表示段落: 第2部/第5章


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第5章 国土保全

1 河川事業

 我が国は,洪水時の河川水位より低い沖積平野を中心とした高度な土地利用が行われており,国土面積の約1割にすぎない河川の氾濫区域に,現在,人口の約50%,資産の約75%が集中するなど我が国の経済・社会活動の中枢になるべき地域の多くが水害及び土砂災害の危険性を内包している。

 このため,古くから治水事業の重要性が認識され着実に実施されてきたところであり,浸水面積は減少傾向にある。しかしながら,国土保全施設の整備状況はまだ低い水準にあり,さらに,洪水等の危険区域における資産が増大しているため,単位面積当たりの水害被害額はかえって増加する傾向にある。このような状況の中で,建設省においては第9次治水事業七箇年計画に基づき,安全な社会基盤の形成,水と緑の水辺の創出,活力ある地域づくりの支援の展開を図ることとしている。

  (事業費 1,372,467,784千円  国費 803,864,000千円)

1-1 河川事業

 建設省においては,平成11年度において,大規模治水事業を始めとして,基幹大河川の整備を重点的に進めるとともに,近年,激甚な災害が発生した河川等について再度災害の防止対策及び慢性的な床上浸水被害の解消を図るための治水対策を推進した。さらに,下水道整備等とあいまって,流域が一体となって総合的な治水安全度の向上を図るための河川事業や良質な住宅・宅地供給を図るための河川事業を推進した。また,社会・経済の中心的役割を担っている大都市地域等を破堤による壊滅的被害から防御するとともに併せて水と緑に親しめる良好な都市空間の形成を図る高規格堤防の整備を推進した。

(1) 直轄事業

a 直轄河川改修事業

 一級河川117河川及び北海道の指定河川3河川について実施した。

b 直轄床上浸水対策特別緊急事業

 床上浸水被害が頻発している地域に関係する河川のうち,特に対策を促進する必要がある14か所について実施した。

c 直轄河川維持修繕

 河川管理施設の機能を維持するため,水閘門,堤防,護岸等の維持修繕を実施した。

d 直轄河川工作物関連応急対策事業

 前後の一連区域の治水機能に比較して,工作物周辺の治水機能が劣っているものについて,応急的に改良並びに新・増設の改善措置をとった。

e 直轄流水保全水路整備事業

 流入支川等の水質が著しく汚濁している河川について流水の適切な保全を図るため,新たな低水路等を整備した。

f 直轄消流雪用水導入事業

 消流雪用水の確保が可能な河川から市街地を流れる中心河川等に消流雪用水を導入するため導水路を整備した。

g 直轄河川災害復旧等関連緊急事業

 上流部での災害復旧等による下流部での流量増への対策を機動的,集中的に実施する必要がある9河川について実施した。

h 直轄河川激甚災害対策特別緊急事業

 3河川3か所について実施した。

(2) 補助事業

a 河川改修事業等

 広域河川改修事業等を次のとおり実施した。

・基幹河川改修事業

  560河川(うち新規17河川)実施, 63河川完了

・一般河川改修事業

  425河川(うち新規2河川) 実施,173河川完了

・局部改良事業

  377河川        実施,192河川完了

・宅地等水防災対策事業

   13か所        実施, 2か所完了

・救急内水対策事業

   2か所        実施, 2か所完了

・消流雪用水導入事業

   3か所        実施, 1か所完了

・耐水型地域整備事業

   2か所        実施, 1か所完了

・河川再生事業

   10か所        実施, 2か所完了

・田園地域等集落治水事業

   1か所        実施

・河川構造物改築事業

   6か所(うち新規1か所) 実施, 2か所完了

 このほか河川工作物関連応急対策事業及び情報基盤緊急整備事業を実施した。

b 床上浸水対策特別緊急事業

 継続事業として24河川及び新規事業として3河川について実施し,6河川を完了した。

c 河川災害復旧等関連緊急事業

 平成11年度に本制度が創設されたことにより20河川で実施した。

d 河川激甚災害対策特別緊急事業

 継続事業として10河川及び新規事業として1河川について実施し,1河川を完了した。

1-2 都市河川事業

 建設省においては,都市化の進展等に対処し,水害の防止を図るため,市街化地域等に関連する都市河川の治水対策を重点的に推進することとし,特に流域の保水・遊水機能の維持増進,水害に対して安全な土地利用の誘導等と併せて,治水施設を総合的,計画的に整備する総合治水対策特定河川事業,地域のまちづくりと一体となって浸水被害の防止,軽減を図る都市水防災対策事業や市が施行主体となって河川改修を行う都市基盤河川改修事業等を実施した。

