令和元年度「防災週間」及び「津波防災の日」について

令和元年7月30日
中央防災会議決定

1.趣旨

 我が国は、その位置、地形、地質、気象等の自然的条件から、台風、豪雨、豪雪、洪水、がけ崩れ、土石流、地すべり、地震、津波、火山噴火等による災害が発生しやすい国土となっている。

 昨年度は、大阪府北部の地震、平成30年7月豪雨、台風第21号、平成30年北海道胆振東部地震等により全国各地で様々な被害が発生した。

 こうした我が国の国土の特徴に鑑み、政府、地方公共団体等防災関係諸機関を始め、広く国民が、台風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波等による災害についての認識を深めるとともに、これに対する備えを充実強化することにより、災害の未然防止と被害の軽減に資するよう、「防災の日」及び「防災週間」を設けることとしている。更に、平成23年6月に「津波対策の推進に関する法律」が制定され、国民の間に広く津波対策についての理解と関心を深めるため、11月5日が「津波防災の日」と定められたところであり、この「津波防災の日」においては、国及び地方公共団体は、その趣旨にふさわしい行事が実施されるよう努めることとされている。

 平成27年9月には、各界各層の団体等のネットワークを活用し、幅広い層の国民の防災意識の向上を図ることを目的として、「防災推進国民会議」が発足するとともに、平成28年8月に「第1回防災推進国民大会」が開催されて以降、これまでに3回同大会が開催されてきたところである。

 加えて、平成27年12月には第70回国連総会本会議で11月5日を「世界津波の日」と定める決議が全会一致で採択され、津波の脅威について関心が高まり、その対策が進むことが期待されている。こうした背景を踏まえ、平成29年3月に「津波対策の推進に関する法律」の一部が改正され、津波対策に関する国際協力の推進に資するよう配慮する旨が追加されたところである。

 さらに、平成31年3月には、「南海トラフ沿いの異常な現象への防災対応検討ワーキンググループ」の報告を受けて「南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応検討ガイドライン」を策定し、また平成30年7月豪雨を教訓に、住民の主体的な避難行動を支援するため、水害(津波を除く)、土砂災害における5段階の警戒レベルを用いて住民が的確な避難行動をとれるよう、「避難勧告等に対するガイドライン」を改定したところである。

災害からの被害を軽減するためには、これまで発生した大規模地震・津波災害や水害・土砂災害、火山災害、雪害等から得られた教訓を的確に活かし、平素より災害時における被害軽減につながる備えを充実強化するとともに、災害時に迅速かつ適切な防災活動を行い、被災後の円滑な復旧・復興を可能としていくことが重要である。

 平常時より災害に対する備えを心がけ、平成30年7月豪雨等の経験を踏まえ、住民が「自らの命は自らが守る」意識を持って、発災時には自ら身の安全を守るとともに、地域住民及び企業が連携してお互いに助け合う「自助」、「共助」の取組を行政による「公助」と連携して更に拡大させ「防災意識社会」を構築することが必要であり、これによって社会全体における防災力を向上させるため、以下のとおり、国、関係公共機関、地方公共団体及びその他関係団体等の緊密な連携の下に、防災に関する各種の行事、「津波防災の日」の周知や広報活動等を全国的に実施する。

 なお、防災訓練の実施に当たっては、「令和元年度総合防災訓練大綱」(令和元年5月31日中央防災会議決定)で示している基本的な考え方を参考にするものとする。

2.実施主体

国、関係公共機関、地方公共団体、その他関係団体

3.防災週間に関する取組

(1) 実施期間

令和元年8月30日(金)から9月5日(木)まで

(2) 実施事項

 国、地方公共団体等は、災害が発生した場合、災害応急対策から、災害復旧・復興までの一連の対策を迅速かつ円滑に行うための備えを十分に行う必要がある。一方、国民は、平常時より災害に対する備えを心がけ、発災時には自ら身の安全を守るとともに、地域住民及び企業が連携してお互いに助け合うことが非常に重要である。

 国、地方公共団体等は、こうした「自助」、「共助」、「公助」それぞれが適切に役割を果たすよう、「災害被害を軽減する国民運動の推進に関する基本方針」(平成18年4月21日中央防災会議決定)及び「令和元年度総合防災訓練大綱」に基づき、行政における十分な準備と訓練を行うとともに、国民に対する防災知識の普及・啓発を図り、災害被害を減らす取組を推進することが必要である。

