平成17年度「防災週間」の実施について

平成17年7月4日
中央防災会議決定

1.趣旨

  我が国は、その位置、地形、地質、気象等の自然的条件から、地震、台風、豪雨、火山噴火等による災害が発生しやすい国土となっている。

  昨年度は、7月の梅雨末期における新潟・福島豪雨、福井豪雨、ならびに観測史上最多となる10個の台風上陸等による風水害、さらには新潟県中越地震災害、福岡県西方沖を震源とする地震災害など、全国各地で深刻な災害が相次いだ。また、昨年度は、阪神・淡路大震災から10年目にあたり、「国連防災世界会議」が開催されるなどさまざまな取り組みがなされた。さらに、12月にはスマトラ島沖地震津波災害が発生し、同世界会議の場も含め、国際的にも防災の取組、特に津波災害に関する取組の重要性があらためて喚起された年でもあった。

  災害の未然防止と被害の軽減を図るためには、これらの災害から得られた教訓を的確に活かし、平素より災害時における被害軽減に対する備えを充実強化するとともに、災害時に迅速かつ適切な防災活動を繰り広げ、被災後の円滑な復旧・復興を可能としていくことが重要である。

  東海地震の発生の切迫性が指摘され、さらに東南海・南海地震の今世紀前半中の発生が懸念されている中、国民の防災意識の高揚及び防災知識の普及啓発、並びに防災関係機関、企業等民間団体、地域住民等を含めた防災体制の整備に対する取組を一層強化していくことが喫緊の課題となっている。

  このような状況にかんがみ、風水害や地震・津波災害はどこで発生してもおかしくないという昨年の教訓も踏まえ、防災関係者を始め、個人や企業、地域コミュニティなど、広く国民の防災への関心を高め、災害による人的被害、経済被害を軽減する減災のための対する備えを一層充実強化するため、以下のとおり、国、関係公共機関、地方公共団体、関係諸団体等の緊密な連携の下に、防災に関する各種の行事を全国的に実施する。

2.実施期間

平成17年8月30日(火)から9月5日(月)までの「防災週間」を中心とする期間

3.実施主体

国、関係公共機関、地方公共団体、その他関係団体

4.実施事項

  国、地方公共団体等は、災害が発生した場合、災害応急対策から、災害復旧・復興までの一連の対策を迅速かつ円滑に行うための備えを十分に行う必要がある。一方、国民は、平常時より災害に対する備えを心がけ、発災時には自ら身の安全を守るとともに、地域住民及び企業が連携してお互いに助け合うことが非常に重要である。

  国及び地方公共団体等は、こうした「自助」、「共助」、「公助」それぞれが適切に役割を果たすよう、行政における十分な準備と訓練を行うとともに、国民に対する防災知識の普及・啓発と徹底を図ることが必要である。

  これらを踏まえて、本防災週間においては、地域の実情に応じて、次に掲げるような、防災週間の趣旨にふさわしい内容の行事を実施するものとし、国は、関係公共機関、地方公共団体及びその他関係団体に対して協力を要請するものとする。

(1)重点事項

  • (1)災害に共通する課題
    • a 自ら身の安全を守る備えと行動、近隣の負傷者・災害時要援護者への支援・救助等自主防災の重要性の周知徹底
    • b 食料・飲料水の備蓄、地域特性を踏まえた防災教育の充実等の国民に対する防災知識の普及・啓発
    • c 地域・職場・学校における防災意識を災害時の行動に結びつける実践的な防災訓練の実施
    • d 防災情報の迅速かつ確実な伝達及び提供の実施
  • (2)災害ごとの課題
    • 1)震災対策
    • a 発災時の安全確保と避難場所への誘導
    • b 震災時の出火防止・初期消火等の重要性の周知徹底
    • c ハザードマップ、防災マップ等の作成と住民への周知、建物の耐震診断・改修や家具・家電製品の固定等の住宅における地震対策の重要性等の知識の普及
    • 2)津波対策
    • a 住民及び船舶等に対する津波の危険性や避難方法に関する周知
    • b 津波ハザードマップや津波避難ビル等のガイドラインの作成と住民への周知
    • c 津波防災総合訓練の実施
    • 3)風水害対策
    • a 洪水による浸水想定区域、土砂災害警戒区域や避難場所・避難路等を明らかにした各種ハザードマップ等の作成と住民への周知徹底
    • b 地下空間の浸水等新たな都市型水害に対する危険性の周知
    • c 高潮の危険性や避難方法、ハザードマップ等の作成と住民への周知
    • d 風水害に対応した防災教育や、災害時要援護者の避難準備情報発令を活用した防災訓練の実施
    • 4)火山災害対策
    • a 火山噴火の危険地域を明らかにしたハザードマップ等の作成と住民及び観光客への周知
    • b 火山災害に対応した防災訓練の実施
    • 5)事故災害対策
    • a 原子力災害、危険物等災害、鉄道災害等の事故災害に対応した防災訓練の実施
    • b 地域の特性を踏まえた災害想定の周知と住民の支援体制の確立

