旧地震被害想定支援マニュアルからの変更点


 この地震被害想定支援マニュアルで説明している手法は、平成9年度から手法の見直しを実施しています。以下に新旧の手法の主な違いを説明します。



想定地震の設定


 新しい手法では、従来の点震源、活断層を念頭に置いた線震源に加えて、面震源にも対応しています。これは、震源域の面的な広がりに関する詳細な情報や研究成果を地震被害想定に反映しやすくすることを目的としています。



基準地盤地震動の計算


 基準地盤地震動を算定する際に利用している距離減衰式は、旧手法ではMIDORIKAWA(1993)の式に限定していましたが、新しい手法では、複数の式から選択する方式に変更しています。
 設定した断層の上盤側と下盤側では、震源までの最短距離が同じ場合でも、地震動の大きさが異なる場合があることに着目して、このような特性を反映できるよう、新たに等価震源距離を用いた距離減衰式を加えています。
 また、旧手法の式が、規模の極端に大きい地震や小さい地震に対しては必ずしも適切な減衰を表現できなかったという点を改善するために、距離減衰式を追加しています。



建物被害の計算


 旧手法では、建物被害を求める際、損壊の程度が低くとも被害額が大きいといった被害については考慮していませんでしたが、新しい手法では、山崎(1999,2000)の式を用いて、被害額の大きい建物も含む「全損」数を算出する方法を追加しています。これは、地域全体の被害総額や復興費用の算出時に、建物の被害額の大きさをきちんと反映させることを目的としています。
 なお、旧手法を用いて算出される「全壊」数は、新しい手法においても、人的被害を求める際に利用するものとして位置づけています。



出火数の算定


 旧手法では、木造建物の大破率から出火数を算定していましたが、新しい手法では、これに非木造建物からの出火数も加えています。これは、阪神・淡路大震災(1995年)時に、非木造建物から多数の出火が認められことから、これを予測式に反映させる必要があると判断したためです。
 また、季節による出火率の違いを、平成9年の家庭向けガス販売量データに基づく値に更新しています。



消火可能性の評価


 旧手法では、地域による消防能力の違いに関わらず、市街地特性によってのみ消防可能性を判断する手法を採用していました。新しい手法では、1時間以内に想定される時刻別の火災周長を計算して、公設消防隊による消防能力との比較によって、消火可能性を判断する方法にしています。これは、各地の消防力強化施策等が被害量に反映される手法に改める必要があると判断したためです。
 なお、新しい手法では、火災規模の計算に利用している延焼速度式を、阪神・淡路大震災の実態への再現性を高めるよう改良された「東消式97」に更新しています。



焼失棟数の計算


 消火困難と判断された場合の焼失棟数は、旧手法では市街地特性に関わらず一定としていましたが、新しい手法では、阪神・淡路大震災の実態から、市街地特性(木造率)と1火災当たりの最終的な焼失棟数との関係に基づき算定する手法としています。



人的被害の想定


 旧手法では、人的被害を算出する上で必要な建物内滞留人口について、木造建物と非木造建物の屋内滞留人口比を同様と見なしていました。しかし、実際には建物の規模や用途の違いから、両者の時間帯別滞留人口は異なるものと考えられます。このため、新しい手法では、屋内/屋外の時間帯別滞留比データを、屋内(在宅)/屋内(勤め先その他)/屋外の時間帯別滞留比データに改良し、この値と地域別の木造及び非木造住宅1棟あたり床面積を用いて、木造住宅/非木造住宅/非木造非住宅それぞれの建物内滞留人口を個別に求める方法に変更しています。