
f 地下水利用合理化技術確立調査
地下水位低下等の地下水障害が発生しているが地形等の条件により地表水への水源転換が不可能な地域において,地下水取水の合理化技術を確立するための調査を行った。
(国費 30,000千円)
(4) 地盤沈下防止対策事業等
通商産業省においては,次の事業を実施した。
a 地盤沈下防止対策工業用水道事業
工業用水法では地盤沈下等の著しい地域を政令指定し,一定基準に不適合な工業用井戸からの地下水揚水を制限しているため,地下水に代わる水源として工業用水道の整備を推進することとし,建設3事業及び改築10事業に対し補助した。
(事業費 5,216,855千円 国費 1,257,500千円)
b 地下水利用適正化調査
地下水障害の問題に有効かつ機動的に対処するとともに,その未然防止を図るため,2地域において調査を実施するとともに,既調査地域について,地下水位の観測調査を行った。また,全国各地に設立されている地下水利用対策協議会に対する指導の拡充を図るため,自主規制の効果等に関する調査を行った。
(国費 53,715千円)
c 地下水位観測調査
工業用水法に基づく指定地域の規制等による効果を測定するため,観測井により,地下水位等の観測調査を実施した。
(国費 5,243千円)
d 地域別工業用水使用合理化指導調査
水需給のひっ迫化や地盤沈下等地下水障害の防止のため,地域別に工業用水使用合理化指導調査を実施し,工業用水使用合理化指導準則の策定地域に対する指導を行った。
(国費 6,847千円)
e 業種別工業用水使用合理化基礎調査
技術革新の進展等による各業種の質的変化及び先端産業の新展開に適切に対処するため,水使用合理化に関する基礎調査を実施した。
(国費 6,824千円)
(5) 低地対策河川事業等
建設省においては,次の事業を実施した。
a 低地対策河川事業等
(a) 31河川において,地盤沈下による内水被害を防除するため,排水機場の設置等を実施した。
[事業費 36,753,500千円 国費 13,141,000千円]
(注)
[ ]書きは,5章1に計上したものの内数である。(予算額については,(2)hの低地対策河川事業に係るものであり,地盤沈下対策はこの内数として実施。)
(b) 地盤沈下の著しい地域について,地盤沈下対策関連として,地下水から河川水への水源転換等のためダム建設事業等を実施した。
b 地盤沈下対策調査
河川管理施設の沈下対策を検討するため,5河川で水準測量を行った。
c 地下水保全管理調査
地下水を適正に保全,管理し,地盤沈下等の地下水障害の防止施策の立案に資するため,全国主要地下水域において,地下水の水位及び水質の観測を継続実施するとともに,地下水管理計画等策定のための調査を実施した。
(国費 30,442千円)
d 地盤沈下調査関連水準測量
建設省国土地理院においては,主要地盤沈下地域7地区において水準測量を行い,地方公共団体の行う地盤沈下調査結果と合わせて各地域の地盤沈下実態を明らかにした。
また,地盤沈下地域の地盤高図及び地盤沈下量図の作成資料を得るための簡易水準測量及び資料収集を実施した。
(国費 17,761千円)
11 下水道事業
建設省においては,都市化の進展に伴う雨水流出量の増大に対処し,安全性の確保を図るため,浸水防除に寄与する公共下水道事業,都市下水路事業等を実施した地方公共団体等に対して補助を行った。
また,地下空間浸水等に対処するため,地下空間内水対策緊急事業を創設した。
(事業費 352,958,000千円 国費 176,798,000千円)
(1) 公共下水道事業
主として市街地内に降った雨水を河川等に排除するため,市町村が主な事業主体となって実施した。
(2) 都市下水路事業
公共下水道整備地域以外における市街地内の雨水排除を図るため,市町村等が事業主体となって実施した。
12 その他の事業
(1) 保安林整備管理事業
農林水産省においては,保安林整備臨時措置法の延長に伴い改正された保安林整備計画に基づき,災害の防備,水源のかん養等を目的とした保安林の配備を進めるとともに,保安林の適正な管理を推進するため,立木伐採等の許可事務,保安林標識・台帳の整備,保安林の境界等の実態把握等の事業に対して助成した。
(事業費 1,293,891千円 国費 1,068,874千円)
(2) 休廃止鉱山鉱害防止等事業等
通商産業省においては,次の事業を実施した。
a 休廃止鉱山鉱害防止等事業
鉱害防止義務者が不存在又は無資力の休廃止鉱山の鉱害防止のために地方公共団体の実施する事業に対して補助を行うとともに,鉱害防止義務者が実施する休廃止鉱山の坑廃水処理事業のうち,義務者に起因しない汚染に係る部分に対し補助を行った。
(事業費 5,965,767千円 国費 3,404,312千円)
b ぼた山災害防止対策事業
崩壊流出等の危険性のあるぼた山のうち,防災工事を実施する義務者が不存在又は無資力のものについて,地方公共団体が実施する災害防止工事(崩壊防止工事,保全工事等)に対し助成した。
(事業費 1,829,866千円 国費 1,234,278千円)
c 放置坑口閉そく対策事業
石炭の採掘事業の廃止後放置されている坑口及び坑道に係る陥没穴への周辺住民の墜落等の危険防止のため,閉そく工事を実施する義務を有する鉱業権者が不存在又は無資力のものについて,地方公共団体が実施する放置坑口の埋戻し工事等に対し助成した。
(事業費 4,488千円 国費 2,992千円)
(3) 鉄道防災事業
運輸省においては,旅客鉄道株式会社等及び日本鉄道建設公団がそれぞれ施行する国土保全に係る荒廃山地及び海岸等並びに青函トンネルの防災事業に対し補助を行った。
(事業費 1,360,152千円 国費 755,620千円)
(4) 自然災害防止事業債等
自治省においては,地域防災計画に掲げられている災害危険区域において,地方公共団体が災害の発生を予防し,又は災害の拡大を防止するために単独で実施する事業について,804億円の自然災害防止事業債を措置した。また,地方公共団体が単独事業として実施する河川管理施設又は砂防設備に関する工事その他の治山治水事業等について,1,282億円の臨時河川等整備事業債を措置した。
13 平成11年度国土保全関係事業別予算額等総括表
(表5-13-1) 平成11年度国土保全関係事業別予算額等総括表
第6章 災害復旧等
1 災害応急対策
1-1 阪神・淡路大震災に対してとった措置
(1) 阪神・淡路大震災に対する総合対策
兵庫県警察では,平成7年7月に活動を開始した「フェニックス・パトロール隊」を中心に,引き続き,被災地域を中心とした各種パトロール等復興活動に対応した支援活動と被災地の治安維持活動を推進した。
また,仮設住宅及び復興住宅居住者の安全と安心の確保を目的として平成8年3月に計画した「地域フェニックス・プラン」に沿って,引き続き,居住者の意見や要望等の把握,犯罪や事故の防止,高齢者や身障者等に対する支援等の活動を推進した。
(2) 児童生徒等への支援
要保護及び準要保護児童・生徒に対する援助
文部省においては,災害に伴い経済的な理由で就学困難となった小・中学校の要保護及び準要保護児童・生徒に援助を行った市町村に対し,次の援助を行った。(表6-1-1)
(3) 災害救助法に基づく応急仮設住宅の供与期間の延長等
厚生省においては,災害救助法により設置された応急仮設住宅の供与期間の延長及び解体撤去に係る経費100億1,533万円について50億766万円の国庫負担を行った。
(事業費 10,015,326千円 国費 5,007,663千円)
(4) 災害弔慰金等
厚生省においては,平成10年度に引き続き,災害弔慰金の支給等に関する法律に基づき,本災害により死亡した者の遺族に対し支給した災害弔慰金,1,375万円について688万円の国庫負担を行った。
(事業費 13,750千円 国費 6,875千円)
(5) 産業復興支援
通商産業省においては,阪神・淡路大震災の被災地域における経済復興に資する産業支援体制を整備するため,民活法の支援措置による産業関連基盤施設整備の促進,被災中小企業の再建・復興に向けた支援策の促進を図るとともに,復興に係る企画・調査事業,各種復興関連プロジェクトの実現に向けた支援を行った。
(国費 174,340千円)
(6) 中小企業対策
中小企業庁においては,被災中小企業者への支援策として,平成11年度においては次に掲げる措置を講じた。
a 資金調達の円滑化
政府系中小企業金融三機関(中小企業金融公庫,国民生活金融公庫,商工組合中央金庫)による「災害復旧貸付」の適用を延長し,中小企業の資金供給の円滑化を図った。
