表示段落: 第1部/第1章/3/3-4


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3-4 鳥取県西部地震

(1) 災害の状況

 平成12年10月6日13時30分,鳥取県西部でマグニチュード7.3の地震が発生し,鳥取県境港市,日野町で震度6強,西伯町,会見町,岸本町,日吉津村,淀江町,溝口町で震度6弱,鳥取県米子市,岡山県新見市,哲多町,香川県の土庄町などで震度5強を観測したほか,中国・近畿・四国地方を中心に震度5弱〜1を観測した。この地震の震源は,米子市の南約20kmに位置し,震源の深さは11kmで,陸域の浅い地震である。

 余震の震源は,北北西-南南東方向に約30kmにわたって分布している。また地震波の解析などから,この地震は左横ずれの断層運動(相手の地盤が左方向にずれること)によるものと推定されている。気象庁は,この地震を「平成12年(2000年)鳥取県西部地震」と命名した。

 この地震により,鳥取県を中心として,負傷者182名,家屋全壊430棟,家屋半壊3,065棟,家屋一部損壊17,155棟の被害が発生し,44世帯116名に避難勧告が出されたほか,多数の住民が自主避難を行った(13年5月2日現在)。

 また,この地震では地盤の液状化現象が発生し,港湾施設,工場,住宅,道路,水道,農地等に被害をもたらした。

 電力は,中国電力管内で延べ17,402戸が停電となったのをはじめ,上水道は,鳥取県で5,744戸,島根県で1,337戸,岡山県で1,167戸が断水したほか,広島県,山口県,香川県でも断水したところがあった。下水道も鳥取県で41か所が被災した。電話,携帯電話はケーブル損傷,携帯電話基地局等の停波により一部不通となった。

 道路については,米子自動車道で段差等が発生し,一部が通行止めとなったほか,国道,県道でも土砂崩落,路面亀裂等により16区間(12年10月22日22時現在)において通行止めとなった。河川でも,堤防沈下,クラック等により81か所が被災した。また,地震に起因した土砂災害ががけ崩れをはじめとして27か所で発生し,家屋等の被害が発生した。米子空港では液状化現象が発生し,滑走路に亀裂が発生したほか,鉄道,バス等の公共交通機関も地震の影響で落石,土砂崩壊等から運転の見合わせや迂回運行を余儀なくされた。港湾においても,岸壁エプロンの亀裂や臨港道路の液状化等により,5港74か所が被災した。

 農林水産業関係では,農地695か所,農業用施設642か所,林地荒廃136か所,林道165か所,漁港施設10か所,卸売市場,水産加工場等に被害が発生した。また,損傷,倒伏,落果等により野菜,果樹等の農作物に大きな影響を与えた。

(2) 国等の対応状況(省庁名,大臣等は当時)

 10月6日13時35分に官邸対策室を設置するとともに,関係省庁の局長級職員が速やかに官邸に参集し,13時55分より,森内閣総理大臣の出席の下,緊急参集チーム会議を開催した。また,会議の席上,14時30分頃には,国と地方公共団体が連携をとって迅速な対応を進めるため,森内閣総理大臣は直接鳥取県知事に電話し,今後の対応等について協議した。同日15時30分より国土庁において災害対策関係省庁連絡会議を開催し,[1]関係機関は今後とも迅速かつ的確に情報の収集・伝達を行い,関係地方公共団体を含め,緊密な連携を図り,警戒などに万全を期すること,[2]事態の推移に応じ必要があれば,災害関係省庁連絡会議を開催する等,関係省庁の連携を密にしていくこと,等を確認した。また同日19時より,国土庁において第2回災害対策関係省庁連絡会議を開催し,各省庁において情報の共有化を図るとともに,政府調査団を現地に派遣することを決定し,7日,扇国土庁長官を団長とする16省庁31名からなる政府調査団を鳥取県に派遣した。

 政府は,鳥取県西部地震災害について局地激甚災害の指定を行った( 表1-3-2 )。

 関係機関においては,以下の措置を講じた。

 国土庁は,地震被害早期評価システムによる被害推計結果を直ちに関係省庁へ配信した。10月6日,蓮実国土総括政務次官を鳥取県に派遣した(7日に派遣された政府調査団に現地にて合流)。さらに,10月6日,被災者生活再建支援法に基づく被災者生活再建支援金支給制度を鳥取県県内全域,島根県安来市,伯太町に適用した。