 さらに,床上浸水被害が頻発している地域に関係する河川のうち,特に対策が必要な河川を対象として,床上浸水対策特別緊急事業を実施するとともに,周辺の市街地整備等と一体となり,安全かつ良好な水辺空間の創出を図る特定地域堤防機能高度化事業(スーパー堤防整備事業)を実施した。

(1) 直轄事業

a 直轄河川環境整備事業

 117河川(うち新規2河川)について実施した。

b 総合治水対策特定河川事業

 5河川について実施した。

(2) 補助事業

a 都市河川改修事業

 広域河川改修事業として193河川について実施し,うち29河川を完了し,局部改良事業として65河川について実施し,うち32河川を完了した。

b 総合治水対策特定河川事業

 17河川について実施した。

c 都市基盤河川改修事業

 171河川(うち新規1河川)について実施し,うち5河川を完了した。

d 河川再生事業

 5河川について実施した。

e 都市水防災対策事業

 1河川について実施した。

f 調節池整備事業

 22河川(うち新規1河川)について実施し,うち3河川を完了した。

g 流域貯留浸透事業

 34河川(うち新規1河川)について実施し,うち2河川を完了した。

h 低地対策河川事業

 31河川について実施し,うち1河川を完了した。

i 特定地域堤防機能高度化事業

 8河川について実施し,うち1河川を完了した。

j 河川環境整備事業

 96河川(うち新規3河川)について実施し,うち11河川を完了した。

k 床上浸水対策特別緊急事業

 31河川について実施した。

l 準用河川改修事業

 374河川(うち新規5河川)について実施し,うち47河川を完了した。

2 河川総合開発事業

 建設省においては,近年の災害発生状況にかんがみ,洪水被害の軽減を図るとともに,ひっ迫基調にある水需給に対処し,安定した水供給を確保するため,利根川,淀川等重要水系において,多目的ダム,流況調整河川等の建設,湖沼の開発及び水利用高度化事業を推進し,特に水需給のひっ迫する地域において水資源開発公団事業を推進した。

 中小河川流域における治水対策及び各地域における水資源の確保を図るため,補助事業として多目的ダム,治水ダム,雪対策ダム,生活貯水池等の建設を推進した。

  (事業費 571,782,503千円  国費 398,475,000千円)

2-1 直轄事業

 80事業(建設工事63事業,実施計画調査17事業)を実施した(休止事業を除く)。

2-2 補助事業

 155事業(建設工事120事業,実施計画調査35事業)を実施した(休止事業を除く)。このほかに生活貯水池59箇所の建設工事を実施した。

2-3 水資源開発公団事業

 12事業(建設工事10事業,実施計画調査2事業)を実施した。

3 砂防事業

 建設省においては,第9次治水事業七箇年計画に基づき,平成11年度は,激甚な土砂災害から人命・財産を守る土砂災害対策を強化するため,緊急土砂災害防止対策,交通網集中地域等に係る土砂災害対策,自力避難が困難な災害弱者関連施設における土砂災害対策,都市山麓グリーンベルト整備事業等のハード対策を推進するとともに,土砂災害予警報システムの構築,及び「ダイレクトメールによる危険箇所の周知」等の危機管理体制の強化に資するソフト対策を推進した。

 また,砂防設備の整備にあたっては,野外活動拠点整備や総合的な土砂管理対策の推進等地域の活性化や自然環境との調和に配慮するとともに,間伐材を有効利用した木製防災施設整備等の他省庁との連携,公共工事に係るコスト縮減の推進,砂防ボランティアとの連携等により効率的・効果的実施を図った。

  (事業費 431,149,900千円  国費 260,113,000千円)

3-1 直轄事業

 利根川等34水系について,重荒廃地域,火山地域,都市地域等に重点において事業を実施した。

3-2 補助事業

a 通常砂防事業

 近年の災害による荒廃の著しい溪流や土石流の発生により人命,財産に大きな被害を及ぼす危険性が高い溪流及び都市区域等に重点を置き,全国1,627溪流において事業を実施した。

