霊屋下

霊屋下(おたまやした)町内会



1.地区の概要

・宮城県仙台市青葉区霊屋下は仙台駅より南西に約1.3km、広瀬川沿いに位置する世帯数約800の住宅地である。地名の「霊屋(おたまや)」とは当地にある伊達政宗公の霊廟「瑞鳳殿」にちなむ由緒ある名称である。
・戸建て住宅では高齢者世帯の比率が約4割にのぼるが、他方、東北大学に近いことから、町民の半分は学生で、集合住宅も多い。
・この地域は広瀬川沿いであるため、一部水害の危険もあったが、公共工事により水の道が変更され、危険は低減している。また地盤は岩盤で比較的地震の影響は受けにくい。
・「瑞鳳殿」は市内有数の観光地で、仙台駅から市内の観光スポットを巡る乗り降り自在の巡回バス(「るーぷる仙台」)のルートとなっている。瑞鳳殿を対象とした県の林野火災訓練が定期的に行なわれており、この時には隣接地域の住民と共に消火器使用訓練等を実施してきた。



2.防災まちづくり活動の経緯と特徴

(1)きっかけ
・防災組織は昭和54年から存在していたが、近年まで活動は活発ではなかった。契機となったのは「三陸南地震」(2003(平成15)年5月26日発生:M7.0、震度6)である。「もっと情報が欲しい」という一人の町民の声に応え、既存の防災パンフレットの全戸配布や防災マップづくりに着手するうちに、防災活動の必要性に気づかされた。そこで誰もが参加できる会として「防災を考える会」を立ち上げた。
(2)青葉区助成事業に認定
・翌2004(平成16)年度には活動助成と住民の意識啓発などを目的に「青葉区まちづくり助成事業」に応募(テーマ「災害に強いまちづくり」)。これで活動に弾みがつき、緊急災害連絡所の設置や防災マニュアルの作成、広報活動など、防災活動が本格化した。
(3)取組みの姿勢=全ての町民を対象とする活動
・全世帯のうち町内会会員世帯は約2/3(集合住宅が多く、学生も多いため)。ただし防災は町内会会員だけのものではないし、自分の命と生活を守ることは「町内会活動」と考えている。そこで、活動は全世帯を対象とし、パンフレットや広報紙なども全世帯に配布している(各班長が受け持ち区域の全世帯〜アパートの各部屋含む〜に配る)。
・学生は従来防災訓練などへの参加は皆無であったが、最近は参加する人が出てきた。
・防災まちづくり活動は町内コミュニケーションの推進でもあると考えており、「防災企画班」(後述)では参加しない人への作戦も企画中。
(4)これまでの取組みの成果
・2005年末までの約2年半の取組みにより、町民の防災意識は大きく変わった。2005年8月の地震直後のアンケート調査で見ると、身の安全対策(95%)、防災グッズの準備(60%)、被災者救助への協力(90%)と、活動開始時に比べ啓蒙活動の成果が現れてきている。
・平成16年には「子どもみこし」が数十年ぶりに復活したが、防災まちづくり活動を通じて町内コミュニケーションが活発化してきた成果でもある。
 


 


3.取組み内容

(1)「災害に強い町づくり」(平成16年度青葉区助成事業)
・個々が災害に強くなることで地域の防災力を高めることを目指し、以下の3点を柱とした活動を行なった。
〔その1〕個々の防災準備の促進
①防災知識を提供し、②家庭防災会議を提案して家庭での防災意識高揚を図り、③防災準備(防災グッズ、家具固定、家屋耐震調査)推進の提案を行なった。
〔その2〕地域の防災準備=防災訓練の実施
日々の防災力を蓄えるため、防災訓練(対処法確認、連絡訓練、救助訓練、救急訓練、消火訓練、避難訓練)を実施。
個々の準備としてだけでなく、地域の防災力アップにつながり、住民同士のコミュニケーション育成にも繋がるもの。
〔その3〕緊急災害連絡所
・震度5以上の地震発生などのときに町内会長、及び役員が集結し、自動的に設置。災害時の町内の全ての防災活動の拠点となる組織である。
・具体的な機能:町内の状況確認、行政への要請と住民への連絡、初期防災活動、防災機材の備蓄
・その他特記事項
〔企画提案の新体制づくり〕
・「防災企画班」(防災に関する活動の企画、提案を行なう)を立ち上げ。役員4名、役員以外3名からなる。若者と高齢世代の双方にアプローチしやすい50代サラリーマンが中心。
〔広報・啓蒙活動〕
  ・町づくりマニュアル、緊急災害連絡所マニュアル、防災マニュアル作成。全戸に配布
  ・町内会広報紙「あだりほどり」:防災記事掲載。年8回発行。全戸配布。
 


 


(2)平成17年度活動の概要
○防災資材倉庫の設置
○「防災マニュアル保存版」の作成(全戸配布)
:各家庭で常に見えるところ(冷蔵庫など)に掲げておけるものとして作成。
 


○防災ブロック連絡体制の設定
:連絡をより円滑にするために、町内を6ブロックに分けた
○高齢者の防災準備推進活動を開始
 :60歳以上または障害者のいる家庭を対象に、希望者を募り、宮城県建築士会の協力を得て、家具固定・手すり取り付けを実施(材料費実費徴収)(今年度は9世帯が応募)
 :なお高齢者の所在は町内が協力して把握している。
■霊屋下町内会の防災まちづくり活動
 


4.霊屋下町内会の活動から学ぶ点
(1)全町民を対象とした活動
・都市部の町内会加入率は年々低下しており、町内会主導の活動へは、特に若者や勤労者の参加率が低いところが多い。霊屋下には学生が多く居住し、アパートマンションも多く、他方一戸建て住宅では4割が高齢者世帯となっており、地域活動の難しさが伺われる。しかし、当町内会は「住民の命と生活を守る防災活動は町内会活動」という考え方に立ち、町内会員ではない世帯にも広報活動を行なうなど、全世帯を対象とした活動を展開している。
・その労力は多大なものであるはずだが、その結果2年余りの活動を通じて、ねらいとする防災意識啓発、町内コミュニケーションは目に見えて進んでいる。防災準備をする人が増えただけでなく、子どもみこしも復活するなど、防災分野を糸口に「まちづくり」の成果も現れてきている。
(2)「意識啓発」「情報提供」に主眼を置く、企画力と実行力にあふれた活動
・防災活動の基本は個々の意識啓発にあり、最も必要とされるものは「情報」であるといわれる。当町内会ではこの点を踏まえ、意識調査による現状把握、広報活動、防災情報提供を、全ての町民を対象にきめ細かく行なっている。
・また「防災企画班」として比較的若い世代のメンバーにより、多世代交流や参加しない人を対象とした作戦など、多彩な企画を発案する専門部隊を持っており、これを実行に移す行動力とともに、着実な成果を上げている。既成市街地の町内会活動でありながら、NPO団体をもしのぐ先進的な、かつ、地に足のついたきめ細かな活動として、今後の活動が大いに期待されるところである。
 

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内閣府政策統括官(防災担当)

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