第3分科会 「県境を越える大災害へのボランティア活動について」 第4回「防災ボランティア活動検討会」 日時 平成17年10月30日(日) 10:30〜16:00 場所 長岡商工会議所 第3分科会 「県境を越える大災害へのボランティア活動について」(以下敬称略) 渡部(内閣府防災担当参事官補佐)  さまざまな広域連携のお話は、過去3回の分科会や「つどい」などでも出てきたところですが、そこでは特に県境を越える大規模災害についてどう考えるかというようなご指摘も数多くされていたところです。また、先日静岡のほうで図上訓練とか、ボランティアも参加して、ボランティア主体のいろいろな形での取り組みもなされているところもあります。広域的な災害について、今まではボランティアセンターのようなところが割とミクロな形でいろいろと考えてきたのですが、マクロなレベルについて、ボランティアの皆様がどのようにお考えなのかということについて、我々が各方面に情報発信していくというところも有意義と思いますし、また、大規模災害について被害想定など、私ども国や、県のさまざまな取り組みの中で、ある程度明らかになりつつある段階にきています。本日はそのようなものを素材に、皆様にご意見交換をしていただければと思います。  今回の司会は、「東京いのちのポータルサイト」理事の中川様にお願いしています。それでは、中川様よりごあいさつを頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。 中川(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)  こんにちは。よろしくお願いいたします。今回からこういう司会などを検討会のメンバーのほうでやれという話になりまして、今回第3分科会の広域大災害については私が担当することになりました。よろしくお願いいたします。  今、渡部さんから話がありましたが、この資料を充分説明できる人間が実はここにいないのですが、ようやく大規模災害の災害像というものが具体的になってきたという感じがしています。私は東京いのちのポータルサイトとは別に、日本地震学会の委員などもしているのですが、災害像がかなりきちんと整理されてきて、ようやく国、行政が何をするかというようなものも少しずつ具体的に整理されてきた段階にようやく至ったのが現実だと思います。  一方で、後で丸谷さんに振って話をしてもらおうと思っているのですが、東海地震・東南海地震の大綱の中に広域ボランティアセンターを作るなどということが書いてあって、だれがどうするのだろう、だれか知っている人はいますか。多分いないと思うのですが、ここにいる人間が知らないで、どうやって作れるのかと思うぐらいのことが書いてあったりするところもあります。私たちとしては、それとは全く別に、東海地震、それからしばらく先でしょうけれども、東南海・南海など、県境を越える大きな災害に対して何をしていかなければいけないのか。多分そんなものはここ1回で十分議論できるわけではないのですので、最終的な今日の成果物として私がイメージしているのは、これからどういうことを考えていかなければいけないのかということが考えられればいいのではないかと思っております。  お手元の資料集に、実はその意味が書いてあるというとおかしいですが、普通、第@分科会や第A分科会の資料では分科会の「論点」となっています。あえてここの分科会では、「考えていく手がかり」とか「ヒント」と書いてあるのは、論点というものにまだ至っていないであろうと私が思ったこともあって、事務局から出されたものに手を入れました。逆にいえば、こんなことをここで考えていくうえで論点は何だろうかということを皆さんで共有ができればと、それを皆さんに報告することができれば、まず一つの始まりかと思っています。  ただ、一方で、か今までやってきた中で、県境を越えることに対する活動の中で、こんなことが役立つのではないかとか、現実に今考えていらっしゃる幾つかの動き、想定などありましたら、特に広域、要するに都道府県境を越えるような広域災害の想定被災地になるようなところのかたから、ご報告をいただければと考えています。  今日ここでは、静岡から東海地震、それから南海・東南海地震で山崎さん、あと、事前意見でここに来られていない方から私からも趣旨を聞いておりますので、ご紹介させていただければと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。  当初は、資料説明の前に、皆さんに一言ずつ自己紹介という話になっていましたよね。あと、それから座席表はどうだったでしょうか。  座席表を作ってくださいと言われたのですが、もう大丈夫のようです。では、後でまたそれぞれのかたからきちんとお話をお伺いする場は持ちますので、簡単に自己紹介をお願いしたいと思います。では、丸谷さんから。 丸谷(京都大学経済研究所教授)  丸谷でございます。時間がもったいないので、よろしくお願いします(笑)。 植山(神奈川災害ボランティアネットワーク)  神奈川災害ボランティアネットワークの植山と申します。よろしくお願いします。 菅(大阪大学コミュニケーションデザイン・センター)  大阪大学コミュニケーションデザイン・センターの菅と申します。よろしくお願いします。 宇田川(神奈川県の災害救援ボランティア支援センターサポートチーム)  神奈川県の災害救援ボランティア支援センターサポートチームの宇田川です。よろしくお願いします。 高梨(防災&情報研究所)  防災&情報研究所の高梨です。よろしくお願いします。 五辻(首都圏コープ事業連合災害対策専門員/東京災害ボランティアネットワーク)  東京災害ボランティアネットワークの五辻でございます。 村井(被災地NGO協働センター)  神戸の被災地NGO協働センターの村井です。よろしくお願いします。 山崎(NPO法人高知市民会議)  NPO高知市民会議の山崎です。よろしくお願いします。 小野田(NPO法人静岡ボランティア協会)  静岡の小野田です。よろしくお願いいたします。 北川(宮城県社会福祉協議会)  宮城県社会福祉協議会の北川と申します。名簿はみやぎボランティア総合センターとなっていますが、現在はボランティアセンターにはもうおりませんので、よろしくお願いします。 吉田(ハートネットふくしま)  ハートネットふくしまの吉田です。よろしくお願いします。 矢野(NPO法人とちぎボランティアネットワーク)  とちぎボランティアネットワークの矢野です。よろしくお願いします。 山本(事務局 ダイナックス都市環境研究所)  事務局のダイナックス都市環境研究所の山本でございます。 渡部(内閣府防災担当参事官補佐)  内閣府の渡部でございます。よろしくお願いします。 中川(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)  こうやっておくと、皆さんの声が入って、後で発言をしたときに、名前を名乗らないで発言しても、だれが発言したか分かると思うのですが、ただ、できるだけご発言いただくときには、テープの録音などがありますので、必ず「私はだれです」と、「村井です」とか「植山です」と言っていただくようによろしくお願いいたしますということを言えと書いてありますので、言っておきました(笑)。  では、本当は、ほかの分科会では資料説明になるのですが、一応後ろの資料について、どういう意味でここに資料として挙げてあるかということを、簡単に渡部さんから説明してもらえますか。 渡部(内閣府防災担当参事官補佐)  はい。先ほどの全体会でのお話にもありましたとおり、この分科会の資料というのは、あくまで話題提供の発火材と申しますか、そのような観点での一つの材料です。先ほどご発言がありましたとおり、論点探しの前振りのような形でお考えいただければと考えております。  また、資料は主に自然科学的な話で、今日の司会の中川さんは地震学会の広報委員でもありますので、サイエンティフィックな話はそちらのほうで補足がされると思いますが、ここではその地震の評価の適否について議論するわけではなくて、世の中では客観的な形でこういうことがいわれていますという参考の部分です。  また、後段は、実際に行政としてはこのようにボランティアのことを書いていますという部分を抜粋しています。これも客観的事実という形で、情報提供の形で示させていただきました。これについて、ボランティアの皆さんたちがどのようにお考えなのかというところは、まさにご議論のところだと思います。 中川(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)  ありがとうございます。先ほどの資料のことについての質問などをされても、きっとここに答えられる人はいませんし、それは今のところだけでとりあえず整理させていただければと思います。何かこの資料について、同じような観点で資料にしておいたほうがいいのではないかというようなことが、コメントなどありますでしょうか。  分科会の報告という形で、資料は分科会資料ということでホームページに載せたりしますよね。だから、もし追加的にこの資料も一緒につけておいていただきたいと、気づいたことがありましたら、皆様からまたお寄せいただければ、みんなと共有できるかと思います。  あと、資料にあるマトリックスですが、今おっしゃったようにイメージの例ですし、現実にこの場で今この穴を埋めていく、また時間のフェーズの切り方がこういう格好でいいのかということではなくて、今日議論をするうえで、こういうものが手元にあったほうが話をしやすいだろうということで作ったと聞いています。  あまり資料の説明などをやっていてももったいないし、予定ではだいぶ先の設定になっていましたが、議論の時間に進んでいきたいと思います。  では、今日は何人かのかたにご発言のお申し出やお願いをしてあります。最初に、静岡の東海地震への取り組みについて、それに関連して小野田さんからお話しいただいて、それからフォローして五辻さんからお願いしたいと思っています。まずは、小野田さんから取り組みの事例についてご紹介いただけますでしょうか。 小野田(NPO法人静岡ボランティア協会)  静岡の小野田です。どうぞよろしくお願いします。今お手元に「東海地震等に備えた広域災害ボランティアネットワークづくりの取組み」ということで、1枚のペーパーをお届けさせていただきました。  この内閣府の防災ボランティア活動検討会に参加させていただいている中で、ところで静岡は東海地震の際にどういう形で被災地での取り組みをするのかというような投げかけがありまして、いろいろ意見交換をしていく中で、東海地震の被害想定が非常に広くなって、愛知県も含まれてきている中で、なかなか西の方からも入っていくことが難しいだろうし、東の方も非常に難しくなってきたと。そのようなときの連携について、きちっと整理してみないかというようなお話も頂きました。  実は、阪神・淡路大震災以降、平成8〜14年まで、災害時のボランティア・コーディネーター養成事業を県の委託事業としてやってきたのです。その修了者が819人います。しかし、静岡県は合併前が73市町村、合併後は43になったのですが、各市町村のほうに入っていったときに、コーディネーターの養成講座を受けた人たちが819人いた中でも、市町村でそれぞれボランティアセンターを立ち上げるときの担い手というのは、本当に取り組みとしてはゼロに等しいような状況です。  その後、新潟・福井の豪雨から新潟県中越地震等、いろいろな県外の自然災害等を検証してきた中で、災害時のボランティアセンターを立ち上げるときのかなめはやはり市町村社協だろうということは、ようやくここ3年ぐらいの中で、市町村社協がその気になってきたのですが、しかし、実際に、では本当に立ち上げるだけの要員の確保ができているかというと、できている社協は本当に少ない状況があります。  もう一つは、静岡県は非常に東西に長い地理的な条件があるものですから、1か所で県域を把握する県域の災害ボランティア本部だけでは、恐らく43市町村の被害状況なりボランティアセンターの立ち上げ状況を把握していくのは難しいだろうということから、実は今年の4月に県の機構改革がありまして、防災局の中に地域防災局ができました。静岡県も合併をしていく中で、静岡市が政令指定都市になりました。浜松市も早晩政令指定都市になっていくわけですが、そういう中で、昨年度までは県内を九つに分けた出先機関があって、静岡県の場合はこれを「行政センター」という形でいっています。ここの行政センターに、各市町村のボランティアセンターを後方から支援し、県のボランティアセンターとの連携を図るための県の支援センターを立ち上げるというような形で取り組みはしてきたのですが、市町村のボランティア本部を立ち上げる要員の確保も十分でないという状況の中で、その後方支援を担う県の支援センターの担い手は一体どうするのかということになったときには、全く手がつけられていないという状況がありました。  そのような中で、地域防災局が県内4か所にできたことをきっかけに、やはり九つの行政センターに支援センターを作るのではなくて、4地域の地域防災局に支援センターを開設していくという方向で、17年度、今軌道修正をしています。  しかし、想定される東海地震が、先日も18日にそのための打ち合わせを持ったのですが、東海地震と東南海地震が同時に来るということも十分考えらえる。そうしたときに、被害区域がさらに広がっていったときに、静岡県は孤立するだろう。孤立したときに、それぞれの市町村のボランティアセンターを立ち上げるのもままならない。そして、県外の災害ボランティアの人たちにいろいろと情報発信をしていくかなめとして期待されるような支援センターの立ち上げはさらに後れるだろうというような状況の中で、やはりきちんとその辺のところを検証して、県外の災害ボランティアの人たちと連携をして、県内の被災地での被災状況の把握、そしてボランティアセンターを立ち上げるための連携の在り方を検証していきたいということで、今年から3年計画でそのための図上訓練に取り組んで、一つの仕組みをきちんと作り出していきたいと考えています。  そのことから、この検討会のメンバーである五辻さん、村井さん、藤田さんに、県外のメンバーとして世話人に入っていただいて、名称としては、ここに書いてありますように、「東海地震等に備えた災害ボランティアネットワーク」という形での名称で組織を発足することを確認いたしました。