 これらを踏まえて、防災週間においては、地域の実情に応じて、次に掲げるような、防災週間の趣旨にふさわしい内容の行事等を実施するものとし、国は、関係公共機関、地方公共団体及びその他関係団体等に対して協力を要請するものとする。

ア 実施する行事等

「防災週間」を中心とする期間内に実施する行事等は次のものとする。

  • ①実施主体は連携を強化し、より実践的な防災訓練等を行うものとする。
    • a 特に南海トラフ沿いで発生する大規模地震や首都直下地震等の大規模災害が想定される地域においては、広域的ネットワークを活用した訓練や地方公共団体間の緊密な連携の下に地方公共団体相互で締結されている協定等に基づく広域的応援・受援訓練の実施に努めるものとする。
    • b 水害や土砂災害等各種災害の発生に備え、地域住民と地方公共団体等が連携し、ハザードマップ等に示された地域の災害リスクその他地域の実情を踏まえた避難訓練、大雨警報(土砂災害・浸水害)・洪水警報の危険度分布等の防災気象情報を受けた避難勧告等の発令・伝達、避難判断のために地域内で声かけにより避難する取組や、安全を確認する訓練の実施に努めるものとする。
    • c 避難勧告等の発令・伝達の訓練に当たっては、警戒レベルを用いて、防災情報からとるべき行動を直感的に理解できるよう伝達する。また、訪日外国人等にも配慮し、多言語化や視覚化に対応したデジタルサイネージ等の災害情報伝達ツールを活用した訓練の実施に努めるものとする。
  • ②防災に関し、災害時の防災活動の実施、防災意識の普及又は防災体制の整備の面で貢献した団体や個人(ボランティアや企業等も含む。)への表彰を行う。
  • ③実践的な防災行動の促進のため、次のような行事等を実施する。
    • ・ 防災意識の向上や普及啓発の推進に係る活動
    • ・ 映画・ビデオ上映会、被災や災害対応の体験談を語る会、防災センター等における災害擬似体験、キャンプ等による避難生活体験、防災体験ツアー、防災マップづくり体験、非常食の調理体験、その他の教育啓発活動
    • ・ テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、広報誌、インターネット、携帯端末、コミュニティ放送、ポスター、屋外看板、懸垂幕等多様な手段の活用による広報活動
    • ・ パンフレット、リーフレット、災害の危険箇所や指定緊急避難場所・指定避難所等について明らかにした防災マップ等の配布
    • ・ 標語、図画等の募集
  • ④行事等の実施に当たっては、昨年度の大阪府北部の地震、平成30年7月豪雨、台風第21号、平成30年北海道胆振東部地震等による被害も踏まえ、災害への備えに関する次の事項について普及・啓発を行う。
    • ・ 様々な災害(地震・津波災害、水害・土砂災害、火山災害、雪害等)発生時における、様々な状況下(家屋内、高層ビル内、路上歩行時、自動車運転中、登山中等)においてとるべき行動(特に子供の指導にも留意すること)
    • ・ 警報・注意報、大雨・洪水警報の危険度分布等の情報、水害(津波を除く)、土砂災害における5段階の警戒レベルを用いた避難情報等、南海トラフ地震に関連する情報等の発表時にとるべき行動の確認及び防災マップ等による指定緊急避難場所・指定避難所の位置や経路等の把握(特に子供の指導にも留意すること)
    • ・ 火山災害の発生に備え、登山者や火山周辺地域の施設管理者等が行うべき取組
    • ・ 家族内及び事業所内における安否確認の連絡方法の確認及び指定緊急避難場所等でとるべき行動(特に子供の指導にも留意すること)
    • ・ 非常用持出品(救急箱、懐中電灯、ラジオ、乾電池等)の準備
    • ・ 最低でも3日、出来れば一週間分程度の食料、飲料水等の備蓄
    • ・ ライフラインの途絶に備えた対応の確認(電気、ガス、上下水道、通信等)
    • ・ ペットの同行避難や指定避難所等での飼養等についての日頃からの準備
    • ・ 家具・家電製品等の固定による転倒防止対策や配置の見直し、収納物の落下に対する防止対策の重要性
    • ・ 建物の耐震診断及び補強の実施並びに耐震診断に対する地方公共団体等の助成制度、耐震化された公共建築物のリストの公表等公共建築物の耐震性に関する情報、被災建築物応急危険度判定活動等
    • ・ ブロック塀等建築物の既設の塀の安全点検
    • ・ 感震ブレーカー等の設置による出火の予防
    • ・ 地震保険加入の促進
    • ・ 緊急地震速報を広く一般の利用に供するため、緊急地震速報の特性と限界の周知、及び受信時に利用者がとるべき行動等(特に子供の指導にも留意すること)
    • ・ 自主防災組織や次の事業所等における防災のための施設、設備及び資機材の点検
    • - 危険物を有する石油コンビナート等の事業所
    • - 電気、ガス、上下水道、通信等のライフライン関係及び廃棄物処理関係事業所
    • - ターミナル駅、高層ビル、地下街、ホテル、百貨店、劇場、遊園地等不特定多数の者が出入りする施設や事業所
    • - 病院、社会福祉施設等の施設
    • ・ 自主防災活動の実施・参加及び消防団・水防団活動への参加・協力並びに地域住民と事業所従業員等と連携した防災訓練の実施
    • ・ 地区防災計画の作成及び地区防災計画に基づいた訓練等の実施
    • ・ 企業における、災害時に備えた中枢機能・情報システムのバックアップ、ライフライン系統の多重化、要員の確保等、事業継続計画(BCP)の策定及び事業継続マネジメント(BCM)の構築
    • ・ コンピュータ、情報通信ネットワークシステム等の保守点検及び機能停止に備えた代替手段の確認
    • ・ 初期消火、顧客の避難誘導、負傷者・要配慮者救助の心構えと準備