 また,情報基盤緊急整備事業によりテレメータ雨量計やワイヤセンサーなどの観測機器や,これらのデータを処理する監視装置,情報の伝達等に関する機器の設置,及びこれらを統合する土砂災害警戒避難システムの整備を推進した。

b 火山砂防事業

 火山地,火山麓地,又は火山活動により著しい被害を受ける恐れのある地域における,泥流,土石流等に関する対策を全国371溪流において実施した。

 また,活火山20火山22地区において火山地域における警戒避難体制を整備する火山噴火警戒避難対策事業を実施した。

c 砂防環境整備事業

 上流に砂防設備が整備され,土石流等による直接的な土砂災害のおそれがなくなった都市及び都市周辺の13溪流において実施した。

d 溪流再生事業

 すぐれた自然的環境や,良好な町並みなどの社会的環境を持つ地域等の溪流において,景観や親水性の向上,生態系の回復等を図り,周辺の地域環境に相応しい良好な溪流を再生することを目的に7溪流において実施した。

e 砂防設備修繕事業

 老朽化した既設の砂防設備について,修繕を行うことにより機能維持・回復を図ることを目的として事業を実施した。

f 砂防激甚災害対策特別緊急事業

 平成10年度に土石流等により激甚な災害が発生した栃木県那須地区において,再度災害を防止するための整備を緊急に実施した。

4 急傾斜地崩壊対策事業

a 急傾斜地崩壊対策事業補助

 建設省においては,がけ崩れから安全で安心して暮らすことのできる生活基盤の確保を図るため,第4次急傾斜地崩壊対策事業五箇年計画に基づき急傾斜地崩壊防止施設の整備を計画的かつ効果的に実施した。

 特に危険箇所の集中した地区や災害多発地区,がけ崩れにより著しい被害が想定されている地区,重要交通網にかかる地区,老人福祉施設等の災害弱者に関連した施設にかかる地区等を中心に急傾斜地崩壊対策事業を推進した。

 また,急傾斜地崩壊危険箇所の増加の抑制に努めるとともに,ボランティア団体と連携した「斜面カルテ」「土砂災害110番」の充実等,警戒避難体制の整備を促進した。

 一方,緑豊かな斜面空間を創出するため,既存樹木を残しつつ斜面の安全度の向上を図る「緑の斜面工法」を積極的に導入したほか,地域活性化を支援する急傾斜地崩壊対策事業を推進した。

  (事業費 124,770,000千円  国費 62,385,000千円)

b 急傾斜地崩壊対策事業調査

 事業の効率的な執行を図るため,地震による急傾斜地の崩壊機構,並びに自然を活かした斜面安定化工法等に関する調査研究を行った。

5 治山事業

 農林水産省においては,災害に強い安全な国土づくり,水源地域の機能強化,豊かな環境づくりを基本方針とする第九次治山事業七箇年計画の3年度として,都市及び集落の周辺,国土保全上重要な流域の山地等の保全に重点を置いて次の事業を実施した。

  (事業費 363,860,529千円  国費 216,195,387千円)

(注)

 地すべり防止事業分を除いた額である。

5-1 国有林治山事業

 国有林野内における荒廃地を対象として,復旧治山事業を実施した。

 また,山地荒廃危険地のうち,緊急を要するものについて予防治山事業を実施したほか,水源地域整備,環境保全保安林整備,保安林整備,防災対策総合治山等の各事業を実施した。

5-2 民有林治山事業

(1) 直轄事業

a 治山事業

 継続21地区において事業を実施した。

b 地すべり防止事業

 後掲(5章6-1(1))

c 治山計画等に関する調査

 山地保全調査,地すべり対策調査,治山事業積算基準等分析調査及び森林生態系を重視した公共事業導入手法調査を実施した。

(2) 補助事業

a 山地治山事業

(a)

 都市及び集落の周辺,国土保全上重要な流域の山地等における荒廃地復旧を図るため,復旧治山事業を緊急度の高い2,795箇所において実施した。

(b)

 都市及び集落の周辺,主要道路,国土保全上重要な流域の山地等における荒廃危険地を対象として,災害の未然防止を図るため,予防治山事業を緊急度の高い1,254か所において実施した。

(c)

 新技術による省力・機械化工法,低コスト工法,自然環境に配慮した工法等の開発,普及,定着を図る森林土木効率化等技術開発モデル事業を6地区において実施した。

(d)

