防災ボランティア関係情報

防災とボランティアのつどい(午前の部)

発言録を公開しました

各分科会からの報告と意見交換

分科会A/丸谷氏(京都大学経済研究所教授)

・分科会Aでは午前中の会議の延長として、新居浜、宮崎、美川町の3地区でご発言を頂いたところからスタートした。
・宮崎ではフリーマーケットについていろいろ面白いノウハウ、1回目、2回目、3回目に余ったもの対応策を教えていただきました。
・美川町は、ご発言の中でレンジャーさんたちの構成メンバーの中で女性がかなり中心を占めており、女性の視点からの活動もだいぶあった
・多くのかたから、外部のご支援もあったのだけれども、寄り添いながら活動する人は歓迎したが、自分の主張だけするような人には遠慮していただいた事例の報告があった。
・支援に入る側をとってみると、被災した自治体に今すぐボランティアセンターを開設しないと大変なことになりますよと強く言っても、相手の立場によっては対処ができないケースもある。
・コメンテーターより「帰れ」といってしまうことでその後の対応ができなくなる。しかし実際には悩まれているというジレンマの状況があるとのコメントがあった
・除雪のボランティアの安全管理が難しいが、各地域からの発表では、屋根に上がらないようなボランティア活動にする対策がある。例えばベテランの学生には安全管理と地域コミュニケーションに専任して、作業はやらせないようなやり方をとっている。
・お茶飲みのサロンを開いている大学生のボランティア団体から被災者が支援や物資をもらうのが当たり前になっているいつまでも被災者感覚が抜けないところが心配になって悩んでいるという報告があった。難しい問題ではあるが、現場でとにかく考えていくのが望ましいとの発言があった。
・ボランティア活動をするということが地元の町会、自治会活動と遊離してしまっていることがある。そのため、自治会の旅行に参加することや、ふだんからのボランティア活動から関わること、また、青年会議所に入るなどの対策についても意見が出た。
・地域の今までの自治会、自主防災会みたいなところとボランティア活動の連携にはいくつかの課題があるため、その対策を考えていく必要がある。
・普段からのボランティア活動の経験、地域で活動する感覚があれば、災害時の対応も考えられるのではないか。
・地域の中の人と人をつなぐとか、地域の外と中の人をつなぐということで、さまざまな仕掛けというのが必要である。

分科会B/中川氏(NPO法人東京いのちのポータルサイト理事)

・分科会Bはテーマが「若者と防災ボランティア」である。
・若者3人と、ちょっと若くない人2、3人のグループで議論した。
・それぞれ何がやりたいかなどの話をした後、若者たちに「私たちがこんなことをしていきたいので、皆さんの力を貸して」という型式で、宣言にまとめてもらった。
(Aグループ)
・私たちはこれからも防災の輪を広げていきたいと思います。
・なぜなら少しでも多くの人がいろいろな経験や知識を持ち寄って防災について考えることが大切だと思うからです。そのために、皆さんの素晴らしい人の輪を貸してください。
・その防災の輪を広げるうえでは、ここにいらしゃっている皆さんそれぞれ素晴らしい人脈、人の輪を持っていらっしゃると思います。上に座られているかたから後ろで聞いているかたまで地域コミュニティ、学会、それぞれ皆さんご自身のネットワークがいろいろあると思いますので、その人の輪を僕たちのような若い人間にぜひ譲っていただいて、いろいろな場で紹介をしていただきたいと。また、僕たちのような若い人間がこういう場に来ますと、皆さん、スーツでいらっしゃっていて、僕はどうしたらいいのだろうというようなことになりかねませんので、懇親会があるようなイベントなどでぽつんと立っている若者がいたらぜひ声をかけていただきたいと切実に思っています。
(Bグループ)
・私たちは人のつながりを作っていきます。それは地域で助け合うためです。そのためにぜひ皆さん、今日から隣の人の名前をちゃんと覚えてください。
・私たちは防災教育をしていきます。それは一人一人の防災意識を高めたいからです。そのために皆さんの専門知識を貸してください。
・私たちは若者でないとできないことをしていきます。それは無邪気な笑顔があるからです。そのために私たちに何でも仕事を任せてください。
(Cグループ)
・私たちは学校教育に防災、命を取り入れる活動をしていきます。それは幼いころから実体験をすることが大切だからです。そのために皆さんの国家を動かす国民の力を貸してください。
・私たちは自分のできることをしていきます。それは長続きの秘訣だからです。そのために皆さんのネットワークの力を貸してください。
・私たちは震災を伝える親になります。それは震災を風化させないためです。そのために皆さんの経験の力を貸してください。
(Dグループ)
・私たちは災害で傷ついた子供たちと野球がしたいです。
・私たちはいろいろな人と出会いたいと思います。
・私たちは災害によって亡くなる人を一人でも減らしたいと思っています。
・なぜなら、スポーツを通じてその子供たちを励ましたいからです。
・なぜなら、いろいろな人と出会うことによって、これまで新しい一歩がいろいろ踏み出せたからです。
・なぜなら、助かった一人が世界でたった一人だけだからです。そして、その三つすべてをかなえるのがだれかを思う皆さんのその気持ちを私たちに貸していただきたいと思います。
(Eグループ)
・私たちはボランティア活動を伝えていきます。それは子供たちのボランティア活動につながるからです。そのために皆さんの知識と経験を私たちに貸してください。
・私たちは同世代に楽しい防災知識を向上させていきます。それは、これからの日本を支えていくからです。そのためには皆さんの多大なるお力をお貸しください。
・私たちは今までの活動を通してたくさんの人と会うことができました。そして、私たちはこれからもたくさんの人に会いに行きます。なぜならば地震によって被害を受けた人、復興に取り組む人、防災に意識している人、そして、すべての人に会ってつながりを持つことが将来の減災につながると信じているからです。そのために皆さんも私たちに会いに来てください。
(Fグループ)
・私たちは一生懸命生きています。それは一日一日を大事にしたいからです。
・そのために皆さんお互い助け合ってください。
(大人グループのまとめ)
・私たちは若者に期待しています。自分の意思で、自分にできることを、自分らしく、続けていってください。分科会B大人一同。

