地域コミュニティの力を活用した風水害対策の活動事例

(14) 高知県土佐清水市下川口浦地区自主防災会

地域の特色

下川口浦地区自主防災会は、南に太平洋に面し、三方を山に囲まれた、下川口港に面した宗呂川河口右岸に広がる集落があり、145世帯が居住している。平成13年9月6日に高知県南西部豪雨災害で宗呂川が氾濫し、被災した。「下川口村誌」によると、大正9年にも宗呂川が氾濫し、被災したとのことである。

防災活動の状況

平成13年9月6日の高知県西南部豪雨災害をきっかけに、この日を地域の「防災の日」と定め、毎年、避難訓練等を実施している。現在は、地震災害が防災全般の対策につながるとして、南海地震で津波被害が大きいと予想される津波避難を中心とする訓練を実施している。7分以内に8mの津波来襲を想定し、昭和21年南海地震でも集落の人が避難した春日神社(海抜19.5m、階段129段)へ住民が避難している。 訓練時には、毎年、課題を設定して実施している。以下に訓練実施状況を示す。 ・平成16年:起震車体験。保育園児・小学生も加わり、大地震の揺れを体験した。 ・平成17年:スマトラ沖地震・津波のビデオを集会所にて皆で鑑賞した。 ・平成18年:非常炊き出し訓練を予定。いざという時に要援護者の救援体制がとれるよう、防災訓練終了後のその日のうちに、地区役員、駐在所、消防団、婦人会が連携し、集落に25〜30世帯ある独居老人宅を手分けして回り、風呂場、トイレ、ふだん寝ている部屋等を確認している。また、町別に、朝晩顔を合わせる向う3軒両隣同士で4〜5人のチームを作り、ふだんからの声かけ、見守り、引率体制を作っている。 水害の危険が迫ると、消防団と連携し、県土木事務所が設置している宗呂川下川口水位局の警報に注意し、「老人憩いの家」(海に近い一段高い所にあり、集会所も併設。150名収容可能)にある有線放送や電話を通じて、区長等が役員の招集や、地区住民等への注意や避難の呼びかけ等を行う。「老人憩いの家」には区の本部を置き、住民が避難することになっている。この数年間においても、何度かこの体制が敷かれた。宗呂川の修復工事も終了しているが、ふだんから危険箇所の点検も行っている。

災害時の対応

平成13年9月6日の高知県西南部豪雨の時、下川口浦地区では、氾濫した宗呂川の濁流が滞留し、家屋への浸水は最大で床上2m以上にもなった。6日午前5時前、両地区の消防団(水防団)は自主的に団員を招集し、各戸を回って住民に避難を呼びかけた。その直後に宗呂川が氾濫して濁流が一気に民家に押し寄せたため、住民の多くは自宅の2階や近隣の2階屋に避難した。消防団員は高台から住民の安否を確認し、家に取り残された住民たちは互いに助け合いながら、水が引くのを待った。自力で避難できなかった高齢者が数多く家に取り残されていたが、干潮で水が引き始めると、消防団員たちは腰上まで水に浸かりながら、まず高齢者の救助に向かい、次々と助け出した。午後2時過ぎには自衛隊員が到着して救助活動に加わり、家に取り残されていた住民もボートなどで救出された。 家屋の被害は全壊家屋4棟、半壊家屋93棟、床上浸水11戸、床下浸水3戸にも及んだが、幸いにして、1人の犠牲者も出さずに済んだ。

( 2)は主に、国土交通省河川局「災害列島2001」より抜粋)


■平成13年9月の豪雨の状況と、水位が上昇した宗呂川

■浸水後の被災状況(下川口浦地区)

■宗呂川沿いの下川口中学校は、浸水で体育館も被災写真提供:高知県土佐清水市

今後の課題

要援護者を見守り、いざという時に体制をとれるようにしているが、チームリーダー(現在は、地区役員、消防団、婦人会から選出)の問題がある。また、独居老人の個人情報の取り扱いの問題(漏洩に注意しながら、地域で集めている)を考慮している。

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