防災ボランティア活動検討会(第1回) 平成17年3月7日(月)13:30〜16:30 都市センターホテル5階オリオン 全体会 (15:50〜16:30) (以下、敬称略) 池上(市民防災研究所理事/東京YWCA副会長)  それでは、定刻を少し過ぎましたが、これから全体会午後の部を開催いたします。まず、各分科会から10分程度報告をしていただいたあとに、会場の皆さんを交えて議論をしていきたいと思います。それでは、分科会Aでの議論について、司会の干川さん、よろしくお願いします。 干川(大妻女子大学助教授)  まず、うちの分科会はボランティアセンターの立ち上げ、運営の資金の獲得を中心に論じたのですが、最初のところから、ボランティアセンターとはどういうものなのか、その定義からやっていくという話になりました。  これは行政主体、社協主体のものなのか、あるいは民間ベースのものなのかといったこととか、あるいはボランティアセンターの活動というのも、発災時だけではない。もっと長期的には復興のところも当然かかわるし、平常時からの活動も当然あります。また、被災地の中で立ち上がって何かをやるだけがボランティアセンターではなくて、後方支援という形で活動しているボランティアセンターもある。いわゆる中間支援組織というものですが、そういったものを包括して、ボランティアセンターというものの定義とまではいきませんが、考える必要があるだろうということです。  今回、内閣府が調査をされたアンケートでいうと、ちょっと狭いというか、実際の被災地の中で、社会福祉協議会あるいは行政が設置したようなボランティアセンターが調査対象になっているから、調査データというのは、データとすればその範囲が狭いのではないかということでした。  それから、基金というか、資金ですが、これもどこがどういった形で資金を出すのかということですが、これは例えば福井県の場合などは、97年のナホトカ号の沈没による重油災害がありましたので、そこでの全国からの見舞金が基金になって、そこから去年の水害のときに資金が出たというような話もあります。こういう場合は行政というか、その辺の基金が主ということになります。  それ以外のケースであれば、民間の団体から出てくる資金等もありますし、団体というよりも一般の個人から広く、例えばインターネットなどを通じて募るような資金もあるということで、資金の出所も多様であるだろう。また、中央共同募金会とか、あるいは全国社会福祉協議会とか、各種財団、そういったところから出てくる資金もあるということで、やはり活動資金といってもどこから出てくるかということも広くとらえる必要があるでしょう。  今回の会は内閣府主体ということになるわけですが、国あるいは自治体、行政というのはどういった形でボランティアセンターの活動資金の面での支援をやっていくべきなのか、その在り方ということになりました。やはりこれは最低限、ボランティアセンターを立ち上げるための金額、例えば100万円といった金額も出てきましたが、多分これはいろいろな支援物資等を除いたお金ですから、実際にはもっとかかると思います。  そういった実際に市町村レベル、あるいは県レベルでボランティアセンターを立ち上げた場合、どうやって具体的にお金がかかるのか。これもちゃんと詳細な調査に基づいたうえで、その金額をはじきだして、国とすれば最低限、そこで支援するのであれば支援していく、いわゆるナショナルミニマム的なのでやっていく必要があるだろうといった意見が一つの共通見解として出されてきたわけです。  そんなことで1時間半というか、実際は1時間ちょっとくらいの議論でしたので、あまりまとまらなかったのですが、個別の災害、個別の地域でのボランティアセンターの運営、その中での資金の獲得の実例事例とその裏話、そんなことをお聞きして、一応意見交換をして終わったという形でした。  私の話が抜け落ちているところも幾つかあると思いますので、永易さんにサポートいただきたいのですが。 永易(新居浜市社会福祉協議会)  先ほど干川先生から言っていただいたのと、災害ボランティアセンターの範囲ですが、救援と復興という形で、後々の多様化する支援に対してどの範囲まで対応するかということと、情報発信のしかた等が出たと思います。以上です。 