それがもうつい最近で、10月18日に、今日皆様のお手元にお分けしたような形の中で、「東海地震に備える災害ボランティアネットワーク」の第1回の会議を持たせていただきました。  この会議を契機に、今後、具体的には来年の2月25日ですが、たまたまこの日は県内43市町のボランティアセンター立ち上げの訓練を予定しているわけですが、それと同時並行の形で、地域防災局に設置を予定している支援センター立ち上げのための、またそのためのボランティア本部と併せた図上訓練を、今のところ、県外の災害ボランティアの人たち25団体ほどを、とりあえず今呼びかけさせていただく団体として予定しています。その前に、県内43市町村の中の、県内の災害ボランティアの人たちに、具体的に四つの地域センターを立ち上げるための要員として、どういう県内の災害ボランティア組織が担えるのかというところの、県内のほうの仕組み、ネットワーク作りを十分進めていく中で、県外の災害ボランティアとリンクした形での支援センター立ち上げのための図上訓練をやりたいと考えています。  具体的には、県内は県内の問題として考えるようにという前回の意見もありますので、今そのための、どこの団体に4か所の支援センターのかなめになってもらうのか、それらをどういう形で連携させるのかという取り組みを今始めているところです。とりあえず第1回の訓練としては、2月25日に図上訓練をやりますが、そういうものを積み重ねていく中で、あらかじめ県外の災害ボランティアの人たちが、どこそこの地域に入るかというあたりを具体的にシミュレーションをしながら、顔の見えるような関係作りのところまで持っていくのを、3年ぐらいかけてまとめてみたいと考えています。静岡では、もっと早くやらなくてはいけないと考えていたのですが、どの辺から整理をしていくのかというところで、少し先送りになってしまっていたという反省をしています。  特に去年の新潟県中越地震、それから静岡県ですと台風22号で伊豆半島の伊東が大きな被害を受けたのですが、その辺を契機に、静岡県としても災害ボランティア・コーディネーターを819人養成してきたのだけれども、果たしてそれで間に合うのかということで、今年から3年計画で900人の新たな災害ボランティア・コーディネーターの養成事業に取り組んでいます。今年は1年めですが、367人ほどが受けてくれていますので、予定どおり3年間で900人以上の人たちに養成講座を受けていただくことができるのではないかという見通しができています。今回の講座を受けた人たちをも含めた形で、支援センター立ち上げのための要員の確保、そのための県外の災害ボランティアや県内の災害ボランティア、市町村、社会福祉協議会との連携をどう取れるのかというようなことを、この訓練を通して作り上げていけたらと思っています。そんな状況です。 中川(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)  ありがとうございました。先ほど正直に、まさに先送りしてきたとおっしゃっていますが、東海地震はずっと前からいわれていたのですが、その静岡でもようやくこんな状況なのが実態ということです。それでも、ようやくここまで来ましたということだと思います。  関連資料に入れておけばよかったと思ったのですが、いまや若干歴史的文書になりますけれども、97〜98年ごろに渥美先生や私など何人かで、NAD関西という場で、西から東海地震を支援するということで、簡単なシミュレーションもして報告書を書いたことがあります。やはりそれも書きっぱなしで、そのあと何もフォローされずに終わっています。この関連ですので、ぜひ皆さんにごらんいただいたほうがいいかと思っていますので、そのようなものもあったと覚えておいていただければと思います。(追加資料として後日配付)  今のことで、五辻さんから関連するコメントを頂けますでしょうか。 五辻(首都圏コープ事業連合災害対策専門員/東京災害ボランティアネットワーク)  はい。資料8の事前意見の1ページめに、これは話し合って合意しているものではなくて、今報告がありました静岡での第1回のネットワークの準備的な討論のあと栗田さんや村井さんなどからもお知恵を拝借しながら、自分自身の論点整理のためにちょっとまとめてみたものです。  東海地震と首都直下とどちらが先に起こるか分かりませんが、先だって5月に八都県市と政府の合同の図上訓練が行われていますね。そのときの政府のところで、被害想定なり、シナリオなり、どういうものでやられたのかということで資料をもらってきましたら、やはり相当な被害、例えばJR関係、鉄道関係だけ見ても、この前の尼崎の脱線衝突事故のようなものが数か所で起こっているというような、当然起こりうることを想定されて、やはり県域を越える激甚広域大規模災害が想定されているわけです。その中で、例えば生活協同組合連合会が物資の問題から生活支援の問題など、どのくらいのことがやれるのかということを、図上訓練のような手法で今何回も、東海地震に備えては、生活協同組合も3回ぐらい毎年続けて広域の連携訓練をやっていました。やはり東からの支援というのは、国道1号線と東名高速に規制がかかった場合にはかなり入りにくい。富士川などの川によってエリアが寸断される。そうすると、やはり西の方の生協の支援が重点になるのだとか、そんなことが出てくるわけです。  今度ボランティアのところでは、ちょうどこの検討会が始まりかけたころに、小野田さんたちと、そろそろ近県の主だった人たちとこういう格好で顔を合わせ始めているわけですから、合同の図上シミュレーション訓練のようなことをやりませんかということで少し相談を初めて、先ほど小野田さんが報告されたようなネットワークの会議のようなところまで行きかけているわけです。  私の意見として出しました、これは必ずしも静岡の東海地震対応に限らず、首都直下を考えた場合も同じような形で、要するに総合的な調整機能が必要だと感じております。宮城県北部地震のときや新潟県中越地震のときにも、やはり初動の災害対応の中では、組織はあったのです。宮城県の場合にも災害救援の県のネットワークというかセンターのようなものがありまして、そこには生協も入っていたし、NPOも入っていたのですが、実際にはそれぞれの、外部からのボランティアも含めて、手探りで入っていって、かってにと言ったらおかしいですが、どんどん入ったところからボランティアセンターを地元の社協さんと一緒に立ち上げまして、活動を始めると。新潟県中越地震のときも、みんなそれぞれ手探りで入っていって、自分たちで情報や地元の組織とのコンタクトを取りながら、うまくいったり、うまくいかなかったりしながら、苦労して活動を始めて、定点支援などにつなげていっているということを経験しています。やはり県レベルの総合的な調整機能がないと、相当なエネルギー・ロスがありますので、本当に集中するところと、本当に空白地というか、物資の面でもそうですが、そういう問題も発生します。  そういう意味では、東海地震が想定されて、恐らく阪神・淡路大震災の縦に長いエリア、細長いエリアからすれば、十数倍の広いエリアにわたる、山間部から都市部、海岸部まで含めて、全域被災地になるわけです。やはりボランティア活動ということでいえば、当然首都直下の場合にも、要は自分たちでちゃんと全部コーディネートしますと言える団体があるだろうかと言ったら、県外の手助けを事前に分かって、役割分担や、あるいは場合によっては地域丸ごとどこかの県外ボランティアが責任を持つというようなことも含めて、事前に相談をしながら、総合的なサポートというか、調整の場所を作っておかないと、なかなか大変だなという意味で、こういう絵をかいてみました。  ここのポイントは、この運営会議と評価機構という、評価というのが適切かどうかは分かりませんが、要するに、県内外のボランティアの実働部隊のリーダー的な人たちによって構成される運営の会議と、そのすぐ横に、例えばJCや生活協同組合、それから社会福祉協議会の県あるいは中央レベルの社協や、労働組合連合など、ここに行政も入ってもらって、例えば資金の調達、機材の調達などの後方支援も含めた総合的なサポートを調整する。それから自治体の、都市部で集中的にボランティアが集まりやすいところと、それから山間部でほとんど孤立している集落にボランティアをどうやって入れるか、その辺のボランティアセンターをどうやって立ち上げるのかというようなことも含めて、総合的に調整する機能をどうやって今から事前に組み立てておくか。その事前のということが大事なわけで、顔の見える関係や、それぞれの得意な分野での役割分担、そこでの行政との協働の在り方、行政等の役割をきちんと調整することが重要だと思います。  それから、昨日の室崎先生のお話にありましたように、いわゆる助ける・助けられるという関係から一つ抜けて、「共につくる」というお話を伺ったわけです。やはり被災後の新しい地域を、基本的には地元の地域のボランティア団体やNPOの皆さんが主体になって、生活の復興から新しい地域づくりということまで考えた県内・県外、それから大きな資源を持ったNGO的な団体、行政、そこのところが、想定されている大型の地震に対しては、かなりプログラムなり役割分担をきちんと話し合っていくということを、今から準備していくべきではないか。これはもちろん私は首都直下に備えて、東京や近県の皆さんと一緒に、この絵もやはり今から考えていかなければいけないと思っています。 中川(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)  ありがとうございました。事前資料のいちばん最後に「財政(基金)」「プラットフォーム」などと書いてあるのですが、五辻さん、この辺はどういうご趣旨で書かれていますか。 五辻(首都圏コープ事業連合災害対策専門員/東京災害ボランティアネットワーク)  これは3回めのときにこの発言をさせていただいて、丸谷さんと当時、終わったあとで、税金を投入するのはやはり難しいと立ち話をしたことがあります。要するに、国が銭を出せということを言っているわけではなくて、例えば静岡の今度のネットワークの中でも、やはり労働者福祉基金のようなところが現在手持ちのお金を、ボランティア活動など、そういう恒常的な活動をするのであれば支援(サポート)するという申し出がすでにあります。  私どもの生協なども、全国の組合員から義援金を募集しますと、中越だけで5億円、6億円というお金を集めました。ほとんど一人当たりからすれば本当に100円や300円、店頭や共同購入で「1」と書くと100円が自動的に徴収されるシステムを開発しています。それはそれで義援金に回して、最終的には住民の皆さんに配付する形というのはいいことなのですが、その2割をボランティアのために、もっと実際に人の手助けで、やはり新しい生活復旧・復興のところをボランティアがやっていくというのは、それは大きなお金のかかる事業になっています。しかも社会的な役割というのは非常に重要視されているわけですから、それに2割の金をボランティア基金として回せということを、最初から明確にして組合員さんにカンパを呼びかけようと。そのようにすれば、そこだけで1億円のお金が出てくるわけです。だから、それは僕は現に日本生協連などに提案しています。 中川(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)  ありがとうございました。あえてここのところは少し説明してくれと事前にお願いしておいたのですが、前に話も出てきて、またここにもあるので、どういう話なのか、どのように考えておられるということを今お伺いしておきました。  小野田さん、五辻さんの話がありましたが、村井さん、これに何か補足するところはありますか。この間、18日は行かれたのですか。 村井(被災地NGO協働センター)  村井です。今のお二人の報告でのことではなくて、中川さんが関西のことを言われたので、2001年の8月17日に静岡でシンポジウムを開催し、井上先生と室崎先生をお呼びして専門的な見地からの意見をお聞きしながら、我々災害ボランティアも事前のことを考えながらやっていかなければいけないというようなことを、実は4年前にやっていました。 中川(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)  ありがとうございます。そうですね。ある意味であれは、まさに東海を想定して、あそこでやらせていただいたと思ってはいるのですが。そういう積み重ねは少しあったのですけれども、先ほど小野田さんがおっしゃったように、地元ではまだこれから具体的に考える、図上訓練のところまで来ているというご報告を頂いたと思います。  また皆さんにご意見、ご議論は頂きたいと思うのですが、その前に引き続き事例を少し報告いただきたいと思います。同じように広域災害を予定されている、予定と言うとおかしいな(笑)、予想されていると言ってしまっていい話だと思います。それは覚悟しなければいけない話ですし、想定被災地の高知県、いかがでしょうか。まさに県境を越える災害にどのような準備がされているか、ご報告いただけますでしょうか。 山崎(NPO法人高知市民会議)  そのときに、いるかどうかということもあるのですが(笑)、高知の場合は南海地震に限らず、不幸なことに毎年災害ボランティアを実施する機会に恵まれていて、1998年、2001年、2004年、そして2005年と県内で災害ボランティアセンターが開かれている状態です。  人材育成は、毎年図られているということになりますが、一つの組織体としては、「こうち災害ボランティアネットワーク会議」というのがあります。大体20団体ぐらいが所属していまして、県社協を事務局にして、JCや生協、日赤など、災害時に有効な資源を持っている団体のかたで構成し、年に1〜2回会議を持つようにしています。ただ、南海地震が話題になることは今までなかったのです。というのは、今まで毎年のように水害が起きていましたので、水害が中心だったのですが、今年初めて南海地震が発生したときについての災害ボランティアセンターについても考えようということで、議題に挙げました。  災害ボランティアセンターの定義について、非常にもめまして、一ついえるのは、南海地震が起きてしまうと、高知県全体が山古志村状態になるだろうと。広域連携というのはまず不可能だろうということがまず結論です。