表示段落: 第2部/第6章/1/1-7


表示段落: 第2部/第6章/1/1-7


1-7 東海村ウラン加工施設における臨界事故に対してとった措置

(1) 政府の対応

 科学技術庁長官を本部長とする事故対策本部から報告を受けた政府は,事態の深刻さにかんがみ,9月30日21時,小渕内閣総理大臣を本部長,関係閣僚を構成員とする政府対策本部を総理大臣官邸危機管理センターに設置し,現地に内閣危機管理監,国土庁長官官房審議官,消防庁審議官等を含む関係省庁幹部職員等を派遣した。

 また,今回の事故対応の教訓を踏まえ,「原子力災害対策特別措置法」の制定及び「核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の一部改正により法制面の整備を行うとともに,平成11年度第2次補正予算で,約1,268億円を計上した。また,原子力災害危機管理関係省庁会議において,原子力災害対策のあり方等について検討を行い,原子力災害危機管理に関する報告書を発表するなどした。

(2) 警察庁における対応

 警察庁及び関東管区警察局においては,「事故対策警備本部」等を設置して,情報の収集及び関係機関との連絡調整等に当たるとともに,現地に警察庁職員を派遣して,茨城県警察及び関係機関との緊密な連携を図った。

 茨城県警察では,「事故対策警備本部」を設置して,住民の避難誘導,周辺の交通規制等に当たった。

(3) 防衛庁における対応

 茨城県知事からの災害派遣要請を受け,9月30日から10月4日まで,陸上自衛隊第101化学防護隊等の人員延べ約360名,車両延べ約130両を勝田駐屯地等に派遣,待機させた。

(4) 科学技術庁の対応

 9月30日午前11時19分,JCOの規制担当省庁である科学技術庁に事故の第一報がもたらされ,これを受け,現地の運転管理専門官に直ちにJCOに向かうよう指示,緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステムによるモニタリングポストデータの監視開始,関係機関へのモニタリング支援要請を行った。

 事故の状況把握後,事態を緊急時と判断して,防災基本計画に基づく政府の事故対策本部(本部長は科学技術庁長官)を設置した。

 一方,現地体制としては,原子力安全局次長他を派遣し,午後3時30分頃に科学技術庁現地対策本部を設置して対応にあたった。

(5) 国土庁における対応

 事故発生の情報入手直後から,「情報対策室」を設置し,関係機関から情報収集を行った。

(6) 厚生省における対応

a

 厚生省においては,茨城県那珂郡東海村,那珂郡那珂町において災害救助法を適用し,避難所の設置,炊き出し等による食品の給与,被服・寝具等生活必需品の給与等を実施した。また,救助に要した費用2,274万円に対して1,137万円の国庫負担を行った。

  (事業費 22,740千円  国費 11,370千円)

b

 職員を現地に派遣し,現地情報の把握に努めるとともに健康危機管理調整会議を中心とした省内対策本部を設置。国立水戸病院等において現地住民を対象とした健康診断等を実施するとともに,国立病院東京災害医療センター等から重篤な被ばく者が入院する放射線医学総合研究所に看護婦を派遣した。さらに,茨城県が実施した住民の健康診断等への財政支援を実施した。

  (国費 23,000千円)

(7) 農林水産省における対応

 農産物等の安全性が確認されるまでの間,事故現場から半径10km以内について出荷自粛等を関連団体を通じて要請する一方,茨城県,厚生省と連携して,農林水産物等の被ばくに関するサンプリング調査・分析を行い,その結果,安全性が確認されたため,10月2日に政府としての安全宣言を発表した。

 安全宣言後は茨城県産農産物の安全性について,関係者及び消費者等への情報提供等を行い,風評被害の防止に努めた。

 また,事故の影響を被った農業者等に対しては,経営に必要な資金の円滑な融通及び既貸付金の償還猶予等が図られるよう関係金融機関等に対して要請を行った。

(8) 中小企業対策

 中小企業庁では,10月1日に茨城県における政府系中小企業金融三機関及び信用保証協会の各支店に相談窓口を設置するとともに,政府系中小企業金融三機関に「災害復旧貸付」の適用を開始した。

(9) 海上保安庁における対応

 本庁及び第三管区海上保安本部並びに那珂湊海上保安部に対策本部を設置し,海上における航行警報を発令し,付近航行船舶に対し注意喚起を実施した。

(10) 気象庁における対応

 現地対策本部に職員を急派するとともに,本庁及び各地方気象台等において,放射能影響の把握等に必要な気象情報を関係自治体等に随時提供した。また,環境放射線モニタリングを実施して取りまとめ結果を公表した。

(11) 郵政省における対応

1 郵便貯金,郵便為替等の非常取扱い

  (表6-1-20) 郵便貯金,郵便為替等の非常取扱い

2 災害義援金の郵便振替による無料取扱い

  (表6-1-21) 災害義援金の郵便振替による無料取扱い

(12) 特設公衆電話等(無料)の設置

 東日本電信電話株式会社においては,緊急避難者等の通信手段を確保するために避難所1ヶ所に特設公衆電話4台を設置し,村役場1ヶ所に衛星携帯電話4台を配備した(いずれも無料)。

 また,緊急避難者の安否確認のための災害用伝言ダイヤルを運用した。

(13) 建設省における対応

a

 9月30日,本省及び地方建設局において警戒体制を発令し,情報収集等に努めた。

b

 久慈川等の水質及び道路植栽帯表土のウラン濃度分析結果を現地政府対策本部へ提供した。また,下水処理場での水質測定指導,国営常陸海浜公園の開園,建設工事の中止及び自粛の要請等の措置を行った。

(14) 地方交付税による措置

 自治省においては,大きな被害を受けた茨城県下1町に対し,地方交付税法第16条第2項の規定に基づき,11月に定例交付すべき普通交付税の一部226百万円を繰上げ交付した。

(15) 消防庁等における対応

 消防庁においては,現地からの通報を受け午後1時に「災害警戒連絡室」を設置した。その後「消防庁対策本部」に改組して体制を強化し,関係地方公共団体から災害状況及び市町村の対応状況に関する情報を集約して関係省庁等に提供した。また,茨城県,同県内市町村及び消防機関に対して,広報・避難,緊急搬送体制の確立を要請した。

 重篤な被ばく者3人については,東海村消防本部の救急車によって国立水戸病院へ搬送した後,茨城県防災ヘリコプター及び千葉市消防局の救急車によって科学技術庁放射線医学総合研究所へ搬送した。

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.