表示段落: 第1部/第1章/3


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3 平成12年に発生した主要な災害とその対策

 平成12年は,有珠山噴火,三宅島噴火及び新島・神津島近海地震,鳥取県西部地震等,ここ数年みられなかった大規模な火山噴火や大きな地震が立て続けに発生した。このため,多くの住民が避難を余儀なくされるとともに,住宅をはじめ,道路,電力,電話,水道等住民生活に直結する生活関連施設等が著しく被害を受け,住民生活に大きな影響を与えた。

 また,本土への台風の上陸はなかったものの,9月には,台風とその影響を受けて発達した前線により東海地方を中心として記録的な豪雨に見舞われた。これにより愛知県及びその近県では,河川の氾濫やその恐れが生じ,延べ約61万人に避難指示や避難勧告が出されるとともに,広域にわたり住宅や店舗・工場等が多数浸水し,住民生活や経済・産業面に大きな打撃を与えた。

 有珠山や三宅島の火山噴火災害に当たり,政府は,噴火当初より迅速な初動体制をとり,非常災害対策本部を設置して,住民の安全確保を第一に優先した対応をとったこと等により,人的被害は最小限にとどめることができた。また,避難住民の生活に対してもきめ細やかに様々な分野にわたって支援を行うなど,長期にわたる災害に政府一体となって取り組んだ。しかしながら,現在もなお,仮設住宅や公的住宅等に避難を余儀なくされている住民が多数おり,引き続き各種の支援を続けている。

 鳥取県西部地震は,阪神・淡路大震災以来最大規模の地震であったが,発生直後より関係省庁が一体となって迅速な情報収集を行い,いち早く被害の概要をつかみ,自衛隊の災害派遣等の応援派遣を迅速に行えたことは,その後の被災者の救助・支援等を迅速かつ的確に行えたことにつながったと言える。なお,鳥取県は,過去の災害時における経験を踏まえ平成12年7月に実施した防災訓練や防災マニュアルの見直しが今回の災害対応に役立ち,被害を最小限にとどめることができたと評価している。

 また,東海地方を中心とした大雨が,都市における広域にわたる浸水,これに伴う都市機能の麻痺等甚大な被害をもたらしたことから,関係機関が連携及び協力し,都市部においてこのような集中豪雨による重大な被害を生じさせないための事前対策,災害発生時における危機管理対策を一層進めていくことが重要である。

3-1 有珠山噴火

(1) 災害の状況

 有珠山では,平成12年3月27日午前から火山性地震が次第に増加し,28日からは山麓で有感地震や低周波地震が増加していった。気象庁は,29日11時10分,「今後数日以内に噴火が発生する可能性が高くなっている」旨の緊急火山情報を発表した。このような中,政府は,同日11時30分に官邸において関係省庁局長等会議を開催,現地では事前に作成・公表されたハザードマップをもとにして,同日13時30分に避難勧告を発令し,同日18時30分には避難指示に切り替え,30日までには住民避難をほぼ完了した。31日には,小有珠の亀裂,洞爺湖温泉の断層群及び洞爺湖から虻田町に抜ける国道230号沿いに新たな亀裂が確認され,同日13時07分頃,有珠山は西山山麓で噴火した。4月1日には,有珠山北西側の金比羅山西側山麓から新たな噴火活動が始まり,5日,西山西麓で段差約10mの陥没地形を形成していることが確認された。

 噴火活動は5月以降次第に低下し,噴火活動は終息に向かっているが,周辺へ噴石を飛散させる爆発など,火口から500m程度の範囲に影響が及ぶ噴火が発生する可能性は当分続くと考えられている。

 この噴火災害では,最大で15,815人が避難指示・勧告の対象となったものの,噴火前に迅速な避難が行われたこと等により,人的な被害はなかった。その後火山の活動状況を見ながら順次避難指示・勧告は解除され,7月28日には,202世帯378名を除き避難指示・勧告は解除された。他方,電気,水道,電話,下水道,道路,鉄道,文教施設等は,火山噴火による地殼変動や泥流等により,大きな被害を受けた。電気・水道・電話については,延べ3,065戸が停電,延べ5,085戸が断水となったほか,商用電源の停電によりNTTビルが運用停止するなどの被害が発生した。下水道については,下水道トンネルが破壊され,洞爺湖温泉地区の下水処理ができなくなるなどの被害を受けた。道路については,道央自動車道,国道230号,国道453号等が地殼変動や噴石・泥流等による被害を受けたほか,多数の主要幹線道路が通行止めとなった。特に一般国道230号は本線上に噴火口が発生するなど,大きな被害を受けた。鉄道も火山活動の影響により,室蘭本線が線路屈曲等の被害を受けたほか,運転休止や臨時ダイヤ運行を余儀なくされた。また,小学校,中学校,高等学校等の文教施設も亀裂や泥流流入等の被害を受けた。

(2) 国等の対応(省庁名,大臣等は当時)

 噴火前の3月29日と翌30日の両日に,災害対策関係省庁連絡会議を開催し,関係省庁間の緊密な連携等を確認した。また29日に2回,官邸において関係省庁局長等会議を開催するとともに,現地には,国土庁長官官房審議官をはじめとする関係省庁の担当官を派遣し,地元自治体等と有珠山現地連絡調整会議を開催し,現地における今後の対応等について検討した。翌30日には増田国土総括政務次官を現地に派遣し,現地の体制を強化した。

 3月31日13時07分頃の最初の噴火後,直ちに,関係閣僚会議を開催し,「平成12年(2000年)有珠山噴火非常災害対策本部(本部長:中山国土庁長官,場所:国土庁)及び現地対策本部(本部長:増田国土総括政務次官,場所:伊達市)」の設置等を決定した。その後開かれた非常災害対策本部第1回本部会議では,下記の6点からなる災害応急対策に関する基本方針を決定し,これに沿って対策を実施していくこととした。

[1]

 今後の火山活動について,引き続き,観測・監視の強化,情報伝達体制の確保など,厳重な警戒態勢を執る。

[2]

 被害状況の迅速かつ的確な把握に努めるとともに,住民等の安全を最優先に,避難誘導等に万全を期す。

[3]

 災害の拡大防止を図るため,関係省庁,地元地方公共団体の緊密な連携のもと,状況に応じた適切な応急対策を講ずる。

[4]

 政府調査団(団長:中山非常災害対策本部長(国土庁長官))を直ちに現地に派遣する。

[5]

 現地に設置している有珠山現地連絡調整会議を平成12年(2000年)有珠山噴火非常災害現地対策本部にきりかえる。

[6]

 住民の避難生活が長期化する可能性にかんがみ,応急仮設住宅の供与をはじめとした適切な救済措置を講ずる。

 これを受け,本部会議終了後直ちに,中山非常災害対策本部長(国土庁長官)を団長とする政府調査団を現地に派遣した。翌4月1日に政府調査団は帰京し,直ちに非常災害対策本部長より現地の状況を小渕内閣総理大臣に報告するとともに,4月3日,非常災害対策本部第1回本部事務局幹事会会議を開催し,政府調査団報告等を行った。

 また,現地では,非常災害現地対策本部が設置されたことに伴い,有珠山現地連絡調整会議を有珠山噴火非常災害現地対策本部合同会議に切り替え,3月31日,伊達市役所において第1回有珠山噴火非常災害現地対策本部合同会議を開催し,現地における様々な課題・問題について協議を重ね,その対応に当たった。なお,非常災害対策現地本部合同会議は,当初毎日2回開催し,8月11日の現地対策本部の閉鎖までに計61回開催された。

 4月7日15時より非常災害対策本部第2回本部会議を開催し,下記の5点からなる災害対策に関する基本方針の決定等を行った。

[1]

 観測・監視の強化,情報伝達体制の充実等により,引き続き厳重な警戒態勢を執る。

[2]

 引き続き,住民等に対する安全性の確保を最優先として避難誘導等に万全を期する。

[3]

 避難者のニーズに的確に応える情報提供等を行うとともに,避難所における生活環境の改善や応急仮設住宅の供与等の適切な支援措置を講じる。

[4]

 農林漁業,商工業や観光業等生業への支援措置及び被雇用者への支援措置を講じる。

[5]