イ 行事等実施に当たっての留意事項

①地域における災害事例、防災体制、防災意識及び防災活動等の実情を踏まえ、かつ、東日本大震災を始めとする大規模地震・津波災害や近年の水害・土砂災害、火山災害、雪害等の経験と教訓を活かした効果的な行事等となるよう努めること。

②若年層や要配慮者を含めた幅広い層の住民の防災意識や災害時の行動力の向上に資するため、新技術や災害時にも活用可能な機材等の積極的な活用や体験性・ゲーム性を加味した種々の行事を組み合わせ、多くの住民が興味や関心をもって参加・体験でき、身近な防災活動に活かせることができるような実践的な内容となるよう努めること。

③防災に係る既存の各種訓練や運動等の関係行事と有機的関連を保持しつつ、相互の効率を上げるよう努めること。
その一環として、自衛隊、海上保安庁等国の機関と地方公共団体及びその他関係団体等との連携や情報連絡の緊密化等が、地域の実情に応じて更に円滑に行われるよう配慮すること。

④高齢者、障害者、乳幼児等の要配慮者に十分配慮し、地域において要配慮者を支援する体制が整備されるよう努めること。
また、社会福祉施設、医療施設等に対する的確な情報提供や地域と一体となった警戒避難体制の確立等への取組が更に推進されるよう努めること。

  • ⑤自主防災組織やボランティア、企業等民間の活動との連携をすすめること。
    • a 災害時における企業の果たす役割(顧客・従業員の安全、二次災害の防止、経済活動の維持、地域社会への貢献)の大きさに鑑み、各企業がその役割を十分に認識して更に防災活動を推進するよう、企業の防災意識の高揚等に努めるとともに、行事の実施に当たっては、積極的に企業の参加を得るようにすること。
    • b 被災者支援を担う様々なNPOやボランティア等、これらの団体の活動調整を行う中間支援組織と連携を図るようにすること。
    • c 一般の国民が、復旧・復興や災害予防等の幅広い局面において、NPOやボランティア活動に参加する際の情報提供等の環境整備を行うこと。

ウ その他の留意事項

①「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」(平成25年8月内閣府防災担当)を参考に、避難支援等関係者への事前の避難行動要支援者名簿の提供、具体的な避難方法等を定めた個別計画の策定、当該名簿等を活用した防災訓練、避難支援等関係者及び高齢者、障害者等への研修の実施などにより、地域における要配慮者への支援体制を整備すること。

②消防団・水防団及び自主防災組織の充実強化を図るとともに、防災訓練や防災教育の実施に当たっては、自治体・警察・消防・消防団・水防団・自主防災組織・学校・企業等が連携し、地域一体となった防災体制を構築すること。