また,中小企業信用保険法の特例措置を講じた。
b 操業の早期再開の支援等
中小企業総合事業団の高度化融資により,仮設工場・店舗等,貸工場・貸店舗等の整備を行った。
c その他の措置
官公需確保対策,中小企業者からの相談への対応等を実施した。
(7) 災害義援金の郵送振替による無料取扱い
(8) 建設省における対策
a 地震により山崩れが発生し土石流等の土砂災害の発生が懸念される六甲山系において,砂防事業,地すべり対策事業,急傾斜地崩壊対策事業を推進した。
b 土砂災害に対する安全性を高め,緑豊かな都市環境と景観の保全・創出に資する「都市山麓グリーンベルト」の整備を継続して実施した。
(9) 税制上の措置
地方税については,平成10年度に引き続き,関係地方公共団体において,固定資産税及び事業所税に係る減免措置等が講じられた。
また,平成10年度に引き続き,被災市街地復興推進地域内において行われる土地区画整理事業に伴う復興共同住宅区内の土地の共有持分の取得等の不動産の取得に係る不動産取得税及び特別土地保有税の非課税措置,阪神・淡路大震災により滅失・損壊した鉄道施設等の復旧資産及び被災家屋の代替家屋に係る固定資産税及び都市計画税の特例措置が講じられるとともに,被災家屋の代替家屋に係る不動産取得税の特別措置が新たに講じられた。
(10) 消防防災機関の防災活動
消防庁においては,「防災まちづくり事業」及び「緊急防災基盤整備事業」に基づき,地方単独事業による防災センター等の整備に対し支援を行った。
1-2 平成11年6月23日から7月3日までの梅雨前線豪雨に対してとった措置
(1) 政府調査団の現地への派遣及び災害対策関係省庁連絡会議の開催
6月30日10時より,災害対策関係省庁連絡会議を開催し,関谷国土庁長官(当時)を団長とする政府調査団を広島県に派遣することを決定するとともに,[1]行方不明者の捜索救助に全力をあげること,[2]これまでに生じた災害に対し適切に対応を続け,復旧が速やかに進められるよう対応すること,[3]関係機関は今後とも迅速かつ的確な情報の収集・伝達を行い,関係地方公共団体も含め,緊密な連携を図り,警戒体制に万全を期すこと,[4]事態の推移に応じ必要があれば災害対策関係省庁連絡会議を開催する等,関係省庁の連絡を密にしていくこと等を確認した。
政府調査団は6月30日から7月1日にかけて,関谷国土庁長官(当時)を団長とする12省庁27名の陣容で,広島県内の被災現地を視察した。
政府調査団帰京後の7月1日22時より,第2回災害対策関係省庁連絡会議を開催し,現地調査について報告を行うとともに,これまでに生じた災害に対し適切に対応していくこと,及び上記の[1]から[4]の事項を確認した。
(2) 警察庁における対応
警察庁及び関係管区警察局においては,「災害警備連絡室」等を設置して,情報の収集及び関係機関との連絡調整等に当たった。
広島県その他関係都道府県警察では,「災害警備本部」等を設置して,救出救助活動,住民の避難誘導及び交通規制等に当たるとともに,鳥取県警察広域緊急援助隊及び山口県警察広域緊急援助隊等が,被害の大きかった広島県において救出救助活動等に当たった。
(3) 防衛庁における対応
福岡,兵庫及び広島県知事からの災害派遣要請を受け,6月29日から7月2日までに,延べ約780名を派遣し,人命救助,行方不明者の捜索,水防活動,堤防決壊箇所の復旧,偵察活動,給水支援等の活動を実施した。
(4) 科学技術庁における対応
科学技術庁防災科学技術研究所においては,研究者3名が豪雨発生機構の解明に必要な現地データの収集及びマサ土に集中した土砂崩れの原因解明のための現地調査を行った。
(5) 国土庁における対応
a 6月29日12時30分「情報対策室」を設置し,関係機関から情報収集を行うとともに,官邸,関係省庁に情報連絡を行った。
b 被災者生活再建支援法の適用
広島県全域に被災者生活再建支援法を適用し,同法の用件に合致する被災世帯の内,65世帯に合計5,368万5千円の被災者生活再建支援金を支給し,国はその半額を補助した。
(6) 災害救助法の適用
厚生省においては,広島県広島市,呉市,福岡県福岡市において災害救助法を適用し,避難所の設置,応急仮設住宅の供与,炊き出し等による食品の給与,被服・寝具等生活必需品の給与等を実施した。また,救助に擁した費用1億8,672万6千円に対して9,336万3千円の国庫負担を行った。
(事業費 186,726千円 国費 93,363千円)
(7) 災害弔慰金
厚生省においては,災害弔慰金の支給等に関する法律に基づき,本災害により死亡した者の遺族に対し支給した災害弔慰金1億750万円について5,375万円の国庫負担を行った。
(事業費 107,500千円 国費 53,750千円)
(8) 農林水産省における対応
次の措置を講じた。
a 災害対策本部等の設置及び担当官の派遣
6月29日に林野庁長官を本部長とする「林野庁6月末梅雨前線豪雨災害対策本部」を設置した。また,30日には松下政務次官,林野庁長官他担当官を災害現地に調査のため派遣した。
b 激甚災害法の適用
本災害が「6月16日から7月4日までの間における梅雨前線による豪雨」として激甚災害に指定されたことにより,農地,農業用施設等の早期復旧を図るため,農地,農業用施設及び林道施設災害復旧事業に係る国庫補助率の嵩上げ措置を行った。
(9) 中小企業対策
中小企業庁では,6月29日に広島県及び福岡県における政府系中小企業金融三機関及び信用保証協会の各支店に相談窓口を設置するとともに,政府系中小企業金融三機関に「災害復旧貸付」の適用を開始した。
(10) 運輸省における対応
岡山県水島港,広島県広島港,福岡県博多港において6月23日〜7月3日の豪雨による河川からの土砂・流木塵の流出により航路・泊地が埋塞したため,作業船により土砂浚渫及び流木塵の回収処分を行い機能回復を図った。
佐賀県星賀港,長崎県郷ノ浦港においては,道路法面が被災し,地滑り抑止工事等を行い安定を図った。
(11) 気象庁における対応
本庁および各地方気象台等において,大雨や洪水に関する情報並びに警報,注意報を適時発表し警戒を呼びかけた。また,二次災害防止に必要な気象情報の提供を関係省庁及び自治体等へ随時行った。
(12) 郵政省における対応
1 郵便葉書等の無償交付
次のとおり被災世帯に対し,郵便葉書及び郵便書簡を無償交付した。(表6-1-3)
2 被災者が差し出す郵便物の料金免除
次のとおり被災者が差し出す郵便物の料金免除を行った。(表6-1-4)
3 救助用の現金又は物品を内容とする郵便物の料金免除
次のとおり被災者の救助を行う団体にあてた救助用郵便物の料金免除を行った。(表6-1-5)
(表6-1-5) 救助用の現金又は物品を内容とする郵便物の料金免除
4 郵便貯金,郵便為替等の非常取扱い
5 災害義援金の郵便振替による無料取扱い
6 郵便局舎等火災復旧事業
災害により被害を受けた郵便局舎等について,復旧事業を行った。
(国費 17,531千円)
(13) 特設公衆電話等(無料)の設置
西日本電信電話株式会社においては,被災者等の通信手段を確保するため,避難所等39ヶ所に特設公衆電話101台(無料)を設置した。
(14) 放送受信料の免除
NHKにおいては,次のとおり放送受信料の免除を実施した。(表6-1-8)
(15) 建設省における対応
次の措置を講じた。
a 本省に「6月末梅雨前線豪雨災害対策本部」を設置(6月30日)し,被害状況の把握等に努めた。また,同日,建設大臣が広島県を,建設政務次官が福岡県の被災現地を視察した。
b 福岡市の地下鉄・地下街等の浸水状況について四省庁(国土,運輸,建設,自治省消防庁)合同調査を実施した。
c 被災箇所のうち必要なものについては,応急復旧工事を実施するよう地方公共団体に指導した。
(16) 地方交付税による措置
自治省においては,大きな被害を受けた広島県下22市町,山口県下9町村,長野県下4市町に対し,地方交付税法第16条第2項の規定に基づき,9月に定例交付すべき普通交付税の一部11,067百万円を繰上げ交付した。
(17) 災害応急対策等
消防庁では,6月26日に第1次応急体制をとり,関係地方公共団体からの情報収集を行った。29日には第2次応急体制をとり,全国の都道府県に「大雨警戒情報」を発出し警戒強化を要請するとともに,災害対策連絡室を設置した。また,各都道府県に災害弱者施設の災害対策の周知徹底を図るよう緊急通知を行った。
1-3 平成11年8月13日〜15日の大雨に対してとった措置
(1) 警察庁における対応
警察庁及び関係管区警察局においては,「災害警備連絡室」等を設置して,情報の収集及び関係機関との連絡調整等に当たった。
