表示段落: 第1部/第1章/3/3-6


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3-6 芸予地震

(1) 災害の状況

 平成13年3月24日15時27分,安芸灘の深さ51kmでM6.7の地震が発生し,広島県河内町,大崎町,熊野町で震度6弱を観測したほか,広島,愛媛,山口県の一部で震度5強を観測した。今回の地震は,中国・四国地方に沈み込むフィリピン海プレート内部の破壊による地震であった。余震活動は,26日に発生したM5.0の最大余震(最大震度5強)を含み,3月末までにM4.0以上の余震が6回発生したが,徐々に減衰しつつある。気象庁は,この地震を「平成13年(2001年)芸予地震」と命名した。

 この地震により,広島県呉市で1名,愛媛県北条市で1名が亡くなったほか,中国・四国各県に被害が発生し,負傷者計288名,全壊計58棟,半壊計405棟,住家一部破損40,266棟となった(13年5月8日現在)。学校等の文教施設にも被害が発生し,壁や窓ガラス等の破損が多くみられたほか,内装材の落下や校舎の柱等に大きな亀裂が入ったところもあった。また,237世帯568名に避難勧告が出されるとともに,多数の住民が自主避難を行った。臨海部では地盤の液状化現象がみられ,広島港をはじめ3県28港において被害をもたらした。

 電力については,広島県を中心に中国電力管内で約48,000戸,愛媛県を中心に四国電力管内で約8,000戸が停電となった。上水道は,広島県内で,離島も含め47,767戸が断水したほか,山口県で160戸,島根県で130戸,愛媛県で379戸が断水した。下水道も広島県等で11か所が被災した。携帯電話は,携帯電話基地局8局の停波により一部不通となった。

 道路については,中国縦貫自動車道や本州四国連絡道路等で点検のため一時通行止めとなり,中国縦貫自動車道では段差等の発生がみられたほか,国道,県道でも落石,土砂崩落等により各地で通行止めとなった。また,広島県を中心に山口県,愛媛県等でがけ崩れをはじめとした土砂災害が53件発生した。このうち,広島県呉市においては,住宅密集地域の傾斜地で多くの住宅の石積み等の法面が被害を受け,降雨等による二次災害の危険性が生じており,今回の被害の特徴の一つとなっている。港湾に関しては,広島県,山口県及び愛媛県の計28港に被害が発生した。なお,灯台等の航路標識施設についても33か所で被害が発生した。鉄道については,山陽新幹線の三原-新岩国間で軌道等の異常が発生したため,山陽新幹線が翌25日8時36分に運転再開するまで運休となったのをはじめ,中国,四国地方の各線で点検のため運休となった。

 農林水産業関係では,農地,農業用施設,林地,林道,漁港施設,水産関係施設等に被害が発生した。

(2) 国等の対応状況(省庁名,大臣等は当時)

 地震発生後,直ちに官邸対策室を設置するとともに,内閣総理大臣臨時代理の福田内閣官房長官をはじめ,関係省庁の局長級職員が官邸に集まり,3月24日16時40分及び17時40分に緊急参集チーム会議を開催した。このほか,福田内閣官房長官が広島県及び愛媛県両県の知事と電話で連絡し,情報の把握を行う一方,ロシア訪問中の森内閣総理大臣にも連絡をとり,適切な指示を受けるなど,政府は迅速かつ的確な初動対応に努めた。

 3月24日18時00分より,内閣府において災害対策関係省庁連絡会議を開催し,[1]関係機関は今後とも迅速かつ的確に情報の収集・伝達を行い,関係地方公共団体を含め,緊密な連携を図り,警戒などに万全を期すること,[2]事態の推移に応じ必要があれば,災害対策関係省庁連絡会議を開催する等,関係省庁の連携を密にしていくこと,等を確認した。また,同日に内閣府情報先遣チームを広島県に派遣するとともに,翌25日,内閣府坂井副大臣を被害状況の調査のため広島県に派遣した。さらに,29日には,内閣府山崎大臣政務官を団長とし,ほか15省庁37名からなる政府調査団を広島県及び愛媛県に派遣した。

 内閣府は,3月24日,被災者生活再建支援法に基づく被災者生活再建支援金支給制度を広島県呉市に適用した。

 警察庁及び関係管区警察局では,関係機関との連絡調整に当たるとともに,警視庁等の広域緊急援助隊を待機(鳥取・島根・岡山県警察にあっては広島県への出動を指示した後,待機に切替)させたほか,兵庫県警察等のヘリコプターを広島県の被災情報収集のため広域派遣した。広島県警察等関係府県警察では,被害情報の収集,警戒活動,交通規制,行方不明者の捜索等に当たった(ヘリコプター派遣:最大時5機,延べ約10機)。

 防衛庁は,航空機による航空偵察,関係地方公共団体への連絡要員の派遣等を行うとともに,3月24日に広島県知事より,25日には山口県知事より自衛隊の災害派遣要請を受け,24日から27日までに給水支援,救援物資(雨漏り防止のためのシート)の貸与等を実施した(人員派遣:延べ約530名,船舶派遣:延べ10隻,航空機派遣:延べ約40機)。

 総務省では,4月12日に広島県下13団体,愛媛県下1団体に対し,6月に定例交付すべき普通交付税の一部6,893百万円を繰り上げて交付した。

 郵政事業庁は,郵便物の料金免除等を行うとともに,為替貯金・簡易保険の非常取扱いを実施した。

 NTTは,災害用伝言ダイヤルの運用を行った。

 消防庁は,3月24日,緊急消防援助隊に出動を要請し,緊急消防援助隊航空部隊を含む11機の消防防災ヘリコプターが出動して情報収集を行ったほか,緊急消防援助隊中国ブロック地上部隊が待機した。翌25日,消防庁先遣チームを現地に派遣した。

 文部科学省は,児童生徒の安全確保を最優先にするとともに,市町村を支援するよう関係の県教育委員会に指示した。地震調査研究推進本部地震調査委員会の臨時会を開催し,地震活動の現状に関して評価し,その結果を公表した。

 厚生労働省は,3月24日,広島県広島市,呉市,三原市,下蒲刈町,蒲刈町,宮島町,河内町,川尻町,豊浜町,豊町,大崎町,東野町,木江町,愛媛県今治市に対し,災害救助法を適用し,避難所の設置,食糧,飲料水の支給,災害にかかった住宅の応急修理等を支援した。

 また広島労働局に緊急労働相談窓口を設置するとともに,呉労働基準監督署及び呉公共職業安定所に現地相談窓口を設置した。

 経済産業省は,電気事業者及びガス事業者から申請のあった料金の支払い期限の延長等の災害特別措置を認可した。また政府系中小企業金融機関による災害復旧貸付を適用するとともに,中小企業者の返済猶予等既往債務の条件変更等につき,実状に応じて対応するよう政府系中小企業金融機関等を指導した。

 国土交通省は,3月24日,災害用ヘリコプターを現地に派遣するとともに,今村大臣政務官を25日広島県へ,国土交通省調査団等を地震発生後ただちに現地へ派遣し,現地調査や被害状況等の把握を実施した。また電子基準点40点による24時間解析を6時間に短縮して実施した。

 海上保安庁は,周辺海域に航行警報を発し,付近航行船舶に対し注意喚起を行った。また,情報収集や緊急時の支援のため,巡視船艇を延べ68隻,航空機を延べ11機現地に派遣した。

 気象庁は,地震発生直後から震度速報や地震情報を適宜発表して,余震等への注意を呼びかけた。また震度に対応した被害状況の確認等のため,現地調査を実施した。

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