 警察庁及び関係管区警察局では,中国管区警察局内の広域緊急援助隊及び航空隊に,鳥取県での情報収集活動及び警戒活動を指示した。鳥取県警察等関係府県警察では,被害情報の収集,避難誘導,交通規制,避難住民への「困りごと相談」等に当たった(ヘリコプター派遣:最大時10機,延べ約30機)。

 防衛庁は,関係地方公共団体への連絡要員の派遣,航空偵察等を行ったほか,10月6日に鳥取県知事より,7日には島根県知事より自衛隊の災害派遣要請を受け,6日から18日までに,給水・給食,入浴,独居老人宅の屋根のシート張り等の支援を実施した(人員派遣:最大時約340名,延べ約1,300名,航空機派遣:最大時約30機,延べ約40機)。

 科学技術庁では,地震調査研究推進本部臨時会及び定例会を開催し,地震活動の現状に関して評価し,その結果を公表した。

 文部省では,児童生徒の安全確保を最優先にするとともに,市町村を支援するよう関係の県教育委員会に指示した。

 厚生省は,10月6日,鳥取県米子市,境港市,西伯町,会見町,日野町,溝口町,島根県安来市,伯太町に対し,災害救助法を適用し,避難所・応急仮設住宅の設置等を支援した。避難住民に対する救護活動,健康相談等を実施するため,地方公共団体は医師,精神科医,保健婦を避難所等に派遣した。

 日本赤十字社は,鳥取県境港市,米子市,島根県伯太町に救護班を派遣するとともに,状況に応じて直ちに対応がとれるよう近畿,中国,四国地方の各赤十字病院で救護班の待機を行った。

 農林水産省は,鳥取県及び島根県の被災地に,10月14日から15日まで石破農林水産総括政務次官を派遣し,15日から16日にかけて谷農林水産大臣が視察した。

 通商産業省は,電気事業者及びガス事業者から申請のあった料金の支払い期限の延長等の災害特別措置を認可した。また政府系中小企業金融機関による災害復旧貸付けを適用するとともに,中小企業者の返済猶予等既往債務の条件変更等につき,実状に応じて対応するよう政府系中小企業金融機関等を指導した。

 運輸省は,航空関係者に対し必要な注意喚起を行い,安全確保に努めた。また境港等の被害調査のため,港湾技術研究所現地調査チームを現地に派遣した。

 海上保安庁は,周辺海域に航行警報を発し,付近航行船舶に対し注意喚起を行うとともに,港内及び航路の水深等の調査を行い,航行の安全を確保した。また,情報収集や緊急時の支援のため,人員,巡視船艇,航空機を派遣した(人員派遣:最大時約490人,延べ約590人,航空機派遣:最大時11機,延べ13機,巡視船艇派遣:最大時50隻,延べ57隻)。

 気象庁は,地震発生直後から震度速報や地震情報を発表するとともに,余震確率を発表し,余震等への注意を呼びかけた。また,現地調査を行った。

 郵政省では,電気通信事業者等の協力を得て,被災地方公共団体に対し,携帯電話機等を貸し出すとともに,臨時の携帯電話基地局の開設申請について即日免許した。また,郵便物の料金免除等を行うとともに,為替貯金・簡易保険の非常取扱いを実施した。

 NTTは,災害用伝言ダイヤルを運用するとともに,避難所に特設公衆電話を設置した。

 NHKは,被害が甚大な放送受信契約者に対し,放送受信料を免除した。

 建設省は,情報収集の強化のため,災害対策用ヘリコプターの派遣を行ったほか,災害査定官,土木研究所,建築研究所等の職員を現地に派遣し,現地調査及び早期復旧を図るため技術支援を行った。また,余震活動の監視強化のため,GPS臨時観測点を設置したほか,崩壊地の拡大等による土砂災害の発生防止のため,災害関連緊急砂防等事業の採択及び実施を支援した。また,給水車や清掃車等を出動させ,給水活動や液状化流出土砂の除去作業を支援した。住宅金融公庫は,災害復興住宅融資を行うとともに,住宅金融公庫融資を返済中の被災者に対し,返済金の払込みの据え置き,返済期間の延長等の措置を実施した。

 自治省では,10月24日に鳥取県下9団体,島根県下2団体,岡山県下1団体の計12団体に対し,11月に定例交付すべき普通交付税の一部2,343百万円を繰り上げて交付した。

 消防庁は,情報収集を強化するため,緊急消防援助隊の指揮支援部隊に対しヘリコプターによる出動を要請し,さらに近畿,中国,九州の緊急消防援助隊が待機した(指揮支援部隊:2隊7名,ヘリコプター派遣:6機)。

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