表示段落: 第1部/第4章


表示段落: 第1部/第4章


第4章 世界の自然災害と国際防災協力

1 世界の自然災害の状況

1-1 長期的な自然災害の状況

 自然災害が世界各地で発生し,多くの人命と財産が失われている。特に開発途上地域では,都市化が進む一方で,遅れた基盤整備が災害への脆弱性を高めている。

 ベルギーのルーバン・カトリック大学疫学研究所(CRED http://www.cred.be/emdat/intro.html)の自然災害に関する統計では,1975年から1999年までの25年間に,全世界で少なくとも延べ約37億人が被災し,約150万人の生命が奪われた。特に1990年代に入り,1999年の中米諸国及び米国南部を襲ったハリケーン・フロイド等,先進国を大きな災害が見舞ったため,直接被害額は,約9,520億ドルに上っている(図4-1-1)。

 (図4-1-1) 世界の自然災害発生頻度及び被害状況の推移

 近年の自然災害は,台風・サイクロン・洪水といった風水害によるものが多く,特にアジア地域で大きな被害をもたらしている(表4-1-1)。

 (表4-1-1) 近年に発生した主な自然災害の状況

 アジア地域では,各国政府の災害防止,予防及び軽減のための多大な努力にもかかわらず,近年においても毎年,数か国で死者・行方不明者が数千人を超える被害が続いており,この30年間の世界全体に占めるアジア地域の災害の発生状況をみると,災害発生件数で世界の約4割,被災者数で同約9割,直接被害額で同約5割と,大きな割合を占めている(図4-1-2)。

 (図4-1-2) 1995-1999世界の自然災害の地域別比較

 開発途上国における大規模な自然災害の発生によって,特に多数の人命を失うだけではなく,これまで実施してきた経済開発等に障害をもたらすことが認識されるようになり,この被害を軽減することが,地球環境の保全や持続可能な開発の推進という観点からも国際的に大きな課題となっている。

1-2 最近起こった主な災害

 2000年以降に発生した主な自然災害は(表4-1-2)のとおりであり,そのうち被害の大きなものは次のとおりである。

 (表4-1-2) 2000年以降に起こった主な自然災害(2001年2月現在)

(1) 中央アジア・南アジアの干ばつ

 中央及び南アジアを,7月から,厳しい干ばつが襲った。アフガニスタン,インド,イラン,パキスタン,タジキスタンが強い影響を受け,モンゴルやシリア等にまで影響が及んだ。

 特に被害の大きかったタジキスタンでは,620万人の人口のうち300万人が食糧不足に陥ったほか,2000年の穀物生産は対前年46%減少し,国民の3か月分の食糧消費量にしか満たない23万6000トンにとどまった。

(2) インドの洪水

 6月中旬から8月にかけ,南アジア諸国を季節風による豪雨が引き起こす大規模な洪水と地すべりが襲った。ベキ川(アッサム地方)では1978年以来の洪水レベルを記録したほか,各地で危険水位となった。また,8月末にはインド南部のアンダラ・プラデシュ地方で47年ぶりの大雨を記録した。これにより,最も被害の大きかった西ベンガル地方だけで,520名が死亡,207名が行方不明,被災者は1,780万人に及び,家屋140万戸に被害が出たほか,家畜や穀物にも甚大な影響を与えた。被害額の合計は約6億8,000万ドルとなっている。

(3) 東南アジアの洪水

 平成12年は,東南アジアに例年より早くモンスーンのシーズンが到来したため,多くの国で豪雨による洪水被害が発生した。ベトナムでは,9月にはメコン川が洪水危険水位へと急上昇し,ベトナム政府は地方自治体と協力し,住民避難や緊急時対応等の被害軽減措置をとったが,その後も水位は上がりつづけ,70年ぶりの長期かつ厳しい水害を引き起こした。洪水は10月末まで続き,その後,水位が下がるまでには2ヶ月を要した。政府は地方自治体に対して約530万ドルの緊急援助を出して対策に当たったが,この洪水により,453人が死亡,500万人以上が被災し,被害額は2億7,140万ドルに及んだ。カンボジアでも,70年ぶりの洪水となった。政府は地方自治体との協力の下,被災地への食料支援などを行ったが,死者347名,被災者は全国民の30%を超える約345万人以上となった。

