滋賀県立彦根工業高校


1.防災まちづくり活動の経緯、概要
・この活動のきっかけは「関東では市川工業高校が木造住宅の簡易耐震診断を行っているが、関西ではどこもやっていない。是非簡易耐震診断を通して防災教育に取り組んでほしい」と言われたことに始まる。
・地元彦根市河原町は旧城下町の一角に位置し色街の風情が残る地域だが、防災面から見ると木造密集住宅地で、道路も狭く、滋賀県の調査では延焼要注意街区に指定されている。高齢化が進んでいることもあって住民の災害対策についての危機意識は高い。
・そこで、平成18年度から私達は、京都大学経済研究所丸谷研究室、滋賀県立大学環境科学部柴田研究室とともに河原町を対象に「防災・耐震・まちづくりフォーラム」の活動を開始、防災に関するアンケート調査、講演会、耐震補強に関するシンポジウムや子供向けのワークショップに取り組み始めた。同時に学内では、3年の「課題研究」の中に「耐震調査班」を設け、木造住宅の簡易耐震診断学習・実測調査を開始した。
・私達の活動には、専門家・団体等からのサポートが多く、滋賀県立大学や京都大学の先生方の他、滋賀県建築士会彦根支部や滋賀県土木交通部住宅課、地元の商工会議所や商店会などのご協力、ご支援を頂いている。
・この活動は、「防災教室チャレンジプラン」に採択され、また地元マスコミにも取り上げられた。また、第3回全国防災まちづくりフォーラム(京都)で発表、「板硝子協会賞」を受賞した。
2.学習の流れ
・4〜5月:校内で耐震診断に関する基礎理論や実地調査の演習
・6月〜:町歩きを皮切りに、町家の耐震調査を開始、古い歴史ある町屋の実邸の所有者等の協力を得て実測、CADソフトで図面化し、耐震診断ソフトによる簡易耐震診断を行う。
3.活動の成果と課題
①成果
・実際に人々が住んでいる町家の耐震診断を行うことで、生徒の学習意欲が喚起され、学習成果の深化が見られる。また、家人や地域住民とのコミュニケーションを通し、社会人としての人間関係力が磨かれた。地域の防災意識の向上に貢献するボランティア活動ともなっている。
・さらに、高校と地域・大学・自治体・建築士会との連携が図れたこと、生徒・教職員・地域住民の防災意識の向上、「まちづくり」の一環としての耐震診断の必要性を理解できたことなど、成果は多岐にわたり大きなものがある。
②課題
・これまで診断した住宅は全て伝統構法だが、既存の耐震診断ソフトは現代構法を対象にしているため、現行の診断法では「伝統構法」はきわめて低い耐震性能しか出ず、正確な診断が出来なかった。
・伝統構法の耐震性能を正しく評価する診断法や補強法が確定していないことが評価しにくい理由であるため、これからは、例えば限界耐力計算法による診断法を試みるなど、正確な診断法の模索をしながら、学習と社会貢献を続けていく。

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内閣府政策統括官(防災担当)

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