 今後とも,関係省庁や地元地方公共団体と緊密な連携を図りつつ,状況に応じた適切な応急対策を講ずる。

 また,4月15日には,森内閣総理大臣が現地を視察した。28日,官邸において青木内閣官房長官の出席の下,第3回関係省庁局長等会議を開催し,監視・観測体制の強化,大規模噴火が起こる兆候があった場合の現地対策本部の体制強化等について確認を行った。5月3日,火山の状況と監視体制,火山活動に応じた避難等について協議するため,関係閣僚会議を開催した。6月には,6日から7日にかけて,中山非常災害対策本部長(国土庁長官)が現地を視察,また,6月16日,関係閣僚会議を開催し,緊急時の住民避難,今後の復旧・復興対策等について確認した。9月14日,非常災害対策本部第2回本部事務局幹事会を開催し,有珠山噴火災害の復旧・復興等について報告等を行った。年が明けた平成13年1月22日,伊吹非常災害対策本部長(防災担当大臣)及び山崎非常災害対策副本部長(内閣府大臣政務官)が現地を視察した。

 政府は,4月28日,予備費を使用し,地震計,GPS,遠望カメラ等の観測監視体制を充実することを決定した。また,7月25日,この有珠山噴火災害に対する緊急災害復旧及び緊急防災対策として,一般国道230号をはじめ,有珠山周辺の迂回路・避難路の改修,防災・雪寒対策,道路情報装置の整備などの道路整備関係約129億を含む約196億円の公共事業等予備費の使用について閣議決定した。9月19日には,7月25日の閣議決定で災害対策分として使用留保していた公共事業等予備費のうち,1億4,800万円を有珠山対策として使用することを閣議決定した。

 避難指示地域内への住民一時帰宅については,一時帰宅する住民の安全が確保されるよう,非常災害現地対策本部が地元地方公共団体と自衛隊,消防,警察,道路管理者,気象庁等関係支援機関の調整を綿密に行い,実施日ごとに計画を策定した上で実施した。

 また,今回の災害について局地激甚災害の指定を行った( 表1-3-2 )。

  (表1-3-2) 平成12年局地激甚災害適用措置及び対象区域

 被災地域の復興のため,北海道が平成12年12月に「復興方針」をとりまとめ,平成13年3月には「復興計画基本方針」を策定した。政府としては,「復興計画基本方針」に基づき地元1市2町が策定する「復興計画」の実現に向けて,政府一体となって支援を行っていくこととしている。

 関係機関においては,以下の措置を講じた。

 内閣官房は,3月29日に官邸連絡室を設置し,更に同日官邸連絡室を官邸対策室に改組し,関係省庁の情報共有化を図るとともに,政府の初動対処方針を決定した。また,4月3日及び9日には危機管理監を現地に派遣したほか,3月29日以降現地に職員を派遣し,関係機関と協力し現地における対応に当たった。

 国土庁は,3月29日に情報先遣チーム,翌30日には増田国土総括政務次官を現地に派遣し,現地との連絡調整を強化した。31日に非常災害現地対策本部が設置され,増田国土総括政務次官は,非常災害現地対策本部長として引き続き現地にとどまり,指揮をとった。また国土庁長官官房審議官を非常災害現地対策本部長代行として現地に常駐させるとともに,多数の職員を派遣し,現地における対応にあたった。4月19日には自衛隊等の航空機から撮影した被災地域の映像を元に,明らかに全壊と認められる住宅を確認し,3月31日付で虻田町に「被災者生活再建支援法」を適用した。また,7月28日には,今後も避難が長期化することが見込まれる202世帯を同法に基づく「長期避難世帯」として認定した。

 警察庁では,非常災害現地対策本部に警察庁幹部を派遣して,現地での連絡体制の強化を図った。また,噴火前に東北管区広域緊急援助隊の派遣を指示するとともに,噴火後には,管区機動隊等の派遣を指示した。北海道警察では,現地に派遣された機動隊と協力して,避難誘導,避難拒否者の説得活動,交通規制,立入規制,避難住民の短時間・一時帰宅の支援,避難所における「困りごと相談」等に当たった(ヘリコプター派遣:最大時4機,延べ約160機)。また,4月23日,保利国家公安委員会委員長が現地視察を行った。

 総務庁は,5月16日,17日,被災者等からの各種相談,問い合わせ等に応じるための総合的な相談窓口として,伊達市及び豊浦町において関係機関の協力を得て特別総合行政相談所を開設した。

 北海道開発庁は,建設省と一体となって,高感度監視カメラやヘリコプター等による火山活動や泥流の監視を行うとともに,現地画像を関係機関や避難所に配信した。また,公共事業等予備費により,新たに無人災害調査車等を整備するとともに,泥流対策として,緊急的に無人化施工等を実施した。さらに,北海道産業,経済全般への影響を軽減するため,「北海道活性化懇談会」や北海道産品の購入促進キャンペーン等を実施した。3月31日,4月8日,5月1日及び6月30日に二階北海道開発庁長官が現地を視察した。7月8日には森田北海道開発庁長官が現地を視察した。12月14日,扇北海道開発庁長官が現地を視察した。米田北海道開発総括政務次官を3月30日から31日,4月4日及び6月6日に現地に派遣するとともに,7月14日,橋本北海道開発総括政務次官を現地に派遣した。

 防衛庁は,航空機による航空偵察,関係地方公共団体への連絡要員の派遣等を行うとともに,3月29日に北海道知事より自衛隊の災害派遣要請を受け,3月29日から7月24日までに,住民避難,給食・給水,避難住民の短時間・一時帰宅,火山観測監視等の支援を実施した(人員派遣:最大時約4,300人,延べ約100,000人,航空機派遣:最大時約20機,延べ約1,000機,艦船派遣:最大時4隻,延べ約100隻)。また,4月9日,瓦防衛庁長官が現地視察を行った。

 科学技術庁では,航空機による山体表面温度観測,地球観測衛星による観測を実施するとともに,高サンプリング地震観測を整備強化した。

 大蔵省では,多大な被害を受けた伊達市及び壮瞥町の指定する地域並びに虻田町の納税者について,国税庁告示をもって,平成12年10月31日まで,申告,納付等の期限を延長した。

 文部省では,幼児・児童生徒の所在・状況の把握,転入学の弾力措置等適切な対応をとるよう指示した。また,北海道大学医学部附属病院の医師団,北海道大学歯学部附属病院の歯科保健班を派遣した。4月17日には中曽根文部大臣が現地を視察した。

 厚生省は,3月29日,伊達市,虻田町,壮瞥町に対し災害救助法を適用し,避難所・応急仮設住宅の設置等を支援した。避難住民に対する救護活動,心のケア,健康相談等の実施のため,地元地方公共団体等は,救護班や精神保健班,保健婦を避難所等に派遣した。また生活福祉資金の貸し付けの対象を低所得者に限定しない特例措置を実施した。

 日本赤十字社は,各赤十字病院から救護班を派遣し,避難所等で巡回医療等を実施するとともに,毛布,日用品セット,お見舞い品セットを避難住民に配布した。また,赤十字防災ボランティアを伊達市,長万部町に派遣した。

 農林水産省では,避難指示地域内の家畜の移動先を確保し,家畜改良センター等から避難農家に粗飼料を提供した。また,漁船等の安全確保,ホタテ管理作業の支援,水産生物や海洋環境への影響調査のため,水産庁の漁業取締船及び調査船を現地海域に派遣した。さらに,被害の著しい農林漁業者に対する農林漁業金融公庫融資について,地元地方公共団体と協力して,貸付利率の無利子化を実施した。4月6日,玉沢農林水産大臣が現地を視察するとともに,5月1日,金田農林水産政務次官を現地に派遣した。

 通商産業省は,緊急時に備えた対応の準備等について,北海道電力や簡易ガス事業者に指示等を行った。また,北海道電力及び簡易ガス事業者から申請のあった料金の支払い期限の延長等の災害特別措置を認可した。また,政府系中小企業金融機関による災害復旧貸付を適用するとともに,著しい被害を受けた中小企業者等に対しては,閣議決定により,貸付利率を財投金利と同水準まで引き下げる措置を実施した。さらに,特に著しい被害を受けた中小企業者については,地元地方公共団体と協力して利子補給を行い,結果的に無利子となる措置を実施した。4月9日,深谷通商産業大臣が現地を視察した。

 運輸省は,鉄道事業者,航空関係者,観光関係団体に対し必要な注意喚起を行い,安全確保に努めるとともに,自動車検査証の有効期間の延長等の避難者への生活支援を実施した。また,観光振興対策として,北海道が行う観光キャンペーンへの支援など,運輸関係事業者や旅行業者等に対し必要な協力要請等を行った。3月31日,4月8日,5月1日及び6月30日に二階運輸大臣が現地を視察した。また,7月8日,森田運輸大臣が現地を視察した。3月30日及び4月10日,鈴木運輸政務次官を現地に派遣した。