 激甚災害により被災した地域において,風倒木・流木等に起因する山地災害を未然に防止するため,山地災害危険地対策に係る林地荒廃防止事業を99か所において実施した。

(e)

 老朽化等により機能が著しく低下している治山施設の機能回復を図るため,治山施設修繕事業を21か所において実施した。

b 防災林造成事業

 飛砂,潮風,高潮等の被害を防止する海岸防災林,強風による被害を防止する防風林,なだれの被害を防止するなだれ防止林,山火事等が発生し機能の失われた森林からの土砂の崩壊・流出を防止する土砂流出防止林を造成する事業を337か所において実施した。

c 保安林整備事業

 被災した保安林の機能の回復・強化を図る復旧整備,特定保安林内における機能の低位な保安林の整備,治山事業を施行した箇所等の保育,及び周辺に開発が及ぶなど滅失の危機に直面している保安林の適切な維持を図るための買入を行う事業を3,506か所において実施した。

d 保安林管理道整備事業

 治山事業の計画的かつ効率的な実施及び保安林の適正な維持管理に資するために,恒久的な車道の開設・改良を50地区において実施した。

e 防災対策総合治山事業

(a)

 荒廃山地,荒廃危険山地等が存する集落周辺において,山地災害の未然防止を図るため,治山施設の設置及び災害緩衝林の造成等を行う地域防災対策総合治山事業を233地区において実施した。

(b)

 火山地域において,荒廃地の復旧整備及び泥流,土石流等による山地災害の未然防止を図るため,治山ダム,観測施設等の設置等を行う火山地域防災機能強化総合治山事業を4地区において実施した。

f 水源地域整備事業

(a)

 ダム上流等の水資源確保上重要な水源地域において,水資源の確保と国土の保全に資するため,荒廃地等の復旧整備及び荒廃森林等の整備を面的,総合的に実施する水源森林総合整備事業を229地区において実施した。

(b)

 集落等の後背小流域において,森林の有する水源かん養機能等を高度に発揮させるため,荒廃森林の整備,荒廃地等における水土保全施設等の整備等を行う集落水源山地整備事業を80地区において実施した。

(c)

 良質な生活用水の確保・保全と併せ保健休養にも資するため,荒廃森林や水質保全施設とともに,溪畔森林等の整備を行う森林水環境総合整備事業を62地区において実施した。

g 環境保全保安林整備事業

(a)

 地域住民の生活周辺において,防災機能と保健機能を高度に発揮する保安林を整備するため,自然林の造成,改良等を行う生活環境保全林整備事業を171地区において実施した。

(b)

 自然環境が優れた地域において,森林の有する国土保全機能,自然環境保全機能等を高度に発揮させるため景観・生態系等に配慮した工法や森林整備等を行う自然環境保全治山事業を40地区において実施した。

(c)

 都市周辺の山麓部等において,山地災害の防止等と併せて生活環境を保全・形成するため,自然林の造成,改良等を行う環境防災林整備事業を128地区において実施した。

h 国有林野内補助治山事業

 国有林野に係る治山事業のうち,集落,公共施設等と密接な関連を有する53箇所について国有林野内補助治山事業を実施した。

i 地すべり防止事業

 後掲(5章6-2(1))

6 地すべり対策事業

6-1 直轄事業

(1) 農林水産省所管事業

 農林水産省においては,次の事業を実施した。

a 地すべり調査

 地すべりの抜本的防止と土地の有効利用を図るための斜面改変技術の開発,地すべり危険地の分布・対策の必要性等の把握,地震による地すべり発生の危険度評価手法の確立,地下水探査・解析の新技術を用いた地すべり地の地下水流動解析手法の確立及び低コスト型の地すべり観測技術の開発に係る調査を実施した。

  (国費 141,000千円)

b 直轄地すべり対策事業

 継続8地区のほか新たに1地区について事業を実施した。

  (国費 8,292,415千円)

c 地すべり防止事業

 継続11地区(直轄治山と重複している6地区を含む。)において事業を実施した。

  (事業費 8,446,978千円  国費 6,304,556千円)

(2) 建設省所管事業

a 地すべり調査

 継続11地区において,地すべり機構の解明と,地すべり対策の計画・立案に資するための基礎的な調査を実施した。

  (事業費 56,600千円  国費 52,200千円)

b 地すべり対策事業

 継続12地区において事業を実施した。

 また,警戒避難等ソフト対策に資する地すべり監視モデル事業,地すべり防止工事により排出される地下水の有効利用を図る特定地下水関連地すべり対策事業等を推進した。

  (事業費 12,111,600千円  国費 8,681,000千円)