4.津波防災の日に関する取組

(1) 実施期間

「津波防災の日(11月5日)」の前後の期間(主として、10月26日(土)から11月10日(日)までの16日間)

(2) 実施事項等

 国、地方公共団体等は、津波及び津波による被害の特性、津波に備える必要性等に関する国民の理解と関心を深めることが特に重要である。

 「津波防災の日」の趣旨を踏まえ、津波に対する日頃からの「備え」とさらなる防災意識の向上を図るため、国、地方公共団体等は、「津波防災の日」の周知や、その前後の期間における津波避難訓練等の行事の実施、津波避難計画の策定など津波防災に関連した取組の推進に努めることとする。

 また、取組の推進に当たっては、特に下記の事項に留意するものとする。

  • ア 一般国民の防災意識の向上と実践的行動の定着を促すため、「津波防災の日(11月5日)」に関する広報等を積極的に行い、津波に関するイベントを開催すること。また、平成27年12月に国連総会において同日を「世界津波の日」と定められたことを受けて、平成29年3月に改正された「津波対策の推進に関する法律」を踏まえ、「津波防災の日」には、津波対策に関する国際協力の推進に資するよう配慮しつつ、その趣旨にふさわしい行事が実施されるよう努めること。
    (参考)内閣府と防災推進協議会の共催により、令和元年11月5日(火)に「地域で津波に備える(仮称)」を開催(場所:東京都)
  • イ 地震や津波に関連して発生する障害をシナリオとして組み込んだ実践的な津波避難訓練の実施や、過去の災害の脅威や体験談等を語り継ぐ機会を設ける等、主体的な避難行動をとる姿勢を醸成するための防災教育を推進すること。
  • ウ 主体的な避難行動の徹底が図られるよう、以下のことについてしっかりと住民に周知すること。
    • ①津波からの避難については、住民等一人ひとりの主体的な避難行動が基本となることに鑑み、強い揺れや弱くても長い揺れがあった場合には津波の発生を想起し、津波警報等の情報を待たずに自らでき得る限り迅速に高い場所(津波到達までに想定している避難場所までに間に合わないと判断した場合は、その場で一番高い場所)への避難を開始すること。
    • ②大津波警報等を見聞きしたら速やかに避難すること。
    • ③家族の安否確認のために津波の危険性がある地域へ戻ったり、その場にとどまったりすることを避けるため、家族の安否確認の方法や、津波から避難した際の集合場所等の避難ルールを各家庭であらかじめ決めておくこと。
    • ④地震発生後、避難の妨げになることなどを防ぐため、住宅の耐震化、家具の転倒防止対策、食器等の落下防止対策等をしておくこと。
    • ⑤地震発生後、速やかに安全な場所まで避難できるよう、安全な高台の避難場所やそこまでの避難経路をあらかじめ把握しておくこと。
    • ⑥ペットと迅速な同行避難をするための避難経路を把握しておくこと。
    • ⑦地震発生後速やかに避難を開始できるよう、食料や飲料水、貴重品、医薬品、ペット用品等を非常用持ち出し品としてあらかじめ準備しておくこと。
  • エ 避難対象地域の指定や指定緊急避難場所の確保、避難指示(緊急)、避難勧告、避難準備・高齢者等避難開始の発令基準、津波情報の収集・伝達などを定めた市町村全体の津波避難計画の策定を進めるとともに、住民や自主防災組織等の多様な主体が参画する地域ごとの津波避難計画を策定すること。また、津波避難訓練で明らかとなった課題等に応じた計画の見直しを行うこと。計画の策定に当たっては、徒歩避難の原則と自動車避難の限界、避難誘導・避難支援等に関するルールの取り決め、避難誘導や防災対応を行う消防職員、消防団員、水防団員、警察官、市町村職員などの安全確保に係る事項を盛り込むこと。

5.その他

(1)参加者の防災意識の向上等が一過性のものとならないよう、1月17日の「防災とボランティアの日」等の防災に関する記念日の普及・啓発を行う等、「防災週間」及び「津波防災の日」終了後においても防災意識が定着するような内容となるよう努めること。

(2)行事等を実施するに当たっては、令和元年7月24日付け事務連絡「防災に関する行事等調べについて(依頼)」に基づき、報告されたい。

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