 海上保安庁は,周辺漁協等に対する注意喚起や周辺海域の航行自粛要請を行い,これらを航行警報にて周知するとともに,有珠山噴火災害対策参考図を作成し,防災関係機関に最新情報を提供した。また,巡視船艇,航空機,救難チーム等を派遣し,住民や物資の輸送,ホタテ管理作業時の警戒等の支援を行った(人員派遣:最大時約500人,延べ約47,500人,ヘリコプター派遣数:最大時10機,延べ184機,巡視船艇派遣:最大時11隻,延べ397隻)。

 気象庁は,緊急火山情報や臨時火山情報を適宜・適切に発表するとともに,火山噴火予知連絡会有珠山部会を随時開催し,火山活動を総合的に評価し情報提供を行った。また,火山機動観測班を急派し,大学,北海道開発局等と連携を図りながら監視体制等を強化した。さらに,警報を含む気象情報を適時に発表し,大雨や融雪に伴う土砂災害等に十分に警戒するよう呼びかけた。

 郵政省では,電気通信事業者等に対し重要通信の確保等について要請した。また,4月1日から5月28日まで衛星通信設備によりオンラインサービスが可能な移動郵便局(スペースポスト号)を避難所へ派遣した。さらに,郵便物の料金免除等を行うとともに,為替貯金・簡易保険の非常取扱いを実施した。4月16日,八代郵政大臣が現地を視察した。5月8日,虻田町に対し,臨時災害対策用FM放送局を免許した。

 NTTは,災害用伝言ダイヤルを運用するとともに,避難所等に特設公衆電話を設置した。また電話料金の支払い期限の延長や電話が使用できない期間の基本料金等を免除した。

 NHKは,被害が甚大な放送受信契約者に対し,放送受信料を免除した。

 労働省は,雇用・労働問題に適切に対処するため,雇用・労働に関する相談窓口を設置したほか,一時的な離職を余儀なくされている被災者に対して雇用保険の基本手当を支給する措置を行った。また,緊急地域雇用特別交付金事業を活用して,雇用の創出を図るとともに,休業等を実施する事業主を雇用調整助成金の支給対象とし,雇用の維持を図った。さらに,災害により離職を余儀なくされた方(45歳以上)を特定求職者雇用開発助成金の支給対象労働者とした。

 建設省は,観測・監視機器等の増設や災害対策用ヘリコプターの派遣等により観測監視体制を強化したほか,配置した衛星通信車及びマイクロ回線を利用し,現地画像を本省,国土庁及び官邸まで配信した。再避難の円滑化のため,道央自動車道に緊急避難路等を設置するとともに,住民の生活機能の確保の観点から,国道230号の機能を代替している道道を国道230号に編入し,整備を行った。インターネットの道路局ホームページにおいて,道路管理者の対応状況,道路の被害状況,道路法等に基づく道路の規制状況や迂回路情報,現地の写真等災害に関する道路の情報を迅速に提供した。また,有珠山の噴火後ただちに土砂災害対策専門家チームを派遣したほか,建設省等で構成する土砂災害対策検討委員会を開催し,泥流警戒基準雨量及び警戒区域等を設定した。泥流対策,避難路確保等早急な対策が必要な箇所については,各種災害復旧事業及び災害関連緊急砂防事業を無人化施工も取り入れながら緊急に対策を実施した。さらに住宅金融公庫融資を返済中の被災者に対し,返済金の払込みの据え置き,返済期間の延長等の措置を実施した。3月31日から4月1日及び6月6日から7日にかけて,中山建設大臣が現地を視察した。

 自治省では,被災納税者の地方税の減免措置等について地方公共団体に対し通知したほか,伊達市,虻田町,壮瞥町に対して6月に定例交付すべき普通交付税の一部1,030百万円を4月18日に繰り上げて交付し,4月28日には多数の避難住民の受け入れ等を行った被災地周辺4市町村に対しても,6月に定例交付すべき普通交付税の一部1,227百万円を繰り上げて交付した。さらに,虻田町については多数の住民が避難生活を余儀なくされている状況等に鑑み,9月に定例交付すべき普通交付税の一部221百万円を6月28日に繰り上げて交付した。また,4月23日には保利自治大臣が被災地を視察した。

 消防庁は,消防・防災ヘリ,緊急消防援助隊等の派遣を行った。地元消防機関ではこれらの応援を受けながら,救急隊の避難所への配置や巡回,避難住民の短時間・一時帰宅支援等を実施した(人員派遣:最大時58人,延べ2,284人,ヘリコプター派遣:最大時2機,延べ14機)。

 ボランティア活動については,北海道の各社会福祉協議会,日本赤十字社,ボランティア団体等により設置された「北海道有珠山福祉救援ボランティア活動対策本部」及び「北海道有珠山福祉救援ボランティア活動現地対策本部」が,全国から参加するボランティアの受け入れ,役割の付与等を行い,ボランティア活動全体をコーディネートする形で進められた。延べ約1万人が参加し,避難所運営のサポート,物資搬送・引越しの手伝い,リクリエーション活動等様々な活動に携わり,被災者を支援した。

3-2 三宅島噴火及び新島・神津島地震

(1) 災害の状況

 三宅島では,平成12年6月26日から地震が多発し始め,気象庁は,6月26日19時33分に「噴火のおそれがある」旨の緊急火山情報第1号を発表し,住民に警戒を呼びかけた。27日には三宅島西方約1km沖で海底噴火が確認された。その後活動は低下したが,7月4日頃から山頂で地震が増え始め,8日に山頂で噴火するとともに,大きな陥没火口が形成された。以後,山頂で噴火が繰り返され,8月18日の噴火では山麓に噴石が落下し,29日の噴火では,低温で勢いのない火砕流が発生した。10月以降は火山灰の噴出はほぼなくなったが,9月以降,二酸化硫黄等の火山ガスを大量に放出する状態が続いている。なお,12月下旬から13年1月中旬にかけて山頂部で弱い火映現象が観測された。

 また,12年7月から8月までに三宅島近海から新島・神津島近海にかけて活発な地震活動があり,2か月間で震度6弱6回を含む震度5弱以上が30回観測された。

 これら一連の火山・地震活動により様々な被害が発生した。

 7月から続いた地震では,7月1日の震度6弱を観測した地震で神津島村の住民1人が亡くなるとともに,新島村で最大413名,神津島村で最大918名に対し避難指示や避難勧告が出された。また,三宅島の噴火活動の活発化から,三宅村では,9月2日に三宅村の全住民に対し島外への避難指示が出され,4日までに全住民が島外に避難するに至り,現在(13年4月末)も続いている。

 また,住宅や電気・水道・電話・放送に加え,道路・河川・港湾・空港等の公共施設等が被害を受け,住民生活に大きな影響を与えた。新島村では,全壊2棟,半壊15棟,停電1,976戸,断水152戸,NTTドコモ基地局1局が停波となった。また,都道,林道で土砂崩落,路面亀裂等の被害が発生し,計約20kmで通行止め(12年9月25日現在)となったほか,がけ崩れ8か所等の被害が発生した。農林水産業関係では,農業用水施設2か所,林地荒廃・治山施設39か所,漁港施設3か所等の被害となった。神津島村では,全壊2棟,停電1,690戸,断水20戸のほか,ケーブルテレビ受信施設の損壊により放送が停止した。また,都道,林道で土砂崩落,路面亀裂等の被害が発生し,計約41kmで通行止め(12年9月25日現在)となった。さらに,がけ崩れをはじめとした土砂災害34か所等の被害が発生したほか,空港の滑走路に段差が発生した。農林水産業関係では,ビニールハウスの損壊,農業用施設9か所,林道4か所,林地荒廃・治山施設41か所,漁港施設1か所の被害が発生した。三宅村については,火山活動の影響で,降灰,泥流,地殼変動等が発生し,多くの施設等に被害が生じているが,多量の火山ガスの噴出が続き,被害の詳細については把握できない状態である。

(2) 国等の対応(省庁名,大臣等は当時)

 三宅島の火山活動が活発化したことから,6月26日22時より第1回災害対策関係省庁連絡会議を,また6月27日10時より第2回災害対策関係省庁連絡会議を開催し,[1]関係機関は今後とも迅速かつ的確に情報の収集・伝達を行い,関係地方公共団体を含め,緊密な連携を図り,警戒などに万全を期すること,[2]事態の推移に応じ必要があれば,災害関係省庁連絡会議を開催する等関係省庁の連携を密にしていくこと,等を確認した。

 震度6弱の地震が発生した7月1日,9日,15日,30日及び8月18日には,地震発生後,直ちに官邸対策室を設置するとともに,関係省庁の局長級職員が速やかに官邸に参集し,緊急参集チーム会議を開催した。緊急参集チーム会議には,森内閣総理大臣,中川内閣官房長官,扇国土庁長官も度々参加して陣頭指揮をとった。また,国土庁においては,災害対策関係省庁連絡会議を開催した。