恐らく空路では、高知空港は海岸のすぐ近くにありますので、津波の被害で飛行機はまず入れない。当然海岸部、海路についても津波でやられる。陸路は背後に四国山脈が控えていますので、高速道路、一般の国道・県道についても、恐らく途中で土砂崩れで寸断されて、完全に孤立するだろうということが議論の前提なのです。  高知県内においても、昨年、早明浦豪雨というのがあって、大川村というところが孤立したのですが、恐らくそのような状態が全県下的に起きてくるということで、ボランティア本部、県本部を立ち上げたとしても、基本的に地域のコミュニティーを中心としたボランティアセンターで動かないと、恐らく県外や地域外の人を当て込んだボランティアセンターは、南海地震では想定しても意味がないだろうということで議論がまとまっています。  ただ、その災害ボランティアセンターの考え方でずれがあるのは、一般的にマスコミで取り上げられる災害ボランティアは、県外からたくさん人が来ましたという情報を切り取って大々的に報じるので、地域外からのボランティアを災害ボランティアとイメージされている人たちがけっこう多いのです。そのため、南海地震が起きた場合は、災害ボランティアセンターは開けないと考えているかたがけっこう多いのです。私たちが言っているのは、災害ボランティアセンターというのは、地域、地域外ということは関係なく、あくまでボランティア活動を円滑に行うための機能で、それはどこの地域のコミュニティーにとっても必要なのだということを今議論している最中です。まだその状態なのですが、そういったことが現状にあります。  もう一ついわれているのは、東海、東南海、南海の地震3兄弟といわれるものが同時に起こってしまうと、高知というのは場所的にいっても、人口でいっても、まず見捨てられて孤立するのではないか(笑)ということが言われています。98年の高知豪雨のときに1万2000世帯が床上浸水するという非常に大きな災害が起きたのですが、ちょうどその直前に、吉田さんと矢野さんのおられる白河や福島でも水害があったのです。あのときも、恐らく被害は高知ほど出ていないはずですが、全国紙の扱いは全然違うのです。  全国紙では福島や栃木の水害はドーンと出ていて、高知県の状況は下のほうに小さく「高知でも浸水被害」と、その程度の全国的認識なので、同時で起ころうが単独で起ころうが、恐らく高知県は孤立する。自分自身でやっていかなければならないという認識には立っています。  不幸にして高知は毎年のように水害が起きていますので、全国的に見られる、災害が起きたときに社協がボランティアセンターを開く・開かないというようなもめ事はないのです。基本的に社協がやらなければだめだという意識でいます。特に高知県の西部では水害が起きていますので、被災地の近隣から救援に行く仕組みは完成されています。1998年からの流れでいうと、各市町村社協がお互いに助け合いながら、ボランティアセンターを運営していますので、西部については、もし孤立するような状況が起きても、一応地元のコミュニティーを中心にしたボランティアセンターは開設可能ではないかと思います。  もし広域連携を考える必要があるとすれば、災害ボランティアヘリ(ヘリコプター)というものを考えないと、高知県には全然入ってこられないということがあります。  南海地震については大体そんなところですが、あと、一般的には、全社協でサンダーバード作戦ですか、大阪から富山までの特急のような名前で進められていると思うのですが、一口にに社協といっても職員の少ないところがありますので、そこで災害が起きたときに、全社協の中で研修を行って、有機的にその人材を教育していくような計画が、首都圏では公に進行中だそうです。そことうまく連携をしていかないと、現地へ入ったときに、いわゆる社協コーディネーターと私たち民間のボランティア・コーディネーターがうまく機能するかによって、1+1が3にもなれば、1+1が1以下になる可能性もありますので、サンダーバード作戦とどう連携を取っていくかということが必要かと思います。  それと、県外の広域連携の場合に、必ず議論というか、もめ事になるのが、初動時に、社協を入れるかどうかということと、復旧から復興に移行するときに、災害ボランティアセンターの閉鎖に当たって、意見がぶつかりあって議論に時間を費やすということがあります。今年、四万十市で災害が起きたときもやはり同じようなことがあって、一度ボランティアセンターを閉めて、有志の団体で再び立ち上げるというようなこともありました。やはりそこの部分を広域連携などでもきちんと合意形成をしていかないと、難しいなと思いました。  また、サンダーバードとの連携については、またもう一度ぐらい発言の機会があると思いますので、そこでお話をさせていただきたいと思います。簡単ですが、以上です。 中川(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)  ありがとうございました。サンダーバードの話はちょっと聞きたいなと思うのですが、全社協がだれもここにいないのですが、北川さん、サンダーバードの一員なのですか。 北川(宮城県社会福祉協議会)  いや、一員ではありません。宮城県社協の北川です。サンダーバード論争の場に私もちょうど居合わせたものですから、簡単にというか、いきさつだけはちゃんとお伝えしようと思います。  「サンダーバード」というのはあくまで仮の名称ですが、もちろんサンダーバードを作ろうというわけではなく、とにかく災害が発生したときに、それなりのスキルを持った人たちがある程度駆けつけてきて、必要に応じて必要な支援、判断であったり、いろいろな指示であったり、例えば連携であったり、そういったものを持ちえたいわゆるスーパーマン的な存在、スーパーバイズできる存在を作ったらどうかと。これは、私はいかにも社協的な発想だなと思いながら(笑)、検討の場に居合わせていました。  正直、私は個人的に反対をした立場なのですが、いずれにしても、これまでの経緯から言って、これはあくまで社協の立場から言わせていただくと、地元の市町村社協の人たちが、全くえたいの知れない、全くつながりのなかった人たちを即座に受け入れるというような困難さ、また地元であるからこそ、その先々のことを考えたときに、どういったかたがたと連携していくのか、そこに皆さん非常に混乱、困惑をしたと。そこである程度顔の見える関係作りの中で生まれた、そういったサンダーバード的な存在の人がいてくれれば、すぐにその人たちと連携をすることができるのではないかというような発想なのかなという気がしています。  皆さんもご承知のことだと思いますが、これは私がいつも話すのですが、社協という存在は確かに被災地で非常に重要な位置を占めるかと思うのですが、「社協だから頑張ります」「社協だからやらなくてはいけない」というような、何かそういう思い込みが非常に強すぎるのです。全社協にも言っているのですが、社協マンが全国から駆けつけてきて、その被災地でボランティアセンターの中心的な役割を担うべきだみたいなところが、どうも何か私はそもそも違うのではないかと。社協が頑張るのは当然いいのですが、社協の職員(社協マン)としてやるべきことは本来そういうところにあるのではなくて、もっと違った意味でのコーディネート、また先々を考えた支援をしていくのが、地域福祉のプロという存在で、なくてはならない社協マンの姿ではないかと思っています。  そこで、「サンダーバード」という発想は、私はどうかなという気はするのですが、いずれにしても、これは質の問題だと思います。災害ボランティアセンターのノウハウだけを用いてサンダーバードを作ってもしょうがないわけで、そこにどういった質を求めるかということを大切にしながら、サンダーバードを作られていくのかなと。でも、これはまだ本当に全然決まった話ではありません。これからそこの議論に入りましょうというような段階です。ですから、そういった場合には、当然社協以外のNPOのかたがたとの連携も含めて検討していかなければならないのではないかと感じます。広域連携とはちょっと違うのですが、そんないきさつがありました。 中川(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)  ありがとうございました。ある意味では、県境を越えてという話ともつながってくると思います。これまで広域連携の話が何度も議論されていたのは、県域レベルとかそういう話でしたが、今回は、それを越えてしまったときにこれまでの議論でフォローできないことが何なのか、そういうところの課題を探っていきたい、もしくは我々が今持っている材料は何なのかということが整理できればという話です。社協の目的としては、今のところこれまでやってきた災害の中の被災地の支援ですが、当然広域にも関係するだろうということでご紹介いただいたかと思います。  後ろに来ていただいたかた、どうもありがとうございます。1時からスタートということで、1時前後に来られたと思いますが、すみません、私たちはお昼を食べながら先に議論をしていて、お昼にやるべき議論からさらに踏み込んで次に行ってしまいまして進めております。  一応もう一度ここで皆さんの話を、ちょっと腰を折ってご紹介しておくと、ここは、これまで災害ボランティア検討会でいろいろな連携の在り方とか、県域での災害が幾つか、災害ボランティアセンターが複数できたときにどう連携していくかということは議論してきましたが、東海地震、東南海地震、南海地震など、県境をまたいだときにどのようなことを考えていかなければいけないのか。まだ実際に起きたことはないのですが、そういうことをやはり備えておかなければいけないだろうと。私たちとしては、今持っているリソースとしてはこんなことがある、今こんなことを取り組み始めている、それから、今後、特に県境を越えたときに、こんなことが課題として出てくるのではないかというようなことを、ここで少し整理をしたいということが今日の目的だということをご紹介しておきます。  すみません、話の腰を折ってしまいました。幾つかそれ以外に事前意見も頂いていることをご紹介したうえで議論に入っていきたいと思っています。事前意見の資料で、私が見る限り、五辻さんのものは紹介していただいたので、あと山本さんと吉村さん、こちらに来られていないお二人から関連するところを頂いています。  10ページ、山本さんです。これは事前意見にしては、何かだれかに対して言っているのかなという感じがする文章なのですが、実はこれは私と彼との間でメールをやりとりしたときに聞いたことを、ついでに事前資料として出しておいてとお願いしたものです。  実は、今小野田さんからあった話と少し近い話なのですが、三重県の中のある種の広域連携、県内の広域連携の在り方として、地域防災計画では地域ボランティア情報センターという、県の一括以外に地域を幾つか分けた計画を立てていて、今でも地域防災計画ではそうなっていますけれども、この真ん中に書いてあるように、現地と県と一本化しましょうと、途中をやめましょうという話になっているそうです。  何でそうなったかということについて、彼から聞いていたことは、先ほど小野田さんからあった話とある意味では同じなのですが、地域ボランティア情報センターに担い手を確保できるのかどうかということがやはり議論になったそうです。せっかくそれだけのことができる人だったら、わざわざこういう中間で使わないで、もっと全体で使う。それから、いろいろな情報のツールが発展してきたことなどもあって、あえて中間をやめて、全部県と現地と一本化しましょうという話をされているそうです。  ただ、東南海を考えたときに、多少被害程度の違いで、県南とか何かで置かなければいけないことがあるかもしれないということは、彼から個人的に聞いたところです。今のところ、検討している途中の過程の話だそうですけれども、こういう一本化しようというような議論がされていると聞いています。そのご紹介です。  次に11ページに書いてあることですが、県境を越える場合に何ができるかというときに、ボラパック先ほど配布されていた三重のボラバスの資料がありましたが、地元に負担をかけないで外側からボランティアを送り込んでいくときの仕掛け、これは今でも実際に行われていますが、もう少し組織的にできていけばいいのではないかということが提案として書かれています。  次の12ページの吉村さんの3のところに、広域連携について、これまでの課題と災害フェーズに伴う災害ボランティア活動ということですが、13ページの上から2段めに、「我が国の災害ボランティアは、当然私も含めてまだまだレベルが低く、稚拙であるということ。これが最大の課題ではないだろうか」と、いかにも吉村君風に書いているのですが、これの趣旨は、先ほどのNAD関西やもそうなのですが、それがあったからこそ小野田さんのところの図上訓練に行っているのかもしれませんけれども、まだ、要するに本当に入り口についたところであって、そこを前提にしてどうやって積み上げていくかということだと思います。  正直いって、国のほうでも、後で丸谷さんにちょっと振って話をしてもらおうと思うのですが、東海地震の大綱や戦略などが具体的になって、先ほど五辻さんがおっしゃったように、本当に災害を想定してどうなのかということをようやく言っている段階なので、災害ボランティアだけが遅れているとだけは私は思わないのですが、そこを認識しておかなければいけないというのが吉村さんの指摘です。  それから、次の(2)のほうの「災害フェーズに伴う災害ボランティア活動」としてということで書いてあるのですが、これは具体的に彼として言いたかったこととして聞いたことは、例えば、せめて72時間には現地に入るなとか、そのぐらいのことは常識として共有しておこうというようなことを事例として言っています。また、当然主役は住民なので、住民の救助能力を高めていくようなことは当たり前のことでしょうということが書いてあると。これはあくまで例として書いただけなので、この二つがとても大事だということではないと聞いています。  以上が事前意見で頂いていたもののご紹介です。さて、今実際に県境を越えた災害に対する取り組みの事例を、東海地震、それから南海・東南海の話を聞きましたが、追加して、どなたかそういう県境を越えた取り組みについて、こういうことをやっているとか、ございましたらご紹介いただけませんでしょうか。