分科会C/馬場氏(兵庫県社会福祉協議会 地域福祉部長)

・参加者は32名で、行政、社協、NPO、個人、様々な方が参加し、自己紹介のあと、グループでディスカッションを行った。
・まず個人ワークでは、それぞれ地域に対する思い、課題、認識の面について考えていただき、さらに横浜市鶴見区社会福祉協議会より要援護者対策の取り組み紹介をいただいた。具体的には自治会、民生委員、当事者団体、障害者団体が一緒になって、災害のときに助け合う仕組みをつくっている。また、NPOからの地域での取り組み紹介があった。
・「どんな地域が災害のときにも強い地域なのか」「災害にも強い地域づくりのためにふだんからどんなことを取り組むか」の2点についてグループワークを行った。
・代表的な「災害のときにも強い地域」は次のとおり。「顔の見える地域が強い地域」「防災訓練等を備えている地域」「相互扶助の機能が残っており、助け合う地域」「関係機関や専門機関と連携する地域」「さまざまな地域の中の資源を生かす地域」「自分たちのまちのことを知っている地域」「リーダーやキーパーソンのいる地域」「学んでいる地域」「交流し合えている地域」「情報の伝達力が早い地域」
・「災害にも強い地域づくりのためにふだんからどんな取り組みが必要か」については、「自分たちでできることは何なのか。」「近隣自治会にできることは何なのか。」「社協やNPO等、団体にできることは何か。」「行政にできることは何なのか」という四つの枠組みを示して話し合った。
・「自分たちでできること」についての代表的な意見は次のとおり。「地域を知ることから始める」「地域の中でも災害に対して備蓄をしていく」「コミュニケーションをふだんから取ること」「あいさつができる地域は非常に強い地域」「自分のことは自分でやる(行政も含めだれかがやってくれるというのではなくて、意識の改革を図って、自分たちの身は自分たちで守る)」というようなコメントがあった。
・「近隣自治会にできること」については、防犯パトロール、防災訓練、防災マップづくり、地域リーダーの育成、ゴミ清掃等があった。
・「社協・団体にできること」については、「地域住民と地域全体のつなぎ役」「団体と個人とのつなぎ役」「ネットワークづくり」「研修・啓発・人材育成」などの意見が出た。
・「行政にできること」については、先頭でいろいろトップダウンで言ってくるのではなくて、地域住民の主体性、自分たちで決めたことをサポートしていただけるようなことがまず大事。また、要援護者の情報開示、災害時の情報伝達、素早い伝達、地域防災計画などのシステムづくりを図っていただきたいということがあった。
・いずれにしても、四つの枠組みをそれぞれ別々に考えるのではなくて、相互理解を進めていく、役割分担を進めていくことが非常に大事だろう。

分科会D/栗田氏(NPO法人レスキューストックヤード代表理事)