 7月21日,官邸において中川内閣官房長官の出席の下,第1回関係省庁局長等会議を開催し,下記の4点について確認した。

[1]

 火山活動及び地震活動について引き続き厳重な監視・観測を行い,被害の発生・拡大防止に努める。

[2]

 住民の生命・身体の安全確保を最優先としつつ,被災住民の生活面での支援に遺漏なきを期する。

[3]

 緊急時の住民避難等に万全を期するため,関係機関においては,引き続き必要な体制を維持する。

[4]

 今後とも状況に応じて適宜関係閣僚及び局長等による会議を開催する。

 また,8月29日12時15分,政府は「平成12年(2000年)三宅島噴火及び新島・神津島近海地震非常災害対策本部(本部長:扇国土庁長官,場所:国土庁)」を設置した。同日14時から官邸において,中川内閣官房長官及び扇非常災害対策本部長(国土庁長官)の出席の下,第1回非常災害対策本部会議と第2回関係局長等級会議をあわせて開催し,下記の5点について確認した。

[1]

 三宅島火山の活動状況及び三宅島,神津島,新島,式根島近海における地震の発生状況にかんがみ,引き続き厳重な監視・観測体制を維持するとともに,可能な限り監視・観測体制の強化を図る。

[2]

 島内の住民が生活を維持する上で欠かすことのできない電力,水道,交通網,通信網等のライフラインの確保に努めるとともに,ライフラインに被害が生じた場合は可能な限り速やかに応急復旧できる体制を整えることとする。

[3]

 島外に避難した住民を含め,住民の生活環境の改善を図るとともに,今回の災害による被害を受けた農林水産業,観光業等の産業を支援すべく,所要の施策を実施することとする。

[4]

 島内に残った住民の安全確保に万全を期すとともに,万一の場合も想定し,緊急時の避難支援体制を構築しておくこととする。

[5]

 関係省庁間及び東京都,地元自治体との緊密な連携を維持し,これらの対策を適切かつ迅速に行うこととする。そのため,現地において各種施策を迅速に具体化するため関係省庁で構成する「政府現地対策チーム」をできるだけ早い時期に派遣するとともに,今後とも状況に応じて関係局長等会議を開催することとする。

 8月30日より,政府現地対策チームの先遣チームを派遣し,9月1日から2日にかけて,関係10省庁23名からなる政府現地対策チーム(先遣チームの合流を含む)を三宅島に派遣した。9月6日から8日にかけて,関係17省庁33名からなる政府現地対策チームを神津島及び新島に派遣した。

 9月5日,扇非常災害対策本部長(国土庁長官)は,避難住民の一時避難先となった国立オリンピック記念青少年総合センター(代々木)を訪問した。9月14日には,森内閣総理大臣及び扇非常災害対策本部長(国土庁長官)が,三宅島,神津島及び新島を視察した。9月15日,内閣総理大臣は三宅村の児童・生徒が避難している秋川高校を訪問した。11月23日,蓮実非常災害対策副本部長(国土総括政務次官)が三宅島及び東京都現地災害対策本部(神津島村内に設置)に派遣した。11月30日,国土庁にて第2回非常災害対策本部会議を開催した。12月18日,高橋非常災害対策副本部長(国土総括政務次官)を三宅島,神津島及び新島に派遣した。13年1月15日,伊吹非常災害対策本部長(防災担当大臣)が三宅島,神津島及び新島を視察した。25日,坂井非常災害対策副本部長(内閣府副大臣)を三宅島,神津島に派遣した。また,2月27日,伊吹非常災害対策本部長(防災担当大臣)は,三宅村住民が避難している都営桐ヶ丘団地等を訪問した。3月3日,森内閣総理大臣が三宅島の被災状況等を視察した。

 政府は,9月12日,三宅島火山活動等に対する緊急観測監視体制の強化のため予備費約14億円を使用することを閣議決定した。また,19日には,7月25日の閣議決定で災害対策分として使用留保していた公共事業等予備費約200億円のうち,96億円を三宅島噴火及び神津島・新島近海地震による被害に対する災害復旧事業に使用することを閣議決定した。さらに,新島・神津島近海地震災害について,局地激甚災害の指定を行った( 表1-3-2 )。

 現在,三宅島においては,これまで設置を進めてきた監視・観測機器のデータ等から火山ガス放出が収まること等が確実となり,帰島できる見通しが立った後,出来るだけ速やかに帰島できるよう,関係省庁,地方公共団体,関係機関が連携して,道路や電力等の維持保全や被害の拡大防止等のための作業を進めている。

 関係機関においては,以下の措置を講じた。

 国土庁は,震度6弱の地震が発生した際には,地震被害早期評価システムによる被害推計結果を直ちに関係省庁へ配信した。7月5日,蓮実国土総括政務次官を神津島村に派遣し,19日には,扇国土庁長官が三宅島村,神津島村及び新島村の現地視察を実施した。8月30日以降国土庁職員を現地に派遣し,東京都現地対策本部等との連絡・調整等を実施している。また,11月29日,三宅村内で住宅全壊世帯が10世帯以上確認されたことから6月26日付で被災者生活再建支援法を適用した。さらに,11月30日には,今後も避難が長期化することが見込まれる約1,970世帯を同法に基づく「長期避難世帯」として認定した。

 警察庁では,関係機関との連絡調整等に当たるとともに,警視庁では,警視庁ヘリコプターや自衛隊の航空機及び艦船により,迅速に機動隊を三宅島等に派遣し,被害情報の収集,避難誘導,交通規制,避難住民への「困りごと相談」等に当たった(ヘリコプター派遣:最大時6機,延べ約210機(いずれも13年3月31日現在))。

 総務庁は,11月1日,被災者等からの各種相談,問い合わせ等に応じるための総合的な相談窓口として,東京都竹芝棧橋において関係機関の協力を得て特別総合行政相談所を開設した。

 防衛庁は,関係地方公共団体への連絡要員の派遣,震度5弱以上の地震が発生した場合の航空偵察等を行ったほか,東京都知事より,三宅村については6月27日,8月20日及び29日,神津島村に対しては,7月1日に自衛隊の災害派遣要請を受け,物資輸送,土のう積み,降灰除去,艦船の待機,火山観測,防災関係機関の人員輸送等の支援を実施した(人員派遣:最大時約470人,延べ約39,500人,航空機派遣:最大時約30機,延べ約370機,艦船派遣:最大時約10隻,延べ約290隻(いずれも13年3月31日現在))。

 科学技術庁では,地震調査研究推進本部定例会及び臨時会を開催し,地震活動の現状に関して評価を行った。また科学技術振興調整費を用いた「神津島東方海域の海底下構造等に関する緊急研究」を関係機関の協力の下実施した。

 大蔵省では,多大な被害を受けた三宅村,神津島村及び新島村の納税者について,国税庁告示をもって,別途告示で定める期日まで,申告,納付等の期限を延長した。

 文部省は,幼児・児童生徒の所在・状況の把握,転入学の弾力措置,また状況に応じ,臨時休校や授業短縮,夏季休業の前倒し等適切な対応をとるよう指示した。被災地域における学校については,教育委員会を通じ,学校施設等の安全確認のうえ,授業を再開するよう指示した。なお,三宅村の児童生徒については,都立秋川高校等に受け入れ,授業等が円滑に実施されるよう措置した。9月1日,大島文部大臣が都立秋川高校を視察した。

 厚生省は,三宅村,神津島村,新島村に対し,それぞれ6月26日,7月1日,15日に災害救助法を適用し,避難所・応急仮設住宅の設置等を支援した。避難住民に対する救護活動,健康相談等を実施するため,地方公共団体等は救護班,医療班を派遣した。また生活福祉資金の貸し付けの対象を低所得者に限定しない特例措置を実施した。

 日本赤十字社は,救護班計6班35名を自衛隊機により三宅島へ派遣したほか,緊急の事態に備えて救護班の待機を実施した。

 農林水産省は,被害調査を行うとともに,緊急を要する林道等について応急工事を実施した。また,水産生物や海洋環境への影響調査を行った。さらに,被害の著しい農林漁業者に対する農林漁業金融公庫融資について,地元地方公共団体と協力して,貸付利率の無利子化を実施した。9月15日,谷農林水産大臣が三宅村,新島村及び神津島村の被害状況等を視察した。

