白鬚東自治会連合会 1

白鬚東自治会連合会


1.組織と地区の概要
・白鬚東自治会連合会は東京都墨田区堤通2丁目全域の8つの自治会(人口約4,800人、世帯数約2,100)で構成されている。当地区の建物は「都営白鬚東アパート」(11棟)及び東京都供給公社の分譲マンション「コーシャハイム」で、全て大規模な集合住宅である。
・当地区の成り立ちはユニークだ。このあたりは江東デルタ地帯で最も災害危険度の高い地域であったことなどから、隅田川沿いの大規模工場跡地を東京都が買収、都の「防災拠点」構想のもとに再開発が行われた。具体的には、堤通に高さ40mの高層住宅を1.2kmにわたり防火壁の役割を果たすよう配置し、内側には約9haの避難広場を設け、災害時には約8万人を収容するため、約1週間の逗留に必要な飲料水・食料・医薬品等を備蓄するという壮大なもので、地上13階地下1階の建物群は地盤のよい洪積層まで杭を打ち、地下部分には水槽等を設けて転倒防止が図られ、関東大震災クラスに対応できる強度を持つよう作られている。
・また、こうした計画は住民参加方式で進められ、昭和57(1982)年、都営白鬚東アパートは、地権者及び地元墨田区を中心に募集した人々により入居が開始された。


2.活動の経緯と現在
・当地区の災害時の役割を理解して入居した初期の入居者の多くは、当然のことながら高い防災意識を持っていたが、震災対策が十分なところに住んだこともあり、防災まちづくり活動としては定期的な防災訓練の範囲に留まっていた。一方、建設から年月が建ち、住民の年齢層は建設当初に入居した50〜70代と、都営住宅であることから小さい子どものいる若い家族層とに分れ、全体としては65歳以上の住民が全体の約1/4と高齢化が進んでいる。また都営住宅が主である団地のため、入居者には災害時要援護者も多い。
・防災まちづくり活動が転機を迎えたのは、阪神・淡路大震災がきっかけである。その多くの教訓に照らしてみると、当地区は建物は大丈夫でも家の中はどうか、また周辺からの大規模な避難者に対応するための設備は使えるのか、避難生活はどうするのか、居住者である我々が何倍もの人数の避難者をケアすることができるのかなど、さまざまな疑問や不安が沸いた。そこで気付いたことを防災訓練として行ってみたところ、例えば、避難者用トイレとして当初から非常用便槽が作られているが、使用訓練では、建設以来開けていないトイレの蓋は開けにくく、また和式でサイズも小さいため使いにくく、トイレを覆う上物の備蓄もないなど、数多くの問題が明らかになった。
・また当地区の災害時の役割についても、建設から時が立ち、行政の位置づけがあいまいとなり、周辺住民にも周知されているとは言えない現状があった。そこで都や区との話し合いの必要性、周辺住民との連携の必要性なども認識された。
・そこで当会は平成15(2003)年2月に防災を専任とする小委員会を作り、地域の特色を活かした、自助・共助の精神による自主防災対策の骨子を次のように取り決め、具体的な活動を開始した。
①住民防災力の向上
②墨田区地域防災計画の住民周知
③高齢者世帯等災害時要援護者の実態調査実施
④災害時要援護者サポート隊(平常時の支援も行う隣保共助体制)の結成
⑤家具類の転倒・落下防止対策促進
・また都や区には、防災関連設備更新の申し入れをはじめ、地区の位置づけ・役割等の明確化を求め、周辺住民とは訓練その他を通じて連携を深める努力も行っている。
・第10回防災まちづくり大賞消防科学総合センター理事長賞受賞。
3.主な活動内容
①家具転倒・落下防止に関わる活動
耐震性耐火性の高い建物に残る危険として、家具類の転倒や落下による死傷をなくし、住民が助かるだけでなく、健康な状態で避難者のケアができるようにすることを狙いとする。
・「家具転倒防止モデルルーム」(平成17年3月)
住民への防災講演会、「すみだ建築センター」の協力による自治会役員への転倒防止器具取付実技講習会等を行ったのち、地元消防署や団地管理者(都住宅供給公社)の協力を得て、団地内で転居に伴い発生する空き室(リフォーム前)を使って、家具転倒防止機器等を展示するモデルルームを開設。同時に震災時に転倒・落下防止対策なしで発生する室内の有様も作り展示した。