関係都道府県警察では,「災害警備本部」等を設置して,ヘリコプター等による救出救助活動,行方不明者の捜索活動,住民の避難誘導及び交通規制等に当たった。
(2) 防衛庁における対応
神奈川県知事からの災害派遣要請を受け,8月14日から8月25日までに延べ約2,190名を派遣し,山北町玄倉川において行方不明者の捜索及び救出活動及び相模川座架依り橋付近において中洲に取り残された3名の人命救助を行った。
(3) 国土庁における対応
8月14日14時「情報対策室」を設置し,関係機関から情報収集を行うとともに,官邸,関係省庁に情報連絡を行った。
(4) 農林水産省における対応
次の措置を講じた。
a 本災害が「8月10日から同月20日までの間の豪雨」として激甚災害に指定されたことにより,農地,農業用施設及び林道施設災害復旧事業に係る国庫補助率の嵩上げ措置を行った。
b 既住貸付制度資金の償還猶予等
関係機関に対して既住貸付制度資金の償還猶予等及び災害関係資金の円滑な融通について指導した。
(5) 気象庁における対応
本庁および各地方気象台等において,大雨や洪水に関する情報並びに警報,注意報を適時発表し警戒を呼びかけた。また,二次災害防止に必要な気象情報の提供を関係省庁及び自治体等へ随時行った。
(6) 建設省における対応
a 14日,情報収集体制強化のため連絡員を配備するとともに,地方支部に対し排水ポンプ車等の出動を指示した。また,15日及び16日に災害対策用ヘリコプター「あおぞら」号を派遣し,現地調査を行った。
b 被災箇所のうち必要なものについては,応急復旧工事を実施するよう地方公共団体に指導した。
(7) 災害応急対策等
消防庁では,8月14日に第1次応急体制をとり,関係地方公共団体から情報を収集するとともに,適切な対応をとるよう要請した。
1-4 台風第16号に対してとった措置
(1) 警察庁における対応
警察庁及び関係管区警察局においては,「災害警備連絡室」等を設置して,情報の収集及び関係機関との連絡調整等に当たった。
関係都道府県警察では,「災害警備本部」等を設置して,救出救助活動,行方不明者の捜索活動,住民の避難誘導及び交通規制等に当たった。
(2) 災害弔慰金
厚生省においては,災害弔慰金の支給等に関する法律に基づき,本災害により死亡した者の遺族に対し支給した災害弔慰金3,000万円について1,500万円の国庫負担を行った。
(事業費 30,000千円 国費 15,000千円)
(3) 農林水産省における対応
次の措置を講じた。
a 天災融資法の適用
「9月13日から同月25日までの間の豪雨及び暴風雨」として天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法を適用し,被害を受けた農林漁業者に対し,低利の経営資金を融通する措置を講じた。
b 本災害が「9月13日から同月25日までの間の豪雨及び暴風雨」として激甚災害に指定されたことにより,農地,農業用施設及び林道施設等災害復旧事業に係る国庫補助率の嵩上げ措置,天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置の特例措置を講ずるとともに,森林災害復旧事業に対する補助を行った。
c 農業共済金の早期かつ円滑な支払
被害状況を早急に調査の上,損害評価を迅速・的確に行い関係団体に対して農業共済金を早期に支払うよう指導した。
d 既住貸付制度資金の償還猶予等
関係機関に対して既住貸付制度資金の償還猶予等及び災害関係資金の円滑な融通について指導した。
(4) 運輸省における対応
大分県佐賀関港において台風16号の豪雨により河川から流木塵が流出し,泊地が埋塞したため,作業船により回収処分を行い機能回復を図った。
大分県津久見港において,道路法面が崩壊したため,崩落した土砂を撤去し,モルタル吹付等により安定を図った。
(5) 気象庁における対応
本庁および各地方気象台等において,台風に関する情報並びに暴風,大雨等に関する警報,注意報さらに全般・地方海上警報を適時発表し警戒を呼びかけた。また,二次災害防止に必要な気象情報の提供を関係省庁及び自治体等へ随時行った。
(6) 建設省における対応
次の措置を講じた。
a 本省においては,9月15日,緊急体制を発令し,被害状況の把握等に務めた。また,地方建設局においては内水排除のため被災現地に排水ポンプ車等を派遣した。
b 被災箇所のうち必要なものについては,応急復旧工事を実施するよう地方公共団体に指導した。
(7) 災害応急対策等
消防庁では,9月14日に全国の都道府県に「大雨警戒情報」を通知し,警戒強化を要請するとともに,15日には第1次応急体制をとり,関係地方公共団体から情報収集をすると共に,適切な対応をとるよう要請した。
1-5 平成11年台風第18号と前線に伴う大雨に対してとった措置
(1) 政府調査団の現地への派遣及び関係省庁連絡会議の開催
9月24日13時より,災害対策関係省庁連絡会議を開催し,政府調査団を派遣することを決定するとともに,[1]行方不明者の捜索救助に全力をあげること,[2]これまで生じた被害に対し適切に対応を続け,復旧が速やかに進められるよう対応すること,[3]関係機関は今後とも迅速かつ的確に情報の収集・伝達を行い,関係地方公共団体も含め,緊密な連携を図り,警戒体制に万全を期すること,[4]事態の推移に応じ必要があれば,災害対策関係省庁連絡会議を開催する等,関係省庁の連携を密にしていくこと,等を確認した。
政府調査団は9月25日に関谷国土庁長官(当時)を団長とする12省庁29名からなる陣容で,熊本県の被災現地を視察した。
政府調査団帰京後の9月25日22時より,第2回災害対策関係省庁連絡会議を開催し,政府調査団に係る報告を行い,これまでに生じた被害に対し適切に対応を続けていくこと,及び上記の[1]から[4]の事項を確認した。
(2) 警察庁においてとった措置
警察庁及び関係管区警察局においては,「災害警備連絡室」等を設置して,情報の収集及び関係機関との連絡調整等に当たった。
関係都道府県警察では,「災害警備本部」等を設置して,舟艇等による救出救助活動,行方不明者の捜索活動,住民の避難誘導及び交通規制等に当たった。
(3) 防衛庁においてとった措置
山口県知事,大分県知事,第7管区海上保安本部長からの災害派遣要請を受け,9月24日から9月26日までに,延べ約120名を派遣し,防府市内及び大分県九重町において給水支援,関門海峡において海底に沈降したコンテナの捜索を実施した。
(4) 国土庁における対応
a 9月24日10時「情報対策室」を設置し,関係機関から情報収集を行うとともに,被害及び対応状況をとりまとめ,官邸,関係省庁に伝達した。また,24日,被害現況を確認するため,防災局防災企画官をはじめ4名からなる情報先遣チームを高潮被害のあった熊本県不知火町に派遣した。
b 被災者生活再建支援法の適用
愛知県豊橋市,山口県下関市,宇部市,山口市,防府市,小野田市,大畠町,秋穂町,阿知須町,山陽町,福岡県北九州市及び熊本県全域に被災者生活再建支援法を適用し,同法の用件に合致する被災世帯の内,238世帯に合計17,712万6千円の被災者生活再建支援金を支給し,国はその半額を補助した。
(事業費 176,646千円 国費 88,323千円)
(5) 税務行政上の措置
大蔵省においては,次のとおり税務行政上の措置を講じた。
a 申告,納付等の期限の延長
災害により,申告,納付等をその期限までに行うことができないと認められる納税者について,その申請に基づき,災害によるやむを得ない理由のやんだ日から2ヶ月以内の日を期日として指定し,申告,納付等の期限を延長した。
b 納税の猶予
災害により,その財産に相当の損害を受けた納税者及び国税を一時に納税することができないと認められる納税者について,その申請に基づき,1年以内の期間についてその国税の全部又は一部の納税を猶予した。
(6) 災害救助法の適用
厚生省においては,山口県山口市,下関市,宇部市,防府市,小野田市,玖珂郡大畠町,吉敷郡秋穂町,吉敷郡阿知須町,厚狭郡山陽町,熊本県熊本市,宇土市,宇土郡不知火町,下益城郡松橋町,下益城郡小川町,八代郡鏡町,八代郡龍北町,天草郡竜ヶ岳町,天草郡御所浦町,福岡県北九州市において災害救助法を適用し,避難所の設置,応急仮設住宅の供与,炊き出し等による食品の給与,被服・寝具等生活必需品の給与等を実施した。また,救助に要した費用1億2,890万6千円に対して6,445万3千円の国庫負担を行った。
(事業費 128,906千円 国費 64,453千円)