干川  ありがとうございます。以上です。 池上(市民防災研究所理事/東京YWCA副会長)  ありがとうございました。それでは続きまして、分科会Bですが、時事通信の中川さんと、富士常葉大学の小村さんのお二人に報告をしていただきます。私はこの辺が要領がよくて、人材の活用を早速させていただいたということです。 小村(富士常葉大学講師)  小村です。こういうような議論がコメントの中でありました。だれかにSOSを出せばだれかが答えてくれると、そういうふうな形で中川と小村が答えざるをえなかったような状況になっているかもしれません。  冒頭、室崎先生から非常に印象的な、長いコメントをいただきました。阪神淡路大震災以降、国民の命を守るためのマルチセクターのネットワークというものができている。すなわち、対立図式では物事は進まない。その際に重要になるのが、自治会とか婦人会のようなコミュニティという問題がある。事業所という問題がある。さらに専門家集団があり、メディアなどがある。これらをどういう形で、どのセクターがまとめていくのかが重要なのだけれども、その中でやはりNGO、ボランティアのセクターの存在、そしてそのコーディネート機能は欠かせない。心をつなぐ力を持った存在としてという話が出てきました。  先生の中で印象的なのは、我慢するところは我慢し、一歩引くときは一歩引き、でも、全体をまとめていく、そういう役割が求められているのがボランティアのセクターなのだろうという話がありました。  ご自身はまた、なぜこのBに、つまり安全管理セクターのセクションにいらっしゃったかというと、やはりボランティア自身がけがをしたり、トラブルに巻き込まれたり、あるいは心の傷を負って帰るようでは困る。そんな大問題ではないけれども、中小の問題もすでに起きている。これから先、このボランティアのセクターが頑張っていくためには、安全の問題はやはり不可欠であろう。そういうようなスタンスで、我々の議論はスタートしました。  以下、私にとって非常に主観的に印象に残ったことをコメントさせていただけるならば、医師でもあり、また老健の施設長でもあり、私にとってはナホトカ号海難・流出油災害以来の友でもある洙田先生から、安全衛生上のリスクにどのように対応するかという話ではあるけれども、とにかく文章にせよ。また、現場で解決できないような問題が出たら、声を出せ。そうしたら、だれかが答えてくれるであろう。そういうコメントをいただきました。  高知の「のび太」さんと自称されていますが、山崎さんからはこういう意見がありました。社会福祉協議会が多くの場合、ボランティセンターが受け入れになるけれども、その社会福祉協議会自身が拒絶反応を起こす場合がある。やはり同じ社会福祉協議会側の人間が入ったりすると、そこのところがスムーズにいくケースもある。また、協働という言葉がはやっているけれども、いたずらにこの言葉に惑わされる必要はないだろう。設置は協働であってもいいかもしれないけれども、活動は別々にしたほうが特性を生かすことができるかもしれないという話がありました。  安全管理については、やはり日本人は無理をすることが好きなのか、無理をさせてしまうのか。山崎さんの話でしたか。「地上の星」ではなくて、「ヘッドライト・テールライト」のモードで活動する必要があるのではないかということをおっしゃって、なるほどなと思ったところです。  JFFWの秦さんからは、いろいろなコメントをいただきましたが、やはりこのITの時代、行政と市民、得意とする分野を出し合うことでメニューはある。しかし、まだ食べられないような状況にはなっていない。そこのところを何とか変えていかなければならないのではないかというお話がありました。  澤野さんからは、現場の活動でも、やはり一人のかたが亡くなっている。重体の者も多く出ている。この問題がちゃんと議論されないまま通り過ぎようとしている。これはやはり何とかしなくてはならない。ボランティアセンターの責任という問題をきちんと考える必要があるだろう。メディアの中でも、例えば今、中越は雪の中ですが、雪かきに行かないとボランティアではないという風潮があるようだが、これでいいのか。ふざけるな。すなわち、安全管理上は非常に危険な作業であるということを、きちんと考える必要があるのではないかと思っています。  