6-2 補助事業

(1) 農林水産省所管事業

 農林水産省においては,次の事業を実施した。

a 地すべり対策事業

 農地及び農業用施設に被害を及ぼすおそれのあるもののうち,緊急度が高くかつ事業効果の大きい地区に重点を置き,事業を実施した。

  (事業費 23,030,033千円  国費 11,466,752千円)

b 地すべり防止事業

 集落,公共施設等に被害を及ぼすおそれが大きくかつ緊急に対策を必要とする地区に重点を置き,事業を実施した。

  (事業費 27,776,001千円  国費 13,846,000千円)

(2) 建設省所管事業

 建設省においては,次の事業を実施した。

  (事業費 47,176,600千円  国費 23,590,800千円)

a 地すべり対策事業

 地すべりにより人家,公共施設等に被害を及ぼすおそれが大きく,かつ,近年の豪雨等により地すべり被害のあった区域など緊急に対策を必要とする区域及び治水上影響が特に大きい区域,並びに老人福祉施設等の災害弱者施設を保全対象に含む区域に重点を置き事業を実施した。

 また,地すべり防止工事により排出される地下水の有効利用を図る特定地下水関連地すべり対策事業,地すべり斜面の有効利用を図る特定利用斜面保全事業,警戒避難等ソフト対策に資する地すべり監視モデル事業等を推進した。

b 地すべり防止施設修繕事業

 既設の地すべり防止施設の機能回復を図る事業を実施した。

7 海岸保全事業

7-1 直轄事業

(1) 農林水産省所管事業

 農林水産省においては,4地区について海岸保全施設の整備を行うとともに,その適正な実施を図るために必要な調査を行った。

  (国費 4,469,044千円)

(2) 運輸省所管事業

 運輸省においては,7海岸について,津波防波堤等の海岸保全施設の整備を行うとともに,事業の円滑な実施を図るため,海象調査等の海岸事業調査を行った。

  (国費 6,524,988千円)

(3) 建設省所管事業

 建設省においては,13海岸において,海岸保全施設の整備を行うとともに,全国の代表的海岸において海象調査等の海岸事業調査を行った。

  (国費 21,555,426千円)

7-2 補助事業

(1) 農林水産省所管事業

 農林水産省においては,高潮対策事業を266地区(農地113地区,漁港153港),侵食対策事業を136地区(農地83地区,漁港53港),海岸環境整備事業を148地区(農地43地区,漁港105港),公有地造成護岸等整備事業を7地区(農地3地区,漁港4港)についてそれぞれ実施したほか,局部改良事業,補修事業を実施した。

  (事業費 65,558,770千円  国費 31,825,500千円)

(2) 運輸省所管事業

 運輸省においては,高潮対策事業を155海岸,侵食対策事業を56海岸,海岸環境整備事業を100海岸,公有地造成護岸等整備事業を9海岸でそれぞれ実施したほか,局部改良事業,補修事業を実施した。

  (事業費 83,444,376千円  国費 38,160,883千円)

(3) 建設省所管事業

 建設省においては,高潮対策事業を100海岸,侵食対策事業を98海岸,海岸環境整備事業を56海岸,海域浄化対策事業を2海岸,公有地造成護岸等整備事業を2海岸についてそれぞれ実施したほか,局部改良事業,補修事業を実施した。

  (事業費 56,511,701千円  国費 27,226,000千円)

8 農地防災事業

 農林水産省においては,農地,農業用施設等の災害を未然に防止し,農業生産の維持及び農業経営の安定を図るとともに,国土の保全に資するため,次の事業を実施した(地すべり対策事業及び地盤沈下対策事業は別掲)。

8-1 直轄事業

a 国営総合農地防災事業

 農村地域の地盤沈下等外的要因により生じた農地及び農業用施設の機能低下又は災害のおそれに対処するため,農業用用排水施設等の整備を19地区で実施した。

  (事業費 38,612,720千円  国費 29,003,992千円)

8-2 補助事業

a 農地防災事業

 洪水被害や土壤の侵食被害等を未然に防止するため,防災ダム事業,ため池等整備事業,湛水防除事業,農地保全整備事業,中山間地域総合農地防災事業等について,緊急度が高くかつ事業効果の大きいものに重点を置いて実施した。

