表示段落: 第1部/第2章/1/1-4/(2)
(2) 災害対策用の無線通信ネットワーク
防災関係機関においては,災害時において有効な通信手段となる無線通信施設の整備を進めている。専ら災害対策に用いられる無線通信ネットワークとしては,中央防災無線網,消防防災無線網,都道府県防災行政無線網,市町村防災行政無線網,防災相互通信用無線等があり,その概要は次のとおりである( 図2-1-2 )。
a 中央防災無線網
中央防災無線網は,大規模な災害が発生した場合において電気通信事業者回線が途絶したり,電話の殺到により通信回線が輻輳したりして,その利用が著しく困難な事態に陥った場合においても,非常災害対策本部,総理大臣官邸,指定行政機関,指定公共機関等との間で災害情報の収集・伝達を行うことを目的として整備している。この中央防災無線網は,固定通信回線(画像伝送回線を含む。),衛星通信回線,移動通信回線から構成されている( 図2-1-3 )。
(図2-1-3) 中央防災無線網通信系統図(平成13年3月現在)
(a) 固定通信回線
固定通信回線は内閣府からの一斉指令通信をはじめ,ファクシミリ,災害映像,各種のデータを中継・伝送する中央防災無線網の基幹回線であり,指定行政機関22機関,総理大臣官邸等の関係機関5機関,指定公共機関17機関及び立川広域防災基地内の関係機関10機関を結んでいる。
また,中央防災無線網と国土交通省専用回線を接続し,被災した都道府県の災害対策本部と総理大臣官邸及び国の災害対策本部を含む防災関係省庁との間で直接連絡がとれる体制を確立している。
(b) 衛星通信回線
高層建築物による電波の遮蔽障害があることにより,又は東京から遠隔地にあるために固定通信回線を結ぶことが困難な指定公共機関26機関との間に衛星通信回線を整備している。また,国の災害対策本部と現地災害対策本部との間に映像,電話,ファクシミリの通信手段を迅速・機動的に設定するために,全国9拠点に可搬型の衛星通信装置の整備を図っている。
その他,大規模な首都直下型の地震によって中央防災無線網を支える庁舎等が損壊し,中央防災無線網そのものが使用不能になった場合のバックアップ回線として,総理大臣官邸をはじめ内閣府等の指定行政機関,都下の指定公共機関等の42機関との間に首都直下型地震対応衛星通信回線を整備している。
(c) 移動通信回線
移動通信回線は,休日夜間において閣僚,災害対策要員等との連絡を確保しようとするもので,都内3か所に基地局を整備するとともに,閣僚,災害対策要員等の自宅のほか,関係省庁に可搬型の無線電話装置を配備している。
b 消防防災無線網
消防庁と都道府県との間を結ぶ無線網で,地上系及び衛星系で構成されている( 図2-1-4 )。
(a) 地上系
全都道府県に対する電話,ファクシミリによる一斉通報が行われているほか,災害情報の収集・伝達に活用されている。
(b) 衛星系(地域衛星通信ネットワーク)
消防庁及び全国約4,200の地方公共団体等(県庁等:830,市町村:2,626,消防:500,ライフライン等:245)を相互に結ぶ地域衛星通信ネットワークにより,都道府県及び消防本部への電話,ファクシミリによる一斉通報,個別通信による災害情報(画像情報を含む。)の収集・伝達が可能で,地上系を補完するものとして防災通信体制の充実を図るよう推進している。
c 都道府県防災行政無線網
都道府県と市町村,防災関係機関等との間を結ぶ無線通信網であり,地域防災計画に基づき,災害情報の収集・伝達を行うために,地上系,地域衛星通信ネットワークによる衛星系又は両方式により構成されている( 図2-1-5 )。
d 市町村防災行政無線網
市町村が災害情報を収集し,また,地域住民に対し災害情報を周知するために整備している無線網であり,市町村庁舎と屋外拡声器や家庭内の戸別受信機を結ぶ同報系,市町村庁舎(基地局)と車載型・可搬型の無線電話装置又は無線電話装置相互間で運用される移動系及び市町村庁舎,学校,病院等の防災関係機関・生活関連機関をネットワークする地域防災系から構成されている( 図2-1-6 )。
有珠山噴火災害及び三宅島噴火災害において,同報無線によって地域の住民に的確な避難情報等を提供し,人的被害の発生を防いでいる。
e 防災相互通信用無線
地震災害,コンビナート災害等の大規模災害に備え,災害現場において警察庁,海上保安庁,国土交通省,消防庁等の各防災関係機関との間で,被害情報等を迅速に交換し,防災活動を円滑に進めることを目的とした無線通信であり,国,地方公共団体,電力会社,鉄道会社等に導入されている。
f その他
総務省においては,地方公共団体等における被害情報の収集や災害応急対策の実施に必要な通信手段の不足に備え,全国の総合通信局等に衛星携帯電話,携帯電話,簡易無線等の無線設備を配備し,要請に応じ貸与できる体制を整備している。