岡野谷さん、安全管理とは言いませんでした。危険管理という言葉を使われました。そういった教育を事前に受けているかどうかで、対応力が随分変わっていくという話もありました。  板橋区の鍵屋さんからは、今は福祉事務所にお勤めだということもありまして、やはり援助者とは一体何なのだろうかということを常に考えているということをおっしゃっていました。行政とボランティアと、できれば目的や目標が統合しているほうが組織は強いという話もありました。最終的には被災者の自立助成ということなのかなという感じがありました。  宮城県社会福祉協議会の北川さんからは、やはり同じ社会福祉協議会の人間として、最後に残されるのは我々だというコメントがありました。恐らくこの中には住民という言葉も出てくるでしょう。  レスキューナウの市川さんは、ボランティアというのは基本的には民間活動である。仕組みづくりというのは、やはり民が民の中で作っていくべきではなかろうかという話、また、後方支援の必要性についてもご連絡をいただきました。  渡辺さんからは、東海豪雨災害のときのご自身の経験から、やはりチームとして活動することのメリットという話も伺っています。  消防庁の緒方さんは、現場の話を聞いて、現場に行かないと分からないなという話になったと述懐もされていますが、やはり地元の人が行う活動とボランティアが行うべき活動、ここのところにはやはり区分けが必要である。危険が伴うもの、危険性が疑われるものについては、例えばしないとか、手を出さないというルールづくりみたいな話があるかと思いました。  菅さんからは、それの延長上にある感じもしますが、ボランティアセンターの業務の範囲、責任という問題をきちんと考えることが必要ではないか。日々のミーティングで、この範囲まではやっていい、ここから先はやめようということを決めていったという南郷町の事例のご紹介がありました。その際に、ご自身の弁としても、もう少し専門的な知識があったらいいのではないかというお話がありました。  以上、発言者の抜粋ですが、そういう議論が出たところです。中川さん、何かまとめていただけるとありがたいなというところです。 中川(時事通信社、特定非営利活動法人東京いのちのポータルサイト)  自分で言った分は言わないのですか。中川です。遠い対角線上で何を言っているかという感じですが、皆さんの発言については、大体小村さんから紹介していただいたとおりだと思います。  「あと、幾つか面白いな」「なるほどな」と思った発言で、高知は被災地救援について、復興支援とか復旧支援とか、そういうことについては協働しますが、ボランティアセンターについてはあえて行政とは別にするというやり方もあるということを分かっていてほしいと言われました。  多分その中でおっしゃっている一つの背景論的なこととして、コーディネーターの力量次第で、ボランティアセンターが動くときに、1+1が3になったり、場合によっては、いろいろなオールスターが来てやってしまうと、1+1がマイナスになることもあるという指摘もありました。その辺は私たちの分科会の範囲だけの話ではないかもしれませんが、全体の中で大事にしたい言葉だと思いました。  それから、安全管理については幾つかの話があったのですが、小村さんがちらっと紹介しましたが、これも山崎さんの話で申し訳ないのですが、彼がいつも「のび太」といわれていることはご存じのかたはご存じだと思います。できないことはできないと、ちゃんと言うことが大事だろう。多分それも安全管理のこういうことにもつながるのではないか。ボランティアの役回りということとも重なってくるかもしれませんし、一方で、被災者のかたが救援を求めるとか、行政のかたがボランティアに手伝ってもらうとか、そういうようなところも含めて、多分できないことはできないと言えるようにしておくというのが大事だろう。これもきっと今後、議論しなければいけないテーマが背景に随分あると思いました。  それから、小村さんがざっと話を紹介してくれたので、私と小村さんが最後にちょっとコメントしたことです。安全管理については、小村さんが紹介してくれましたが、労働安全衛生法という法律があって、ある意味で現場の労災を防ぐような仕組みがある。