(7) 災害弔慰金
厚生省においては,災害弔慰金の支給等に関する法律に基づき,本災害により死亡した者の遺族に対し支給した災害弔慰金6,250万円について3,125万円の国庫負担を行った。
(事業費 62,500千円 国費 31,250千円)
(8) 農林水産省における対応
次の措置を講じた。
a 災害対策本部等の設置及び担当官の派遣
9月24日に「台風18号災害対策関係局庁連絡会議」を設置するとともに,同日熊本県不知火町の高潮被災地に水産庁の担当官を派遣し,25日には松下政務次官を熊本の災害現場へ調査のため派遣した。
b 天災融資法の適用
「9月13日から同月25日までの間の豪雨及び暴風雨」として天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法を適用し,被害を受けた農林漁業者に対し,低利の経営資金を融通する措置を講じた。
c 本災害が「9月13日から同月25日までの間の豪雨及び暴風雨」として激甚災害に指定されたことにより,農地,農業用施設及び林道施設等災害復旧事業に係る国庫補助率の嵩上げ措置,天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置の特例措置を講ずるとともに,森林災害復旧事業に対する補助を行った。
d 農業共済金の早期かつ円滑な支払い
被害状況を早急に調査の上,損害評価を迅速・的確に行い関係団体に対して農業共済金を早期に支払うよう指導した。
e 既往貸付制度資金の償還猶予等
関係機関に対して既往貸付制度資金の償還猶予等及び災害関係資金の円滑な融通について指導した。
(9) 中小企業対策
中小企業庁では,9月24日に山口県,熊本県及び福岡県における政府系中小企業金融三機関及び信用保証協会の各支店に相談窓口を設置するとともに,政府系中小企業金融三機関に「災害復旧貸付」の適用を開始した。
(10) 運輸省における対応
護岸,防波堤,浮棧橋等340か所に及んだ被害に対し,浮棧橋等75か所については応急復旧工事を実施し,緊急に機能回復を図ったほか,その他の施設についても早期復旧を図った。
(11) 気象庁における対応
本庁および各地方気象台等において,台風に関する情報並びに暴風,大雨等に関する警報,注意報さらに全般・地方海上警報を適時発表し警戒を呼びかけた。また,二次災害防止に必要な気象情報の提供を関係省庁及び自治体等へ随時行った。
(12) 郵政省における対応
1 郵便葉書等の無償交付
次のとおり被災世帯に対し,郵便葉書及び郵便書簡を無償交付した。(表6-1-9)
2 被災者が差し出す郵便物の料金免除
次のとおり被災者が差し出す郵便物の料金免除を行った。(表6-1-10)
3 救助用の物品又は現金を内容とする郵便物の料金免除
次のとおり被災者の救助を行う団体にあてた救助用郵便物の料金免除を行った。(表6-1-11)
(表6-1-11) 救助用の物品又は現金を内容とする郵便物の料金免除
4 郵便貯金,郵便為替等の非常取扱い
5 災害義援金の郵便振替による無料取扱い
6 郵便局舎等災害復旧事業
災害により被害を受けた郵便局舎等について,復旧事業を行った。
(国費 66,762千円)
(13) 特設公衆電話等(無料)の設置
西日本電信電話株式会社においては,被災者等の通信手段を確保するため,避難所1ケ所に特設公衆電話14台(無料)を設置した。
(14) 放送受信料の免除
NHKにおいては,次のとおり放送受信料の免除を実施した。(表6-1-14)
(15) 建設省における対応
次の措置を講じた。
a 本省に「台風18号災害対策本部」を設置(9月24日)し,被害状況の把握等に努めた。また,同日,本省職員等を高潮災害現地に派遣し調査を行った。
b 地方建設局においては,災害対策用ヘリコプター「はるかぜ」号を現地調査のため出動させるとともに,対策本部車等を高潮災害現地へ派遣した。
c 被災箇所のうち必要なものについては,応急復旧工事を実施するよう地方公共団体に指導した。
(16) 地方交付税による措置
自治省においては,大きな被害を受けた山口県下19市町村,熊本県下9市町,広島県下7町村,鹿児島県下1町に対し,地方交付税法第16条第2項の規定に基づき,11月に定例交付すべき普通交付税の一部6,378百万円を繰上げ交付した。
(17) 災害応急対策等
消防庁では,9月21日に全国の都道府県に「大雨警戒情報」を通知し,警戒強化を要請するとともに,24日には,消防庁次長を長とする災害対策連絡室を設置し,関係地方公共団体から情報収集を行った。
また,25日には消防庁審議官を被災現地に派遣し調査を実施した。
1-6 平成11年10月27日からの大雨に対してとった措置
(1) 警察庁における対応
警察庁及び関係管区警察局においては,「災害警備連絡室」等を設置して,情報の収集及び関係機関との連絡調整等に当たった。
関係都道府県警察では,「災害警備本部」等を設置して,救出救助活動,行方不明者の捜索活動,住民の避難誘導及び交通規制等に当たった。
(2) 防衛庁における対応
青森県知事,岩手県知事からの災害派遣要請を受け,10月28日から11月3日までに,延べ約700名を派遣し,青森県八戸市内馬淵川で流された行方不明者の捜索,浅水川の決壊により孤立した八戸市内の学校及び住宅地3カ所に対するボートによる孤立者の救助等を実施し,岩手県九戸郡軽米地区においては給水支援を実施した。
(3) 国土庁における対応
a 国土庁においては,関係機関から情報収集を行うとともに,被害及び対応状況をとりまとめ,官邸,関係省庁に伝達した。
b 被災者生活再建支援法の適用
岩手県軽米町に被災者生活再建支援法を適用し,同法の用件に合致する被災世帯の内,21世帯に合計1,760万円の被災者生活再建支援金を支給し,国はその半額を補助した。
(事業費 17,600千円 国費 8,800千円)
(4) 災害救助法の適用
厚生省においては,青森県八戸市,岩手県九戸郡軽米町において災害救助法を適用し,避難所の設置,応急仮設住宅の供与,炊き出し等による食品の給与,被服・寝具等生活必需品の給与等を実施した。また,救助に要した費用1億6,701万6千円に対して8,350万8千円の国庫負担を行った。
(事業費 167,016千円 国費 83,508千円)
(5) 災害弔慰金
厚生省においては,災害弔慰金の支給等に関する法律に基づき,本災害により死亡した者の遺族に対し支給した災害弔慰金1,000万円について500万円の国庫負担を行った。
(事業費 10,000千円 国費 5,000千円)
(6) 農林水産省における対応
次の措置を講じた。
a 担当官の派遣
11月18日,青森県及び岩手県の災害現地へ担当官を派遣した。
b 本災害が「10月27日及び同月28日の豪雨」として激甚災害に指定されたことにより,農地,農業用施設及び林道施設災害復旧事業に係る国庫補助率の嵩上げ措置を行った。
c 既往貸付制度資金の償還猶予等
関係機関に対して既往貸付制度資金の償還猶予等及び災害関係資金の円滑な融通について指導した。
(7) 中小企業対策
中小企業庁では,10月29日に青森県及び岩手県における政府系中小企業金融三機関及び信用保証協会の各支店に相談窓口を設置するとともに,政府系中小企業金融三機関に「災害復旧貸付」の適用を開始した。
(8) 気象庁における対応
本庁および各地方気象台等において,大雨や洪水に関する情報並びに警報,注意報を適時発表し警戒を呼びかけた。また,二次災害防止に必要な気象情報の提供を関係省庁及び自治体等へ随時行った。
(9) 郵政省における対応
1 被災者が差し出す郵便物の料金免除
次のとおり被災者が差し出す郵便物の料金免除を行った。(表6-1-15)
2 救助用の現金又は物品を内容とする郵便物の料金免除
次のとおり被災者の救助を行う団体にあてた救助用郵便物の料金免除を行った。(表6-1-16)
(表6-1-16) 救助用の現金又は物品を内容とする郵便物の料金免除
3 郵便貯金,郵便為替等の非常取扱い
4 災害義援金の郵便振替による無料取扱い
(10) 特設公衆電話等(無料)の設置
東日本電信電話株式会社においては,被災者等の通信手段を確保するために避難所3ヶ所に特設公衆電話27台を設置し,村役場等3か所に衛星携帯電話4台を配備した(いずれも無料)。
また,被災者の安否確認のための災害用伝言ダイヤルを運用した。
(11) 放送受信料の免除
NHKにおいては,次のとおり放送受信料の免除を実施した。(表6-1-19)
(12) 建設省における対応
次の措置を講じた。
a 本省においては,10月28日,緊急体制を発令し被害状況の把握等に努めた。また,地方建設局においては対策本部車等を被災現地へ派遣した。