 通商産業省は,電気事業者及びガス事業者から申請のあった料金の支払い期限の延長等の災害特別措置を認可した。また政府系中小企業金融機関による災害復旧貸付を適用するとともに,著しい被害を受けた中小企業者等に対しては,閣議決定により貸付利率を財投金利と同水準まで引き下げる措置を実施した。さらに特に著しい被害を受けた中小企業者については,地元地方公共団体と協力して利子補給を行い,結果的に無利子となる措置を実施した。

 運輸省は,航空関係者,観光関係団体に対し必要な注意喚起を行い,安全確保に努めた。また,避難者に対する支援として,自動車検査証の有効期間の延長,雇用確保に関する運輸関係事業者への協力要請を実施するとともに,離島航路運航事業者への財政支援等を実施した。この他,伊豆諸島の観光振興対策として旅行業者等に対し必要な協力要請等を行った。

 海上保安庁は,周辺海域を危険海域として設定し,航行警報を発し,付近航行船舶に対し注意喚起を行った。また,巡視船艇,航空機,特殊救難隊を派遣し,緊急時の避難支援,火山観測支援等を行った(人員派遣:最大時約970人,延べ約17,500人,航空機派遣:最大時7機,延べ253機,巡視船艇派遣:最大時17隻,延べ370隻(いずれも13年3月31日現在))。このほか,測量船による変色水調査及び海底地形の調査の結果,変色水の湧出点付近に3か所の火口列を発見した。

 気象庁は,緊急火山情報,臨時火山情報及び地震情報等を適宜・適切に発表するとともに,火山噴火予知連絡会や地震防災対策強化地域判定会を開催し,地震・火山活動を総合的に評価して情報提供を行った。また,地震・火山機動観測班を急派し,大学,関係省庁等と連携を図りながら,震度計等を増設し,観測・監視体制等を強化した。さらに,警報を含む気象情報を適時に発表し,大雨に伴う土砂災害等に十分に警戒するよう呼びかけた。

 郵政省では,電気通信事業者に対し重要通信の確保等について要請した。また,9月7日と8日,衛星通信設備によりオンラインサービスが可能な移動郵便局(スペースポスト号)を,避難者の一時滞在場所である国立オリンピック記念青少年総合センター(代々木)に派遣した。さらに,郵便物の料金免除等を行うとともに,為替貯金・簡易保険の非常取扱いを実施した。8月4日,損壊・停波した三宅島の放送中継局の代替施設として,御蔵島に三宅島向けの中継局を設置するための許可をした。

 NTTは,災害用伝言ダイヤルを運用するとともに,避難所等に特設公衆電話を設置した。また電話料金の支払い期限の延長等を実施した。

 NHKは,被害が甚大な放送受信契約者に対し,放送受信料を免除した。

 労働省は,雇用・労働に関する相談窓口を設置したほか,一時的な離職を余儀なくされている被災者に対し,雇用保険の基本手当を支給する措置を行った。また,緊急地域雇用特別交付金事業を活用して,雇用の創出を図るとともに,休業等を実施する事業主を雇用調整助成金の支給対象とし,雇用の維持を図った。

 建設省は,情報収集の強化のため,災害対策用ヘリコプターの派遣を行い,迅速な現地調査を実施した。また,観測・監視機器等を設置し,観測監視体制を強化した。さらに,現地に災害査定官を派遣し,道路の応急復旧工事等の技術指導を実施するとともに,泥流や土砂による被害発生を防止するため,砂防関係緊急対策事業の実施を支援した。東京都の土砂災害対策検討委員会にも担当官を派遣し,土砂災害に対する警戒避難体制等について技術的支援を実施した。住宅金融公庫融資を返済中の被災者に対しては,返済金の払込みの据え置き,返済期間の延長等の措置を実施するとともに,被災者等のための公営住宅の建設を支援した。

 自治省では,被災納税者の地方税の減免措置等について地方公共団体に対し通知したほか,9月に定例交付すべき普通交付税の一部について7月18日に神津島村に対して140百万円,8月8日に三宅村,新島村,利島村に対して233百万円,さらに被害が継続している状況等にかんがみ三宅村に対して9月5日に90百万円を,それぞれ繰り上げて交付した。

 消防庁は,情報収集及び関係機関との連絡調整等にあたるとともに,地元消防機関は,東京消防庁と連携を図り,ヘリコプター等による被害状況調査や警戒活動,地震発生時における住民の避難誘導,崖崩れ等の応急措置作業及び避難指示・勧告区域の警戒活動等を実施した(人員派遣:延べ約1,700人,ヘリコプター派遣:最大時2機,延べ59機(いずれも13年3月31日現在))。

3-3 平成12年秋雨前線と台風第14号に伴う大雨

(1) 災害の状況

 9月11日から12日にかけて,本州上に停滞していた前線に向かってゆっくりと沖繩方面に進んでいた台風第14号から暖かく湿った空気が入って,前線の活動が非常に活発となった。これにより西日本から東日本にかけての太平洋側で長時間にわたり,活発な雨雲が発生・発達を繰り返し大雨をもたらした。特に,東海地方では,名古屋地方気象台において明治29年に記録した最大日降水量の2倍近い日降水量428mmを観測するなど,各地でこれまでの観測値を更新する記録的な豪雨となった。

 この豪雨により,名古屋市で新川が約100mにわたって破堤したほか,庄内川や天白川でも越水するなど,愛知県及びその近県で,溢水,浸水,冠水が発生し,伊勢湾台風以来の浸水害となった。死者10名,負傷者115名,住家の全壊31棟,半壊172棟,一部損壊305棟,床上浸水22,894棟,床下浸水46,943棟の被害が発生したほか,愛知県を中心として延べ約61万人に避難指示・勧告が出された。

 電気・ガス・水道・電話・下水道関係では,延べ約32,500戸が停電となったほか,約5,700戸にガスの供給支障が生じた。また,100局の携帯電話基地局や岐阜県,三重県,長野県内4局の放送中継局が停波した。上水道は,愛知県で967戸,長野県で840戸,岐阜県で731戸が断水したのをはじめ,全国で3,386戸が断水となった。下水道も愛知県で41か所が被災した。

 また,土砂災害も,土石流,地すべり,がけ崩れ等合わせて全国で123件発生し,県道以上の道路では,法面崩壊により124か所,冠水により95か所が通行止め(12年9月12日10時現在)となった。

 鉄道関係では,東海道新幹線で降雨規制等により約18時間にわたり運行抑止となったほか,JR東海,各私鉄で計22路線が運休となった。

 農林水産業関係では,農地4,465か所,農業用施設3,207か所,林地荒廃1,058か所,林道4,468か所,治山施設48か所,漁港施設11か所,漁業用施設1か所に被害が発生した。また,冠水等により農作物等にも被害が及んだ。

 建設省の試算によると,被害額は約8,500億円となり,公共施設に比べて一般資産の被害額が多かったのが特徴である。

(2) 国の対応状況(省庁名,大臣等は当時)

 9月12日13時より,災害対策関係省庁連絡会議を開催し,[1]行方不明者の捜索救助に全力をあげること,[2]これまでに生じた被害に対し適切に対応を続け,復旧が速やかに進められるよう対応すること,[3]関係機関は今後とも迅速かつ的確な情報収集・伝達を行い,関係地方公共団体も含め緊密な連携を図り,警戒体制に万全を期すること,[4]事態の推移に応じ必要があれば災害対策関係省庁連絡会議を開催する等,関係省庁の連携を密にしていくこと,等を確認した。

 政府は,この豪雨災害による中小企業者等の被害が過去の激甚災害と比べても非常に大きいこと等を考慮し,中小企業関係の激甚災害指定基準を緩和した上で,「平成12年9月8日から同月17日までの間の豪雨及び暴風雨による災害」を激甚災害に指定( 表1-3-1 )し,中小企業者等に関する特別の助成措置を講じた。この激甚災害指定の際には,農地等の災害復旧事業に係る補助の特別措置等も適用した。また,「平成12年9月8日から同月18日までの間の豪雨及び暴風雨による災害」を局地激甚災害に指定( 表1-3-2 )し,公共土木施設等の災害復旧事業に係る補助の特別措置等を行った。さらに,10月17日には,7月25日の閣議決定で災害対策分として使用留保していた公共事業等予備費約200億円のうち,約21億円を豪雨災害による河川等災害復旧事業等に使用することを閣議決定した。

  (表1-3-1) 平成12年激甚災害適用措置及び主な被災地

 関係機関においては,以下の措置を講じた。

 内閣官房では,9月12日午前5時30分に官邸連絡室を設置し,被災情報等を集約して内閣総理大臣,内閣官房長官等に適宜報告等を行った。

 国土庁では,9月13日に扇国土庁長官が,10月2日には蓮実国土総括政務次官が被災地を視察した。さらに,被災者生活再建支援法に基づく被災者生活再建支援金支給制度を愛知県,岐阜県の9市13町に適用することとした。

