上町東町内会

1.地区の概要

・宮城県仙台市青葉区上町町内会連合会はJR仙山線愛子駅周辺に位置し、世帯数約1,400、東・西・南の3町内会計65班で構成されている。ここで紹介する活動は「東町内会」(計23班)の「20班」で始められたものである。
・東町内会(320戸)は地域としての団結力が比較的強い地域である。「20班」は住宅地で11戸36人で構成されているが、新興住宅街のため、若い人も多い。

2.防災まちづくり活動の経緯

・町内会活動の歴史は古いが、「地震災害」に関する取組みはごく最近、宮城県沖地震の危険が言われるようになってからのことである。
・防災用品を揃えることになったのは、平成15年11月中旬、班長宅での茶話の折、「おら方(ほ)の班でも防災の準備でもしたら」という話が出たことがきっかけだ。
・まずあまりお金を掛けない方法でということで、各家庭用には、100円ショップの品と、手づくりの品を活用し、一通りそろったところで全戸に配布した。
・配布を受けた各家庭は大変喜んだ。1世帯あたり1,050円と廉価であったことはもとより、単に各戸に配ったのではなく、まず集まってもらい、用品の説明と共に、防災頭巾は好きな配色のものを選んでもらうなど、啓蒙と交流をベースとしたことも大きい。
・併せて班として、リヤカー(1)や竹製の担架(2)も用意し、また、町内会の防災訓練には揃えた用品一式を持って参加することとした。
・この活動の反響は大きく、平成16年1月1日河北新報紙上に「防災訓練の備えで安心満載、アイデア次第の手本」として掲載される。同2月13日には仙台放送において、揃えた防災用品一式を持って防災訓練を実施している模様が放送された(おばあちゃんがたんすの下敷きになったが、笛で助けを求め、素早く応急手当を受け、リヤカーに乗せられて避難所に搬送。備えあれば憂いなし、というスローガンで訓練を終えた、という内容)。
・また、平成16年2月27日には宮城消防書管内婦人防火クラブメンバー、JA女性部メンバーに防災頭巾の作り方を指導。この模様はTVでも放映された。
・地元マスコミに取り上げられたこともあり、お金をかけずに防災用品を揃える取組みは町内会の他の班を始め、市内各地に広がりつつある。

3.取組み内容


(1)お金をかけない防災用品の調達
・防災用品一式の内容(各家庭用)
  防災リュック(※1)
  ラジオ付き懐中電灯(※1)
  笛(※1)
  家族メモ帳・ボールペン(※1)
  乾パン、水(※2)
  軍手(※1)
  靴下(※1)
  手ぬぐい(※1)
  薬袋(中身は各自用意)(※1)
  靴(各自用意)
  防災頭巾(※1+3)
  避難札(※1+3)
  防災マップ(※2)
  ※1=100円ショップ等で調達
  ※2=訓練時に配布されるものなど
  ※3=手づくり品
避難札:普段は表(写真左)を玄関に掛け、災害時に家族全員が避難終了した際は裏(右)に返しておく。
100円ショップ調達のまな板に文字を貼り作成
 
防災頭巾:ありあわせの生地や100円ショップで購入した生地で作成。
戦時中は空襲に備え「防空頭巾」として、国民誰もが手縫いのものを用意した。この作り方を覚えている世代の女性メンバーが「防災用」として制作。
当初は従来の綿入れ・マチ付き型であったが(写真手前)、現在はキルティングの布を使い、縫い方も簡略化した。配色デザインがきれいで、裁縫の心得のない若い人でも楽しく作れるよう工夫されている(写真後ろ)。
 


(2)身近な場所を一時避難場所に
・各班で身近なところに「一時避難場所」を決める。「避難表示板」を掲示。
  (20班では2箇所。いざという時すぐ集合できる場所のため、班全体での行動が取りやすくなった)
(3)防災訓練
■参加者を高めるための方法
 ・身近な「一時避難場所」にまず集合する形を取る。発災時の訓練になるだけでなく、こうした地域の催しなどにも集まりやすくなり、参加率も高まった。
■用品一式を使った防災訓練(例:平成17年5月29日実施内容)
 ≪上町東町内会防災訓練≫
  参加人数:240名   
所要時間:約2時間
  宮城消防署職員、宮城消防団員の協力により実施
  20班メンバーはリヤカー、防災用品一式を持参して参加
  訓練内容
   イ.一時避難所集合⇒指定避難所(広瀬中学校)
   ロ.消火器による初期消火体験訓練
   ハ.応急救護の体験訓練
   ニ.非常食の試食
■今後に向けて
 ・上記体験訓練は初めての人が多く、積極的な参加が目立った。
 ・今後はもっと内容を充実した訓練をしたいと思っている
(夜間など実施時間帯を工夫するなど)
  4.上町東町内会20班の活動から学ぶ点 〜小さな備え、大きな安心〜
■災害の備えもアイデアと行動力で手軽に
・防災用品を備える必要性は誰もが認めているが、何を揃えてよいか分らなかったり、デパート等で売っているものは高価であったりすることから、いつ来るか分らない災害のために備えることは後回しにされがちである。しかし当地域では、主婦のアイデアと行動力が遺憾なく発揮され、一戸あたりわずか1,050円で必要な備えが整った。
・「防災頭巾」については、戦時中の防空頭巾が、布の選定や配色などにも工夫を凝らした個性的で美しい防災用品としてよみがえった。また、作り方講習会などを通して、アイデアの波及のみならず、他の地域の人々や世代間の交流も強まっている。
■活用訓練の場も身近に用意
・防災用品とともに、リヤカーなど地区の備品も用意しているが、ただ備えただけではいざというとき使えない。この点も、町内会レベルの防災訓練にはこの防災用品一式とリヤカー等地区の備品を持参して参加するという形を作ることで、防災用品の使い方まで訓練できている。
・また、身近な班レベルで「一時避難場所」を決め、まずそこに集合することで、「避難札」と併せ、住民の安否確認や避難行動をしやすくしている。なお、一時避難場所(=一時集合場所)の設定により、防災訓練等地区レベルの催しの参加率も高まっているようだ。
・「いつ来るか分らないが、日常的に備えておかねばならない」大災害に負担なく取り組むには、このような「手軽」「身近」で、無理のないアプローチこそ、どこの地域にも、誰にとっても参考にできるものである。

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