表示段落: 第1部/第2章/7


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7 雪害対策

7-1 雪害の現況

 我が国は,急峻な山脈からなる弧状列島であり,冬季には,北からシベリア寒気団による季節風が,南から暖流が押し寄せるという国土条件のため,日本海側で多量の降雪・積雪がもたらされる。

 そのため,屋根の雪下ろし中の転落,雪崩災害のほか,降積雪による都市機能の阻害,交通の障害といった雪害が毎年発生している。特に,平成12年末から平成13年にかけての冬は,強い寒気の影響により全国的に厳しい寒さとなり,北陸地方や東北地方の日本海側を中心として大雪の被害が多かった。雪害は,雪崩によるものと,屋根の雪下ろし中の転落によるものが多いが,このうち雪崩によるものは,昭和59年〜61年豪雪の年に多くあったが,昭和62年以降は,平成8年を除いて雪崩による死者は発生していない。

 しかしながら,平成12年から13年の豪雪では,雪下ろし等により55名の人命が失われ,また交通にも支障を来たし,地域の社会経済等に大きな影響を与えた。

7-2 雪害対策の概要

 雪崩は,その速度が極めて速く(概ね,表層雪崩で100〜200km/h,全層雪崩で40〜80km/h),衝撃力は場合によっては100t/m 2 (鉄筋コンクリートの建物を倒壊する力)に相当することもあり,一度集落を襲うと被害が甚大なものとなる。このため,集落を保全対象とした雪崩対策事業を推進するとともに,危険箇所の住民への周知徹底,警戒避難体制の強化,適正な土地利用への誘導等の総合的な雪崩対策を実施している。

 住家,公共的建物などを含む集落を襲う雪崩が発生する可能性のある箇所(雪崩危険箇所)は,建設省の調査によれば約15,000か所であり,このほか,林野庁が林地を対象として行った調査によれば約7,200か所が報告されている。

 なお,豪雪時には,雪降ろし中の転落事故や屋根雪の落下等による人身事故の防止,雪崩警戒体制の強化に取り組むこととしているほか,積雪寒冷特別地域における道路交通安全確保に関する特別措置法に基づき幹線道路の交通確保のため除雪事業を推進している。また,排除雪経費が著しく多額にのぼる地方公共団体については,所要経費,普通交付税措置額及び降雪量等を勘案の上,所要経費の一部を特別交付税で措置することとしている。

7-3 豪雪地帯対策の概要

 降積雪の多い地域で産業の振興及び民生の安定向上のために総合的な対策を必要とする地域は,豪雪地帯対策特別措置法に基づき,豪雪地帯に指定されている。現在,豪雪地帯では,全域指定が10道県,一部地域の指定が14府県であり,961市町村が指定されている。その面積は全国土面積の約51%にあたる約19万km 2 で,全国の人口の約18%にあたる約2,300万人が生活している。また,特に積雪量が多く,積雪により住民の生活に著しい支障が生ずるおそれのある地域は特別豪雪地帯に指定されている。現在,特別豪雪地帯は15道県の280市町村が指定されている( 図2-7-1 )。豪雪地帯では,豪雪地帯対策特別措置法に基づき豪雪地帯対策基本計画を策定し,各種の雪害対策を含む豪雪地帯対策が講じられている。

  (図2-7-1) 豪雪地帯及び特別豪雪地帯指定地域

(1) 交通,通信の確保

 交通基盤整備を推進し,除排雪,防雪対策及び消融雪を実施するほか,防雪施設等の維持・保全及び交通安全施設整備の充実を図る。

 また,情報通信の高度化へ向けた基盤整備を推進する。

(2) 農林業等における対策

 雪面黒化法等による消雪促進や,耐雪性の育苗等農業用施設,除雪機械,消融雪施設等の整備・拡充,ローカルエネルギー利用による消融雪の促進に努める。また,雪に強い品種の開発・導入や,栽培管理技術の向上・普及に努める。

 また,工場等の施設の耐雪耐寒構造化及び工場内消融雪施設の整備を推進する。

(3) 生活環境施設等の整備

 教育,保健衛生,医療,介護・福祉サービス,消防防災等の各分野における施設等の整備と克雪住宅の普及・促進,克雪用水の確保,安定的な電力供給の確保やエネルギーの有効利用等に努める。

(4) 国土保全施設の整備及び環境保全

 治山,治水,農地保全事業等を総合的に推進し,環境保全に配慮した施策の推進を図る。また,雪崩等の災害発生の予測・連絡・避難体制の確立・整備を図り,災害復旧体制の整備・強化に努める。

(5) 雪に関する調査研究の総合的な推進及び気象業務の整備・強化

 総合的な調査研究体制の充実を図り,除雪機械,冬期道路交通の確保,克雪住宅や屋根雪処理等に関する理工学的,技術的な調査研究の推進に努める。

 また,観測,解析,予報・警報等の業務体制の充実・強化を図る。

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