この試みはマスコミに取り上げられ、区内外や近県からも見学者が多数訪れた。また、墨田区ではこの成功を踏まえて、同年10月より、区の事業として高齢者世帯等への家具転倒・落下防止対策助成を開始した。
・家具転倒・落下防止対策の推進
新設された区の制度を使って対策を進めている。当会を構成する白鬚東第一自治会は工事の完成度を自治会がチェックする形で、既に約100世帯で対策を行っている。
 


②各種訓練の実施
阪神・淡路大震災や中越地震を検証しつつ、当地区の特性を踏まえて、訓練を工夫。災害時には「普段やっていることしかできない。普段やっていることも満足にできない。まして普段やっていないことは絶対にできない」というコンセプトのもと、さまざまな訓練を定期的に実施している。
また、
   〔訓練例〕
・「災害時要援護者サポート隊」による要援護者搬出訓練:上階に住む災害時要援護者をテント地で製作した担架により階段で下ろす訓練。階段では一般の担架は使えないため、搬送用担架を工夫
・トイレ設営訓練:避難者用トイレ(私たちの改善指摘を受け、最近までに43基改修された非常用便槽・トイレ)の設営
・トリアージ訓練:地区内にある東京都リハビリテーション病院(災害時の災害医療センターとして位置づけられている・同病院HPより)との連携による
・周辺自治会との大規模防災訓練
③防災関連設備のリニューアル促進
  防災面で進んでいると思っていた当地区の諸設備を点検したところ、老朽化したり、時代に合わなくなったり、また地盤沈下で使えなくなったりしていたため、問題点を整理し、リニューアルを管理者である東京都などに要請。
・避難者用トイレ:サイズを直したため、数が大きく減った。また和式なので災害時要援護者などは使えない点に問題が残る。当会では簡易トイレなどの備蓄も進めている。


・非常用発電機:当地区では住宅付帯の非常用機器を動かすための非常用電源は有るものの、住民の居住部分は一般の商用電源で災害時は機能しないことが予想されるので、小型の発電機を購入(盆踊りなど日常のイベントで使い、いざという時に使えるようにしている)
  ④その他
○鐘中少年少女火消隊
・中学生の防災活動への協力を狙い、当会から地元中学にユニフォームを寄贈、地元消防署員の指導で訓練を行い2チームが作られた。
・今では区内他校でも、中学生による様々な震災対策活動に取組むようになった。
○「大丈夫ですシート」
・集合住宅では各室の安否が判明しにくいため、発災後居住者が自宅ドアに貼ってその家の無事を知らせるシート
4.活動の考え方
・活動の要は「地域力」であり、これは日常の積み重ねで付くものだ。例えば、当地区の開発時に地区内に残存された隅田川神社の祭りや、自治会対抗ボーリング大会など、地域住民の結束を強める楽しいイベントなども盛大に行っている。
・我々は自分たちが助かるためだけでなく、ここへ避難してくる人々のケアを担うという使命感を持って活動している。我々が逃げたら避難者のサポートはできない。いざという時は避難者への水先案内人として地区内の施設を提供し、共に活動していくために、何をすべきかが活動の基本にある。
5.今後に向けて
・都・区による当地区の位置づけ・役割の明確化のもと、諸設備の充実を始め、防災まちづくり活動を行政や周辺地域等と連携して、さらに進めていく。防災拠点としての基本的なハード面は備わっているのだから、ソフト面を充実させていけば、当地区は「21世紀の防災拠点」として重要な地区となる。
・想定する避難者は幹線道路を通る帰宅困難者も想定されるが、中心は周辺の木造密集住宅地の住民なので、日常的な活動として、当地区の役割・機能の周知はもとより、周辺住民の命を守る耐震補強等防災対策の啓蒙を始め、具体的な協力、連携をさらに進めていく。
 

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内閣府政策統括官(防災担当)

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