 警察庁及び関係管区警察局では,関係機関との連絡調整等に当たるとともに,愛知県警察等関係都府県警察では,被害情報の収集,救出救助,行方不明者の捜索,交通規制,被災地警戒等に当たった(ヘリコプター派遣:最大時6機,延べ約30機)。

 防衛庁は,関係地方公共団体への連絡要員の派遣,航空偵察等を行ったほか,9月11日に愛知県知事より,12日に岐阜県及び長野県知事より自衛隊の災害派遣要請を受け,11日から26日までに,物資輸送,住民避難,給水・給食,塵埃輸送,防疫活動,道路啓開等の支援を実施した(人員派遣:最大時約1,800名,延べ約9,900名,航空機派遣:最大時約10機,延べ約140機)。

 大蔵省では,多大な被害を受けた名古屋市及び西春日井郡の指定する地域の納税者について,国税庁告示をもって,平成12年11月15日まで,申告,納付等の期限を延長した。

 文部省では,教育委員会等の関係機関から被害情報を収集するとともに,適切な対応をとるよう指示した。また,臨時休校,授業の打ち切り等の措置を講じた。

 厚生省では,9月11日,愛知県,岐阜県の9市13町に災害救助法を適用し,避難所の設置,食品の給与等を支援した。

 日本赤十字社は,愛知県等5県の被災者に毛布,日用品セット等を配布した。また,西枇杷島診療所に開設された臨時救護所に救護班を派遣した。

 農林水産省では,農業共済金の早期支払いについて,農業共済団体等を指導した。

 通商産業省では,電気及びガス料金の支払期限の延長等の災害特別措置を認可した。また,政府系中小企業金融機関による「災害復旧貸付」を適用するとともに,中小企業者の返済猶予等既往責務の条件変更等につき,実状に応じて対応するよう政府系中小企業金融機関等を指示した。さらに,著しい被害を受けた中小企業者等に対しては,閣議決定により,貸付利率を財投金利と同水準まで引き下げ,その中でも特に著しい被害を受けた中小企業者については,地方公共団体と協力して利子補給を行い,結果的に無利子となる措置を実施した。

 運輸省では,鉄道及び海運等関連事業者団体への注意喚起及び安全運転の確保について指示した。また,海上保安庁が行う救難活動のための臨時ヘリポート拠点として使用可能とするため,伊勢湾浮体式防災基地(ミニフロート)を出動させた。

 海上保安庁では,延べ471名を派遣し,巡視船艇,航空機による被害状況調査,孤立者救助等の救助活動,応急物資の輸送等を実施した(人員派遣:最大時114人,延べ471人,巡視船艇派遣:最大時22隻,延べ26隻,航空機派遣:最大時2機,延べ6機)。

 気象庁は,警報を含む気象情報を適時に発表し,大雨,洪水等の気象災害に十分に警戒するよう呼びかけた。

 郵政省では,電気通信・放送事業者に対し被災設備等の早期復旧等を指示するとともに,臨時郵便局の設置及び衛星通信設備によりオンラインサービスが可能な移動郵便局(スペースポスト号)を東浦郵便局(9月13日〜14日),枇杷島郵便局(9月15日〜18日)に派遣した。また,郵便物の料金免除等を行うとともに,為替貯金・簡易保険の非常取扱いを実施した。さらに,通信確保のため(財)日本移動通信システム,(財)東海移動無線センターの協力を得て,愛知県内の市町村へ無線機を貸与した。

 NTTは,災害用伝言ダイヤルを運用するとともに,避難所等に特設公衆電話を設置した。

 NHKは,被害が甚大な放送受信契約者に対し,放送受信料を免除した。

 建設省では,排水ポンプ車20台を全国から集結し,排水対策等を実施した。また,災害査定官,土木研究所等の職員を現地に派遣し,現地調査及び応急復旧工法指導等を行うほか,崩壊地の拡大等による土砂災害の発生防止のため,災害関連緊急砂防等事業の採択及び実施を支援した。9月18日,住宅金融公庫の災害復興住宅融資の受付を開始した。9月13日には扇建設大臣が被災地を視察した。また,河川激甚災害対策特別緊急事業を実施した。

 自治省では,被災納税者の地方税の減免措置等について地方公共団体に対し通知したほか,10月17日に愛知県下16団体,岐阜県下2団体,長野県下8団体の計26団体に対し,11月に定例交付すべき普通交付税の一部6,466百万円を繰り上げて交付した。

 消防庁では,関係都道府県に適切な対応をとるよう指示した。また,各消防機関は,危険箇所等の警戒巡視,要救助者の救助,避難の誘導,土のう積みなどの水防活動等を実施した。

3-4 鳥取県西部地震

(1) 災害の状況

 平成12年10月6日13時30分,鳥取県西部でマグニチュード7.3の地震が発生し,鳥取県境港市,日野町で震度6強,西伯町,会見町,岸本町,日吉津村,淀江町,溝口町で震度6弱,鳥取県米子市,岡山県新見市,哲多町,香川県の土庄町などで震度5強を観測したほか,中国・近畿・四国地方を中心に震度5弱〜1を観測した。この地震の震源は,米子市の南約20kmに位置し,震源の深さは11kmで,陸域の浅い地震である。

 余震の震源は,北北西-南南東方向に約30kmにわたって分布している。また地震波の解析などから,この地震は左横ずれの断層運動(相手の地盤が左方向にずれること)によるものと推定されている。気象庁は,この地震を「平成12年(2000年)鳥取県西部地震」と命名した。

 この地震により,鳥取県を中心として,負傷者182名,家屋全壊430棟,家屋半壊3,065棟,家屋一部損壊17,155棟の被害が発生し,44世帯116名に避難勧告が出されたほか,多数の住民が自主避難を行った(13年5月2日現在)。

 また,この地震では地盤の液状化現象が発生し,港湾施設,工場,住宅,道路,水道,農地等に被害をもたらした。

 電力は,中国電力管内で延べ17,402戸が停電となったのをはじめ,上水道は,鳥取県で5,744戸,島根県で1,337戸,岡山県で1,167戸が断水したほか,広島県,山口県,香川県でも断水したところがあった。下水道も鳥取県で41か所が被災した。電話,携帯電話はケーブル損傷,携帯電話基地局等の停波により一部不通となった。

 道路については,米子自動車道で段差等が発生し,一部が通行止めとなったほか,国道,県道でも土砂崩落,路面亀裂等により16区間(12年10月22日22時現在)において通行止めとなった。河川でも,堤防沈下,クラック等により81か所が被災した。また,地震に起因した土砂災害ががけ崩れをはじめとして27か所で発生し,家屋等の被害が発生した。米子空港では液状化現象が発生し,滑走路に亀裂が発生したほか,鉄道,バス等の公共交通機関も地震の影響で落石,土砂崩壊等から運転の見合わせや迂回運行を余儀なくされた。港湾においても,岸壁エプロンの亀裂や臨港道路の液状化等により,5港74か所が被災した。

 農林水産業関係では,農地695か所,農業用施設642か所,林地荒廃136か所,林道165か所,漁港施設10か所,卸売市場,水産加工場等に被害が発生した。また,損傷,倒伏,落果等により野菜,果樹等の農作物に大きな影響を与えた。

(2) 国等の対応状況(省庁名,大臣等は当時)

 10月6日13時35分に官邸対策室を設置するとともに,関係省庁の局長級職員が速やかに官邸に参集し,13時55分より,森内閣総理大臣の出席の下,緊急参集チーム会議を開催した。また,会議の席上,14時30分頃には,国と地方公共団体が連携をとって迅速な対応を進めるため,森内閣総理大臣は直接鳥取県知事に電話し,今後の対応等について協議した。同日15時30分より国土庁において災害対策関係省庁連絡会議を開催し,[1]関係機関は今後とも迅速かつ的確に情報の収集・伝達を行い,関係地方公共団体を含め,緊密な連携を図り,警戒などに万全を期すること,[2]事態の推移に応じ必要があれば,災害関係省庁連絡会議を開催する等,関係省庁の連携を密にしていくこと,等を確認した。また同日19時より,国土庁において第2回災害対策関係省庁連絡会議を開催し,各省庁において情報の共有化を図るとともに,政府調査団を現地に派遣することを決定し,7日,扇国土庁長官を団長とする16省庁31名からなる政府調査団を鳥取県に派遣した。

