表示段落: 第1部/第2章/2/2-2


表示段落: 第1部/第2章/2/2-2


2-2 災害予防の強化

 災害の発生を未然に防止し,被害を軽減するため,防災に関連する施設設備の整備,国民一人ひとりの防災意識の高揚のための施策の実施,防災訓練の実施等,次のような災害予防の強化を図っている。

(1) 災害に強い国づくり,まちづくり

 地域の特性に配慮しつつ,災害に強い国土とまちづくりを目指して国土保全事業,市街地開発事業や主要交通・通信機能の強化,構造物・施設及びライフライン機能の安全性の確保に関する施策等を実施している。

 また,災害発生時に災害応急対策活動を円滑かつ効果的に実施するための施設・設備の整備等各般の施策を実施している。

a 災害に強いまちづくり

 災害に強いまちづくりをより効果的に推進するため,「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」(平成9年5月制定)に基づき,耐火建築物等への建替えの促進や新たな地区計画制度の創設等により,防災上危険な状況にある密集市街地の整備の促進を図っている。

 さらに,公共・公用施設の耐震化及び防災基盤の整備を行う緊急防災基盤整備事業,計画的に公共施設の整備を行う防災まちづくり事業の推進や,住民の防災活動の活性化,情報通信体制の強化等に要する経費に対する地方財政措置により地方公共団体を支援し,防災対策の強化を図っている。

b 災害に強い農山漁村づくり

 災害に強く安心して暮らせる村づくりを推進するため,緊急車両の通行や避難路の確保等のための農道・林道,緊急物資輸送に資する漁港の耐震強化岸壁,災害情報の伝達を行うための施設等の整備を行うなど,災害対策上必要な施設の整備を緊急に実施している。

c 地域の防災拠点の整備

 災害対応活動や地域住民等の応急避難場所として機能する防災拠点の整備としては,平常時は普及啓発活動にも利用される防災センターや,水防資材の備蓄庫や水防活動の指揮所となる河川防災ステーション等の施設の建設が全国各地で進められている。

 公共性の高い施設として,学校,公民館は災害時に避難場所となることから,改築,耐震補強や備蓄倉庫,耐震性貯水槽等の整備が図られている。官庁施設についても耐震安全性の向上や備蓄機能の強化等を実施している。

 病院については,災害時に患者を受入るためのヘリポート,水,医薬品,医療材料の備蓄機能等を持ち耐震性能が強化された災害拠点病院の整備が推進されている。

 さらに,災害時には応急対策活動の拠点として機能し,平常時には防災に関するPR,教育,訓練等の活動の場として機能する地域防災拠点施設の整備を推進している。

 また,災害に強いまちづくりの一環として,避難地・避難路の機能と延焼遮断帯の機能を併せ持つ公園の整備として耐震性貯水槽,備蓄倉庫,ヘリポート等の災害応急対応施設等の整備が進められている。道路,公園等の都市基盤と建築物の不燃化等を面的に行い,街区自体の防災拠点化を図っているケースもある。さらに,現行の建築基準を上回る高度な防災性能を有し,災害対応活動や地域の円滑な復興活動の拠点となる建築物の整備も進められている。

 この他,港湾においては,緊急物資輸送用の耐震強化岸壁の整備とともに,避難緑地帯と一体となった臨海部の防災拠点の整備が推進されている。また,空港においても,液状化対策を実施している。

d 広域防災基地整備

(a)

 立川広域防災基地

 広域的な災害が発生した場合において情報の収集・伝達,救難・救助等の災害応急対策の拠点とするとともに,平常時においては地域の行政サービスの充実と国民に対する防災知識の普及等を図るため,東京都立川市に立川広域防災基地が整備されている。

 ここには,災害対策本部予備施設( 第2章4 , 4-6(2) 参照)のほか,警察防災関係,海上防災関係,消防防災関係,自衛隊航空関係及び医療関係等の施設を有している。

(b)

 横浜海上防災基地

 東京湾及び関東一円の防災拠点として,平成7年4月から横浜市の「みなとみらい21」の新港地区に,横浜海上防災基地の運用が開始され,原油,LPG,LNGなどの危険物を積載する船舶が衝突等の事故や南関東地域直下の地震等により沿岸部の住民や諸施設が大きな被害を受けた場合に,指揮中核として巡視船艇,航空機等を迅速かつ効率的に運用するなど応急対策の拠点として,速やかに被災者の救援活動を実施することしている。

(2) 防災に関する普及,啓発

 災害から自らの身を守るためには,平常時から,一人ひとりが防災に関する意識を高め,防災に関する正しい知識や技術を身につけることが重要である。

a 「防災週間」等各種行事を通じての普及・啓発への取組み

 昭和57年5月11日の閣議了解で,「防災の日」(9月1日),「防災週間」(8月30日から9月5日まで)を定め,毎年度においてこの期間を中心に,各種行事や広報活動等を実施している。

