まちづくり政策フォーラム コミュニティー

1.防災まちづくり活動の経緯

・まちづくり政策フォーラム(事務局:仙台市)はまちづくりのさまざまな分野について調査研究や政策提言などを行なっているグループである。「コミュニティー・ワークス研究会」は特に福祉と防災をテーマに調査・提言を行なう活動グループとして2005(平成17)年10月に設立された。
・当グループのリーダーはシルバーハウジング居住の障害者であるが、ユニバーサルデザイン仕様の住宅で、緊急用ブザー等の設備が整い、LSA(ライフサポートアドバイザー)が常習している住宅といっても、実際にやや大きな地震が起きてみると、大規模災害への対応について十分な対策がなされているといえない現状があった。
・そこで大規模災害時の対応策という視点から施設等を点検、災害時要援護者が防災面でもより安心して暮らせるための対策としてどんな方策があるかを研究・提案するとともに、具体的なアクションを起こしていくために当研究会を発足させた。
・第1回全国防災まちづくりフォーラムにおいて活動発表を行なった(2005.9.4)。研究会活動はスタートしたばかりなので、目下、課題の整理と提案の頭出しを進めている段階である。

2.取組み内容

(1)シルバーハウジングにおける大規模災害の対応状況の課題チェック

・白石市シルバーハウジングは一般世帯、高齢者、障害者の合同住宅である(健常者世帯6、高齢者夫婦世帯4、高齢単身者世帯6、車椅子世帯1、単身障害者世帯1)。ユニバーサルデザイン仕様で、車椅子の利用が可能となっている。各居室には緊急用ブザーが設置され、またLSA(ライフサポートアドバイザー)が常駐している(平日8時〜17時)。

・2005年8月16日に発生した地震では居住者(障害者、高齢者など)は大きな不安を感じた。居住者自身が居住者や建物の安全確認を行い、さらに市職員にも点検をしてもらったが、以下のようないろいろな課題があることが分った。
 (例)夜間休日対策⇒LSAが不在時に発災した場合のサポート体制は?
    緊急用ブザー⇒停電時に作動するか?
    避難対策⇒どこに集合するか、どこに連絡すればよいのか不確定
         障害者は自力移動が困難になりやすいが、対策は?

(2)災害発生時の「不安」と、今後に向けての提案

・この経験から、災害時要援護者にとって災害発生時において大きな“不安”材料は「一人でいる時の不安」「夜間の対応体制についての不安」「避難方法に関する不安」の3点にあることが分った。
・これらの対策としてさらに課題を整理し、「自助」「共助」「公助」それぞれについて、具体的にどんな対策が必要かを提案し、多様な関係主体との連携の下に具体化の可能性を探っていく。
・具体例としては—
  「自助」レベル⇒ライフサポートカード、ヘルプカードなどを作成しておく
          障害者自身による防災対策マニュアルの作成(一般化し、普及させる)
          (外出時の課題と対応についても、今後検討していく)
  「共助」レベル⇒居住者の避難体制の確立
居住地周辺の地域活動との連携のあり方を探る
          周辺地域以外との連携の可能性を探る
  「公助」レベル⇒災害時要援護者の把握や防災対策の確立を要請
          (LSAとの連絡連携体制の明確化、障害の個別性に応じた支援体制の確立など)
  その他    ⇒GPS携帯などを活用した居場所発信方法の開発
(企業等の支援を得るなど)

3.まちづくり政策フォーラム コミュニティー・ワークス研究会の活動から学ぶ点

(1)災害時要援護者が主体的に取り組む対策づくり

・災害時要援護者対策は建物の耐震対策と並び、防災まちづくりの大きなテーマであるが、従来防災まちづくり活動においては、救助する側からの対策が多く検討されてきた。当活動は障害者自身が活動主体となって、防災対策はどうあるべきか、きめ細かな課題の把握とともに、要援護者にとって本当にあってほしい対策の提案を、専門家等とともに調査研究・提案を行うもので、この活動成果を普遍化、一般化していくことで、災害時要援護者対策のあり方についてより的確な対策を講じていくことが可能となる。今後の活動成果に期待したい。

(2)障害者対策等が行なわれた建物における防災の視点の追求

・シルバーハウジングなど障害者等への配慮が行なわれている施設においては、建物のユニバーサルデザイン化などは進んできているものの、「大規模災害対策」の視点は必ずしも明確になっていないことが当活動により指摘された。しかしながら発災時には、障害者対策が講じられた施設であるがゆえに、一般住宅地よりも対策が後手に回る恐れもないとはいえない。あらゆる施設や機能、活動に「防災」の視点を入れることが、わが国の安全・安心まちづくりには必須であることが、平成16年度中央防災会議専門調査会等でも指摘されたところである。当研究会の活動の全国への発信は、防災対策の盲点をなくす上でも重要である。

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.