それをご紹介いただいたあと、次に手がかりとか発言のヒントとして書かせていただいた、「論点」に基づいてちょっと話を進めていきたいと思います。どなたかありますか。 干川(大妻女子大学教授)  皆さんのお手元に、裏表に印刷された紙があると思います。「広域災害情報共有システム」というものなのですが、これはすでにメーリングリストを通じて皆さんにご紹介していると思います。中には、実際に使ってみてくださったかたもあると思います。これは、先ほど五辻さんの事前意見のところで、例えば東海地震ということであれば、その中で災害情報支援システムというのがありますが、静岡の場合は東海地震ドットネットがその役割を負っているわけですけれども、だから性質上これと同じものです。  ですから、原型とすれば、こういう「広域災害情報共有システム」というものを作ったのですが、これをどのように使っていただくかというのは、皆さんたちのニーズに基づいて、いかなる形でもできますので。一応これはあくまでもプロトタイプ(原型)であるということで、これはすでにインターネット上で動いています。今でも動いていますから、もしこのあと実際に関心がある人は、私は今パソコンで、これは携帯電話も使えますので、実演をしてお見せしますので、それは後で言ってくだされば、実際にこの検討会が終わったあとに、その辺のところをお見せしたいと思います。  それで、一応この画面が被害情報以下ずっとあるわけですが、これはやはり阪神・淡路大震災以来、私もいろいろな大規模災害で、そこで情報ボランティアとして活動してきましたから、その中でやはり最低限必要な情報はこういうものであろうということで、こういう画面構成になっています。これを、災害の種類によって、あるいはその地域の特性によって、幾らでも組み換えることが可能ですし、要らないものは削除することも可能ですので、かなり柔軟に使えるものです。  それで、裏側の面が、GISの画面です。これは拡大・縮小が自由自在にできます。一応これは600mのスケールになっていますが、縮尺とすると中間ぐらいだと思うのですが、これは国土地理院の電子国土という2万5000分の1の地図を使っています。ここのところを、任意の場所をマウスでポイントし、そこをクリックすると入力画面が出てくるという仕組みになっています。  そこに、その地図上に表示すべきアイコン、例えばボランティアセンターであれば、ボランティアセンターというアイコンがありますから、それを選択して、そのあと情報の有効期限、いつまでその情報を出しておくのかということを定めますが、このときに注意しなければいけないのは、入力時点よりあとの時点を選択しないと、画面上表示されませんので、そこだけ気をつける必要があります。あと情報のタイトルと情報の内容、情報の内容は、これは実は何百行にわたっても書けます。だから、それはかなり細かい内容を表示することも可能です。あと、そこから先にリンクを張る形で、あらかじめどこかのサイトにホームページを作っておいて、そこに現地の状況の写真などを載せておけば、そこへポンと飛べるようになっています。  これは幾らでもどんなスタイルでもできますし、あと、これは私がかかわっている文部科学省の大都市大震災軽減化特別プロジェクトの研究補助金を使って、5年計画で開発したものです。この研究開発チームには情報工学の専門家も、このGISの専門家もいます。こちらのウェブシステムのほうの専門家もいますし、幾らアクセスが集中しても、それをちゃんと分散できる仕組みも作ってあります。そういったアクセス分散というか、ネットワークの専門家もいます。ですから、これはやはり大規模災害でいろいろな使い方をされても全部柔軟に対応できるようなチームは組んであります。  それで、実際に、このバージョンでは、まず都道府県から選んでいって、都道府県、市町村、町丁、あと番地まで選んで、それで表示させて、そこに書き込むという画面もあります。あと、これは後で補足を植山さんにご発言いただくと思いますが、今、川崎市のほうで植山さんのところの川崎災害ボランティアネットワーク会議が中心になって、川崎市内の、主に中原区なのですが、小学校区ごとの防災マップづくりを、これを使って今やっています。  実際に、今3小学校区をカバーしているのですが、これもできれば最終的には川崎市内全域をカバーしたい。それには多分3年ぐらい要すると思うのですが、3年たつとまた古くなりますから、またそれを更新していくということで、常にこれを使って防災マップを作っていく。そういう活動を今進めているわけです。  あとは、私は三宅島の支援活動にもかかわっていますので、この前、現地調査に行ったときに、それぞれの家がどの辺の位置なのかというのを、この地図に書き込んであるわけですが、それも今消えてはいますけれども、実際にそこをポイントして、いろいろな書き込みなりしてあります。その場合はやはり個人情報ですので、これは不特定多数の人にアクセスされてしまうといけませんので、ちゃんとパスワードをかけて、セキュリティはきちんとやっています。  広域連携との関連で言えば、この地図は全国を、北海道から沖縄まで全部カバーしています。今のところは2万5000分の1のスケールですが、これはそのうちに5000分の1とか、それ以下のもの、それよりももっと大きな縮尺のものができてきます。ですから、この地図の使い方、特に被災地の外部から応援で入ってくるボランティアの人たちにとってみると、土地勘がありませんので、やはりこの地図はすごく役に立つということになります。  去年の新潟県中越地震などでも、長岡市の災害ボラセンなどでは、住宅地図を表示するシステムが役に立ちました。それはパソコンの中に入れて使うもので、ネットワークで使うものではありませんが、縮小・拡大して、それを使ってボラセンから現地までの地図情報をプリントアウトして配ったということで、かなり効果を発揮しています。ですから、そういった事例を考えてみても、全国規模で、ウェブ上で情報共有ができるようになれば、かなり有用な、有力なシステムになるのではないかということで、この運営・開発をやっています。  現在研究ベースでやっていますが、ゆくゆくは、実用化を図るためには、やはりちゃんとしたNPOを作って、ちゃんとした金を持ってきてやらないと、本当に使えるものになりませんから、これもちゃんとしたシステムにするためには、5年なり10年なりかかるというようなスタンスでやっています。 中川(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)  では手短に。基本的には、それをどうやって広域の話とつなげていくかということもあれば、植山さんからコメントをお願いします。 植山(神奈川災害ボランティアネットワーク)  そうですね。今そう言われたので、川崎の植山です。一応そういう形で、今地域の、すでに横浜は市がそういう形でやっているのですが、私たちは市民の手で作っていこうということでやっているわけです。地図にそういう情報を載せれば、それと同時に、小学校区域でもあれば、いろいろなことをやはり市民が分かってくるということがいちばん大事だろうと。それを通せばパソコンで見られますし、それをいろいろなところからも見られるということで、災害が起こった場合には、それが役に立つだろうなということを思って今やっています。大体そんなところです。 中川(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)  ありがとうございます。今の話を私なりに意訳すると、例えばこういう紙の地図がボーンとあったりするわけですが、この地図だけを皆さんがそれぞれ、例えば高知を見ても、これだけでは分からない。標準的な地図のシステムにみんなで情報を載せておけば、これで共有できるよという、情報共有のツールの一つの紹介と、植山さんのところでは、災害があったときだけではなく、ふだんから地域で情報を入れておけば、地域の防災マップとして平時の活動にも使えるし、またそこで何かがあったときに、どういう地域なのか、そういう地元の人が書き込んだものがそこに載っているというツールになるのではないかというご紹介ではないかと思います。そういうことですよね。 (植山・干川)  そうです。はい。 中川(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)  もしご関心があったら、後で干川さんが実演やっていただけると思いますので、よろしくお願いいたします。ほかにどなたか、今こんなことをやっているとか、こんな活動をしてきたとか、ご紹介はございますでしょうか。県境を越えたところを想定したことで。宮城県沖などは、それは基本的には県内で考えているわけですよね。今のところまだ日本海大型地震の県境を越えたタイプとか、そういうことまではまだ考えていないようです。 五辻(首都圏コープ事業連合災害対策専門員/東京災害ボランティアネットワーク)  先月山梨で防災講習がありまして、そのあと山梨県ボラ協によりまして、小野田さんたちの静岡の、東海地震に備えてこういうことを今話し合い始めているので、山梨もよろしくお願いしますというようなお話をしましたら、「いや、おれたちもやっているよ」ということで、ちょうど29日か、数日前に、南アルプス市に山梨県のボランティア団体、それから長野、福井、それから、ひのきしん隊、この人たちが何か200名か300名ぐらいになるのではないかと言っていましたが、集まって、山梨県ボラ協の話だと、突撃訓練をやると(笑)。  要するに、東海地震に備えて、山梨県の県南のほうでもかなり震度6か一部7の被害予想があります。あの辺も国道52号線から入れるのかどうか。あそこもがけ崩れで寸断されますから、ボランティア団体がどういう格好で入れるのかを含めて。それから山梨県の南部の南アルプス市などでの被害に対する対応と、それから少し外の長野やら福井やら、ひのきしん隊も本当に災害ボランティアのトッププロの人たちですから、それが静岡県内に入って。僕は、肝心なことは、要するに山梨県の最大級のボランティア団体、それから長野、福井、ひのきしん隊の人たちが、山梨県のそこの拠点で連携しているということが一つ非常に重要なことです。あらかじめきちっと連携し合って、意志決定をして、山梨県内への力の割き方と、それを越えて静岡にも入らなければいけないということで入ってくる。そこでは山梨県ボラ協が後方支援としてきちんと責任を持って調整するというような、その関係が一つ非常に重要だということです。  もう一つは、やはり静岡県に入ったときに、手探りで行き当たりばったりで「自分たちは支援に来ました。何かやらせてください」ではなくて、やはり静岡県の中のそれぞれの市町村やそこの住民組織が、静岡県内のボランティアの力の配分の中で、この地域については、山梨のほうからの応援部隊が入ってきますよと、ここはどこどこのだれだれさんたち、この人たちは信頼できる人たちだよということで、やはり事前に、できたら顔の見える関係も作りながら、「この人たちが私たちの村の応援に来てくれるのだ」ということが、もちろんその土地のボランティア団体が「いや、そんな人、おれたちのことはおれたちで、自分たちできっちりやるよ」ということなら、それでオーケーなのですが、やはりボランティアの応援ということでいえば、あらかじめ役割分担も含めて、そこもきちっと話し合われている、そして了解されているということが、もう一つ大事だと。  それから、室崎さん流に言うならば、そういう格好で入ったところが、要はそのあとの生活の復旧・復興のプロセスまで含めて定点支援的に、外から入った部隊も、役割が終わったらさようならではなくて、ある程度必要に応じて、もう少し復興プロセスまで含めて役割を担う。そういう定点支援的な関係までぜひつながっていけばいいなと思って、29日、南アルプス市で「もうおれたちやっているよ」という話だけご報告しておきます。 中川(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)  すみません。最後のほうがちょっと分かりにくかったので確認ですが、実際に今やったのは南アルプス市までであって、静岡のところまで越えていくところにあっては、静岡の市や住民組織との連携は取れているのですか、いないのですか。 五辻(首都圏コープ事業連合災害対策専門員/東京災害ボランティアネットワーク)  静岡市の人が、「僕らも参加するよ」と言っていましたから、だれかが行っているのではないですか。 中川(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)  では、もう静岡から参加されている。では、もし小野田さん、それをご存じでしたら。 小野田(NPO法人静岡ボランティア協会)  そのことはちょっとまだ把握できていませんので、報告はできないのですが、ちょっと付け加えということで、午前中の全体会の中でもボランティア保険の問題が出たと思います。静岡については、すべての市町村でボランティア受付の用紙から人数調査の用紙を全部統一しようという動きが出ています。というのは、できるだけ現地の負担を軽くする。ですから、来年の2月25日の訓練に合わせて、今全市町村のボランティアセンターを立ち上げるべく準備されている社協や、災害VCの団体から、それぞれが作っている用紙を私どもの事務所に全部提供していただいております。それを何回か繰り返していく中で、静岡県ではとりあえずこの方式、この様式でやってみましょうという訓練まで、2月にはかなりやりたい。  そして、それを積み重ねていく中で、最終的に統一した仕組み、用紙も含めて、作れたらいいなと思っています。それは言い換えれば、例えば伊東市で大きな被害が起きたときに、浜松や静岡など、遠隔地からボランティアが入るときに、出発するところですべてボランティア保険受付カードをかんぺきに調えて終了している。そして、現地へ行けば、そのまま必要なところに必要な数のボランティアの人たちが入れるというような仕組みができるようなものを、やはり少し目指してみたい。  そういうことによって、今日も午前中に出ていたボランティア保険の、どこで入るのか、だれが負担するのかというような問題も、今静岡で考えているのは、参加する人が自分の負担、責任で入っていくということを、やはりきちっと統一したいという考え方があります。そういうことを通して、それらをいろいろなところで、また地域の特性に合った形で、県外の人たちが共有し合ってやることによって、最終的には何かいい形での仕組みが作れていけたらいいのではないかということがまず一つあります。  