 この一環として,平成12年度においては,神戸市で「防災フェア2000」(国土庁・神戸市・防災週間推進協議会共催)を実施し,各種展示,実演,模擬体験等に加え,地震災害と風水害を想定しての徒歩避難及び避難所での支援・生活体験等を取り入れた「防災体験学校」等の行事を展開した。

 このほか,関係各機関や地方公共団体においては[1]防災フェアや各種展示会,[2]テレビ,ラジオ,新聞及び広報誌等による広報,[3]標語,図画等の募集などを展開している。

 また,この期間以外においても「全国火災予防運動」(3月1日〜及び11月9日〜),「水防月間」(5月又は6月),「山地災害防止キャンペーン」(5月20日〜),「土砂災害防止月間」(6月),「がけ崩れ防災週間」(6月1日〜),「危険物安全週間」(6月第2週),「道路防災週間」(8月25日〜),「建築物防災週間」(8月30日〜),「救急医療週間」(9月5日〜),「雪崩防災週間」(12月1日〜)等においてシンポジウム,講演会,講習会等を実施し,防災知識の普及と防災意識の高揚を図っている。

b 「防災とボランティア週間」における取組み

 阪神・淡路大震災においては,ボランティア活動が果たす役割の重要性があらためて認識されたところである。

 こうしたことから,政府は平成7年12月15日の閣議了解で「防災とボランティアの日」(1月17日),「防災とボランティア週間」(1月15日から21日まで)を創設し,災害時におけるボランティア活動及び自主的な防災活動の普及のため講演会等の行事を実施することとしている。

 平成12年度において,内閣府は東京災害ボランティアネットワーク等との共催で「防災とボランティアを考えるつどい」(平成13年1月20日〜21日東京都豊島区)を開催し,ボランティア活動に関する問題点の洗い出しを目的とした「シンポジウム」や「負傷者対応訓練」及び「ボランティア本部訓練」等の行事を実施した。

 また,地方公共団体等においても研修会,講演会,セミナー等の様々な行事が実施された。

c 学校における防災教育

 災害時に自ら適切な行動をとれるようにするためには,学校における防災教育をより一層充実し,子どもの時期から正しい防災知識をかん養していくことが重要である。

 文部省(現文部科学省)においては,防災教育の充実を図るため,平成7年度以降,阪神・淡路大震災の経験等を踏まえた「学校等の防災体制の充実に関する調査研究協力者会議」の報告書を各都道府県教育委員会等に指針として示すとともに,これをもとに学校における防災教育及び防災管理の重点等を明記した「『生きる力』をはぐくむ防災教育の展開」と題する参考資料を作成し,全国各都道府県の教育委員会等に配布した。

 また,さらに効果的な防災教育の実践への取り組みとして防災教育教材の作成・配布を行っており,平成12年度は「考えよう! わたしたちのいのちと安全」という小学校1・2・3年生用の教材を作成し,各学校に配布している。

(3) 自主的防災意識の育成

 大規模な災害が発生した場合には,地域住民が防災関係機関と一体となって初期消火,避難誘導,被災者の救出・救護等の自主的な防災活動を行うことが,被害の拡大を防ぎ円滑な災害応急対策を実施する上で極めて重要である。このような観点から,地域住民の連帯意識に基づく自主防災組織が結成されている。

 自主防災組織は,平成12年4月1日現在,全国3,252市区町村のうち2,472市区町村で9万6,875結成されており,組織率(全国世帯数に対する組織されている地域の世帯の割合)は56.1%である。(自主防災組織については, 第3章 を参照)

(4) 防災訓練

 大規模地震の発災時等には,政府,地方公共団体をはじめとする防災関係機関,地域住民等が緊密な連携のもと,各種の防災活動を迅速かつ適切に実施する必要がある。特に,災害対策本部等の設置など迅速な初動体制の確立と情報の収集,的確な災害応急対応が人命救助と被害の軽減,その後の復旧の鍵を握っている。このため,各防災関係機関において職員の非常参集,災害情報の収集連絡等の体制が整備されているが,災害は多くの場合,その発生を予測できず,しかも防災に係わる関係機関は多岐にわたっているので,防災体制を実効性のあるものとするためには,常日頃から実践的な防災訓練が不可欠である。

 例えば,鳥取県においては,平成12年10月に発生した鳥取県西部地震の2か月ほど前に,米子に駐屯する自衛隊の参加を得て防災訓練を実施し,その結果電話番号が記入されていなかったというマニュアルの不備な点を改めるなど,訓練での課題を直ちに改善していたことが地震発生時における初動対応に十分活かされたものと訓練の意義を高く評価している。

 政府が行っている総合防災訓練は,訓練の反復を通じて,閣僚をはじめ,国,地方公共団体,指定公共機関等の多くの関係職員に防災業務を習得させ,政府,関係機関全体の災害対応力を高める目的で行われている。