そういうような専門家も実は行政の中にいたり、地域の中にいたりするので、そういうかたたちをうまく巻き込むといいのではないかという話がありました。  それから、たまたま物資の話が我々の中で出たのですが、本来、避難所に数日間の段階のレベルのような緊急期で物を届けるというのは、行政に能力が足りないからボランティアが手伝うのはあるにせよ、当然、地域防災計画である程度想定しなければいけないことで、その辺をどこまでボランティアがやるのかという基本的なことを考えていくことが必要ではないかという指摘もありました。ごめんなさい、それは私が言いました。  同じ話で、救援物資が時には地域の経済、商店街を疲弊させることがあるということも忘れてはいけないという指摘も小村さんからありました。 池上(市民防災研究所理事/東京YWCA副会長)  ありがとうございました。それでは、議事を始めたいと思います。できるだけ多くのかたたちからご意見をいただきたいと思いますので、一度のご発言を2分以内ということでお願いいたします。また、記録の都合上、発言なさるかたはお名前と所属をおっしゃってください。どなたからでもけっこうです。いかがでしょうか。はい、どうぞ。 上原(東京災害ボランティアネットワーク事務局長)  東京の上原です。安全管理という点では、実は今、三宅島の帰島支援というのが三宅島の中で行われています。多分、今日は42人が島の中にボランティアとして入っていますが、ご承知のように、残念ながらガスが少し出ています。  実は三宅島の支援センターは、すべてのボランティアに東京で研修を義務づけております。これは慶應大学と私のほうである種の契約を結んで、全員にガスに対するリスクマネジメントの研修を3時間ほどさせていただいています。そして、島の中でガスに対する対応を、もちろんこれはある種の避難も含めた作業マニュアルも作られています。最悪の場合は、車における数キロの移動というものもそのマニュアルの中に入れています。  これは、福井のナホトカの油を私も掘ったのですが、あのときにもう少しきちんとしたマニュアルがないとまずいなと私はひどく思っていたのです。もしかすると、油の問題やガスの問題、これからもまた地域的に災害と安全という問題がもう少し高いレベルで求められる災害に、私たちは今後直面するかもしれないと思っていまして、ボランティア事業におけるリスクマネジメントについては、私もそのうちにきちっとしたご報告をさしあげようと思っています。  恐らく延べでいくと5000人以上のかたが島の中で事業に参加しますので、これに対するガスとの折り合いについては、今年の秋か暮れくらいまでには、ご報告をさせていただこうかと思っています。ちょっと特異な災害現場という形になるかと思いますから、ご報告をさせていただきます。 池上(市民防災研究所理事/東京YWCA副会長)  ありがとうございました。私も実は上原さんからボランティア報告書をいつも届けていただいていますが、今おっしゃったような、必ず申請書を出したグループに関しては一緒に研修を受けてほしいと。多分、二つの分科会でも、ボランティア養成、人材育成というお話はいろいろな場面で出たような気がしますが、それに関して、こういうことを私のところではやっているという、今のようなお話とか、あるいはこんなことで困っているということがありましたら、どうぞ。 宮本(特定非営利活動法人島原ボランティア協議会) 島原ボランティア協議会、併せて全国災害救援ボランティアネットワークの代表を務めています宮本と申します。第1分科会で活動立ち上げ資金のことでお話があったわけですが、発言の機会、時間がなかった関係で、この場で島原の一例を申し上げさせて頂きます。  もともと災害が起きて、ネットワークができたのではなくて、地域づくりのネットワークがあったからこそ、即、対応できたというか、資金に対しては自らカンパしてやる。その中で、ボランティアが活字になってくると、自然にお金が集まってくる。 その活動資金を集める方法というものを、平時の時から、顔の見える関係を持っておくことがいかに大切かということです。  その後、復興の中で、災害ボランティアの必要性を行政や社会の中で訴える必要性があるのではないか。先ほども文字にするとか、声を出して発言をするということがありました。私もその様に思います。