・まず、地域の広さを「町内会・小学校・中学校区レベル」「市町村」「複数の市町村」「都道府県」について議論したい範囲の希望と自己紹介をした。市町村レベルと都道府県の範囲を希望される方が多く、グループ分けもスムーズに行われ、グループワークに移った。
・グループワークでは、「普段防災ボランティア活動、あるいは災害時に防災ボランティア活動を実践していく中で、現在すでにつながっている団体、機関等」「今後つながっていくべきだと考える団体、機関」「それぞれつながっていく理由や願いなど」を緑の附せんについて書き出し、整理した。
・あるグループでは、「行政」「学校は教育委員会が大事」「住民組織」「消防」「社会福祉協議会」「ボランティア」「災害ボランティア」「メディア」「経済団体」「専門家」「郵便局」「農協」「障害者団体」などのところとつながっている、あるいはこれからつながっていきたい団体、組織が挙げられた。
・住民組織としっかりくっついている参加者と、住民組織とはまだ疎遠である参加者がおり、住民組織とつながりを深くするには、「住民組織はやはり会長さん次第のところがあるため、自治会長さんと仲良くすることが大事」というアドバイスをされていた。
・企業とつながるためには、社会貢献したいと思っているであろうJCのようなところとまずはつながり、応援していただくのはどうかといったヒントを話し合われていた。
・今後いろいろな機関や団体につながっていくためのキーワードを挙げながら各グループの発表を行った。代表的な内容は下記のとおり。
O「それぞれ機関や団体にキーパーソンがいるから、探してきっちりつながっていく、ネットワークづくりはキーパーソンを探すことが大事」
O「日ごろから顔の見える関係を作っていくということは大事であり、特に行政とは仲良くしていく」
O「災害ボランティアやNPOが主張するだけではなく、協調性を持ってネットワークづくりをしていく」
O「地元、地域が主体という意識づけをしっかりしていこう。地域イベントでいろいろやられる中で、「防災風味づけ」、地域や地元で行われるいろいろなイベントに少し防災の味付けをした訓練内容を加えてみるということで、やはり地元が主体なのだ、地域が主体、それが防災意識の向上にもつながっていく」
O「さまざまな団体・機関とつながるために、行政には仲人をしてほしい」
O「民間活力の有効利用、あるいは訓練を工夫してやっていく」
・議論して出てきたいろいろなキーワードを参考にしながら、互いの出会いを大事にして、機会を見つけてまた情報交換をしていこうということで話がまとまった。

分科会報告に関するコメント

池上氏(財団法人市民防災研究所理事)

・各分科会「防災とボランティアのつどい」のやり方をすごく熟知していらして、時間がないところでどれだけ自分の意見を的確に発表するかということに慣れており、非常によかった
・どの分科会を回っても共通していたのは「顔の見える関係をつくりたい」ということだった。
・地域での取り組みでは様々な課題はあるが、努力をしていけば必ずできる。またうまくいかない場合に自らを振り返ることや体験談が聞けるような関係づくりをするとよいだろう。
・分科会で「高齢者や障害者に優しい地域」というキーワードが出ており、これは言い換えると誰にも「住みやすい安全・安心なまち」であり、重要なキーポイントだと思う。
・防災ボランティアというのは、いろいろなところでできない部分の隙間を埋めていくという役割を担っており、日常の生活の中でも感じ取れるような感性を養っていく必要がある。

渥美氏(大阪大学大学院助教授)

・分科会Aでは、言葉で言ってしまえば内部と外部のバランスということが問題になっていた。それについて活発な議論があり、大変貴重な議論があった。
・分科会B、様々な取り組みをしている若者がいることを認識した。「震災を伝える親になりたい」というコメントには感動した。若者に対して、大人が過去に経験したことを伝える必要があるだろう。
・分科会Cでは災害時要援護者の話題なども含めて、非常に大事な基本的に人権の問題が議論されていた。
・分科会Dでは、地域の活動に「防災の風味づけをする」というキーワードがあり、これが連携、ネットワークづくりに役立つと思う。
・全体を通して、どこかで聞いた話という印象を持たれたのではないだろうか。これは同じことを議論の繰り返しではなく「らせん的に上がっていく」イメージで徐々に進んでいるのではないだろうか。
・防災ボランティアの議論が「らせん的に上がっていく」ためにも、客観的な視点で必要であろう。過去のことを否定するのではなく、経験を踏まえていくことが大事だろう。そして、それぞれ活動の原点をきちんと考える必要があると思う。
・分科会Aでも話題に出たが、ボランティアの引き際というのは単に現場にいる人に引き継げばよい問題ではない。現地の人が動いていけるように元気付けることが大事なのではないだろうか。中越復興市民会議の稲垣氏の言葉を借りれば、「現地に化学変化を起こして帰る」ということが望まれる。
・参加された方がもっているたくさんの知というか、知識、知恵、知人を活かし、分科会Bの発言にあった「思う人がいるから」「そっとそばにいるから」「思いが響くから」という現場に軸足を持って動けるのが望ましいのではないだろうか。

