地震防災対策強化地域の指定について(報告)


○ 地震防災対策強化地域の指定について(報告)
 
    昭和54年5月12日
中央防災会議地震防災対策強化地域指定
専門委員会から中央防災会議事務局長あて
 
 中央防災会議地震防災対策強化地域指定専門委員会は、昭和53年12月28日付(53国官震第70号)で中央防災会議会長宛に諮問された「地震防災対策強化地域の指定について(諮問)」に関し、別 記のとおり報告いたします。
 
地震防災対策強化地域指定専門委員会報告書
   
1. 本専門委員会は、昭和53年12月28日付(53国官震第70号)で中央防災会議会長宛に諮問された「地震防災対策強化地域の指定について(諮問)」に基づき、大規模地震対策特別 措置法(以下「特別措置法」という。)第3条第1項の地震防災対策強化地域(以下「強化地域」という。)として指定する必要がある地域の範囲について調査検討を行った。その経過及び結果 については、以下に述べるとおりである。
   
2. まず第1に、本専門委員会は「大規模な地震が発生するおそれが特に大きいと認められる地殻の範囲」の検討を行ったが、この点については、当面 、その発生が懸念されているいわゆる「東海地震」について、早急に強化地域として指定すべき地域を検討する必要があるとの結論に達した。
   
3. 想定される東海地震の断層モデルについては、これまでの各種の観測・測量 、研究等の成果、歴史地震から得られた事実等をふまえて検討を行った結果、その形は南北方向100〜120km程度×東西方向50kmであり、傾斜角20度〜30度の逆断層であると推定した。その位 置は、多少幅をもって考えることが安当であるが、東辺は駿河トラフ沿いの線に沿い、北辺は駿河湾奥までと考える。なお、その西辺以西については、1944年東南海地震により歪エネルギーが既に放出されているものと考えられるので、1854年安攻東海地震のように遠州灘西南方に及ぶ可能性は少ない。地震の規模は、概ねマグニチュード8程度と考えられ、破壊は、断層面 の南部から始まる可能性が大きいと思われる。
   
4. 次にこの地震の断層モデルを受けて、予想される地震が発生した場合に「著しい地震災害が生ずるおそれがある地域」の検討を行った。地震災害には、直接地震動に起因するものをはじめとし、各種のものがあるが、限られた短い時間内に、これら全ての要因について検討することは囲難であるとともに、地震動に起因するものが他の災害の誘因となることにかんがみ、本委員会は直接地震動に起因する被害を対象に検討を行うこととし、とくに、当面 は、各地域に一般的に存在する木造建築物又は低層建築物(以下「木造建築物等」という。)における被害に重点をおいて作業を進めた。木造建築物等の被害については、その建築物に加えられる地震動の強さ(一般 的に気象庁震度階級又は最大加速度で表わされる。)でこれを判断することが適当である。このため、本専門委貞会は、まず関係地域内の各地の地質・地盤の状況を調査し、その地震動特性等を把握する作業を行うとともに、震源からの距離・方向により、基盤層における地震動の強さがとのように減衰するかを検討した。
 次に、先に検討した断層モデルに閲し地震動の強さの減衰牲を検討した結果と対象地域の地質・地盤状況とを稔合的に勘案し、各地の木造建築物等に加えられる地震動の強さを判断した。
 この場合、木造建築物等が一般的に著しい被害を蒙る地震動の強さという見地から震度Ⅵに相当する地震動加速度以上を一応今回の検討に際しての指定の基準とした。
   
5. この結果、木造建築物等において著しい被害を生ずるおそれのある震度Ⅵ以上となると予想される地域は別 添図に示す範囲であろうと推定され、この地域に係る市町村は別表に掲げるとおりである。これらの対象地域について、その社会・経済的集積状況を考慮するといずれも地震防災に関する対策を強化する必要がある地域と認められる。また、過去の当該地域に生じた大規模地震の被害との比較を行った結果 に照しても、十分安当性の高いものであると認められた。
   
6. 津波については、3で述べた断層モデルに基づいて検討した結果 、伊豆半島南部から紀伊半島南端にかけての外洋に面した沿岸部において「津波」(注)が発生するおそれがあり、とくに伊豆半島南部から駿河湾内部に「大津波」(注)が発生するおそれがあると考えられるとの結論を得た。このうち、「著しい地震災害が生ずるおそれのある地域」に該当し、強化地域として指定すべき地域は、大津波の可能性のある地域と考えられるが、この地域はすべて5で述べた地域に含まれることとなる。
   
7. なお、今回の指定の対象とすべき地域の外周で、自然斜面 のすべり及び崩壊、地盤の液状化又は長周期の地震波によるものの被害を想定しなければならない地域等については、今回の指定に引き続き詳細な地盤資料、深部地質構造資料等に基づいて検討を行う必要があると考える。
 
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