私どもも、災害基金の創設を国にお願いして陳情・請願活動を行いました。そこから生まれたものが災害復興基金制度です。  ボランティアはただ単に緊急時の活動だけでなく、その教訓をどうして生かすかというものが災害地から発信されなければならないと思います。私どもが頂いた義援金の額を返すということは到底できないと思われます。国のシステムとか、あるいは法の改正というものは、国民的な課題として、被災地から発信する必要があります。 それはボランティアの活動の声として挙げる必要があるということです。  その基金の活用の中で、ハードの面だけで使っていいのか。災害の教訓として得たものを後世に残すという意味合いで、災害ボランティアの支援、人材育成という形で基金を活用して基金をつくったらどうか。県民のボランティアによる県土づくりの取り組みを意識づけるために。復興基金は、被災地復興、振興の為のものであるとの意見もありましたが、災害ボランティアの必要性を理解して頂き、おかげさまで10億円の基金を作る事ができました。県を越えて活動する部分についてもその費用に使っていい。もし大災害のときには、その基金を取り崩してもいいとなっています。 それは災害ボランティアの教訓の中から生まれたものです。県の政策立案の中に、災害ボランティアとか、あるいは地域づくりのボランティアを育てるという意味合いで、この基金の活用が災害ボランティアの支援、あるいは地域の防災・減災につながると思っています。  今日は防災ということですが、ボランティアの人びとが県土を作っているのだという意識づけをする。これは県にかかわらず、国のシステムがまだそこまで来ていません。今日の発言の中で、初動体制の資金をどうするかということもありましたが、国自体が、幾度となく起こった災害、アメリカの飛行機によるテロの危機、ああいうものとも、災害の危機管理は合い通じる点もあろうと思われます。  国民がそれをどういうレベルで自分のものにしていくか、そういうものに対して内閣府も、真剣に考えてほしい。今度の予算を見て若干の取り組みは感じられますが、阪神以降10年たっても、そういう育成の事業がまだまだ見えてきません。まだ聞き取り調査なのかと、その危機管理はこれでいいのかと不安や不満もありますけれども、こういう機会を設けていただいたことが出発かなと思っています。  今から制度とかシステムづくりをもっとやるべきではないかと思います。介護保険で1級、2級のヘルパーさんがあるように、災害ボランティアの認証制度をつくり、地域社会に貢献できる仕組みも今後考えられる対応の一つではないでしょうか。 災害ボランティアは国民的な課題として取り上げる必要があるのではと思っています。災害孤児等への援助、災害ボランティア活動の育成、支援を考えると、災害時に行われる募金も赤十字や共同募金会だけでなく、(提携が出来れば別ですが)新たに(おたがいさま)募金制度も考えていいのではないでしょうか? 池上(市民防災研究所理事/東京YWCA副会長)  ありがとうございました。基金のお話が出ました。それから、やはり行政との連携という話も随所で出ていると思いますが、宮本さんの場合、事前に、噴火の前からそういうネットワークを持っていらした。これは大変強いことですね。阪神大震災の教訓ということで、日常の延長ということもいわれましたが、それの一つの大きな柱かなと思っています。ほかにありますでしょうか。はい、どうぞ。 五辻(東京災害ボランティアネットワーク)  東京災害ボランティアネットワークの五辻です。次回の2回目のところでもう少し議論になるのかなと思いますが、私どものA分科会は基金の問題でしたが、県が県域の災害に対して一つの支援のシステムをぜひ持ってもらいたいということの中で、基金やボランティアの活動資金の問題も含めて議論がありました。  いわゆる社協、県ボラセン、市町村ボラセンの、統制といったらおかしいですがその外で、例えば具体的にいえば、98年の栃木・福島の集中豪雨のときに、福島のほうに入っていって、東災ボと福島の人たちと一緒になって大信村というところを支援した時は、いわば県のコントロール以外のところに調査をやったうえで自主的に入って行って、お手伝いさせてもらいました。