  (事業費 166,920,862千円  国費 92,884,589千円)

b 地すべり対策事業

 前掲(5章6-2(1))

c 地盤沈下対策事業

 後掲(5章10(3))

9 災害関連事業

(1) 農業用施設災害関連事業等

 農林水産省においては,次の事業を実施した。(表5-9-1)

  (事業費 55,865,068千円 国費 42,408,041千円)

 (表5-9-1) 平成11年度農業用施設等災害関連事業

a 農業用施設災害関連事業

 農業用施設の効用を増加し,再度災害を防止するため,災害復旧事業と併せて改良工事を実施した。

b ため池災害関連特別対策事業

 ため池の効用を増加し,再度災害を防止するため,災害復旧事業と併せて改良工事を実施した。

c 農地災害関連区画整備事業

 著しい被害を受けた農地について,再度災害を防止するため,災害復旧事業と併せて区画整備を実施した。

d 災害関連農村生活環境施設復旧事業

 農村生活環境施設の災害に対処する事業を実施した。

e 災害関連緊急地すべり対策事業

 豪雨等による地すべりに緊急に対処する事業を実施した。

f 直轄治山等災害関連緊急事業及び災害関連緊急治山等事業

 激甚な災害により発生した土砂の崩壊,雪崩,地すべり等のうち,緊急度が高く,民生安定上放置し難い箇所について,公共土木施設等の災害復旧事業と並行して災害発生年度内に復旧する事業を実施した。

g 森林災害復旧造林事業

 平成10年及び平成11年の激甚災害により発生した被害森林の復旧を図る事業を実施した。

h 林地崩壊対策事業

 平成10年及び平成11年の激甚災害により発生した林地荒廃地のうち,早期に復旧する必要のある個所について事業を実施した。

i 漁港施設災害関連事業

 著しい被害を受けた漁港施設について,再度災害を防止し,施設の効用を増加させるため,災害復旧事業と併せて改良工事を実施した。

(2) 港湾施設災害関連事業

 運輸省においては,著しい被害を受けた港湾施設等について,再度災害を防止し,施設の効用を増加させるため,災害復旧事業と併せて改良工事を実施した。

  (事業費 1,309,950千円  国費 655,459千円)

(3) 河川等災害関連事業

 建設省においては,次の事業を実施した。(表5-9-2)

 (表5-9-2) 平成11年度河川等災害関連事業

a 直轄河川等災害関連緊急事業

 再度災害防止のため,災害復旧と併せて改修計画に基づく改良事業を99河川で実施した。

b 河川等災害復旧助成事業・河川等災害関連事業

 災害復旧事業のみでは十分な効果を期待し得ない河川等について,再度災害を防止するため,災害復旧と併せ,未被災箇所も含めた一連区間について改良復旧事業を行った。

c 河川等災害関連特別対策事業(災特)

 河川の災害復旧関連事業等の改良復旧効果を確保するため,障害物の除去等の事業を実施した。

d 河川等災害特定関連事業(特関)

 河川の災害復旧事業に関連して,災害発生の原因となった障害物の除去・是正を行った。

e 特定小川災害関連事業(小川関連)

 河川の災害復旧に関連して,小規模な河川において,再度災害を防止し,積極的に河川機能の確保を図るため,未被災箇所も含めて緩勾配護岸等により改良復旧事業を行った。

f 災害関連地域防災がけ崩れ対策事業・災害関連緊急砂防等事業

 風水害,震災,山林火災,火山活動等による土砂の崩壊等に緊急に対処するため,砂防工事,地すべり防止工事及び急傾斜地崩壊防止工事等を実施した。平成11年は,6月末から7月はじめの梅雨前線豪雨に伴う広島県を中心とした激甚な土砂災害をはじめ,全国各地で土砂災害が発生した。このため,二次災害に備える砂防関係施設の整備を行った。

10 地盤沈下対策事業

(1) 地盤沈下対策調査

 環境庁においては,次の調査を実施した。

a 地盤沈下監視測定調査

 工業用水法及び建築物用地下水の採取の規制に関する法律に基づく地下水採取規制地域等において,地盤高,地下水位の変動状況及び地質に係る調査に要する経費に対し,補助した。