それから、五辻さんが触れていてくれたかもしれないのですが、4地域防災局に支援センターが作られますが、訓練を通してやることによって、事前にこの地域防災局に立ち上がる支援センター、そしてその支援センターにかかわる各市町のボランティアセンターの関係者との顔の見えるような関係作りを、訓練を通しながら、あらかじめきちんと作っておく。昨年伊東で台風22号のときに、地元がボランティアセンターを立ち上げるための準備が全部できていたのですが、後発から入ってきた県内のほかの災害ボランティア関係の人たちが、こんなセンターではだめだということで、前日まで準備ができていたものが、翌日がらっと全く違う形でセンターができてしまって、そこでぎくしゃくした問題が少しあったのです。これは、今までの災害の中でも、いろいろなところでそれに似たようなことは起きていたと思います。やはりそのようなものを最小限にしていくことも、被災地での救援活動を立ち上げていくうえでは、非常に大きな意味があるのではないかということを考えているものですから、そんなところも含めて、訓練を重ねながら、目指していったらいいかと思っています。以上、付け加えさせてもらいました。 中川(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)  ありがとうございました。幾つか、いっぱい議論したい話がもうだいぶ出てきていると思うのですが、このほか、もし事例的なところで、先に議論の題になるようなことがありましたら。では、村井さん。 村井(被災地NGO協働センター)  村井です。今日は震災がつなぐ全国ネットワーク代表の栗田が出席していないので、代わりに報告したいのですが、先ほども出た、ふだんから顔の見える関係作りということが非常に大事で、最後に小野田さんが言われたような、現場で作ってきたのが翌日変わってしまったみたいな話があったりする。多分これは、過去には震災がつなぐ全国ネットワークが何かかかわってきたところにもあるのだろうなという気がするのですが、そういうことの反省も踏まえて、3年前から移動寺子屋というのをやっています。今年でいうと、秋田県や諏訪、宮崎というところに、事前にそういうところとの交流をし、勉強会をしながら、現地のキーパーソンとなるような人たちの掘り起こしと同時に、災害が起きたときのセンターの在り方や、その後の復興の在り方、そういったものを勉強会としてやるような移動寺子屋をずっと3年前からやっています。 中川(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)  ありがとうございました。平時のやり方として、そういう、共に学んでいきながら、そこで人を見付けていくということもやっている。それは、ある意味では県境を越えた広域連携を想定もしているというご紹介だと思います。そういうことになると、皆さん、やっていらっしゃるリソースが多分県境を越えた災害への救援にこう役に立つのではないかというものをお持ちではないかと思います。そういう意味では、この発言の手がかり、ヒントというところで、今までやってきたことに対する取り組みとか、別に大規模災害なり広域、県境を越えたことでやってきたわけではないのだけれども、こういうことが役に立つのではないかというようなことがあるのではないかと思います。  そういうものを、これは実際に活動されているかた皆さんに、それぞれこんなことが役に立つのではないか、また、逆にその中でこういうことはもうちょっとうまくやれば、もっと役に立つのではないかとか、また、逆にこの辺は気をつけなければいけないのではないかと。それを少し出していただいて、皆さんで共有できればと思います。 (事務局)  中川さん、それとも5分間ぐらいいったん休憩を入れましょうか。 中川(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)  休憩をとりたいとの声を上がっていますが、この時間がすごくもったいないとも思います。残りの時間も限られておりますので、このまま継続させていただきます。  やはり現場で活動しているという意味では、植山さんから先ほど話がありましたが、でも、もしありましたら、今の活動やこれまでの活動の中で、今申し上げた、具体的にこれが役に立つとか、考えていらっしゃる、今日気がついたということでもけっこうですが、皆さんに頂きたいと思いますので、短く2〜3分以内で一言ずつお願いしたいと思います。  ちょっとマイクはどこへ行ったかな。では、すみません。植山さん、宇田川さん。それから五辻さん、村井さん、山崎さん、もし追加することがあったら。なければ飛ばしていただいて、あと北川さん、矢野さん、吉田さんとお願いしたいと思います。 植山(神奈川災害ボランティアネットワーク)  私たちも神奈川県内で、神奈川西部地震ということで、かなり西部地震に関しては大きく動いたわけですが、その西部というのは、静岡とも面していますので、山を越えてやっていこうという話は、静岡の東部のかたたちとは、何回かお会いしたときには、一ぺんやってみようということを言っていました。  そういう形で、箱根と山越えの何かやりたいなという話は、前から出ていまして、ぜひそういう訓練のときに一度連絡だけでも取り合おうということで、前回9月4日に南足柄市という本当に静岡と近いところでやりましたときにも、少し連絡を取り合いました。そういう形で、ちょっとずつではあるのですが、そういうものをやり始めているところです。 中川(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)  それは具体的に静岡のどこかの団体と連携を取られたのですか。 植山(神奈川災害ボランティアネットワーク)  はい。東部連絡会です。 宇田川(神奈川県の災害救援ボランティア支援センターサポートチーム)  宇田川です。その9月4日の県の総合防災訓練なのですが、私たち神奈川県災害救援ボランティア支援センターは、県域どこにおいても横浜市にその本部を置いて後方支援に当たるということで、総合調整という点では、今の問題、県域を越えた応援体制の中での総合調整という問題と共通してくると思うのですが、つくづく難しさを感じています。  もう一つ感じるのは、東海地震にしても、神奈川県内でも指定強化地域があるように、こちらも被害が想定されるわけです。先ほどの水害での高知の事例のように、中越でもそうですけれども、被災に遭っても、変な言い方ですが、スポットライトが当たる被災地と、忘れられてしまう被災地があるのです。東海地震のような超広域の被害においては、特に忘れられる被災地というのはかなり出てくるだろうと。その中で、もしかするとボランティアの取り合いのようなことが起きかねないのではないか。といったときに、一つ一つの被災地をどう助けていくかというきめ細かいボランティア側の体制作りが本当に重要だと思います。わが身の問題でもあるわけですが、その点でやはり、この間、五辻さんの呼びかけから始まったのですが、東海道ベルト地帯の広域連携の輪は本当に重要だとつくづく感じます。 中川(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)  すみません、今のところ、ちょっとだけ。つくづく難しさを感じたところをちょっと、具体的にもしあれば。 宇田川(神奈川県の災害救援ボランティア支援センターサポートチーム)  一つは、神奈川には地域ネットが13あるのですが、地域ネットというのは、今のところ地域の課題に集中しすぎてしまって、全体とつながっていくという意欲が、今のところ神奈川の中では、濃淡はありますが、やはりかなり薄い地域もある。ただ、それが事前に中央とつながる、後方支援センターとやはりつながっておくというふだんの関係ができていないと、実際のときの広域支援はかなり難しいのだろうなと。  僕は新潟県中越地震の支援で、広域支援の重要性と必要性と有効性を感じましたので、県のほうには、後方支援センターは絶対必要だからということは強調しているのです。残念ながら、県のほうもまだそれがいま一つ見えていないのです。ですから、この支援センター自身に対する熱意が薄いし、下手すれば、ご存じのかながわ県民活動サポートセンターという、平常時は災害と全く関係のないセクションが災害救援ボランティア支援センターになるということで、そこら辺の災害とのつながりが薄いだけではなく、将来的にはどうも県民活動センター自身が消えているだろう、早晩消えるだろうと思っているのです。神奈川は財政もめちゃくちゃですし。そういった意味では、後方支援センターがどこになるのかというのは、神奈川はかなり厳しいなと危惧しています。 五辻(首都圏コープ事業連合災害対策専門員/東京災害ボランティアネットワーク)  五辻です。1点だけちょっと補足させてください。先ほど話しました山梨で南アルプス市に集まって訓練をされていると。これに対応している静岡県内のボランティア団体のリーダーさん、キーパーソンが、静岡県内の中ではまだつながっていない。片一方で小野田さんのところで、県内と県外をつなげるもっと大きい仕掛けを作っているところが、つながっていないのです。だから、それが今度の小野田さんのところで用意されているネットワークのところでは、県内でも、やはり県内のいわゆる社協系と非社協系のような、そういう単純なものではないのですが、例えばそういうことも含めて、なかなかうまくいっていないのを、やはりいい関係をきちんとお互いに協力し合う関係を、このネットワークの中で作ろうと。県外との関係も含めて、そこのところが調整されている、みんなお互いにだれがキーパーソンだということを分かり合っている関係作りが、これからスタートできればと思っています。山梨の先ほどの話は、だから、まだつながっていないということです。 宇田川(神奈川県の災害救援ボランティア支援センターサポートチーム)  今の五辻さんの指摘は重要な問題だと思います。「顔の見える関係」という言葉が、個人的に顔が見えているだけでは、やはりだめだと思うのです。弱いと思うのです。それぞれの中でつながり合った形で顔が見えているという、「つながり合った」という言葉が前にないと、ある意味では意味がないと感じています。 村井(被災地NGO協働センター)  村井です。私も一言追加ですが、県域を越えたということでこのテーマなのですが、高知の山崎さんがお話しされたように、高知などの場合、大災害が起きたら完全に分断される地域がたくさんできるということでいくと、地域の中でどのようにまず自助・共助をやるかということが大事だから、そのことも同時に併せて、広域、県境を越えたというテーマだけれども、そこのところも同時に押さえておいたほうがいいかと思います。  その中で、広域災害といっても、神戸ほどの広域災害はあれ以来まだ起きていないわけですね。地元、県内の中でどれだけ共助ができたかと言ったら、そこはまだまだ不十分なところがあったように思います。神戸の場合は、神戸市内もご存じのように北区は広いですし、西区も広いですね。そのあたりは被害が起きていなかったために、直後はあの両区からものすごく支援が来たわけです。西区からは資源がどんどん来た。北区もそうですね。それから、北区からはボランティアがどんどん入ってきたという形で、ちょっと助けられた。こういう県内での支援協力体制のようなものも同時に考えていかないといけないのだろうと。その一つの県が全滅ということになったときは、また考えなければいけないけれども、そういうことにならないという前提での広域として、必要かと思います。 山崎(NPO法人高知市民会議)  先ほど、高知毎年水害を受けているという話をしましたが、人的資源の備蓄を設けていますので、ぜひこの資源を、災害があったときは県外でもお役に立てたいと思いはあるのですが、ただ、正直いって、ボランティア・コーディネーターを差配してくれるところが欲しいなというのが正直なところなのです。  例えば名古屋ですと、日本の真ん中ですからどこでも行けるのですが、高知の場合、一昨年の宮城北部地震や去年の新潟豪雨でもコーディネーターとして現地に入りました。村井さんから電話があって、コーディネーターがどこの地区で足りないからという連絡を受けて、行かせていただいたのですが、遠方の場合はまず近隣の救援を前提に考えますので、最初は様子を見ることになります。広域で災害が起きたときに、どこにどう入っていいのかというのは、正直分からないのです。  そこで全国的な調整機能があって、どこどこのボランティアセンターの立ち上げについて、「高知に頼むわ」という依頼があれば、立ち上げから、復興までかかわれるかどうかはちょっとまた別ですが、復旧のボランティアセンターについてはできます。全国でいろいろな災害が起きたときに、高知から行くべきなのか、様子を見ていていいのかいつも迷います。そこら辺の差配は欲しいなということは正直思います。  ボランティア・コーディネーターといっても、それぞれ皆さん特性があって、いろいろな得意技があると思います。やはりどこかで差配をするのであれば、それぞれの特性を見て、例えば復旧から復興に変わる時期、いろいろな議論がぶつかるときには、合意形成の手法をうまく持っている人を派遣するとか人をコーディネートする部分があれば非常にありがたいなというのが、日本全国の災害を見ていての正直なところです。差配というと誤解があるかもしれませんが、災害ボランティアセンターと同じようにボランティアコーディネーターを効率的に調整する機能は必要だと感じています。  広域でいうと、昨日の室崎先生のお話にもあったのですが、やはりプログラムを一緒に作っていくことの重要性には非常に共感をしました。ただ、県外のボランティア・コーディネーターは知識と経験が豊富ですので、地元のかたと議論した場合に、圧倒的に議論では勝ってしまうはずなのです。それでいうと、最近また話題になっています北風と太陽ではないのですが、やはり県外のコーディネーターは北風で相手方を飛ばすのではなくて、やはり太陽のように、自分から服を脱ぐ工夫をして、裸のつきあいができるような環境に持っていく必要があるのではないかということを感じました。 小野田(NPO法人静岡ボランティア協会)  静岡でいろいろな取り組みをしてきている中で、私はこのように思っているのです。