b 被災箇所のうち必要なものについては,応急復旧工事を実施するよう地方公共団体に指導した。
(13) 災害応急対策等
消防庁では,関係地方公共団体から情報収集をするとともに,適切な対応をとるよう要請した。
1-7 東海村ウラン加工施設における臨界事故に対してとった措置
(1) 政府の対応
科学技術庁長官を本部長とする事故対策本部から報告を受けた政府は,事態の深刻さにかんがみ,9月30日21時,小渕内閣総理大臣を本部長,関係閣僚を構成員とする政府対策本部を総理大臣官邸危機管理センターに設置し,現地に内閣危機管理監,国土庁長官官房審議官,消防庁審議官等を含む関係省庁幹部職員等を派遣した。
また,今回の事故対応の教訓を踏まえ,「原子力災害対策特別措置法」の制定及び「核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の一部改正により法制面の整備を行うとともに,平成11年度第2次補正予算で,約1,268億円を計上した。また,原子力災害危機管理関係省庁会議において,原子力災害対策のあり方等について検討を行い,原子力災害危機管理に関する報告書を発表するなどした。
(2) 警察庁における対応
警察庁及び関東管区警察局においては,「事故対策警備本部」等を設置して,情報の収集及び関係機関との連絡調整等に当たるとともに,現地に警察庁職員を派遣して,茨城県警察及び関係機関との緊密な連携を図った。
茨城県警察では,「事故対策警備本部」を設置して,住民の避難誘導,周辺の交通規制等に当たった。
(3) 防衛庁における対応
茨城県知事からの災害派遣要請を受け,9月30日から10月4日まで,陸上自衛隊第101化学防護隊等の人員延べ約360名,車両延べ約130両を勝田駐屯地等に派遣,待機させた。
(4) 科学技術庁の対応
9月30日午前11時19分,JCOの規制担当省庁である科学技術庁に事故の第一報がもたらされ,これを受け,現地の運転管理専門官に直ちにJCOに向かうよう指示,緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステムによるモニタリングポストデータの監視開始,関係機関へのモニタリング支援要請を行った。
事故の状況把握後,事態を緊急時と判断して,防災基本計画に基づく政府の事故対策本部(本部長は科学技術庁長官)を設置した。
一方,現地体制としては,原子力安全局次長他を派遣し,午後3時30分頃に科学技術庁現地対策本部を設置して対応にあたった。
(5) 国土庁における対応
事故発生の情報入手直後から,「情報対策室」を設置し,関係機関から情報収集を行った。
(6) 厚生省における対応
a 厚生省においては,茨城県那珂郡東海村,那珂郡那珂町において災害救助法を適用し,避難所の設置,炊き出し等による食品の給与,被服・寝具等生活必需品の給与等を実施した。また,救助に要した費用2,274万円に対して1,137万円の国庫負担を行った。
(事業費 22,740千円 国費 11,370千円)
b 職員を現地に派遣し,現地情報の把握に努めるとともに健康危機管理調整会議を中心とした省内対策本部を設置。国立水戸病院等において現地住民を対象とした健康診断等を実施するとともに,国立病院東京災害医療センター等から重篤な被ばく者が入院する放射線医学総合研究所に看護婦を派遣した。さらに,茨城県が実施した住民の健康診断等への財政支援を実施した。
(国費 23,000千円)
(7) 農林水産省における対応
農産物等の安全性が確認されるまでの間,事故現場から半径10km以内について出荷自粛等を関連団体を通じて要請する一方,茨城県,厚生省と連携して,農林水産物等の被ばくに関するサンプリング調査・分析を行い,その結果,安全性が確認されたため,10月2日に政府としての安全宣言を発表した。
安全宣言後は茨城県産農産物の安全性について,関係者及び消費者等への情報提供等を行い,風評被害の防止に努めた。
また,事故の影響を被った農業者等に対しては,経営に必要な資金の円滑な融通及び既貸付金の償還猶予等が図られるよう関係金融機関等に対して要請を行った。
(8) 中小企業対策
中小企業庁では,10月1日に茨城県における政府系中小企業金融三機関及び信用保証協会の各支店に相談窓口を設置するとともに,政府系中小企業金融三機関に「災害復旧貸付」の適用を開始した。
(9) 海上保安庁における対応
本庁及び第三管区海上保安本部並びに那珂湊海上保安部に対策本部を設置し,海上における航行警報を発令し,付近航行船舶に対し注意喚起を実施した。
(10) 気象庁における対応
現地対策本部に職員を急派するとともに,本庁及び各地方気象台等において,放射能影響の把握等に必要な気象情報を関係自治体等に随時提供した。また,環境放射線モニタリングを実施して取りまとめ結果を公表した。
(11) 郵政省における対応
1 郵便貯金,郵便為替等の非常取扱い
2 災害義援金の郵便振替による無料取扱い
(12) 特設公衆電話等(無料)の設置
東日本電信電話株式会社においては,緊急避難者等の通信手段を確保するために避難所1ヶ所に特設公衆電話4台を設置し,村役場1ヶ所に衛星携帯電話4台を配備した(いずれも無料)。
また,緊急避難者の安否確認のための災害用伝言ダイヤルを運用した。
(13) 建設省における対応
a 9月30日,本省及び地方建設局において警戒体制を発令し,情報収集等に努めた。
b 久慈川等の水質及び道路植栽帯表土のウラン濃度分析結果を現地政府対策本部へ提供した。また,下水処理場での水質測定指導,国営常陸海浜公園の開園,建設工事の中止及び自粛の要請等の措置を行った。
(14) 地方交付税による措置
自治省においては,大きな被害を受けた茨城県下1町に対し,地方交付税法第16条第2項の規定に基づき,11月に定例交付すべき普通交付税の一部226百万円を繰上げ交付した。
(15) 消防庁等における対応
消防庁においては,現地からの通報を受け午後1時に「災害警戒連絡室」を設置した。その後「消防庁対策本部」に改組して体制を強化し,関係地方公共団体から災害状況及び市町村の対応状況に関する情報を集約して関係省庁等に提供した。また,茨城県,同県内市町村及び消防機関に対して,広報・避難,緊急搬送体制の確立を要請した。
重篤な被ばく者3人については,東海村消防本部の救急車によって国立水戸病院へ搬送した後,茨城県防災ヘリコプター及び千葉市消防局の救急車によって科学技術庁放射線医学総合研究所へ搬送した。
1-8 その他の災害に対してとった措置
(1) 雲仙岳噴火による災害に対してとった措置
郵政省においては,災害義援金の郵便振替による無料取扱いを実施した。(表6-1-22)
(2) 平成10年台風10号に対してとった措置
厚生省においては,災害弔慰金の支給等に関する法律に基づき,平成10年台風10号により障害を受けられた者に対し支給した災害障害見舞金250万円について125万円の国庫負担を行った。
(事業費 2,500千円 国費 1,250千円)
(3) 7月21日大雨に対してとった措置
厚生省においては,災害弔慰金の支給等に関する法律に基づき,7月21日大雨により死亡した者の遺族に対し支給した災害弔慰金250万円について125万円の国庫負担を行った。
(事業費 2,500千円 国費 1,250千円)
(4) 7月23日諌早市大雨に対してとった措置
厚生省においては,災害弔慰金の支給等に関する法律に基づき,7月23日諌早市大雨により死亡した者の遺族に対し支給した災害弔慰金250万円について125万円の国庫負担を行った。
(事業費 2,500千円 国費 1,250千円)
(5) 8月27日から28日の対馬地方大雨に対してとった措置
a 災害救助法の適用
厚生省においては,長崎県下県郡豊玉町において災害救助法を適用し,避難所の設置,炊き出し等による食品の給与,被服・寝具等生活必需品の給与等を実施した。また,救助に要した費用135万6千円に対して67万8千円の国庫負担を行った。
(事業費 1,356千円 国費 678千円)
b 災害弔慰金
厚生省においては,災害弔慰金の支給等に関する法律に基づき,本災害により死亡した者の遺族に対し支給した災害弔慰金250万円について125万円の国庫負担を行った。
(事業費 2,500千円 国費 1,250千円)
c 郵政省においては,次のとおり災害義援金の郵送振替による無料取扱いを実施した。(表6-1-23)
d 被災者が差し出す郵便物の料金免除(表6-1-24)
次のとおり被災者が差し出す郵便物の料金免除を行った。