(2) 実施する行事等

  • (1)実施主体は連携を強化し、大規模地震等の大災害を想定した、より実践的な防災訓練等を行うものとする。特に首都直下地震、東海地震、東南海・南海地震など大規模地震を想定した地域などにおいては、広域的ネットワークを活用した訓練や地方公共団体間の緊密な連携の下に地方公共団体相互で締結されている協定等にも基づく広域応援訓練の実施に努めるものとする。
    訓練の実施に当たっては、「平成17年度総合防災訓練大綱」(平成17年3月30日中央防災会議決定)によるものとする。
  • (2)防災意識の高揚及び防災知識の普及・啓発のため次の行事等を実施する。
    • a 防災フェア等展示会の開催
    • b 講演会、セミナー、研修会の開催
    • c 映画・ビデオ上映会、災害の体験談を聞く会、防災センター等における災害擬似体験、キャンプ等による避難生活体験、防災体験ツアー、防災マップづくり体験、その他の教育啓発活動
    • d テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、広報誌、インターネット、携帯電話、コミュニティ放送等多様な手段の活用による広報活動
    • e ポスター、立看板、懸垂幕の掲示
    • f パンフレット、リーフレット、災害の危険箇所や避難場所等について明らかにした防災マップ等の配布
    • g 標語、図画等の募集
  • (3)災害への備えに関する次の事項について家庭、事業所等への普及・奨励等を行う。
    • a 災害発生時における、様々な状況下(家屋内、路上歩行時、自動車運転中など)においてとるべき行動の学習
    • b 家具・家電製品等の転倒・収納物の落下に対する防止対策の重要性の周知
    • c 建物の耐震診断及び補強の実施並びに耐震診断に対する地方公共団体等の助成制度、耐震化された公共建築物のリストの公表など公共建築物の耐震性に関する情報、被災建築物応急危険度判定活動等の周知
    • d 注意報・警報、東海地震に関連する情報等の発表時にとるべき行動の確認及び防災マップ等による避難所の位置や経路の把握
    • e 非常用持出品(救急箱、懐中電灯、ラジオ、乾電池等)の準備
    • f 2~3日分の食料、飲料水等の備蓄
    • g 家族内及び事業所内における安否確認の連絡方法の確認及び避難場所等でとるべき行動の学習
    • h 初期消火、顧客の避難誘導、負傷者・災害時要援護者救助の心構えと準備
    • i ライフラインの途絶に備えた対応の確認(電気、上下水道、ガス、通信等)
    • j コンピュータ、情報通信ネットワークシステム等の保守点検及び機能停止に備えた代替手段の確認
    • k 自主防災活動の実施及び参加並びに地域住民と事業所従業員等と連携した防災訓練の実施
    • l 自主防災組織や次の事業所等における防災のための施設、設備及び資機材の点検
    • - 危険物を有する石油コンビナート等の事業所
    • - 電気、ガス、上下水道、通信等のライフライン関係及び廃棄物処理関係事業所
    • - ターミナル駅、高層ビル、地下街、ホテル、百貨店、劇場、遊園地等不特定多数の者が出入りする施設や事業所
    • - 病院、社会福祉施設等の施設
    • m 地震保険加入の促進活動
    • n 企業における、災害時に備えた中枢機能・情報システムのバックアップ、ライフライン系統の多重化、要員の確保等、事業継続の取組の実施計画の策定
    • o 緊急地震速報を広く一般の利用に供するため、緊急地震速報の特性と限界、その発表時に利用者がとるべき行動等についての周知
  • (4)防災に関し、災害時の防災活動の実施、防災思想の普及又は防災体制の整備の面で貢献した団体や個人(ボランティアや企業等も含む。)への表彰を行う。

(3) 行事等実施に当たっての留意事項

(1)地域における災害事例、防災体制、防災意識及び防災活動等の実情を踏まえ、かつ、阪神・淡路大震災や近年の水害・土砂災害などの経験と教訓を活かした効果的な行事となるよう努めること。

(2)若年層や災害時要援護者を含めた幅広い層の住民の防災意識や災害時の行動力の向上に資するため、新技術の積極的な活用や体験性・ゲーム性を加味した種々の行事を組み合わせ、多くの住民が興味や関心をもって参加・体験できる実践的な内容となるよう努めること。

(3)防災に係る既存の各種訓練や運動等の関係行事と有機的関連を保持しつつ、相互の効率を上げるよう努めること。
その一環として、自衛隊、海上保安庁等国の機関と地方公共団体等との連携や情報連絡の緊密化等が、地域の実情に応じて更に円滑に行われるよう配慮すること。

(4)高齢者、障害者、外国人、乳幼児等、災害時要援護者に十分配慮し、地域において災害時要援護者を支援する体制が整備されるよう努めること。
また、特に災害時要援護者関連施設に対する的確な情報提供や地域と一体となった警戒避難体制の確立等への取組が更に推進されるよう努めること。

  • (5)自主防災組織やボランティア等の活動との協調に配慮すること。
    • ・地域の危険箇所等の情報を住民に分かりやすく周知するとともに、研修や訓練の実施等を通じて住民の防災活動の活性化を図ること。
    • ・災害時における企業の果たす役割(顧客・従業員の安全、二次災害の防止、経済活動の維持、地域社会への貢献)の大きさにかんがみ、各企業がその役割を十分に認識して更に防災活動を推進するよう、企業の防災意識の高揚等に努めるとともに、行事の実施に当たっては、積極的な企業の参加を得るようにすること。
    • ・建築、法律、救助、労働安全衛生等の専門分野についての深い知識や技能を持ったNPO、ボランティアの活用や連携を図るようにすること。

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