  (事業費 105,774千円  国費 35,258千円)

b 地下水揚水量等実態調査

 地盤沈下地域及びその周辺の地下水理上密接な関連を有する地域内の主要な事業所等を対象に,地下水揚水量等の実態調査を行い,その結果について解析した。

  (国費 11,384千円)

c 関東平野北部地盤沈下防止等広域対策調査

 地盤沈下の防止等に係る各般の対策を調整し,総合的に推進するため,関東平野北部地域について,地下水の大量採取が続く場合の沈下量の予測と地下水採取を抑制するための方策の検討・調査した。

  (国費 7,294千円)

(2) 地下水対策調査

 国土庁においては,濃尾平野,筑後・佐賀平野及び関東平野北部について,地盤沈下防止等対策要綱に基づく対策を推進したほか,平成12年度に目標年度を迎える関東平野北部地盤沈下防止等対策要綱の見直しに向けての検討調査,地域固有の水循環システムの再生・構築に関する調査を実施した。

  (国費 53,140千円)

(3) 地盤沈下対策事業等

 農林水産省においては,次の事業を実施した。

a

 地盤沈下防止対策としての水源転換並びに地盤沈下により低下した農地及び農業用施設の効用回復を図るため,緊要度が高くかつ事業効果の大きい地区に重点を置き事業を実施した。

  (事業費 13,932,792千円  国費 7,593,000千円)

b

 地盤沈下調査

 農地,農業用施設等について,相当な範囲にわたり地盤沈下による被害が発生している地区を対象として,地盤沈下機構を解明し,その防止対策を検討するための調査を実施した。

  (国費 42,500千円)

c

 保全かん養調査

 地下水の過剰揚水等により,水位の異常低下,水質の悪化等の障害が生じている地域について,地下水機構(かん養機構,障害発生機構等)を明らかにして地下水の保全と適正利用のための計画を策定するための調査を4地区において実施した。

  (国費 20,250千円)

d

 地下水位長期観測調査

 主要な農業用地下水利用地域において,地下水障害の未然防止と地下水資源保護のため,地下水位の長期的な監視とその動向分析を行い,地下水の最適利用システムを樹立するための調査を11地区において行った。

  (国費 22,300千円)

e

 地下水強化実用化調査

 農業用地下水の安定的な利用に障害が生じ,又は地盤沈下により農地及び農業用施設に被害が生じている地域において,効果的な地下水かん養技術の確立及び実用化のための計画策定手法を明らかにするための調査を行った。

  (国費 30,000千円)

f

 地下水利用合理化技術確立調査

 地下水位低下等の地下水障害が発生しているが地形等の条件により地表水への水源転換が不可能な地域において,地下水取水の合理化技術を確立するための調査を行った。

  (国費 30,000千円)

(4) 地盤沈下防止対策事業等

 通商産業省においては,次の事業を実施した。

a 地盤沈下防止対策工業用水道事業

 工業用水法では地盤沈下等の著しい地域を政令指定し,一定基準に不適合な工業用井戸からの地下水揚水を制限しているため,地下水に代わる水源として工業用水道の整備を推進することとし,建設3事業及び改築10事業に対し補助した。

  (事業費 5,216,855千円  国費 1,257,500千円)

b 地下水利用適正化調査

 地下水障害の問題に有効かつ機動的に対処するとともに,その未然防止を図るため,2地域において調査を実施するとともに,既調査地域について,地下水位の観測調査を行った。また,全国各地に設立されている地下水利用対策協議会に対する指導の拡充を図るため,自主規制の効果等に関する調査を行った。

  (国費 53,715千円)

c 地下水位観測調査

 工業用水法に基づく指定地域の規制等による効果を測定するため,観測井により,地下水位等の観測調査を実施した。

  (国費 5,243千円)

d 地域別工業用水使用合理化指導調査

 水需給のひっ迫化や地盤沈下等地下水障害の防止のため,地域別に工業用水使用合理化指導調査を実施し,工業用水使用合理化指導準則の策定地域に対する指導を行った。

  (国費 6,847千円)

e 業種別工業用水使用合理化基礎調査

 技術革新の進展等による各業種の質的変化及び先端産業の新展開に適切に対処するため,水使用合理化に関する基礎調査を実施した。

  (国費 6,824千円)

(5) 低地対策河川事業等

 建設省においては,次の事業を実施した。

a 低地対策河川事業等

(a)

 31河川において,地盤沈下による内水被害を防除するため,排水機場の設置等を実施した。

  [事業費 36,753,500千円  国費 13,141,000千円]

(注)