e 救助用の現金を内容とする郵便物の料金免除(表6-1-25)
次のとおり被災者の救助を行う団体にあてた救助用郵便物の料金免除を行った。
(6) 9月7日大雨に対してとった措置
厚生省においては,災害弔慰金の支給等に関する法律に基づき,9月7日大雨により死亡した者の遺族に対し支給した災害弔慰金250万円について125万円の国庫負担を行った。
(事業費 2,500千円 国費 1,250千円)
(7) 有珠山噴火災害に関してとった措置
a 北海道開発庁においては,本庁及び北海道開発局に対策本部を設置し,災害対策用ヘリコプター,災害対策車などを現地に出動・配備して現地の情報収集・監視を行うとともに,情報伝達経路を確保し即応体制をとった。
b 運輸省においては,本省及び北海道運輸局に対策本部を設置し,航空関係者,鉄道事業者等に注意喚起を行い,交通の安全の確保に万全を期した。また,観光関係団体に対しても,注意喚起するとともに,新たな観光客が立ち入ることのないよう所要の措置をとることを要請する等の措置を行った。
c 海上保安庁においては,本庁及び第一管区海上保安本部に対策本部を設置し,付近住民の避難及び物資の輸送に備え,巡視船艇11隻,航空機10機を現場海域に配備し即応体制をとった。
d 郵政省においては,次のとおり郵便貯金,郵便為替等の非常取扱いを実施した。(表6-1-26)
e 建設省においては,噴火前の3月29日に担当官を現地に派遣し,噴火による災害を想定した各種調査を行い,3月31日に本省に対策本部を設置した。また,火山活動の状況に応じて,道央道室蘭IC〜長万部IC間,一般国道及び道道各3路線で通行禁止措置を講じた。
f 建設省国土地理院においては,3月29日より,職員3名を現地に派遣し,山体の動きを無人で連続観測できる臨時GPS観測点の設置候補地の選定を行った。
(8) 激甚災害及びこれに対し適用すべき措置の指定
政府においては,次の災害に対し激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律を適用することとし,激甚災害及びこれに対し適用すべき措置の政令指定を行った。(表6-1-27) a,b
(参考)
(防衛庁)
平成11年度災害派遣の実績(表6-1-28)
(気象庁)
平成11年に発表した気象等警報,津波予報の回数について
[気象等警報](表6-1-29)
[津波予報](表6-1-30)
2 災害復旧事業
2-1 公共土木施設災害復旧事業
(1) 河川等
建設省においては,次のとおり災害復旧事業を実施した。
(事業費 455,043,859千円 国費 353,134,024千円)
a 直轄事業
平成10年災害に係る河川,ダム,海岸及び砂防設備については,復旧を完了した。
また,平成11年災害に係る河川は91.2%,ダムは94.0%,砂防設備は91.3%,海岸は91.2%,道路は100%を復旧した。
b 補助事業
平成9年災害の復旧を完了し,平成10年災害は96.8%,平成11年災害は69.7%を復旧した。また,市町が行った市町道に係る降灰除去事業に対してその一部を補助した。
c 平成11年災害に対する措置
直轄災害(河川,ダム,砂防設備,海岸,道路)について復旧箇所703か所,復旧事業費1,212億9,254万円,補助災害(河川,海岸,砂防設備,地すべり防止施設,急傾斜地崩壊防止施設,道路,下水道,公園)について復旧箇所39,579か所,復旧事業費3,640億1,736万円を決定した。
(2) 治山施設等
農林水産省においては,次のとおり災害復旧事業を実施した。
(事業費 16,304,328千円 国費 12,768,788千円)
a 直轄事業
(a) 治山施設
平成10年災害は復旧を完了し,平成11年災害については,87.7%を復旧した。
(b) 漁港・海岸
平成10年災害について,復旧を完了した。
b 補助事業
(a) 治山施設
平成9年災害及び平成10年災害の復旧を完了し,平成11年災害は99.1%を復旧した。
(b) 漁港・海岸
漁港及び海岸保全施設等については,平成9年災害の復旧を完了し,平成10年災害の98.1%,平成11年災害の88.1%を復旧した。
c 平成11年災害に対する措置
治山施設の直轄災害については,復旧箇所34か所,復旧事業費35億7,902万円を,また,治山施設,海岸,地すべり防止施設及び漁港の補助事業について復旧箇所433か所(治山48か所,農地海岸等40か所,漁港345か所),復旧事業費121億3,608万円(治山28億1,598万円,農地海岸等15億144万円,漁港78億1,896万円)を決定した。
(3) 港湾等
運輸省においては,次の通り災害復旧事業を実施した。
(事業費 20,934,574千円 国費 17,011,000千円)
a 直轄事業
平成10年災害の復旧を完了し,平成11年災害は99%を復旧した。
b 補助事業
平成9年災害の復旧を完了し,平成10年災害は98%,平成11年災害は90%を復旧した。
c 平成11年災害に対する措置
所管の港湾の直轄災害について復旧箇所12か所,復旧事業費50億807万円,また,補助災害について復旧箇所369か所(港湾263か所,海岸106か所),復旧工事費192億3,654万円を決定した。
2-2 農林水産業施設災害復旧事業
農林水産省においては,次のとおり災害復旧事業を実施した。(表6-2-2)
(事業費 120,275,604千円 国費 111,088,577千円)
(表6-2-2) 平成11年度農林水産業施設等災害復旧事業費
(1) 直轄事業
国が施行する農業用施設災害復旧事業については,平成10年災害の復旧を完了し,平成11年災害の86.6%を復旧した。
(2) 補助事業
地方公共団体,土地改良区等が施行する補助事業については,災害発生の年を含めて3か年で復旧する方針に基づき,次のとおり実施した。
a 農地
平成9年災害の復旧を完了し,平成10年災害は99.0%,平成11年災害は90.1%を復旧した。
b 農業用施設
平成9年災害の復旧を完了し,平成10年災害は98.0%,平成11年災害は82.7%を復旧した。
c 林道
平成9年災害の復旧を完了し,平成10年災害は98.1%,平成11年災害は91.1%を復旧した。
d 漁業用施設
平成10年災害の復旧を完了し,平成11年災害の93.3%を復旧した。
e 農林水産業共同利用施設
平成10年及び11年災害の復旧を完了した。
f 治山施設
平成11年災害の復旧を完了した。
(3) 平成11年災害に対する措置
農地,農業用施設,治山施設,林道,漁業用施設及び農林水産業共同利用施設については,「農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律」を適用して,復旧箇所42,214か所(農地16,913か所,農業用施設21,170か所,林道4,085か所,林地荒廃防止施設1か所,漁業用施設7か所,農林水産業共同利用施設149か所),事業費1,099億3,839万円(農地234億6,507万円,農業用施設593億9,936万円,林道263億4,884万円,林地荒廃防止施設1,345万円,漁業用施設3億4,506万円,農林水産業共同利用施設6億2,197万円)を,農業用施設の直轄代行については,復旧箇所3か所,事業費1億6,292万円を決定した。また,緊急に復旧を要するものについては,早期に査定を実施し,必要な復旧措置を講じた。
2-3 文教施設等災害復旧事業
文部省においては,次のとおり災害復旧事業を実施した。(表6-2-3)
(表6-2-3) 平成11年度予算において実施した文教施設等災害復旧事業費・国費
(1) 国立学校施設
平成11年災害の復旧を完了した。
(2) 公立学校施設
平成11年災害の復旧を完了した。
(3) 文化財
阪神・淡路大震災の復旧事業は,平成11年をもって完了した。
2-4 厚生施設等災害復旧事業
(1) 医療施設
厚生省においては,阪神・淡路大震災により,被害を受けた医療施設等の災害復旧事業について,補助を行った。
平成11年度医療施設近代化施設整備事業分(単位:千円)
事業費 国費 | |
病 院 | 960,340 226,537 |
診療所 | 11,680 1,188 |
計 | 972,020 227,725 |
(2) 水道施設
上水道施設及び簡易水道施設の平成10年災害及び平成11年災害については,ほぼ復旧を完了した。
2-5 その他の災害復旧事業
(1) 国有庁舎施設等
大蔵省においては,平成11年災害により被害を受けた国有建物・がけ地等(普通財産)の崩壊復旧事業を国費1,322万8千円をもって実施した。(表6-2-5)