(4) エルサルバドルの地震

 中米エルサルバドルの首都サンサルバドルの南西約100kmの沖合いで,平成13年1月13日,マグニチュード7.6の地震が発生した。この地震による死者は844人,132万人以上が被災した。フランシスコ・フローレス大統領は国家非常時代を宣言,住民救出のための国際協力を呼びかけ,これに応じてアメリカ,スペイン等多数の国から合計約1700万ドル(専門家の派遣などの金銭換算できないものを除く。)相当の援助が行われた。さらに,2月13日にもマグニチュード6.1の地震が発生し,死者315人,負傷者2,937人等の被害が出たほか,一部地域では家屋倒壊や崖崩れが発生しており,救助活動が難航した。

(5) インドの地震

 2001年1月26日現地時間午前9時頃,マグニチュード6.9の地震がインドの西部,パキスタン国境沿いにあるクジャラート州を襲った(米国地質学研究所によればマグニチュード7.9)。人口15万人のブジ市,バチュウ市で最も被害が大きく,ほとんど全ての建物,インフラが破壊された。死者は2万0,005人,負傷者約16万6,000人,総被災者数は約1,590万人で,全壊家屋約37万戸,一部損壊家屋約92万戸などの被害が生じた(2001年3月20日付インド政府発表に基づく)。

 インド政府は,ヴァジパイ首相が主宰する「国家災害対策委員会」を開催するなど,国をあげての対応を行い,インド軍を中心に救援活動・各種資材,食糧,燃料,医薬品等の輸送を行った。

 これに対し,インド政府によれば,51か国及び様々な国際機関が人的又は物的支援を実施した。

2 国際防災戦略の推進

(1) 「国際防災の10年」の総括

 1990年より国連を中心として進められた「国際防災の10年」の活動は,140を超える各国国内委員会等の積極的な支援の下,1999年末をもって終了した。わが国は,平成元(1989)年に,内閣総理大臣を本部長とする国際防災の10年推進本部を設置し,同活動を推進した。具体的には,中間年である平成6(1994)年に国連の「国際防災の10年世界会議」(横浜)を招聘したほか,平成11(1999)年の「国際防災の10年記念シンポジウム」等9つの国際会議を開催した。また,防災分野における国際協力のための調査,各種広報活動等を実施した。特に,アジア地域の多国間防災協力を推進するため,1998年7月,神戸市にアジア防災センターを創設した。

 コフィー・アナン国連事務総長は,1999年9月に開催された第54回国連総会の事務総長報告において,本活動が極めて有効かつ先駆的であったと称賛する一方,自然災害による犠牲者は減少しておらず,1998年1年間で約5万人が犠牲になったと報告した。このような状況を踏まえ,「国際防災の10年」中に実施された先駆的作業の継続が不可欠であること,また,災害予防戦略,災害予防の文化が重要であることを強調した。

(2) 国際防災戦略の実施

 平成11年11月1日,国連総会において,国連事務総長から国際防災の10年を継承する新しい「国際防災戦略(ISDR)」活動を実施すること,同活動を進める国連の組織・体制を整備すること,国際防災の10年を契機に設立された各国の国内委員会の維持強化を図ることなどが提示された。

 国際防災戦略の目的としては,1)現代社会における災害対応力の強いコミュニティの形成,2)災害後の対応中心から災害の予防・管理への進化の2点があげられている。また,活動の骨格として,1)現代社会における災害リスクについての普及・啓発,2)災害防止に対する公的機関の主体的参画の促進,3)災害に強いコミュニティの形成に向けた地域住民の参画の促進,4)社会経済的損失の減少に向けた取り組みの強化等の4つの柱が報告された。

 平成11年12月,本活動案を支持する決議が国連総会において採択され,活動を進める国連の組織・体制として,国連人道問題担当事務次長の下に国際防災戦略事務局が12年1月に設置された。事務局は,国連による国際防災協力活動の窓口,別途設置された評議委員会(タスク・フォース)の作業の支援,防災に関する意識啓発活動,防災に関する情報や知識の所在源情報の提供,各国国内委員会の活動の支援等を担当している。

 同活動の評議委員会は,国連人道問題担当事務次長を議長,国際防災戦略事務局長を書記とし,国連機関の8名,学識経験者の8名,地域代表の6名から構成され,国連における防災戦略及び政策の提案,施策の効果の把握,他機関が実施する施策の調整,事務局に対する政策面での指導,防災に関する専門家会合の開催等を行うこととされた。

 同評議委員会は,2000年の4月と10月に開催され,エルニーニョ及び気候変動と災害等3つのワーキンググループを創設したほか,国際防災戦略活動の骨格を上述の4つの柱を中心として推進していくことを明確にした。