03年の宮城県北部地震のときにも、県レベルでは社会福祉協会も県もNPOも入ったネットワークが存在しまして、も宮城県の生協も入っています。  そこはあまりふだんの顔の見える関係がなくて、五つくらいの町を全国からいろいろなコーディネーターが入って、そのうえで立ち上げて、中間的な現地の調整センターがなかったというのが、私たちの少なくとも反省材料だと思っています。  そういう意味で、市町村のいわゆる社協、行政と一緒に作ったボラセン以外のものについても、割と柔軟な、全体をまとめてトータルなコーディネートをするプラットフォームのような県域の仕組みというものを検討していくべきではないかと思います。  もう1点、今度は国が役割を果たしてもらいたいというのは、東海地震が想定されていった場合に、行政の広域連携ということについては、県域を越えた激甚災害に対してはあまりないのです。ボランティアも、もちろん我々も含めて、広域連携というのは東海地震想定ではやっていないわけです。  そういう激甚の大規模災害がすでに想定されているわけですから、これに対して各県のボランティアが、県外、県内、それから各地域がどのように連携して、どういう役割分担して、そのときにどのくらいの数とお金がかかるのか、こういうことも含めて事前にシミュレーションの合同訓練、あるいは合同のプログラムづくりみたいなものをやって、顔の見える関係づくりをやっておく必要があるのではないか。このことに対して国のほうは資金を、ちょうどジャパンプラットフォームの国内災害版みたいな災害支援のプラットフォームを、今日の会議の延長にもなると思いますが、考えていただければと思います。 池上(市民防災研究所理事/東京YWCA副会長)  ありがとうございました。それではここで、阪神淡路震災以降、ボランティア活動を自らなさって、ボランティアの研究をしていらっしゃいます渥美先生に、今まで何人かのかたにお話しいただきましたが、ちょっとお願いします。 渥美(大阪大学大学院人間科学研究科助教授)  非常にタイミングが悪い話かもしれませんし、抽象的な話かもしれませんが、あえて一言申し上げておきたいと思うことがあります。これはシナリオ外なので申し訳ありません。  国のほうに入っていただいて、こうやって制度ができてくる、あるいは作ろうとしていくというのは大変大事なことだと思いますし、こういう場が持たれること自体、震災から思えばものすごく大きなことが起こっているという気がします。  ただ、そこで我々が決して忘れてはならないのは、ここに被災者の声があるかどうか。住民の声があるかどうか。それから、ボランティアの話をしていますが、ボランティアのそれぞれ苦しんでいるかたがたの声が入ってくるかどうか。システムを作るというときに、それを言うは易しで、そんなことはなかなか無理だと思いますが、しかし、そういう声が常に入ってきて、変えていけるようなシステムでないと、何かシステムを作ってこれでボランティアはうまくいくということになったら、それはまたちょっと大きな勘違いのような気がしています。  というのは、ボランティアはどうも何か枠組みをあてられると、そこからちょっと違うことをやってみようかということにこそ魅力を感じているところがありまして、これできれいに全部まとめるというのはちょっと違うような気がします。  お金のところでも、最低限の保証のところでいいのではないかと申し上げたのですが、寄付してくださるかたがたの思いというのも、たった1000円かもしれないけれども、その中には深い思いがいろいろとおありです。それが100万になれば意味があるお金で、1000円では意味がないということでは決してないわけです。僕はそう思いますので、そういうところを何とかくみ取れるシステムにして、いちばん動いてくださるボランティア、それから被災されて悲しんでおられるかもしれない被災者のかたがたをしらけさせるようなシステムでは困るという気がします。  そういうことをどのようにしていけばいいのか、何も分からずに言っていますので、ここをどうするかを考えていける場でもあったらいいなと思いました。 池上(市民防災研究所理事/東京YWCA副会長)  ありがとうございました。突然振って、大変貴重な被災者の声が上がっているかどうか。ボランティアで心を病んでいる、いまだにダメージを負っているかたたちがいらっしゃる。