(2) 合同宿舎
大蔵省においては,平成11年災害により被害を受けた公務員宿舎(合同宿舎)の復旧事業を国費1億4,263万2千円をもって実施した。(表6-2-6)
(3) 鉄道災害復旧事業
運輸省においては,鉄道事業者が行う地震・豪雨等による大規模な災害の復旧に要する費用の一部を補助した。
(事業費 1,271,826千円 国費 317,956千円)
(4) 公営住宅
建設省においては,平成11年災害により被害を受けた既設公営住宅1,562戸について,復旧事業を実施した。
(事業費 315,112千円 国費 164,725千円)
(5) 都市施設
建設省においては,地方公共団体が施行する災害復旧事業,堆積土砂排除事業及び降灰除去事業により,平成11年災害による都市施設等の復旧を完了した。
(事業費 680,354千円 国費 329,046千円)
3 財政金融措置
3-1 災害融資
(1) 沖繩振興開発金融公庫
沖繩振興開発金融公庫においては,災害により被害を受けた事業者等に対し災害の復旧を図るための資金として750万円の融資を行った。
[融資額 7,500千円]
(2) 国民生活金融公庫の融資
国民金融公庫においては,被災中小企業者に対し,次のとおり災害融資を行った。(表6-3-1)
(3) 資金運用部資金の貸付
大蔵省においては,地方公共団体に対する資金運用部資金の貸付額を次のとおり決定した。(表6-3-2)
(4) 私立学校施設
日本私立学校振興・共済事業団においては,災害により被害を受けた私立学校に対して貸付条件を緩和した復旧資金の融資措置を講じた。
また,防災(地震)機能強化のための施設の整備事業について優遇措置を講じた。
[融資額 600,000千円]
(5) 経営資金の融資
農林水産省においては,天災による被害農業者等が必要とする経営資金(天災資金)を農業協同組合等から融資するため,平成11年中に発生した天災(平成11年9月13日から同月25日までの間の豪雨及び暴風雨)につき,融資枠70億円を決定した。その貸付実行額は7億4,527万円であった。
なお,過年度発生災害分を含め1億2,247万円の利子補給補助を行った。
(6) 農林漁業金融公庫の融資
農林漁業金融公庫においては,台風18号等の災害による被害農林漁業者の経営維持安定や施設の復旧等に必要な資金として,合計44億921万円の融資を行った。
(7) 阪神・淡路大震災被災中小企業者に対する融資
中小企業庁においては,阪神・淡路大震災被災中小企業者の災害復旧に係る資金について特別金融措置を実施し,商工組合中央金庫において,2件,3億円,中小企業金融公庫において,6件,4億2,000万円,国民金融公庫において,98件,12億9,300万円の融資を行った。
また,信用保証協会においては,16件,4億7,000万円の中小企業信用保険の特例措置を行った。
(注)
数値は,いずれも平成11年度
(8) 住宅金融公庫の融資
住宅金融公庫においては,被災家屋の迅速な復興を図るため,災害復興住宅資金等の融資を行った。また,阪神・淡路大震災に対する融資の取扱いについては,被災者の住宅建設・購入を支援するため,災害復興住宅資金融資を推進した。(表6-3-3)
[融資契約戸数6,968戸,融資契約額 179,323,300千円 うち阪神・淡路大震災に係る災害復興住宅貸付の融資契約戸数6,533戸,融資契約額174,309,600千円]
3-2 災害保険
(1) 地震再保険
大蔵省においては,「地震保険に関する法律」に基づき,地震再保険制度を運営していたところである。平成11年度においては,1回の地震等により政府が支払うべき再保険金の総額を3兆4,891.3億円と定めて実施した。
(2) 農林漁業災害補償等
農林水産省においては,農林漁業者の被る損害を補てんし,経営の安定を図るため,農業災害補償法,森林国営保険法,漁業災害補償法及び漁船損害等補償法に基づき,次のとおり保険金又は再保険金を支払った。(表6-3-4)
3-3 地方交付税及び地方債
自治省においては,災害復旧等に対する財政支援措置を次のとおり行った。
(1) 地方交付税による措置
(2) 災害関係地方債の許可状況
4 災害復興対策
4-1 阪神・淡路大震災に対してとった措置
(1) 地震防災フロンティア研究の推進
理化学研究所においては,兵庫県の協力のもと,兵庫県三木市において,多分野の研究者等の連携により,都市部を中心とする地震災害の軽減に関する先導的な研究の推進を図った。
[国費 267,752千円]
(注)
[ ]書きは第3章2-2(2)に計上したものの一部である。
(2) 実大三次元震動破壊実験施設の整備
科学技術庁防災科学技術研究所においては,構造物等の耐震性向上を図るため,阪神・淡路大震災級の地震動の再現により,実大規模の構造物等の破壊現象を解明する実大三次元震動破壊実験施設の整備を,兵庫県三木市において推進した。
[国費 7,991,041千円]
(注)
[ ]書きは第3章2-2(3)dに計上したものと同じである。
(3) 大阪湾ベイエリアの整備の促進等
a 阪神・淡路地域における活力あるまちづくり推進調査
国土庁においては,復興計画の中の大阪湾ベイエリア開発にとって重要な高次産業機能,高次都市機能等に関するプロジェクトのうち,緊急性,重要性の高いものに係る事業内容,事業化方策等の検討を実施した。
(国費 14,561千円)
b NTT無利子融資制度の融資比率の引き上げの実施
日本開発銀行のNTT株売払収入の活用による無利子貸付等においては,大阪湾臨海地域開発整備法に基づく中核的施設の整備の推進による被災地域の復興を図るため,平成11年度までに整備計画の承認を受けたものに対する融資比率の改善(神戸市,尼崎市,西宮市,芦屋市,伊丹市及び宝塚市において現行25%または37.5%を50%に引き上げ)を行った。
(4) 復興に伴う登記事務処理体制の整備
法務省においては,大量かつ集中的に申請される復興に伴う登記について,迅速に事務処理を行うため,他部署の職員による事務応援及び賃金職員の雇用による処理体制の整備を図った。
(国費 8,672千円)
(5) 登記特設相談所の開設
法務省においては,阪神・淡路大震災による建物倒壊や不動産所有者の死亡に伴って必要となる登記手続,登記簿謄抄本の交付請求手続及び公図の閲覧等について,一般の申請人から相談があった場合に適切に応えていくため,登記特設相談所を開設した。
(国費 13,054千円)
(6) 阪神・淡路大震災関係法律扶助事業
法務省においては,阪神・淡路大震災の発生に伴って急増した法的紛争について,経済的理由により自己の正当な権利を実現できない人を対象として民事法律扶助事業(訴訟費用等の立替え等)を財団法人法律扶助協会及び近畿弁護士連合会と共催で実施した。
(国費 26,402千円)
(7) 神戸港の復興に対する措置
運輸省においては被災地の復旧・復興の支援拠点として,臨海部において防災拠点の整備を推進した。
(事業費 8,306,000千円 国費 3,518,632千円)
(8) 鉄道の整備
運輸省においては,神戸市営地下鉄(新長田〜三宮間8.1km)の新線建設に要する費用の一部及び鉄道駅の利便性及び安全性の向上を図るため最寄駅(阪神電鉄岩屋駅,春日野駅)の総合的な改善事業について費用の一部を補助した。
(9) 地域非常通信のためのネットワーク技術の研究開発
郵政省においては,広域的な災害対策の迅速かつ的確な遂行を支援する耐災性の高い地域非常通信ネットワークを実現するため,引き続き阪神・淡路地域において先導的技術の研究開発を実施した。
(国費 104,859千円)
(10) 勤労者財産形成持家融資の特例措置
労働省においては,引き続き雇用促進事業団(現在の雇用・能力開発機構)の行う勤労者財産形成持家融資の特例措置として,既往貸付者に対し,り災割合に応じて支払いの猶予,貸付金利の軽減,償還期間の延長を行うとともに,新規貸付けについて5年以内の元金据置を認め,償還期間の延長及び貸付金利の軽減を行った。
(11) 安全衛生確保対策
労働省においては,阪神・淡路大震災復旧・復興工事に対する安全衛生確保対策として次のことを行った。
(国費 98,133千円)
a 安全衛生教育
新たに雇い入れられた者や作業内容が変更になった者等に対する安全衛生教育,危険有害業務に関する教育及び職長に対するレベルアップ研修を実施した。
b 工事現場巡回指導等
指導員による巡回指導を行った。
c 安全衛生設備の貸与
リフレッシュカー及び木造家屋建築工事の墜落防止用設備等の貸与を必要期間無償で行った。
d 相談業務の実施