(3) 我が国の対応

 我が国においては,平成11年12月に「国際防災の10年」記念シンポジウムを東京で開催し,本10年活動の総括的な討論を行った。同シンポジウムではブレ国連国際防災の10年事務局長から今後の活動についての紹介があるとともに,引き続き我が国が国際防災戦略活動の先導的役割を果たすことを強く期待する旨の発言があった。

 その後,国連における体制整備がなされるのを受けて,平成12年5月,内閣府政策統括官(防災担当)(国土庁防災局長(当時))を議長とし,関係省庁の課長クラスをメンバーとする「国際防災連絡会議」を設置し,積極的に同活動を推進している。具体的には,同年12月に「国際防災連絡会議拡大アジア会合」を東京で開催し,アジア地域20か国の防災担当者等と同活動の推進等について意見交換を行った。

 また,平成13年2月には,「世界防災会議2001」を兵庫県で開催し,阪神・淡路大震災を含む災害の教訓について,特に復興問題に着目しつつ意見交換を行った。会議では,世界的な防災に関する取組みを行っている「国連」,「OECD」,「世界銀行」の担当者が一堂に会し,今後の連携,協力について意見交換を行い,今後も継続的に議論を進めていくこととなった。本会議には,大島人道問題担当国連事務次長からメッセージが寄せられ,神戸が国際的な防災,人道援助の拠点として成長していくことを期待するとの展望が示された。

3 アジア地域における多国間防災協力の推進

3-1 アジア防災センター設立の経緯

 平成6年,国連の「国際防災の10年世界会議」において,災害脆弱性に多くの共通的側面を有する地域においては関係各国の協力の下,災害情報の収集・提供等を行う地域センターを創設することが提唱された(横浜戦略)。

 特に,我が国は,阪神・淡路大震災以前から,アジア諸国に対して防災分野における様々な国際協力,支援を行っていたが,この大震災で得た多くの教訓についても広く各国に紹介していくことが防災分野における重要な国際貢献の一つと認識された。

 このような状況を背景として,平成7年12月,「アジア防災政策会議」を開催してアジア地域における多国間防災協力の推進方策等を討議した。さらに平成8年10月及び平成9年6月,防災センター機能を有するシステムの創設及びその活動内容について協議するため,局長級の専門家会合(それぞれ「アジア防災専門家会議」,「アジア防災協力推進会合」)を開催し,アジア防災センターを設け,(表4-3-1)に掲げた活動を行うことが決定された。

 (表4-3-1) アジア防災センターの活動内容(要約)

 アジア防災センターは,平成10年7月30日,兵庫県神戸市において開所し,活動を開始したが,同センターは,横浜戦略を契機として設立されたものであり,国際防災の10年の期間中における我が国の多国間防災協力に関する大きな成果の一つとして位置づけられる。

(注)

 メンバー国は,現在以下のとおりとなっている。

メンバー国:

 バングラデシュ,カンボジア,中国,インド,インドネシア,日本,カザフスタン,ラオス,マレーシア,モンゴル,ミャンマー,ネパール,パプアニューギニア,フィリピン,大韓民国,ロシア,シンガポール,スリランカ,タジキスタン,タイ,ウズベキスタン,ベトナム,アルメニア

オブザーバー:

 ADPC(アジア災害防止センター)

アドバイザー国:

 オーストラリア,フランス,ニュージーランド,スイス

3-2 アジア防災センターの活動内容と今後の取組

(1) アジア防災センターの活動

 アジア防災センターは,アジア地域の被害軽減に資するため,防災関連情報を共有する情報センターとして活動しており,設立以来ほぼ3年余を経過し,23カ国に及ぶメンバー国とのネットワークを構築して,多国間防災協力を推進している。

 インターネット上のホームページ(http://www.adrc.or.jp/)等を活用して,防災情報ネットワークを構築し,最新災害情報,災害対策事例,各国の防災体制,防災専門家や行政官等の人材情報等を体系的に集積,データベース化するとともに,各国へ発信している。また,世界中で20世紀に発生した自然災害の概況,アジア地域と他地域との比較,アジア地域で発生したすべての自然災害のリスト等を網羅したデータブックを発刊し,情報提供に努めている。