防災と発災後にかかわる両者の責務は完全に違っていますよね。今まで防災にかかわっていた、県にしても、市町村の行政の担当者にしても、いわゆるボランティアの人たちとかかわる機会はほとんどなかったと思うのです。特に今回静岡県が地域防災局を作って、その4地域防災局を管轄する市町村がはっきりしてきましたので、我々が地域防災局に対しては、管内の行政の担当者、担当部局に対して、発災後のボランティアとの被災地の救援活動、ボランティアセンターが立ち上がらなければできないのだということを、市町の行政の防災担当者にきちんと伝える役割を、地域防災局にお願いします。そして、県社協に対しては、市町村社協にボランティア本部を立ち上げるのは、社協が担い手として期待されているし、社協以外ではやれないのだというような認識を持ってもらえるような働きかけをしてくださいというような、役割分担をかなり明確にしてお願いをしてきています。  恐らくこれは静岡県に限らず、よその県についても同じようなことが実際に起きているのではないかと思います。やはりそれが必要だけれども、実際にボランティアセンターを立ち上げていくための担い手をどう確保するのかというところは、必要なのだけれども、どこから手をつけていいか分からないということで、どんどん先送りをしてきた結果が、静岡の場合はあったと思っています。  でも、最近ここ2〜3年の中で、それではいけない、とにかくもう待ったは許されないところまで来ているというところに、行政担当者が認識をしっかり持ち始めてくれたというのは、とてもいい機会になってきているなと思っています。  今回そのような広域の訓練をやることについて、先日の話し合いはまだ1回しか持っていませんが、その中で幾つかの問題が出されて、準備段階から、例えば地域防災計画は静岡県の場合、防災局がやります。しかし、災害救助法が適用されたあとは、健康福祉部というセクションが具体的にいろいろな作業をしていきます。そして、生活文化部にあるNPO推進室が、NPOやNGO、行政との協働のための調整的な機能を果たすというような、役所の中での役割分担が明確になっているのですが、今回の広域の図上訓練をやるとき、その準備会の段階から、行政のそれぞれの担当部局にもメンバーの一員として入っていただきます。そして、そこのところから同じスタートラインで考えていきましょうということが、先日の静岡での会議では確認されました。  と同時に、マスコミの問題が出ていたのですが、やはりマスコミ対応も非常に重要であるということも出てきていますので、恐らく次回ぐらいには、報道関係の人たちにどういう形でかかわってもらうのか、メンバーとして入ってもらうところまで行けるのかというあたりも含めた形で、前へ動かしていけるのではないかと思っています。 北川(宮城県社会福祉協議会)  宮城県社協の北川です。宮城県の場合は、あまり広域的な事例というのは今のところ正直想定していないので、具体的な取り組みもありません。私は常日ごろ、確かに県域を越えたそういった支援の仕組みやシステムは非常に大切であるとは思っているのですが、私は広域であろうが、市町をまたぐような細かい単位であろうが、同じではないかと思っています。県外にこだわる・こだわらないではなくて、結局私たちがどこを見なければいけないのかというところを、そこを忘れて、最近はつい仕組みにばかり走っているなと非常に強く感じています。ですから、ボランティアセンターの在り方を考えることも大切ですが、それ以前のルールをきちんと理解したうえでないと意味がないなと、最近はよく感じています。  そういう意味で、広域にかかわる人たちが、コーディネーター役、何をしなければいけないのかという部分、そういったことを理解できる人材養成をしていかないと、なかなか仕組みだけできても結局は動かせないというような、何となくそのような危惧を感じています。 吉田(ハートネットふくしま)  ハートネットふくしまの吉田です。よろしくお願いします。水害は8年前でしたか。 両方の災害で、栃木県と福島県だったのですが。あのときに、阪神・淡路大震災以降、いろいろな人と知り合いになっていてよかったなと、いやってほど思い知らされましたよね。本当にいろいろな人がやってきて、あれよあれよと言う間にみんなでやってくれて、もし地元に我々がいなければ、よそから来た人があれよあれよとやってしまって、地元の人たちは「何だ、あいつら」という話になったのでしょうけれども。だから、地域にもそこに加わっている人間がいたということも含めて、いろいろな人と仲良くなっていたのがすごくありがたかったなと思ったのです。  もう一つは、矢野さんが電話をよこして、「那須で人が余っちゃったから、そっちに回すよ」という話をしてくれて、ところが、面白いですね。栃木は関東なのですよ。うちは東北なのですよ。東北には来ないのですよね。「200人ぐらい行くからね」と言ったのが、一人とか二人しか来ないのです(笑)。みんな帰っていくのです。それは関東と東北の違いもあった。 植山(神奈川災害ボランティアネットワーク)  10km離れていないですよね。 吉田(ハートネットふくしま)  車で30分でちょっと行けるところなのですが、なぜか来ない。それは多分県域をまたいだということも一つあると思うのですが、あとは、やはり最初に行ったところでうまくつながないと、ボランティアの人たちはやはり気持ちで来ているから、「うちは要らないよ」と言われた段階で、もう意欲がなくなってしまうということもきっとあるのでしょう。でも、村井さんからあとから言われたのは、「おまえらは何で30分のところに二つボランティアセンターを作るんだ」と言われて、それはそうだと(笑)。我々自身も行政の県境というものがいつの間にかしみ込んでしまったということがあのときの反省で、でもまた次もやってしまうだろうなと思うのですが。 五辻(首都圏コープ事業連合災害対策専門員/東京災害ボランティアネットワーク)  あのときはもう那須は情報発信で人がものすごく集まっていたから、ここはもうほうっておいて、福島のほうが調べて、あそこの県境、東京は県境を越えて、大信村という、山の中へ入っていって、全部地元で、だから福島と東京が一緒になって入ったのですね。100名ぐらいでね。  本当に鉄砲水で集落がダーッとやられてしまった村で、全然情報も出てこなければ、だれも入っていなかったのです。 吉田(ハートネットふくしま)  というように県域を越えた広域の連携が、あのときはうまくいかせていただいたなとつくづく感謝しています。  ですが、今皆さんのお話を伺って、広域の連携ネットワークといいながら、やはり押さえておかなければならないことは、ネットワークで連携を取るということは、連携に加わらない人も必ず出てくるということがもう一つあると思うのです。ネットワークのない人たちは異端なのかという、そこのところはやはり異端ではないと押さえておく必要があるのだろうと思います。  広域のボランティアセンターができて、そこに所属しないボランティアのグループがたくさん出てくると思うのですが、その人たちは、いわゆるいけないボランティアではなくて、多分そこに拠点を構えた地域住民にとっては、神様のようにありがたい人たちだと思うのです。それが、正規のボランティアセンターの枠組みの中に入っていないから、あそこは違うのだというようなことだけはぜひ避けなければならないだろうと思うのです。  特に前回の新潟県中越地震などでは、必ずしもボランティアセンターにみんな集まり切らないぐらい、阪神とは比べものにならないけれども、もう少し局地的なものよりは広かったような気がして、そういうところが出てきたのだろうと思うのですが、それも含めて考えなければならないのではないかと思いました。 矢野(NPO法人とちぎボランティアネットワーク)  矢野です。何か事例というのですが、私たちは那須の、吉田さんが言った水害以降は、外に出で救援活動ばかりです。阪神淡路大震災のときからそうなのですが、ある意味で広域の連携というか、かってに押しかけるタイプ。 まずは行って、どういうことを私たちで供給したらいいのかを調査・観察して、救援活動のオーダー、見積もりを出し、自分たちで資源をかき集めてきて、救援に送り出すという仕掛けです。こういうことが、あらかじめ東海地震などの被災予定地で「こんなオーダーだ」とかがあるのであれば、それを頂ければ確かにありがたい。だけど、行ってみないと分からないところがやはりありますよね。  広域連携と言った場合に3つのことがテーマになると思います。「ボランティアの供給システムとしての広域連携」について言っているのか、というところが一つめ。東海地震の静岡ならば、それは、数として何人、どのタイプのボランティアがいつまでに必要ということを言わないとならない。見積もりを出しておかないとならないのではないかと思います。そして、全国のどの地域(都道府県)のどのNPOが、うちは何人を出すよ、また、他の地域が何人だすよ、と具体的な供給の仕組み作っていくのかというのがあると思います。  もう一つは、「行くルートとしての広域連携」があるかと思います。図上訓練でやるかもしれませんが、そこのところのことがもう一つですね。  それから、「ボランティアの仕事のイメージそのものの広域連携」があるのでは、と思います。オーダーする側(被災地)や行く側(供給側)が、「こんな仕事だから、このぐらいの能力の人が必要ですね」とイメージを共有していないと、たぶん、分からないというか、活動ができないですね。  だから、県にボランティアセンターができる、広域でもセンターができる、市町村のセンターがある、などの行政的な組織図はあっても、北川さんが言うように、「では、そこは一体何をするのだと」。センター自体は、現場ではないから、その先さらに避難所などいろいろなところがボランティアの現場になる。具体的には、その避難所に何人ぐらいの長期滞在ボランティアが交代交代で必要だ、この小学校にはこのぐらいの人が必要だ、というようにつぶしていかないと、結局は数字も仕事のイメージも出てこないと思います。  では、県や市町村が作るボランティアセンターは、そのときに何をするのかと考えると、実際にはボランティアなどのトラブル防止の、あくまでもマネジメント・レベルしかないか、と思うのです。トラブル防止といっても、中身は具体的なボランティア間や住民間のトラブルを処理することではなく、それより上位のトラブル解決機能を、災害ボランティアセンターはやるのだろうと思うわけです。そのような具体的に何かイメージを作っていないと、ちょっと関連図や組織図だけできても難しいなと思います。  またボランティアセンターの機能が、個人で来るボランティアの人が目指して来るための「ランドマークとしての災害ボランティアセンター」だとすれば、そこに行けば何かがあるというようなイメージで、ボランティアの仕事や広域連携のことを考えるのかもしれませんね。 災害ボランティアセンターにしても、どこのところの視点で整理していったらいいのか、(全部なのでしょうけれども)そういうことをちょっと考えたりします。  あと、災害ボランティアセンターというものが、本当にしきりに出ているのですが、神戸のときには、それがない。 被災地でのボランティアの現象としては、「地元の人がボランティア化する」ということが一つある。2つめは、「よそ者がボランティアをしていく」。そして、「地元の人がボランティアをするのをよそ者が助ける、応援する」という3つのシーンがあるのですが、阪神大震災だったら市民団体がいろいろなセンターを自分たちのところで作っていって、そこに、みんな来い、とやったわけですね。  だけど、例えば中越地方はそういう市民団体自体がないから、ボランティアセンターのような形で作らなければならなかった側面もあると思います。静岡だと、都市的なところではそのタイプで幾つかの自発的なセンターが事実上できると思います。それをセンターというのか、何と称するのか分かりませんが、それらのボランティア化現象を基準に考える必要がある。自発的に出てくるものを、まず幾つ出てきそうなのかとか、その作り方のようなことをどうするのかなども含めて考えていく。そして、田舎のほうで市民活動が活発でないところは災害ボランティアセンターを作るというようなことを考える。そうしないと、具体的にならないかと思います。 中川(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)  ありがとうございました。一とおり現場の経験の中から語っていただいたと思うのですが、実はもう一つ現場があって、ボランティアの側だけではなく、行政の現場がある。先ほどの静岡県の話が具体的に出てきたと思うのですが、国など、その辺のレベルの現場でどう考えられてきたのかということを、ちょっと丸谷さんから、次の話をする前に一言お願いできますか。 丸谷(京都大学経済研究所教授)  国のほうから見た場合、広域の体制作りの必要性は、明確に、県の域を超えた形で災害の支援が必要だということ、それも隣接県にちょっとまたがる程度ではなくて、一つ飛び越えた県までも行かなければいけない災害に見舞われる場合です。県だけでマネジメントできないことになった場合に、派遣する、何か調整するような話が必要だと思います。  おそらく、東海地震、東南海地震等、皆様がたは広域災害を心配されている前提だと思います。基本的に、県内の話であれば、まず県での広域的なボランティアをどうするかという県の対応が重要だと思うのですが、本日の件については、県を越えてどうするかというポイントに関心があります。内閣府としてもすごく関心があると思いますし、政府も必要と感じていると思います。  まず、東海地震のときに総合ボランティアセンターのようなものが国レベルでも必要なのではないかとか、広域的に必要なのではないかということについてですが、全く絵が描かれていない。必要性はあるだろうと言ったけれども、結局そこに何をしてもらいたいか、今のご発言にも関係あるのですが、そこの部分が見えていない。なぜ見えていないかというと、ボランティア側で何が必要なのかということを国がよく理解していないのです。  こういった会合で、国がもし作るとなったときに、そこに誰がいるべきなのか。場所はどこなのか。それから、県の総合的な役割分担、例えば新潟であれば中越センターのようなもの、を超えて、何が広域的なものとして必要なのかを発信をしていただかないと、国としてもよく分からない。