専門家による安全衛生に関する相談,指導及び援助等を行った。
e 広報
毎月17日を安全の日と定め,安全衛生の理解と認識を深めるための垂幕を作成配布したほか,建設業セーフティーワッペンを配布し,安全意識の高揚に努めた。
また,行政,建災防支部の協力のもと,6月17日に建設業労働災害防止決起集会及び一斉合同パトロールを実施した。
(12) 年金福祉事業団による融資等
特例措置として年金災害復興住宅資金融資を講じ,住宅に5割以上の災害を受けた厚生年金の被保険者等に対し,1,000万円を貸付限度として2.0%の低利融資を行った。
(13) 被災者向け住宅確保対策
建設省においては,次の措置を講じた。
a 公的な住宅の供給
被災者の居住の安定を図るため,災害公営住宅等の供給及び家賃の特別低減対策のための補助を行った。
また,住宅建設と道路,公園等の整備を一体的・総合的に行う住宅市街地整備総合支援事業,密集住宅市街地において建築物の不燃化や老朽住宅の建替え等を総合的・段階的に行う密集住宅市街地整備促進事業を実施した。また,平成11年度補正予算において,これらの事業に追加的に財政支援措置を行った。さらに,不良住宅が密集し保安,衛生等に関し危険又は有害な状況にある地区の環境の整備改善を図る住宅地区改良事業を実施した。
b 個人の自力による住宅の再建,取得,補修の支援
通常融資と較べて低利の住宅金融公庫の災害復興住宅融資等により,個人の自力による住宅の再建,取得,補修を支援した。
c ニュータウン開発及び関連する公共施設の整備
住宅供給のために緊急かつ必要不可欠なニュータウン開発及び関連する公共施設の整備事業を実施した。
(14) 被災地域の再生等のための面的整備事業の推進
建設省においては,被災市街地復興推進地域等の再生,被災者のための住宅供給及び新都市核の整備に関連する土地区画整理事業,市街地再開発事業を実施した。
(15) 河川の復旧
建設省においては,被災した河川等の公共土木施設の復旧とあわせて,必要な箇所については改良復旧事業を実施した。
(16) 幹線道路等の整備
建設省においては,次の措置を講じた。
a 格子型幹線道路ネットワークを構成する高規格幹線道路等
阪神地域の交通の円滑化,緊急時における交通の高速化,代替性を確保するために,格子型幹線道路ネットワークを構成する高規格幹線道路等の整備を実施した。
b 格子型幹線道路ネットワークを補完する一般道路
緊急輸送路や広域迂回路の一部を形成する幹線道路等及び避難路や災害危険市街地における緊急活動を支援する路線等,格子型幹線道路ネットワークを補完する一般道路の整備を実施した。
(17) 防災性向上のための根幹的な公共施設の整備
建設省においては,次の措置を講じた。
a 避難地・防災活動拠点となる都市公園等の整備
大震災発生時に,復旧・復興本部や生活物資等の中継基地として機能する広域避難地や一時避難地となる防災公園,地域住民の集結場所,消防救護活動の拠点として機能する防災公園の整備等を実施した。
b 土砂災害対策の推進
二次災害の防止や避難路,避難地の安全確保等に資する土砂災害対策の推進,六甲山麓部において土砂災害に対する安全性を高め緑豊かな都市環境と景観の保全,創出に資するグリーンベルトの整備を推進・支援した。
c 公共施設の耐震性の向上
高速自動車国道,阪神高速道路,一般国道等のうち緊急度の高い橋梁についての耐震補強,新耐震基準に基づく下水道施設の整備,改良,ゼロメートル地帯等の海岸堤防等の補強を実施した。
(18) 災害に強いライフライン共同収容施設の整備
建設省においては,災害時におけるライフライン確保に資する共同溝及び電線共同溝の整備を実施した。
(19) 緊急時の消火・生活用水等の確保対策
建設省においては,下水処理水の活用のための高度処理施設等の整備を実施した。また,消火用水の安定的な供給や緊急時における消火用水等の供給が早期に可能となるダムの整備を実施・支援した。
(20) 情報通信基盤の整備
建設省においては,災害時の迅速かつ的確な災害情報等の収集,伝達,道路・河川利用者等への情報提供に資する道路・河川情報通信基盤の整備を実施した。
(21) 阪神・淡路大震災復興基金に係る地方財政措置
兵庫県及び神戸市においては,阪神・淡路大震災からの早期復興のための各般の行政施策を補完し,被災者の救済及び自立支援,並びに被災地域の総合的な復興対策を長期・安定的,機動的に進めることを目的とした(財)阪神・淡路大震災復興基金を平成7年4月1日に設立した。設立当初の同基金の規模は6千億円で,そのうち出資金2百億円,長期借入金5千8百億円を兵庫県と神戸市がいずれも2対1で負担している。
自治省としては,被害の甚大性等にかんがみ,同基金を支援することとし平成7年度において,県市の出資金及び長期借入金の原資に対して地方債を許可するとともに,長期借入金に係る地方債のうち,5,000億円から生じる利子について普通交付税措置(算入率95%)することとした。また,平成8年度においては,生活再建支援事業を行うために積み増しした基金3,000億円に対して地方債を許可するとともに,そのうち2,000億円から生じる利子について普通交付税措置(算入率95%)を講じることとした。
さらに,生活再建支援事業の拡充のため,平成8年度に積み増しした基金3,000億円の設置期間を4年間延長(平成17年度まで)し,そのうち1,500億円から生じる利子について普通交付税措置(算入率95%)を講じることとした。
なお,平成11年度においては,引き続き,長期借入金に係る地方債のうち7,000億円から生じる利子について普通交付税措置を講じている。
(22) 災害公営住宅等の家賃の低減
低所得者の被災者の居住の安定等を図るため,災害公営住宅等の家賃(40m2で3万円程度)について,地元地方公共団体が特別に減額する場合の特別措置として,入居後5年間,その減額分の一定割合を国が補助するとともに,地方負担について,特別交付税措置を講じるなどの支援を行った。
これにより,例えば神戸市の公営住宅の場合,夫婦世帯で年収100万円程度以下の層では家賃6千円程度まで引き下げられることとなった。
(23) 震災復興事業に係る特別の地方財政措置
自治省においては,被災市街地復興特別措置法に基づく「被災市街地復興推進地域」において被災地方公共団体が実施する土地区画整理事業及び市街地再開発事業に係る地方債の元利償還金について,引き続き地方交付税措置を講じた。
4-2 その他の災害に対してとった措置
(1) 雲仙岳噴火による災害に対してとった措置
a 農林水産省においては,次の措置を講じた。
(a) 水無川流域の農地等約38haについて,災害復旧事業及び災害関連事業を実施した。
(b) 降灰被害による被害農業者の経営の安定を図るため,活動火山周辺地域防災営農対策事業により被覆施設等の整備を実施した。
(c) 水無川流域等において,治山ダム11基を設置した。
(d) 眉山地区において,傾斜計,伸縮計等による観測を実施するとともに治山ダム4基を設置した。
b 建設省においては,次の措置を講じた。
(a) 監視カメラ,地震計,雨量計,水位計及び流速計などの機器を整備し,火砕流・土石流に対する警戒避難体制の整備を図った。
(b) 水無川流域において,以下の措置を講じた。
無人化施工により水無川2号砂防えん堤を完成させるとともに,除石工事,導流堤の建設,一般国道57号島原市の水無川橋の復旧及び一般国道251号橋,広域農道橋の復旧を実施した。
(c) 中尾川流域において,以下の措置を講じた。
千本木1号砂防えん堤及び一般県道の寺田橋を完成させるとともに,導流工の施工,除石及び市道の六ツ木橋・河原橋の高架化事業(補償工事)を引き続き実施した。
(d) 水無川の導流堤建設に併せて安中地区の土地嵩上げ事業を支援した(平成12年3月竣工)。
c 長崎県においては,平成3年9月26日に,地域の実情に応じたきめ細かな被災者等の救済対策を実施することを目的とした「財団法人雲仙岳災害対策基金」を県の出捐及び貸付により設立し,平成11年度までに1,066億円(県の出捐30億円,県の貸付1,000億円,義援金36億円)の規模に増額した。
自治省においては,平成8年度において,県の貸付に係る基金規模の増額分460億円に対して地方債を許可するとともに,その利子について既存の540億円に係る地方債の利子と同様,普通交付税措置(算入率95%)を講じることとするとともに,基金の設置期限を平成8年度からさらに5年間延長することとした。
平成11年度においては,引き続き,県の貸付金に係る地方債のうち1,000億円から生じる利子について普通交付税措置を講じている。