 政府は,鳥取県西部地震災害について局地激甚災害の指定を行った( 表1-3-2 )。

 関係機関においては,以下の措置を講じた。

 国土庁は,地震被害早期評価システムによる被害推計結果を直ちに関係省庁へ配信した。10月6日,蓮実国土総括政務次官を鳥取県に派遣した(7日に派遣された政府調査団に現地にて合流)。さらに,10月6日,被災者生活再建支援法に基づく被災者生活再建支援金支給制度を鳥取県県内全域,島根県安来市,伯太町に適用した。

 警察庁及び関係管区警察局では,中国管区警察局内の広域緊急援助隊及び航空隊に,鳥取県での情報収集活動及び警戒活動を指示した。鳥取県警察等関係府県警察では,被害情報の収集,避難誘導,交通規制,避難住民への「困りごと相談」等に当たった(ヘリコプター派遣:最大時10機,延べ約30機)。

 防衛庁は,関係地方公共団体への連絡要員の派遣,航空偵察等を行ったほか,10月6日に鳥取県知事より,7日には島根県知事より自衛隊の災害派遣要請を受け,6日から18日までに,給水・給食,入浴,独居老人宅の屋根のシート張り等の支援を実施した(人員派遣:最大時約340名,延べ約1,300名,航空機派遣:最大時約30機,延べ約40機)。

 科学技術庁では,地震調査研究推進本部臨時会及び定例会を開催し,地震活動の現状に関して評価し,その結果を公表した。

 文部省では,児童生徒の安全確保を最優先にするとともに,市町村を支援するよう関係の県教育委員会に指示した。

 厚生省は,10月6日,鳥取県米子市,境港市,西伯町,会見町,日野町,溝口町,島根県安来市,伯太町に対し,災害救助法を適用し,避難所・応急仮設住宅の設置等を支援した。避難住民に対する救護活動,健康相談等を実施するため,地方公共団体は医師,精神科医,保健婦を避難所等に派遣した。

 日本赤十字社は,鳥取県境港市,米子市,島根県伯太町に救護班を派遣するとともに,状況に応じて直ちに対応がとれるよう近畿,中国,四国地方の各赤十字病院で救護班の待機を行った。

 農林水産省は,鳥取県及び島根県の被災地に,10月14日から15日まで石破農林水産総括政務次官を派遣し,15日から16日にかけて谷農林水産大臣が視察した。

 通商産業省は,電気事業者及びガス事業者から申請のあった料金の支払い期限の延長等の災害特別措置を認可した。また政府系中小企業金融機関による災害復旧貸付けを適用するとともに,中小企業者の返済猶予等既往債務の条件変更等につき,実状に応じて対応するよう政府系中小企業金融機関等を指導した。

 運輸省は,航空関係者に対し必要な注意喚起を行い,安全確保に努めた。また境港等の被害調査のため,港湾技術研究所現地調査チームを現地に派遣した。

 海上保安庁は,周辺海域に航行警報を発し,付近航行船舶に対し注意喚起を行うとともに,港内及び航路の水深等の調査を行い,航行の安全を確保した。また,情報収集や緊急時の支援のため,人員,巡視船艇,航空機を派遣した(人員派遣:最大時約490人,延べ約590人,航空機派遣:最大時11機,延べ13機,巡視船艇派遣:最大時50隻,延べ57隻)。

 気象庁は,地震発生直後から震度速報や地震情報を発表するとともに,余震確率を発表し,余震等への注意を呼びかけた。また,現地調査を行った。

 郵政省では,電気通信事業者等の協力を得て,被災地方公共団体に対し,携帯電話機等を貸し出すとともに,臨時の携帯電話基地局の開設申請について即日免許した。また,郵便物の料金免除等を行うとともに,為替貯金・簡易保険の非常取扱いを実施した。

 NTTは,災害用伝言ダイヤルを運用するとともに,避難所に特設公衆電話を設置した。

 NHKは,被害が甚大な放送受信契約者に対し,放送受信料を免除した。

 建設省は,情報収集の強化のため,災害対策用ヘリコプターの派遣を行ったほか,災害査定官,土木研究所,建築研究所等の職員を現地に派遣し,現地調査及び早期復旧を図るため技術支援を行った。また,余震活動の監視強化のため,GPS臨時観測点を設置したほか,崩壊地の拡大等による土砂災害の発生防止のため,災害関連緊急砂防等事業の採択及び実施を支援した。また,給水車や清掃車等を出動させ,給水活動や液状化流出土砂の除去作業を支援した。住宅金融公庫は,災害復興住宅融資を行うとともに,住宅金融公庫融資を返済中の被災者に対し,返済金の払込みの据え置き,返済期間の延長等の措置を実施した。

 自治省では,10月24日に鳥取県下9団体,島根県下2団体,岡山県下1団体の計12団体に対し,11月に定例交付すべき普通交付税の一部2,343百万円を繰り上げて交付した。

 消防庁は,情報収集を強化するため,緊急消防援助隊の指揮支援部隊に対しヘリコプターによる出動を要請し,さらに近畿,中国,九州の緊急消防援助隊が待機した(指揮支援部隊:2隊7名,ヘリコプター派遣:6機)。

3-5 大雪被害

(1) 災害の状況

 平成12年度の冬は,しばしば強い寒気が日本付近に流れ込み,このため,北日本の冬の気温(12〜2月)は昭和61年以来の低さとなった。

 北陸地方や東北地方などの日本海側では降雪及び積雪の量が多くなり,金沢,青森などでは,ほぼ15年ぶりの大雪となった。

 このため,屋根の雪降ろし中の転落等により死傷者が出たほか,道路の通行止めや空港の閉鎖,また,鉄道,航空機,バスなどの公共交通機関の運休等が多くみられた。このほか,農作物や森林への被害も顕著であり,一部では,電気・ガスなどにも影響を与えた。

 人的被害は,死者55名,負傷者702名,家屋被害は,住家の全壊3棟,半壊2棟,一部損壊102棟,床上浸水18棟,床下浸水84棟となった(13年2月28日現在)。

 道路では,一般国道1路線を含む県道以上の道路(冬期閉鎖区間を除く)で,雪に伴い86か所(1月29日9時現在)が通行止めとなったほか,滑走路が閉鎖となった空港は14を数えた。鉄道関係では,JR東日本やJR西日本などで,18路線が断続的に運休となった。海上交通では,降雪による視界不良のための運休や,積雪のため荷役の遅延等が発生した。バス関係では,一般路線で,全面運休が21系統,一部運休が56系統,迂回運行が22系統となるとともに,主に北陸地方を経由する高速バス路線において,全面運休が23系統,一部運休が1系統,迂回運行が9系統となった。

 農林水産業関係では,東北,関東,北陸地方を中心に,ハウス,農作物,樹体,森林等に被害が発生した。

 電力関係では,栃木県及び千葉県において,送電線系統事故及び配電線被害により,断続的に供給支障が発生し,最大供給支障戸数は,124,500戸に及んだ。また,ガス関係では,長野県において,ガス発生設備の一部凍結によりガスが発生できず174戸で供給支障となったほか,東北・北陸地方において,落雪や除雪作業による配管等の損傷,積雪により調整器等が破損し,ガスの漏えいや漏えい爆発等が発生した。電話関係では,雪の影響により携帯電話基地局等への送電断等のため,基地局が停波し,サービスエリア内での発着信ができなくなるなどの被害が発生した。

(2) 国の対応状況(省庁名,大臣等は当時)

 平成12年12月4日,降積雪期における防災態勢の強化について,人命の保護を第一義として雪害に対する防災態勢の一層の強化を図るよう,森中央防災会議会長(内閣総理大臣)から関係各省庁及び都道府県等に通知した。平成13年2月22日,伊吹防災担当大臣及び山崎内閣府大臣政務官出席のもと,今冬の豪雪の被害と対策について中央防災会議主事会議を開催し,各関係省庁間で情報及び意見の交換を実施するとともに以下のことを確認した。

[1]

 今後とも関係省庁において積雪の多い地域の状況について情報を共有し,密接な連携を図ること。

[2]

 地元地方公共団体より要望の強い除雪費について関係省庁の役割に応じて出来る限りの支援を行うなど,状況に応じて必要な対応を迅速かつ的確に行うこと。

[3]

 雪崩等に対する警戒態勢に万全を期すこと。

 また,3月16日,融雪出水期における防災態勢の強化について,森中央防災会議会長(内閣総理大臣)より関係各省庁及び関係都道府県等に通知した。

 関係機関においては,以下の措置を講じた。

 内閣府は,関係省庁から大雪による被害状況及びその対策について情報収集を行い,これを集約し,官邸及び関係省庁に伝達した。

 警察庁では,関係機関と連携してパトロール,広報啓発活動を推進した。

 総務省は,大雪等により除排雪経費が著しく多額にのぼった地方公共団体について,所要経費,普通交付税措置額及び降雪量等を勘案の上,所要経費の一部を特別交付税で措置した。