 各地域で行われる防災訓練については,災害の教訓を踏まえつつ,災害事象・社会構造の変化,技術革新等の新たな状況に対応できるよう訓練内容の充実に努める必要がある。有珠山周辺3市町(伊達市,壮瞥町,虻田町)においては,活発な火山活動が続いている有珠山の再噴火に備え,平成12年5月18日,避難訓練が,国の現地対策本部の支援のもと実施され,また,これと合わせ関係省庁の増強要員派遣等の情報伝達訓練が実施された。

 防災訓練の実施に当たっては,テレビ,広報誌等を通じた事前広報を行い,地域住民,自主防災組織,ボランティア等の参加を積極的に進め,それぞれの役割を確認しつつ,地域全体の災害対応力を高めることが重要である。

a 政府における総合防災訓練

 毎年9月1日の「防災の日」に,「総合防災訓練大綱」(中央防災会議決定)に基づき,南関東地域直下の地震及び東海地震に係る大規模な総合防災訓練を内閣,関係省庁はじめ関係地方公共団体などが連携を図りつつ実施することとしている。

 平成12年度の訓練は,国土庁をはじめ,33の指定行政機関等と20の指定公共機関等並びに13の地方公共団体が連携し,訓練参加機関関係者及び地域住民等は概ね374万人(平成12年9月15日現在消防庁調べ)が参加した。

(a)

 東海地震対応訓練

 予知対応型訓練としては,東海地震を想定して,地震防災対策強化地域判定会の開催,緊急参集チーム会議の開催,地震予知情報の報告,関係閣僚会議の開催,警戒宣言の発表,内閣総理大臣を本部長とし,全閣僚を本部員とする地震災害警戒本部の設置・運営訓練等を行った上で,内閣総理大臣(代理:自治総括政務次官)を団長とし,関係省庁からなる政府調査団を現地訓練会場(静岡県湖西市及び新居町)に派遣した。

(b)

 南関東地域直下の地震対応訓練

 発災対応型訓練としては,南関東地域直下の地震を想定して,緊急事態の布告,緊急災害対策本部の設置・運営訓練,ヘリコプター映像伝送システムや中央防災無線網を活用したテレビ会議等を通じての情報収集・伝達訓練が行われ,災害応急対策に関する基本方針等が決定された。

 また,内閣総理大臣を団長とする政府調査団を現地訓練会場(神奈川県平塚市)に派遣したほか,国土総括政務次官を長とする緊急災害現地対策本部を設置し,現地対策会議を開催するなどの訓練を行った。

(c)

 原子力防災訓練

 平成11年9月の東海村ウラン加工施設における臨界事故を教訓に制定された原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号)が6月に施行されたことに伴い,法施行後初の原子力防災訓練が,平成12年10月28日,中国電力島根原子力発電所(島根県鹿島町)を対象施設として実施された。本訓練では,内閣総理大臣をはじめとする関係閣僚が参加し,国の原子力災害対策本部(本部長:内閣総理大臣)及び現地対策本部を設置する等の訓練が行われた。

b 地方公共団体等における防災訓練

 大規模地震に係る訓練をはじめ,台風等風水害,原子力災害,火山災害など地域の実情に即して各種の災害を想定した防災訓練が実施されており,平成12年度においては,47都道府県,2,138市町村,約5万1,000団体,495万人の参加が見込まれた(平成12年9月15日現在消防庁調べ(実施予定を含む。))。

 また,都道府県の区域を越えたブロック単位の広域防災訓練にも積極的に取り組まれており,広域的な応援体制や防災関係機関相互の連携協力体制の強化を図るとともに,地域住民の防災意識の高揚,連帯意識を醸成することができた。

(a)

 七都県市総合防災訓練

 首都圏にあって政治・経済などの中枢機能が集積し,各般において広域に関わり合う七都県市(埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県,横浜市,川崎市,千葉市)の地域が,国,防災関係機関等と連携し,一体となった訓練を実施している。

 平成12年9月1日,神奈川県において,連携・強化が推進されている防災関係機関等の,より実践的な応急対策訓練や「七都県市災害時相互応援に関する協定」等に基づく広域的な協力応援体制を生かした訓練を,住民等による地域防災活動の積極的推進と遊漁船を使った帰宅困難者のための帰路確保訓練などを実施した。

(b)

 東京区部直下での大規模地震に係る訓練

 平成12年9月3日,東京都は東京区部直下での大規模地震を想定した東京都総合防災訓練を実施した。これに対し政府は,内閣総理大臣をはじめとする関係閣僚が参加し,防衛庁(中央指揮所)で緊急災害対策本部設置等を行った。

 区部の市街地を中心に都内10箇所の会場で,警察,消防,海上保安庁に加え,陸・海・空の統合運用の自衛隊を含めた大規模かつ総合的な広域支援訓練が行われた。

(c)

 近畿府県合同防災訓練

 阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ,平成7年度から実施されている近畿府県合同防災訓練が,平成12年11月10日,「近畿2府7県(大阪府,京都府,兵庫県,奈良県,和歌山県,福井県,三重県,徳島県及び滋賀県)震災時等の相互応援に関する協定」等に基づき,奈良県天理市会場を中心に実施された。

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.