 ネットワーク形成の基本的要素であるヒューマンネットワークの形成として,現地調査,アジア防災センター専門家会議等の開催を通じた防災行政の人的ネットワークの構築,防災に関する国際会議等への参加等を通じた関係機関との協力関係の樹立等,ネットワークの拡大を推進している。同センターは平成11年2月,12月,平成12年12月に,各国防災担当者及び関係機関等の専門家を招聘した専門家会議を開催し,参加者間の信頼関係の醸成と協力関係の強化を図るとともに,各国の防災情報並びにニーズとシーズに関する情報の共有化を推進している。また,同センターは世界災害情報ネットワーク(GDIN)会合をはじめ国際防災協力推進のための国際会議にも積極的に参加している。

(2) 第3回アジア防災センター専門家会議

 平成12年12月,第3回アジア防災センター専門家会議が開催され(参加26カ国,6機関),「アジア地域における防災協力の推進」,「最近の災害に学ぶ国際緊急援助」及び「防災情報共有化の推進」をテーマに意見交換が行われた。その結果,各国の実状に応じた一層の防災協力の推進,災害時の各国の対応と国際緊急援助の一層の連携を図ること,さらにこれらの活動を支援するため,インターネット等を駆使してその基礎となる災害情報・防災情報の共有化を推進していくこと等で意見の一致をみた。

 今後も引き続き,同センターを中心に,参加国・機関が持てる資力と能力を駆使して防災国際協力を推進し,21世紀のアジア地域における自然災害被害の軽減防止を実現していくことが期待される。

4 国際防災協力の現状

4-1 国際防災協力の体制と現況

(1) 世界的な国際防災協力の体制

 国際的な防災協力は,国連機関,各国政府,国際赤十字・赤新月運動,非政府機関(NGO)等によって進められている。

 防災に関する国連の活動は,[1]緊急援助,[2]災害予防,[3]研究開発の3つの分野に分けられる。国際協力を必要とするような災害が発生した場合の緊急援助は,国連人道問題調整事務所ジュネーブオフィス(OCHA-GENEVA http://www.reliefweb.int/w/rwb.nsf)が行っている(図4-4-1)。

 (図4-4-1) 災害時における救済活動の体制

 また,先進諸国における国際防災協力,特に災害時の緊急援助の体制としては,アメリカ合衆国の海外災害援助室(OFDA),ドイツにおける技術救援活動隊(THW),スイスの災害救助隊(SDR),フランスの緊急援助・警戒室等がある。国際赤十字・赤新月運動の中では,世界176か国に存する赤十字社及び赤新月社からなる国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)が,防災協力,災害時の緊急援助等を行っている。

(2) 我が国の国際防災協力の体制

 我が国の国際防災協力は,政府機関を中心に多くの機関が連携をとりながら実施している。政府部門においては,国際協力事業団(JICA),国際協力銀行(JBIC)及び外務省が,防災分野の技術協力,資金協力の実施に当たり大きな役割を担っている。また,災害発生時には,国際緊急援助隊(JDR)の派遣,緊急援助物資の供与及び無償資金協力による緊急無償資金援助が行われている。また,日本赤十字社をはじめとする民間団体が災害時の緊急援助を行っている。

(3) 我が国の国際防災協力の現況

 我が国政府の国際防災協力は,a.技術協力,b.無償資金協力,c.有償資金協力,d.国連機関等を通じての協力に大別される。

a 技術協力

(a)

 研修

 開発途上国の技術者や行政官等を研修員として我が国に受け入れ,防災分野の専門的知識・技術の移転を行うことを目的として,様々な研修を行っている(表4-4-1)。

 (表4-4-1) 平成12年度集団研修実績における防災関係の主な事例

 また,国際協力事業団(JICA)は,開発途上国において当該国及びその周辺国の技術者等を対象とした第三国研修を実施している(表4-4-2)。

 (表4-4-2) 平成12年度第三国研修における防災関係の事例

(b)

 専門家派遣

 国際協力事業団(JICA)は,開発途上国に専門家を派遣し,現地での防災に関する技術移転を行っている。

(c)

 プロジェクト方式技術協力

 国際協力事業団(JICA)は,専門家の派遣研修員の受入れ及び機材の供与という3つの協力形態を組み合わせて一つの事業として実施するプロジェクト方式技術協力を実施している(表4-4-3)。

 (表4-4-3) プロジェクト方式技術協力事業における最近の防災関係の事例

(d)

 開発調査事業

 開発途上国における開発計画の推進に寄与するため,我が国は開発調査事業として,様々な防災事業に関連する可能性調査あるいは基本計画の策定等について協力を実施している。

(e)