結局お互いよく分からない、ボランティア側も、国が何をしているか分からないからよく分からないというところがあると思うのです。いずれにしても、そこの間隔を詰めていかなければならないと思います。  まず考えなければいけないのは、資金や人員、情報、物資など、とにかく皆さんがたは当然必要だというもののうち、どこの部分についてどういう調整が必要なのかをよく考えて、そこの部分を静岡県なら静岡県の調整には任せられないなら、広域センターに何か機能を持たせなければいけない。  それから、ボランティアの側からすると、静岡県のセンターに入ってもらちが明かないとしても、センターが分散してしまって、調整の場がなくては困る。今までの災害でしたら、電話やメールなどでやり合っていけたのですが。最終的にはある程度のところに総合集約しないと。五辻さんがおっしゃるような、エネルギー・ロス、全体の配分ミスが出てきてしまう大災害になったときに、一定のところに何かを置き、ボランティアとしては情報、意思決定、あるいは主なボランティア団体間の調整で役割分担をどっち方面にするか決める場をどこかに持っていたいと思うでしょう。そこに、内閣府の人間がいてほしいのか、それとも全社協さんの人がいてほしいのか、生協の人が欲しいのか、日赤の人が欲しいのかというようなイメージを持って発信をしていただいたほうが、私は生産的だと思います。1か所に作るのはあまり意味がないというのであれば、そもそもそんなものは作らなくてもいいとなります。  国側からすれば、例えば東海地震の場合にどこに置くかというと、2つの場所しか考えにくいのです。1つは、静岡県の、多分県の本部のそばに国の直営の出先を開くわけです。新潟中越であれば新潟にいましたが、例えば静岡県庁に訓練であれば副大臣なども行きます。青木企画官、あるいはボランティア担当のメンバーが駐留するとすれば、多分そこにしか置けない。もう一つは東京でやるしかない状況なのです。人数が限られていることもあるのですが、基本的には現地拠点の中にいるか、東京にいるかしかなく、人員的にもたくさん置けないわけですよね。そうすると、ボランティアの側で、東京にいてもらったほうが、むしろいいのか、それとも前線基地となる静岡県の隣にいてほしいのかということも、具体的なイメージとして考えていかないと、結局はどこに置くのかも決まっていなければ、役割も分からないと思います。  また、お金の流し方、人員の確保のしかたについて、総合ボランティアセンターで人員の人日計算をして、どのくらい配分してほしいのかを調整するために必要なのか。それとも純粋にネットワーク機能だけにし、ボランティアのかたがたが情報交換をする場とし、ボランティア間でそれぞれの状況を見ながら、自分のネットワークを使って配置することしかできそうもないのであれば、そういう方向でやる。要するに分散処理の処理センターのような機能にする。どちらがいいのでしょうかという話もあると思います。そのようなものを、まず絵柄、場所とか機能を描いたうえで、いつからそれを機能させるか、だれがそこに行くのかというような時間軸的な対応を分析的に考えていかないと、なかなか難しいと思っています。  国のほうからすれば、これはボランティアだけではなく、民間の企業支援が、今のところ大きな課題になっています。民間企業支援とボランティアは、情報不足というところもあって、先が描けないわけですね。行政であれば一下命令で動き、それぞれの予算と人員構成をすでに持っていますが。行政側から読めないと見られていますので、ある程度、ボランティアや企業の側のほうから、このようなことがいちばんいいのだから、国の役割はこうだと言ってほしい。あとは自分たちに任せろというところも含めて、何か一つまとまった提案を。すると、国のほうが、では場所はここ、大きな機能はここ、国側の組織としてそこに参画するのはここ、それから静岡県の本部と国の本部の役割分担は大体こんな感じというのがいえて、これでボランティアがいちばん動きやすいのですねということになれば、動くのだろうと思うわけです。  最後に一つだけ、私の個人的見解を言いますと、以上のようなことですので、中央集権的な動きは全く機能しないのではないか。最終的には分散処理プラス調整のような格好で、ユニットとしても県よりもっと小さいユニットのグループ団体が、最終的には動く判断をしていただかないと、調整するだけで時間の無駄だと思います。金の配分も、県のこういったところでやり、どこに配分するかを中央が決めるというのは時間の無駄の感じがするわけです。もちろん共募のように、1週間とか10日後に配分することはできるかもしれませんが、初動のときに金が足りないのにどうするかを、分散処理的にできないと。国の総合調整をするところにそれを決めてもらうなどというのは、本当に愚の骨頂という感じがします。  そういった意味では、分散処理の中で協働したり連携したりということでプラットフォームができる形のほうが、何となく現実的であり、ボランティアの皆さんの現状に合っているのではないかと思います。一つ一つのユニットが大事で、主体性を持って動かれる中で、どのような機能を広域的なセンターが担っていくとするか、ぜひそのご提案を具体化していただければというのが国の見方だと思います。 中川(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)  ありがとうございました。今の丸谷さんの話で皆さんの頭の中が少し見えたところがあるのではないかと思うのですが、最後に干川さんとか菅さん、高梨さんの3人にお話を頂きたいと思うのですが、頂く前に、今の丸谷さんの話でちょっとまたコメントしたい人がきっといるのではないかと思います。矢野さん、うなずいていたと思うのですが。 矢野(NPO法人とちぎボランティアネットワーク)  そうです。今言ったとおりだと(笑)。私もそれを言いたかったのですが、言葉が全然足りなくて。県や市町村レベルで、何かと沢山センターなどを作るのですが、実際にそうなのかなと考えると、今の行政的な仕組みものが必要なのではないのだと思います。 現実に、例えば阪神・淡路大震災ではこういう事例があった、そこではこのような形でボランティアが動いていき、複数の集団が動いて、結果、そこで起きたトラブルは一体何だったのか、ということを、その事例から見いだす。そしてその解決策として必要な機能は、この市町村のセンターがこのようにやったらいいのでは、というような、そんな検証が必要なのでないかと思います。あるいは新潟県中越地震では、例えば活動したボランティアの数が、「この時期はこういうタイプのこれが何人必要だった」。「だけど、その時には、このタイプのボランティア活動がなされていなかった。だから、あのときとは違う仕掛けでどうにかして地域に入る方法が必要だ」など、事例を、反省を踏まえて把握する必要があると思います。  そういうボランティア活動の生態学的な調査をして、それから、「このボランティアのタイプや、このグループでは、このようにやったほうがいい」。だから「市町村のセンターの役割は、そのなかの、これを応援する」、「これはこっちで応援する」、というように考えていかないと、ちょっと難しいかなと思います。あとは、それを広域の後方支援の地域でどう調達するのかということ、私で言えば、栃木県内での課題ということになってくると思います。 村井(被災地NGO協働センター)  先ほどの丸谷さんの発言でもう1回確認したいのですが、結局、先ほど後半で言った、総合調整というのはかなり愚の骨頂に近いものだから、ユニットで地域地域、現場現場に近いところに置きましょうということが結論になっているのですか。 丸谷(京都大学経済研究所教授)  ごめんなさい。愚の骨頂と言ったのは、国がお金を全部いったん持つ、あるいは国がボランティアの人員の積算を全部一応計画的に持って、まず国が配分を決めて、それからその地域の団体が動くというような、トップダウン的なものを現場でやるというのは、つまり事前に勉強するという話ではなく現場でそれを決定する形でのトップダウン的なボランティアセンターを作るというのは、私は賛成できない。そうではなくて、実際には県レベルのようなものの一つ一つのユニットが、ある程度自由度があるのだけれども、その自由度を持って動くようなものの調整をやらなければいけないということを、あくまで災害が発生している時期の問題として申し上げたわけです。  事前に想定した訓練をしながら、顔の見えるネットワーク作りをするのは非常に重要だと思うのですが、そこでやったことと、実際にはその配分ができるかということを混同すると、なかなか難しいところがあると思います。少なくとも国の総合調整センターのようなボランティアセンターには、最終的にはそこが動かなければ何もならないような形に作らないでおいてもらう。もちろんその中の役割をある程度事前に決めていくような総合調整の訓練は、先ほど申し上げませんでしたが、私は重要だと思います。人の割り振りをとりあえず考えてみるとか、シミュレーションを事前にしておくこと、センターでの集まりを勉強しておくのはいいと思うのです。しかし、そこが決めて、それから動く、というようなことにしないでほしいということが趣旨です。 小野田(NPO法人静岡ボランティア協会)  小野田です。先ほどの矢野さんの話を聞いていながら、私はこのように思っています。今まで災害が起きたときに、例えば静岡を例にして話をしてみると、静岡県災害ボランティア本部の系列ではないボランティアセンターがいろいろなところにできたときに、そこからいろいろな支援の依頼が来たときに、「いや、うちの関係じゃないから知りませんよ」というような形の姿は、今までの中ではあったと思います。  しかし、僕はそれはだめだと思う。むしろいろいろな宗教団体や企業や全然関係がなかった人たちが、被災地に来て独自のボランティアセンターを立ち上げる。そのようなときにも、静岡県の災害ボランティア本部は、そこの人たちから来るさまざまな協力要請やニーズに対してもこたえていけるぐらいの力量を持った総合的な調整機能を果たせるぐらいのボランティアセンターが県域で立ち上がっていかなければいけないと。  その辺のことは、これまでの新潟の水害、福井の水害、そして今回の新潟県中越地震等々のいろいろな経験の中から、そのぐらいの器を持った県域のセンターでなければだめなのだということは、私は学習できてきているのではないかと、自分自身は認識しているのです。  ただ、それが、そういう同じようなレベルで市町村に立ち上がるボランティアセンターが機能できるかというと、まだまだそこまでは学習できていない。例えば静岡県のあるところで初めてボランティアセンターが立ち上がったのですが、そのボランティアセンターを立ち上げたところのもともと日常業務をしている人間関係の中でボランティアセンターが機能しなかったというような、もう本当に次元を超えた恥ずかしい事例もあるのです。しかし、これだけ災害のときにボランティアの力が必要である、またそれが社会的にも大きな役割を果たすということが確認されてきている時代の中では、やはりそれらを乗り越えたボランティアセンターが、市町村においても県域においても、また県のレベルにおいても、やはり機能していくようになっていかなければ、被災地での救援活動は、やはり私は軌道に乗っていかないのではないかと思っています。矢野さんの言ってくれた意見については非常によく分かりますし、それを乗り越えるところにもう来ているのではないかという認識を持っているという発言です。以上です。 五辻(首都圏コープ事業連合災害対策専門員/東京災害ボランティアネットワーク)  丸谷さんの発言で、いわゆるジャパン・プラットフォーム的な表現を使ったから、そういうイメージを持たれているのかなと思うのです。だからそこはちゃらにしてもらって、僕が総合的な調整センターという表現をしているのは、例えば東海地震のときに、伊豆半島のほうに、あそこも一つの地域防災局になっている下田拠点に、では神奈川から下田へどうやって入るのだとか、そういうことを含めて、これの場合には船を借りてとか、そういうちょっと行政の支援を受けてとか。それから、各地域防災局は海岸部・都市部から山間部を抱えるエリアになっていますから、山間部で孤立した集落に対して、救急・救命も苦労しているところにボランティアをいつごろどうやって、どういう手段で、どこの部隊で入るのかとか、そういうことについては、僕は絶対出てくるだろうと。  それは、私どもの中で、例えば労働組合の連合さんがシャベル1000本と言えば調達するぐらいの力を持っています。大体手の内というか、それぞれの、あそこがどのくらいの力を持っている、宗教系の人たちがどのくらいの炊き出しも、頼めばすぐ炊き出しセンターをやってくれるとか、それぞれ大体分かり合えているものができてきていますから。  その辺が、例えば炊き出しだって、みんなあちこちで調整されないと、ぶつかり合うわけでしょう。入ったところから、多分東海の場合には西のほうからどんどん入っていって、そっちのほうからはどんどん始まるけれどもというような、その辺をきちんと広域的に調整する一つの場所が必要だと。それは東京よりは現地の対策本部、行政との連携も含めて、現地にあったほうがいいだろうなと思います。 中川(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)  すみません。進行上、時間があまりなくなってしまったので、まだ発言されたいかたがいらっしゃると思うのですが、どなたかまだいらっしゃいますか。いるはずですよね。いると言ってください。高梨さん、それから菅さん、コメントをちょっとお願いしたいのですが。 高梨(防災&情報研究所)  まず、事例ということから行くと、五辻さんのお話などを伺うと、すでに過去にやった経験とか何かで出てきている広域連携というものがもう飛んでしまっていて、次の東海に頭が進んでおられるのだなということが非常によく分かったのですが、今までの蓄積で行くと、帰宅困難者訓練などをテーマ別でかなりやっているわけです。  これの中でかなりボランティアなんかの本当の現場の調整を、実際の場面を想定してやってきており、そこからいろいろな活動の調整が図られてきているという実績があると思うのです。それから、いろいろな災害が起きたときに、きっとボランティアに対する期待ということにつながってきているのではないかということが、実績としてまずあると思います。