それをケアすると、傾聴ボランティアというものがありますが、そういうことも必要ではないか。まずは聴いてもらうこと、そんなことも出ていましたので、すごく話がよく分かりました。  申し訳ございません。今、あの時計で4時25分でしょうか。約束のお時間がきてしまいましたが、まだ話し足りないというかた、はい、どうぞ。 村野(大分県社会福祉協議会 大分県ボランティア・市民活動センター)  大分県社会福祉協議会の村野です。レベルが低いのかもしれませんが、ボランティアセンターを立ち上げるうんぬんを決めるときというのが、やはり自治体であったり、社会福祉協議会であったり、ここが決め手になってボランティアセンターを立ち上げたとか、その辺のところを、やはり被災地でボランティアセンターを経験したところがある程度示していただかないと、初めて災害を受けたところというのは、果たしてボランティアセンターを立ち上げるべきなのかと。  大分でもあったのです。23号台風で、ここには載っていませんが、200戸以上が床上浸水をしました。私としては立ち上げるべきだと提言をさしあげたのですが、自治体としては動かなかったのです。それが本当に被害を被った人たちにとって、どこまで支援ができているのかというのが私たちも見えなかったのですが、そういう立ち上げるか立ち上げないかというところの決め手になったようなところを、やはり小さな自治体にいけばいくほど、踏ん切りをつけるというのはものすごく勇気がいることだと思います。  ですから、すごく低レベルかもしれませんが、本当にそこに行くときには、そういうものをぜひ被災を受けたところで、自分たちが立ち上げるのはこういうことですとか、そういうようなものをまとめて、今まで被害を被ったことがないようなところにも、きちっと提案をしていけるような何かができればいいかなと私としては思っています。特に、小さいところというのは、なかなか立ち上げようという思いが難しいので、その辺のところを何か提案していってくれるといいかなと思います。  それから、Aの分科会の中で高梨先生がおっしゃったように、大分県では、土木事務所の資機材を災害ボランティアが活動するときには提供しますということを、部長名で各土木事務所に通達を出しています。私どもは、物があるところはぜひ使いたいということで、一応そういうこともしております。以上です。 池上(市民防災研究所理事/東京YWCA副会長)  ありがとうございました。お約束の時間がきてしまったので、本当に残念ですが、コメントというよりも、先週、千葉で、阪神淡路大震災で被災なさったかたたち3名が来て、シンポジウムをしたのです。  そのときに、3人のかたたちに会場から質問がありました。「阪神のかたたちは、あの地震があったときにどういう震災対策をしていたのですか」と聞かれて、3人とも「恥ずかしいですが、何もやっていませんでした」と言われました。それがとても印象に残ったことと、やはりこちらまで、語り部キャラバン隊ということで出てきてくださったということは、やはり家族が無事で、ご自分ももちろん無事で、ご親戚にも死者が出なかったというかたたちだったからです。  先ほど渥美先生が言われた、被災者の声を聞いているかどうか、これはとても重いというか、本当にその辺が欠けていたな、ボランティアだけの議論ではいけないなという気がしています。被災者のかたたちも、つらい思いをしていらっしゃるかたたちは、なかなか立ち上がれないのです。10年たっても、まだボランティア活動をしているという3人のかたたちでした。ですから、その辺も重く受け止めたいと思います。  被災なさったかたたちが10年間、ボランティアをやって、大滝さんという方が「あなたの耐大災害度チェック」を作られたので、それをぜひ今後ご提示したいと思います。  その中で一つ印象に残ったのが、「深夜にあなたの家族に緊急事態が発生した時、たたき起こして助けてもらえる隣近所は?」という質問がありました。これがいるかいかないか。私たちはボランティア、ボランティアと言っていますが、地域でそういう相手がいるかどうか。そういう相手もいないのに、外に行ってボランティアするどころではないと私は思います。まず、自分の地域を見直して、それからだと言われているような気がしてならなかったのですが、本当にそうだなと思います。  