 [ ]書きは,5章1に計上したものの内数である。(予算額については,(2)hの低地対策河川事業に係るものであり,地盤沈下対策はこの内数として実施。)

(b)

 地盤沈下の著しい地域について,地盤沈下対策関連として,地下水から河川水への水源転換等のためダム建設事業等を実施した。

b 地盤沈下対策調査

 河川管理施設の沈下対策を検討するため,5河川で水準測量を行った。

c 地下水保全管理調査

 地下水を適正に保全,管理し,地盤沈下等の地下水障害の防止施策の立案に資するため,全国主要地下水域において,地下水の水位及び水質の観測を継続実施するとともに,地下水管理計画等策定のための調査を実施した。

  (国費 30,442千円)

d 地盤沈下調査関連水準測量

 建設省国土地理院においては,主要地盤沈下地域7地区において水準測量を行い,地方公共団体の行う地盤沈下調査結果と合わせて各地域の地盤沈下実態を明らかにした。

 また,地盤沈下地域の地盤高図及び地盤沈下量図の作成資料を得るための簡易水準測量及び資料収集を実施した。

  (国費 17,761千円)

11 下水道事業

 建設省においては,都市化の進展に伴う雨水流出量の増大に対処し,安全性の確保を図るため,浸水防除に寄与する公共下水道事業,都市下水路事業等を実施した地方公共団体等に対して補助を行った。

 また,地下空間浸水等に対処するため,地下空間内水対策緊急事業を創設した。

  (事業費 352,958,000千円  国費 176,798,000千円)

(1) 公共下水道事業

 主として市街地内に降った雨水を河川等に排除するため,市町村が主な事業主体となって実施した。

(2) 都市下水路事業

 公共下水道整備地域以外における市街地内の雨水排除を図るため,市町村等が事業主体となって実施した。

12 その他の事業

(1) 保安林整備管理事業

 農林水産省においては,保安林整備臨時措置法の延長に伴い改正された保安林整備計画に基づき,災害の防備,水源のかん養等を目的とした保安林の配備を進めるとともに,保安林の適正な管理を推進するため,立木伐採等の許可事務,保安林標識・台帳の整備,保安林の境界等の実態把握等の事業に対して助成した。

  (事業費 1,293,891千円  国費 1,068,874千円)

(2) 休廃止鉱山鉱害防止等事業等

 通商産業省においては,次の事業を実施した。

a 休廃止鉱山鉱害防止等事業

 鉱害防止義務者が不存在又は無資力の休廃止鉱山の鉱害防止のために地方公共団体の実施する事業に対して補助を行うとともに,鉱害防止義務者が実施する休廃止鉱山の坑廃水処理事業のうち,義務者に起因しない汚染に係る部分に対し補助を行った。

  (事業費 5,965,767千円  国費 3,404,312千円)

b ぼた山災害防止対策事業

 崩壊流出等の危険性のあるぼた山のうち,防災工事を実施する義務者が不存在又は無資力のものについて,地方公共団体が実施する災害防止工事(崩壊防止工事,保全工事等)に対し助成した。

  (事業費 1,829,866千円  国費 1,234,278千円)

c 放置坑口閉そく対策事業

 石炭の採掘事業の廃止後放置されている坑口及び坑道に係る陥没穴への周辺住民の墜落等の危険防止のため,閉そく工事を実施する義務を有する鉱業権者が不存在又は無資力のものについて,地方公共団体が実施する放置坑口の埋戻し工事等に対し助成した。

  (事業費 4,488千円  国費 2,992千円)

(3) 鉄道防災事業

 運輸省においては,旅客鉄道株式会社等及び日本鉄道建設公団がそれぞれ施行する国土保全に係る荒廃山地及び海岸等並びに青函トンネルの防災事業に対し補助を行った。

  (事業費 1,360,152千円  国費 755,620千円)

(4) 自然災害防止事業債等

 自治省においては,地域防災計画に掲げられている災害危険区域において,地方公共団体が災害の発生を予防し,又は災害の拡大を防止するために単独で実施する事業について,804億円の自然災害防止事業債を措置した。また,地方公共団体が単独事業として実施する河川管理施設又は砂防設備に関する工事その他の治山治水事業等について,1,282億円の臨時河川等整備事業債を措置した。

13 平成11年度国土保全関係事業別予算額等総括表

 (表5-13-1) 平成11年度国土保全関係事業別予算額等総括表

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