だから、そこら辺のノウハウがどうやって蓄積されてきているのかということをもう一度確認していただいて、それで次の起きるであろう東海とか東南海に備えていただくということが一つあると思います。  2点めですが、今考えられているのは、かなり個々の一般単純ボランティアといわれるような部類のところのボランティアの調整ということになっているのですが、やはり専門ボランティアまでをどう調整するのかということが非常に大きなポイントです。行政の担当がそれぞれの部門で、それぞれ受け入れてという形でやるのですが、それでいいのかどうか。一般ボランティアの中にどこまで含めるのか。つまり要援護者や何かというのは、まさに社協の分野であると思うのですが、全く社協を切り離せなくなってきているというのが、全国的な趨勢であると思うので、そこら辺の調整をどうしていくのか、どこまで踏み込んでやっていくのかということが、もう一つ出てくるかと思います。  それから、センターの在り方、後方支援の在り方ということで、丸谷先生のほうからご指摘があったと思うのですが、大体応援する側とされる側というか、受け入れる側と送り出す立場のところでいくと、大体緊急消防援助隊とか、国の体制のほうから行きますと、周囲に幹事県とか何かというものを作って、そこが送り出す側の調整をして、中のほうでの調整もするという、2段階調整になっています。  東海地震でいくと、特に受け入れ側となる静岡県に非常に大きなポイントが出てくると思うのですが、先ほど振興局が改組されて、4地域防災局になるという話をされていましたが、そこにすべてを送り込むのではなくて、被害状況に応じてどこかは多分一緒になり、四つというのではなく、三つとか二つというようにまとめていくのかなという感じがするのです。  多分、ボランティアの派遣についてはかなり濃淡が出てきて、マスコミが報道するところに集中してしまうという傾向があったり、地元のニーズがちゃんとくみ上げられなくて、センターができないというケースなどもあるので、そこら辺のまず調整が要ると思います。そこの総合調整センターが地元のほうにできてしまってはいけないし、そして、外からの調整をどこがするのかというと、やはり東京か神奈川。国に近いということでいくと東京ですし、もっと被災地により近く、拠点として、ポイントとして接点になりうるのは神奈川で、特に神奈川県の横浜か川崎なのです。そこからどうやって神奈川県西部ないし静岡県東部のほうに送り込むかということと、それから、西のほうから行くと、愛知県ですね。愛知県と両方から攻めていくという形を取って、中の調整という二段構えの仕組みが何かできないかなと、東海を考えるとですね。  あと、東南海・南海で行きますと、もうすでに動き始めている行政のほうの四県連合のようなものがありますよね。和歌山、三重、高知、徳島とか、割と先行してやってきているところがあって、そことまず調整を図っていくという形などはいいのではないかと思って、地元のほうもノウハウがかなり蓄積されてきているところですから、そこら辺と行政との調整ということで、さらに協力が進んでいけばいいのではないかと。東南海・南海は少し時間があるのではないかと思われるので、これからまたさらに詰めていっていただきたいと思います。 菅(大阪大学コミュニケーションデザイン・センター)  まだ、よくまとまっていないうえ、高梨さんのお話とも少し重なるところもあるかと思いますが、2点ほど感じたことを述べさせていただきます。  一つは、ボランティアの活動体制と、法制度や行政の計画との関係についてです。阪神・淡路大震災以降、災害対策基本法などの法律や、行政の地域防災計画の中に「ボランティア」が位置づけられるようになった関係で、災害時に一般のボランティアを受入れる窓口となる部署を予め決めていたり、専門的な技能を持った人をボランティアとして登録する制度を持っている自治体が増えてきています。ただそれが、実際に災害が起こった際、紙に書かれた計画がうまく動かないというようなことも、起きてきているように思います。  一方で、このような防災の法律や計画の流れとは別に、東海・東南海・南海地震の被災が想定されている自治体の中には、アクション・プログラムという形で、防災計画とは別に、それぞれの自治体が取り組むべき事業を、目標ごとに包括的・体系的に示した施策を作成しているところも出始めています。  私が以前所属していた人と防災未来センターでは、防災研究の成果を、こうした自治体のアクション・プログラムづくりに活かしていくための事業を行っていますが、この事業に参加されている自治体の方から、よく大規模災害の場合、ボランティアがどんな体制で動くのか?という質問を受けます。実際、多くの自治体方が、災害ボランティアに関心を持っておられますので、これからプログラムを作ろうとしている自治体さんと情報交換しながら、ボランティアも一緒になって、活動体制に関する検討を進めていける可能性はあるように思います。  もう一つは、「災害ボランティア」のとらえ方についてです。やはり「災害ボランティア」というと、今でも都市型の大規模災害だった阪神・淡路大震災のイメージが強いように思います。当時「災害ボランティア」と呼ばれた人達は、「被災地で必要とされることを、平常時の組織の役割・機能を超えて行った人」だったように思います。ですから企業に勤めていた人も、行政職員でも、通常の役割を超えて何かしたら「(災害)ボランティア」と呼ばれたりした。日本では「ボランティア」というと「無償」のイメージが強いですが、「災害ボランティア」に関しては、こうした通常の「ボランティア」という認識枠組みをとりはらって考えた方が、柔軟に考えられるように思います。  例えば、活動内容や機能に焦点をあてて見ていったらどうでしょう。これは専門ボランティアのコーディネートに関する議論にもつながっていくように思います。例えば、現在、災害ボランティアの全国ネットワークがありますが、水害の場合、過去の水害被災地でノウハウや資機材を持っている関係者が、同じような他の被災経験地域や、災害NPOなどの関係者と連絡を取り合って、自分達の資機材を被災地に送ったり、人を派遣してノウハウを提供したりしています。災害の規模はそれほど大きくなくても、このように災害種別ごとに専門性を持った地域・組織が連携を図りながら遠隔地の被災地を支援していく活動も、広域連携と言えると思います。  「人」に関しても、例えば、コーディネーターの派遣など、全国ネットワークの中で連携が図られているようですし、専門職では、学会をベースにした派遣の仕組みを創っているところもあります。例えば臨床心理学会だったでしょうか、精神衛生関係の専門家を派遣する体制をもっていたり、看護学会などでも人を派遣する体制を検討している等々のことを聞いています。災害時に必要とされる機能・テーマごとに、連携が図られ、支援の仕組みが創られつつあるように思います。  あえて「災害ボランティアセンター」という枠を外して考えてみたのですが、私も先ほど矢野さんがおっしゃっていたことに同感で、つまり「何が現場で必要か」ということから考えていかなくてはならない。広域連携を考えていく際は、こうした発想も必要ではないかと思います。それが「分散処理と調整」にもつながっていくのではないかと思います。 干川(大妻女子大学教授)  3点ばかり。私はちょっと情報といった形のほうが専門ですので、その観点からの話なのですが、やはり阪神・淡路大震災から10年たっているので、それぞれの団体やボランティアのネットワーク、いろいろ活動実績を積んできたと思うのです。そして、また災害のたびにそれぞれ報告書を作っているわけですから、これをいったん全部ネット上に載せてしまおうかと。それでもし災害が起こったら、結局この団体はこういうところは得意だしとか、そういうもので見る。だから現場に行って、それで応援に行った人がそれをデータベース的に使って、それでこういった形でこういうところと連携しましょうという、これだったら、やはり現場の災害被災地の中でそういう団体とかボランティアセンターとか、関係者の間での信頼関係作りというところでもすごく重要なことではあるのかなというところで、ちょっとそういったことを、新たにというか、データベースという形で、そういったものはやはり作っていく必要があるのではないかと。そういったところで、デジタル技術を使えるのではないかと思っています。  それとあと情報ということでいうと、やはりネット上で見ていると、あるいはマスメディアもそうなのですが、とにかく現地のボランティアセンターが情報発信しないと、外部の人たちは動きが全く分からないわけです。例えば静岡のケースでもあったと思いますが、ボランティアセンターのところが何か情報をなかなか出さなかった。結局出さずじまいで終わってしまったので、そうなってしまうと、外から助けにきてくれませんから。その辺のところはやはり不確定な情報であっても、やはりとにかくすぐに出すと。それが、だからボランティアセンターが自立的に活動するというところもすごく大きな要素だと思うのです。その情報発信をちゃんとやるというような、そんなことだと思います。  あともう一つ、今度は行政との連携というのはあまり出てこなかったのですが、そこはなかなか難しいところだと思うのですけれども、行政のほうで、例えば福岡だったら、***ボランティアを知らないとか、基本的な情報が共有されていないというのはやはり問題ですので、その辺のところはやはり行政とボランティアの間でその辺の共有というか、それから、今日はボランティア間の県域を越えた連携ということだったのですが、やはり自治体、特に自治体との情報共有をどうするかというのは大きいかと思っています。ちょっと思いつくだけです。 中川(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)  ありがとうございました。すみません。司会の不手際で少し時間が押してしまいましたし、皆さん、またおっしゃりたいことはいっぱいあったと思います。ちょっとかってにこちらから言ってしまってどうかなと思うのですが、小野田さん、あとの報告のときに、2月25日に、別に内閣府からお金は出ませんよね。それは無理だということは分かっているのですが、皆さん、ここの検討会のメンバーなどがおじゃましてよろしいのですか。それは私のほうから・・・。 小野田(NPO法人静岡ボランティア協会)  そうですね、今のところ県外の団体、25団体来ているのですが、旅費の実費だけは出したいということで、それ以外は全部手弁当で来ていただくと。  まだこのあと増やすかどうかは、いろいろ今日の議論を踏まえて。ただ、来ていただくことは一向にかまいません。 中川(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)  ひょっとしたら、うまいこといけば、みんな小野田さんに、後で肩をもんだりすると、増やせるかもしれないと言ってよろしいでしょうか(笑)。ただ、ボランティアのことですから、自分たちが勉強するのは自分たちで行くということも含めて、ちょっと広域のここの分科会の成果物が欲しいですけれども、皆さんにご案内して、せっかくそういうことがあるのであれば、みんなで学びに行きましょうというのは紹介させていただこうと思っています。  それから、幾つかいろいろな話をさせていただいたと思いますが、災害ボランティアセンターだけにこだわらない発想というのは、最後のお話にも出てきていましたが、それはニーズに基づいたという話で、どうしても我々として何も考えず形で作っていってしまいますが、そうではなくて見ていったほうがいいのではないかという話は、五辻さんの話も含めて、うまく想定はしておいてきちんとやるとしても、そういう話は同じところにつながってきているのではないかと思いますので、その辺は報告したいと思っています。  いちばん、四半世紀前からやっている静岡県でもようやくこの時点であるということも、ある種みんなで共有しておかなければいけないことかと思っていますので。また、もし行ければ、訓練を一緒に見にいったりして、その情報も検討会の皆さんで共有できればと思っていますし、多分具体的に考えていくことは、先ほどの丸谷さんのお話ではないですけれども、その場で考えるのは無理にしても、具体的に考えることは大事だと思いますので、そういうことは引き続きやはりこういう場で検討していく必要があるだろうと私は思っていますが、そういうことも私の感想として申し上げてよろしいでしょうか。  では、ぜひ来年以降もこの課題について取り上げていっていただきたいということをここで確認したということにさせていただきたいと思います。あと何か私が言うべきこと、ぜひこれだけは言っておいてほしいということがございますでしょうか。情報のことも言いますが。 丸谷(京都大学経済研究所教授)  1点だけ。この資料を作り直したほうがいいと思うのです。これをここの会の資料として登録してしまうのは危険なので、もうちょっときちっとしたものを作っていくというようなことも、一つ検討の対象にしていきたいと思っているのです。特に民間の欄が全然入っていなかったりしますが、ボランティア以外の企業も含めてちゃんと考えなければいけない。 中川(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)  それは、我々のお約束としてけっこうありますよね。物事は言い出しっぺがやるというのは、たしかありますよね。ボランティアの鉄則。検討会メンバーでぜひ、皆さんもすごいものを見たいと思います。ぜひ経済学的な視点からもよく分析していただいて、いかがでしょうか、丸谷さん。こういうものをぜひひな型を作って。 丸谷(京都大学経済研究所教授)  もともとこのあとに提案が出るようです。吉村さんや鍵屋さんの事前の意見に出ている、この検討会だけで勉強していると進まないので、もうちょっと何か枠外のところでやりましょうというような話があるようです。そのような枠外の中で、私の貢献が必要ならば、私の貢献としてできそうなところがあれば、もちろんぜひ。 中川(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)  よろしくお願いします。それはぜひお願いしたいと思います。ご期待してよろしいでしょうか。では、すみません、時間が過ぎてしまいました。 渡部(内閣府防災担当参事官補佐)  40分から全体会ですので、プレートを持って、またお戻りください。どうもありがとうございました。 以上。