将来的には被災した方たちも交えて、災害ボランティアの動きといいますか、資金のこともそうですし、立ち上げのこともそうですが、本当に私たちのボランティア活動が役に立っているのか、こういう形でいいのかということを、やはり議論していかなければいけないのかなという気がしています。  少し長くなりましたが、これで私の司会を終わらせていただきます。事務局のほうにお返ししたいと思います。 丸谷(政策統括官付企画官)  どうも皆さん、3時間にわたり本当にありがとうございました。私どもの上司が国会の関係で全部いなくなりましたので、内閣府を代表してお礼を申し上げます。  今日、お話を伺っただけでは、この場の趣旨が100%実現したわけではありませんので、28日までに今日のご発言について、政府として何ができるだろうかということについて、検討してまとめてまいりたいと思います。  ご承知のとおり、夢を語る会ではなくなってきましたので、具体的に何ができるかというと、お金の面で来年度、国費が幾ら使えるのかといった話をしなければなりません。当然、予算の面では来年度予算要求はすでに終わっていて、執行するという話になっていますので、そういった中で何ができるのかというのは、あまりバラ色のお話ができるわけではないということは、あらかじめ申し上げておかないといけないと思っています。  ただ、アイデアをたくさんいただいていると思います。私どもとしては、今日、提出した資料は、ボランティアセンターだけで不十分だったということもありましたでしょうけれども、先ほどボランティアセンターを立ち上げるかどうかというときの資料としては、なぜ立ち上げたのかという回答に、ちょっと役に立てないかなということもあるかと思います。  追加的にヒアリングみたいなものは行政としてもできますし、まず情報共有とかノウハウを提供し、またPRしていくということについては、行政は特段事業費とか、あるいは基金の設立資金みたいなものがなくてもできる範囲はあるかと思います。  私どもも、現場でボランティア活動をやっているわけではありませんので、現場のことをよく分からないことがあるので、いろいろお聞きしますが、今度、行政ができる話というのは、実は行政の目からでないと、なかなかできそうなところとできそうもないところが実際にあります。そういったような選択肢をある程度こちらがお示ししたうえで、またご意見を伺っていく、つまり、出せなかった選択肢はしばらくは無理だろうということが出てくると思います。それは次回には少しお示しして、何らかの具体的な進歩というものも考えてまいりたいと思います。  とりあえず今日のところは、私どもはあまり発言をせずに時間が終わってしまったところがありますが、そういうことをお約束して、次回、28日にまた議論を継続することをお願いしてまいりたいと思います。本日はどうもありがとうございました。  それから、今度は事務的なお話ですが、今日ご発言いただけなかった部分と、あるいは足りなかった部分、事務局の資料の不都合なところ、あるいはもっとこういうことをやってほしいという意見については、アンケート用紙もありますが、メールで事務局に送っていただければと考えております。  また、資料につきましては、冒頭ご質問がありましたとおり、なるべく早くホームページ上に掲載しますし、議事録のほうもご協力いただきまして、公開してまいりたいと思っております。今回、お招きさせていただけなかったボランティアのかたのご意見も広く求めさせていただくようにしております。事務局としては以上です。  次回、28日につきましては、場所が違うところの予定になっています。そのご案内については、皆様がたにご連絡をしますが、3月28日月曜日の午後、ほぼ同じ時間帯ということですので、大変お忙しいこととは存じますが、もう1回このような場でご議論していただければと思っています。  最後に、司会進行を務めていただきました池上理事、干川先生、まとめにご協力いただきました有識者のかたがた、ボランティアのかたがた含めまして、お礼を述べさせていただきまして、この会の終了とさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。