 消防庁は,被害状況及び災害対策本部の設置状況等の情報収集を行った。

 文部科学省は,教育委員会等の関係機関に適切な対応をとるよう指導した。

 農林水産省は,被害状況の早期把握に努め,共済金の支払いが円滑に行われるよう関係団体等を指導した。

 国土交通省は,1月19日,今村大臣政務官,吉田大臣政務官及び岩井大臣政務官をそれぞれ福井県,新潟県及び山形県に派遣した。2月17日には,岩井大臣政務官を青森県に派遣した。また,積雪寒冷特別地域の道路の除雪費について,国県道の除雪費を116億円増額し,幹線市町村道の除雪費について臨時特例措置として63億円を配分し,安全で円滑な冬期道路交通の確保に努めた。

 気象庁は,警報を含む気象情報を適時に発表し,大雪等に伴う気象災害に十分に警戒するよう呼びかけた。

3-6 芸予地震

(1) 災害の状況

 平成13年3月24日15時27分,安芸灘の深さ51kmでM6.7の地震が発生し,広島県河内町,大崎町,熊野町で震度6弱を観測したほか,広島,愛媛,山口県の一部で震度5強を観測した。今回の地震は,中国・四国地方に沈み込むフィリピン海プレート内部の破壊による地震であった。余震活動は,26日に発生したM5.0の最大余震(最大震度5強)を含み,3月末までにM4.0以上の余震が6回発生したが,徐々に減衰しつつある。気象庁は,この地震を「平成13年(2001年)芸予地震」と命名した。

 この地震により,広島県呉市で1名,愛媛県北条市で1名が亡くなったほか,中国・四国各県に被害が発生し,負傷者計288名,全壊計58棟,半壊計405棟,住家一部破損40,266棟となった(13年5月8日現在)。学校等の文教施設にも被害が発生し,壁や窓ガラス等の破損が多くみられたほか,内装材の落下や校舎の柱等に大きな亀裂が入ったところもあった。また,237世帯568名に避難勧告が出されるとともに,多数の住民が自主避難を行った。臨海部では地盤の液状化現象がみられ,広島港をはじめ3県28港において被害をもたらした。

 電力については,広島県を中心に中国電力管内で約48,000戸,愛媛県を中心に四国電力管内で約8,000戸が停電となった。上水道は,広島県内で,離島も含め47,767戸が断水したほか,山口県で160戸,島根県で130戸,愛媛県で379戸が断水した。下水道も広島県等で11か所が被災した。携帯電話は,携帯電話基地局8局の停波により一部不通となった。

 道路については,中国縦貫自動車道や本州四国連絡道路等で点検のため一時通行止めとなり,中国縦貫自動車道では段差等の発生がみられたほか,国道,県道でも落石,土砂崩落等により各地で通行止めとなった。また,広島県を中心に山口県,愛媛県等でがけ崩れをはじめとした土砂災害が53件発生した。このうち,広島県呉市においては,住宅密集地域の傾斜地で多くの住宅の石積み等の法面が被害を受け,降雨等による二次災害の危険性が生じており,今回の被害の特徴の一つとなっている。港湾に関しては,広島県,山口県及び愛媛県の計28港に被害が発生した。なお,灯台等の航路標識施設についても33か所で被害が発生した。鉄道については,山陽新幹線の三原-新岩国間で軌道等の異常が発生したため,山陽新幹線が翌25日8時36分に運転再開するまで運休となったのをはじめ,中国,四国地方の各線で点検のため運休となった。

 農林水産業関係では,農地,農業用施設,林地,林道,漁港施設,水産関係施設等に被害が発生した。

(2) 国等の対応状況(省庁名,大臣等は当時)

 地震発生後,直ちに官邸対策室を設置するとともに,内閣総理大臣臨時代理の福田内閣官房長官をはじめ,関係省庁の局長級職員が官邸に集まり,3月24日16時40分及び17時40分に緊急参集チーム会議を開催した。このほか,福田内閣官房長官が広島県及び愛媛県両県の知事と電話で連絡し,情報の把握を行う一方,ロシア訪問中の森内閣総理大臣にも連絡をとり,適切な指示を受けるなど,政府は迅速かつ的確な初動対応に努めた。

 3月24日18時00分より,内閣府において災害対策関係省庁連絡会議を開催し,[1]関係機関は今後とも迅速かつ的確に情報の収集・伝達を行い,関係地方公共団体を含め,緊密な連携を図り,警戒などに万全を期すること,[2]事態の推移に応じ必要があれば,災害対策関係省庁連絡会議を開催する等,関係省庁の連携を密にしていくこと,等を確認した。また,同日に内閣府情報先遣チームを広島県に派遣するとともに,翌25日,内閣府坂井副大臣を被害状況の調査のため広島県に派遣した。さらに,29日には,内閣府山崎大臣政務官を団長とし,ほか15省庁37名からなる政府調査団を広島県及び愛媛県に派遣した。

 内閣府は,3月24日,被災者生活再建支援法に基づく被災者生活再建支援金支給制度を広島県呉市に適用した。

 警察庁及び関係管区警察局では,関係機関との連絡調整に当たるとともに,警視庁等の広域緊急援助隊を待機(鳥取・島根・岡山県警察にあっては広島県への出動を指示した後,待機に切替)させたほか,兵庫県警察等のヘリコプターを広島県の被災情報収集のため広域派遣した。広島県警察等関係府県警察では,被害情報の収集,警戒活動,交通規制,行方不明者の捜索等に当たった(ヘリコプター派遣:最大時5機,延べ約10機)。

 防衛庁は,航空機による航空偵察,関係地方公共団体への連絡要員の派遣等を行うとともに,3月24日に広島県知事より,25日には山口県知事より自衛隊の災害派遣要請を受け,24日から27日までに給水支援,救援物資(雨漏り防止のためのシート)の貸与等を実施した(人員派遣:延べ約530名,船舶派遣:延べ10隻,航空機派遣:延べ約40機)。

 総務省では,4月12日に広島県下13団体,愛媛県下1団体に対し,6月に定例交付すべき普通交付税の一部6,893百万円を繰り上げて交付した。

 郵政事業庁は,郵便物の料金免除等を行うとともに,為替貯金・簡易保険の非常取扱いを実施した。

 NTTは,災害用伝言ダイヤルの運用を行った。

 消防庁は,3月24日,緊急消防援助隊に出動を要請し,緊急消防援助隊航空部隊を含む11機の消防防災ヘリコプターが出動して情報収集を行ったほか,緊急消防援助隊中国ブロック地上部隊が待機した。翌25日,消防庁先遣チームを現地に派遣した。

 文部科学省は,児童生徒の安全確保を最優先にするとともに,市町村を支援するよう関係の県教育委員会に指示した。地震調査研究推進本部地震調査委員会の臨時会を開催し,地震活動の現状に関して評価し,その結果を公表した。

 厚生労働省は,3月24日,広島県広島市,呉市,三原市,下蒲刈町,蒲刈町,宮島町,河内町,川尻町,豊浜町,豊町,大崎町,東野町,木江町,愛媛県今治市に対し,災害救助法を適用し,避難所の設置,食糧,飲料水の支給,災害にかかった住宅の応急修理等を支援した。

 また広島労働局に緊急労働相談窓口を設置するとともに,呉労働基準監督署及び呉公共職業安定所に現地相談窓口を設置した。

 経済産業省は,電気事業者及びガス事業者から申請のあった料金の支払い期限の延長等の災害特別措置を認可した。また政府系中小企業金融機関による災害復旧貸付を適用するとともに,中小企業者の返済猶予等既往債務の条件変更等につき,実状に応じて対応するよう政府系中小企業金融機関等を指導した。

 国土交通省は,3月24日,災害用ヘリコプターを現地に派遣するとともに,今村大臣政務官を25日広島県へ,国土交通省調査団等を地震発生後ただちに現地へ派遣し,現地調査や被害状況等の把握を実施した。また電子基準点40点による24時間解析を6時間に短縮して実施した。

 海上保安庁は,周辺海域に航行警報を発し,付近航行船舶に対し注意喚起を行った。また,情報収集や緊急時の支援のため,巡視船艇を延べ68隻,航空機を延べ11機現地に派遣した。

 気象庁は,地震発生直後から震度速報や地震情報を適宜発表して,余震等への注意を呼びかけた。また震度に対応した被害状況の確認等のため,現地調査を実施した。

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