参加者からのコメント

●昨年の災害ではボランティアにすごくたくさんの人たちが集まりました。もちろん若い人からお年寄りまでたくさんのかたが参加して、県内では「ボランティア元年」といわれるほど人が集まりました。復旧・復興の流れの中で社会に戻っていけなくなった青年たちが出てきてしまいました。ボランティアとして居場所があり、感謝され、そのまま残ってしまった若者がいかに社会に戻っていくのか考える必要があると思います。
●地域という視点、小さな地域で考えると、地域内の老若男女・NPO・ボランティア・自治会などが機能的な動きになるためにできることを話せるようにしてほしい。
●高校で防災アンケート調査を実施したが、「防災のイメージを持っている」人は非常に少ない。災害があったとしてもそれがきちんと記憶やその後の対策として活かす必要があると思います。
●災害を経験していない地域の人たちは、自分のまちが、地震なり水害という災害が起こったときのイメージ自体が具体的に持っていません。自分の地域が災害時にどうなるのか知るためには、やはり災害の体験者、ボランティア体験者が経験を伝えていくことが必要だと思います。
●災害の伝承をしていくにはやはりいちばん原始的な口コミだと思う。ご近所さんと茶飲み話をしながら、話をしていくのが効果的なのかもしれない。
●小さな子供からお年寄りまで、誰にだってできることがあるのが防災ボランティアの活動だということを皆さんと一緒に発信して行ければ、ボランティア文化、活動がもっと発展されると思います。

コーディネーターからの総括コメント

池上氏(財団法人市民防災研究所理事)

・今日は12歳から80歳までの約180名のかたのご参加いただいた。回を重ねるたびに私たちの顔と顔が見えてきて、活発に意見が言い合えるという関係ができてきたことを実感している。
・分科会Bでは「出会いを大事にしたい」という発言があったが、非常に心強くて、若者だけではなく、世代を超えて情報交換をしていきたい。また、宮城県の中学校では、学校の勉強を生かした防災マップづくりの中で「耐震診断してほしい住宅マップ」をというものを大人にプレゼントされている。
・このように、参加者がそれぞれ地域で活動されていることを参考に、今後ますます連携を強めていって、お互いに情報交換できることが望まれる。いい例だけではなく、苦労話も役立つのではないだろうか。
・人とのつながりを強くするためには、「聴き上手」「記憶上手」「褒め上手」「笑顔上手」の4つの上手がある。
・みなさん仲良くしてこの防災とボランティアの輪がどんどん広げていってぜひ大事なおつきあいをしていきたい。

主催者 内閣府あいさつ

西川(内閣府災害予防担当参事官)

・昨年、一昨年のさまざまな災害があり、その被災地からご報告、現地のボランティア活動についてご報告いただいた。また、防災ボランティア活動を実践されているかた、希望されるかた、応援されているかたなどに参加いただき、盛大にできましたことに感謝。
・内閣府では平成8年よりこの「防災とボランティアのつどい」を毎年開催してきており、回を重ねるたびに内容は充実してきている。
・内閣府防災のホームページの中にある「みんなで防災」というコーナーでは、「防災ボランティア活動」についてのこれまでのいろいろな議論から「防災ボランティア活動に関する情報・ヒント集」や「防災ボランティア活動の『お作法』集」などをまとめているため、ぜひごらんいただきたい。
・実際に災害が起こったときには防災ボランティア活動というのはなくてはならない。また、災害が発生した後ではなくて、事前の備えや地域防災活動の普及、家庭での工夫や職場での対策活動にもボランティア活動はなくてはならない。参加された志や熱意が本当に空回りしないように、役に立つための方策を考えてまいりたい。
・今回のような機会を通じて培われた人の輪があれば、災害時も物事がスムーズに進むと思う。今後ともぜひ皆様がたのご支援をよろしくお願いします。

内閣府(災害予防担当)

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内閣府政策統括官(防災担当)

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