 国際緊急援助

 開発途上国を中心とした海外で大規模な災害が発生した場合に,国際緊急援助隊(JDR)の派遣や緊急援助物資の供与など緊急援助活動を行うものを国際緊急援助という。

 国際緊急援助隊(JDR)は救助チーム,医療チーム,専門家チーム及び自衛隊の部隊等からなり,被災国の要請,災害の種類・規模等に応じて単独または適宜組み合わせて派遣されている(表4-4-4)(表4-4-5)。

 (表4-4-4) 国際緊急援助隊の派遣及び救援物資供与の実績(1)

 (表4-4-5) 国際緊急援助隊の派遣及び救援物資供与の実績(2)

 また,被災者の救援のために,毛布,テント,浄水器,簡易水槽,発電機,医薬品,医療機材などの緊急援助物資を供与している。これらの物資を迅速かつ確実に供与するため,物資の備蓄倉庫を成田,シンガポール,メキシコシティ,ロンドン(英国),ワシントン(米国)に設置している。

 平成13年1月に発生したエルサルバドル地震においては,国際緊急援助隊として,医療チームが発災後直ちに派遣されたほか,テント,毛布,簡易水槽,発電機等の物資供与,緊急無償援助等が行われた。

 また,同月に発生したインド西部地震の場合は,国際緊急援助隊として医療チーム,自衛隊部隊等が派遣されたほか,緊急援助物資の供与,緊急無償援助等がなされた。

b 無償資金協力

 無償資金協力とは,被援助国(開発途上国)に返済義務を課さないで資金を供与するものである。この無償資金協力の中で,海外での災害発生時において被害状況を迅速に把握し,物資の購入等のため必要な資金を供与する緊急無償資金援助を実施している。さらに,防災及び災害復旧関連の施設や機材の整備等に対しても無償資金協力により援助が行われている。

c 有償資金協力

 有償資金協力(円借款)は,被援助国(開発途上国)に対し長期低利の緩やかな条件で,開発資金を貸し付けるものである。防災関係の有償資金協力としては,治水(洪水対策)事業に対するもの等がある。

d 国連機関等を通じての協力

 我が国は,国連国際防災戦略事務局や国際赤十字・赤新月社連盟などの国連機関・国際機関等への出資,拠出を通じても,国際防災協力に寄与している。

4-2 日米地震防災政策会議

 地球的規模の課題に対処するための日米協力のための枠組みである「コモン・アジェンダ」の一環として,阪神・淡路大震災とノースリッジ地震の経験と教訓を専門家レベルの交流を通じて日米両国で共有し,地震防災問題への取組みに役立てるため,日米地震シンポジウムが平成8年にワシントン,平成9年に神戸市で開催された。

 日米地震防災政策会議(ハイレベル・フォーラム)は,日米地震シンポジウムの成果を踏まえ,日米の地震防災政策分野におけるより緊密な協力関係を築くことを目的として第2回シンポジウムにおいて設置が決定され,第1回会議は平成10年10月にシアトル,第2回会議は平成11年11月に横浜市において開催された。

 第3回日米地震防災政策会議は平成12年11月2〜4日にサンフランシスコにおいて開催され,これまでの成果のとりまとめ,事前・予防対策の具体化を図るための方策,津波災害に関する情報及び経験,近年世界各地で起きた大規模地震災害から得られた知見や今後の協力のあり方などをテーマとして討論された。

 また共同発表では,今後,二国間での情報交換の多様化等を通じてより一層緊密に地震防災政策分野における協力を行っていくことなどが示された。(写真)

 (写真) 第3回日米地震防災政策会議

4-3 日韓防災会議

(1) 日韓防災会議の経緯

 1998年10月8日の日韓首脳会談の際に,小渕総理大臣(当時)と金大中大統領が「日韓共同宣言」及びその付属書「21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップのための行動計画」を取り交わし,そのうち行動計画の中で,「両国は,両国の災害への対応に関連する制度,防災体制及び施設についての情報・意見交換を通じ,協力を推進する」こととされた。

 このこと等を踏まえ,平成11年12月4日,東京において,国土庁防災局と韓国行政自治部防災局との間で第1回会議を開催し,両国の防災体制,過去の災害の教訓などについて意見交換を行った。

(2) 第2回会議の開催

 平成13年1月,ソウルにおいて第2回会議が開催された。同会議では,両国の水害予防施策,発生後の復旧・復興対策等について意見交換を行うとともに,今後の課題として以下の点について合意した。

 今後,[1]防災に対する相互情報交換及び支援策,[2]防災担当公務員の相互派遣制度導入案,[3]国際防災協力への貢献等について事務レベルで協議していく。

 2001年は日本で第3回会合を開催する。

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.