事例

特定非営利活動法人 I Love つづき


1.組織の概要と防災まちづくり活動の実施経緯
・「I Love つづき」は横浜市都筑区生涯学級の環境講座に集まった仲間から始まった。身近な環境問題とまちづくりをメインテーマに、学習や調査をまちに役立てていく活動を主に行っている。都筑区は横浜市北部にある計画人口約20万人の大規模ニュータウンを中心とした区で、自分たちの住む都筑区を中心に活動している。2003年、活動を本格化するためにNPO法人化した。
・組織のメンバーは約20名で、小さい子どもを持つ母親が多いが、中学生やリタイア後の男性、職業では研究者やデザイナー、ミュージシャンなど、さまざまな人の集まりだ。それぞれが関心のあるプロジェクトを企画・実践し、大きなプロジェクトは全員で行う。
・これまで街の落書き消しや一斉お掃除イベント、横浜市環境創造局環境まちづくり協働事業「落書きされない壁づくり」(市民5,500人が参加してモザイクタイル壁画を作成するなど)など、参加型のまちづくりを多く行っている。
・防災まちづくり活動としては、子どもに災害への対応力を身につけさせる「サバイバルジュニア育成事業」を2005年から毎年実施している。防災分野に取組むきっかけは、子どもたちが危険な目にあうニュースが増え、子どもがなぜ冷静に判断し、対応できないのか、疑問を感じたことだ。教育専門家に聞くと、今の子どもは塾通いなどで外で遊ぶことが少ない上、学校では体育の時間が減らされ、体が弱くなっており、体が弱いと心も弱くなる、と言う。ちょうど横浜青年会議所が健全な子ども、災害に強い子どもを育成する企画に助成金を出すと聞き、子どもの防災サバイバルキャンプの企画を立てて応募した。
・これまで3回の開催には多くの団体や人の協力を得た。当組織の事務所の近くにある武蔵工業大学横浜キャンパス(環境情報学部)には、場所の提供を始めさまざまな支援を受けている。いままでの団体の活動のネットワークにより東京工業大学地震工学センター翠川研究室、日本女子大学石川研究室、武蔵野大学伊村研究室には講座等への協力、また地元都筑消防署、都筑区役所、東京ガス㈱、損保ジャパン、神奈川レスキューサポート・バイクネットワークなど市民ボランティア団体等の協力、さらに横浜市、神奈川県、内閣府の後援もある。
・これからもこの活動を続けていくが、現在取組んでいる「ミニヨコハマシティ」(19才以下の子どもによる仮想都市:就労や政治、まちづくりなどの疑似体験ができる)など、子どもの持つ力を伸ばし、まちづくりに活かしていく活動を続けて行きたい。
2.サバイバルジュニア育成事業
①目的
「いざというとき、自分の身は自分で守れる、正しい判断で行動できる、地域の情報に詳しい」子どもを「サバイバルジュニア隊員」として育成する。
 ②対象
・小3〜小6の児童と保護者(国籍、障害の有無問わず)
・当初都筑区を中心としたが、第3回からは協力企業の関係などで、横浜・川崎を中心とするエリアに対象を広げた。都内からの参加もある。
・参加者:数十名/回
 ③会場:主に武蔵工業大学横浜キャンパス
④プログラム(※第3回を中心に主なものを記載)
 ・一泊二日で行うサバイバルキャンプと日を置いて行うシンポジウムが基本
 ・全てに参加した児童は「サバイバルジュニア隊員」となり市民活動の「エールカード」が与えられる
〔サバイバルキャンプ〕(武蔵工業大学体育館にて)
○防災訓練
・ロープワーク、搬送法、放水体験、チロリアン渡過などの訓練体験
(協力:都筑消防署)
・ワッフルドームづくり(新聞紙を使い避難所でプライバシーを守るテント状のもの)、アルミ缶コンロ作りなど(協力:勝田地区家庭防災員)
・マイコンメーターの仕組みなど(協力:東京ガス横浜支店・川崎支店)     
 

○防災講座(協力:東京工業大学、武蔵
野大学などの大学・研究者)
  ・地震と防災、おうちの中を安全に
(非常持ち出し袋、家具固定等)

 


○まちあるき
  ・まちあるき:まちを「ライフラインシティコース」「未知との遭遇コース」「命の水コース」に分かれて歩き、防災に関わる店舗や設備、危険箇所、水場や緑地などをチェック
  ・マップづくり:地図に各チェックポイントと写真、コメントを記入
・まとめ発表

○その他(協力:市民ボランティア団体など)
・サバイバルゲーム:グループ別に与えられた命題をそこにあるものを工夫して行い、制限時間内での工夫を競う
 ・電子紙芝居「稲むらの火」読み聞かせ
 ・市民ボランティア団体活動の紹介   など


〔シンポジウム〕
・参加児童がキャンプで学んだことを活かし、自宅付近を調べて防災マップを作ってきたもの、キャンプで学んだことで他の人に伝えていきたいことを、発表する。

〔展示〕
・9月1日防災の日に区で行う防災展示に参加。活動の模様やまちあるきマップなどを展示。
〔エールカード研修会〕
・横浜市民活動協議会が市民活動を推奨し応援するために、活動を行う個人に交付するカード「エールカード」について学ぶ(「サバイバルジュニア隊員」に交付される)。
⑤備考:第2回からは「防災フェアinKANAGAWA」のプログラムの一つとして開催
⑥参加児童の反応
  ・いろいろな事が学べた、楽しかった、大学生に優しく教えてもらって嬉しかった、役に立った、という喜びに溢れた感想が目につく。子どもたちが自分で考え自分で行動しながら、楽しく、また、初めての友達との付き合い方を含め大事なことを身につけていく場となっている。
3.活動のコンセプトと活動活性化の考え方
・「身近な生活の中から、家庭で街の中でできることからはじめる、そこから世界が少しでもよくなっていけばいい」という考えでいろいろな活動に取組んでいる。
・何事も「やりっぱなし」は良くないと考えている。「サバイバルキャンプ」もただ体験させるだけでなく、「シンポジウム」とセットとし、学びと成果発表という一連の流れをこなした子どもに「サバイバルジュニア隊員」の称号と「エールカード」を与える。また毎年、参加者アンケートを取り、詳細かつビジュアルな報告書も作成している。
・この活動を契機に防災関係の集まりなどの講師となることがあるが、「防災」の勉強会や講座は防災に関心の高い、知識のある人だけが集まるようだ。本当は関心のない普通の人がもっと参加すべきと思う。環境分野も同様だが、私たちはこれまでの活動を通して、人を惹きつける、人が来やすい仕掛けの効果を実感している。活動の本来の目的を達しつつ、ちょっとした工夫で人は集まる。
具体的には二つポイントがある。1点目は、募集チラシなどは面白そうに見える、わくわく感のあるデザインやコピーなどの「見た目」が人の集まり方に大きく影響する。2点目は、一度参加してみたくなるような面白い企画づくりだ。
例えば、ゴミ拾いイベントではオリエンテーリング形式をとり、参加者の活動をインターネット中継し、ゴール地点のスクリーンには参加者から送られた携帯メール写真(コース上で気になったものや場所を撮影)を映し出した。当初ゴミ拾いになぜインターネットか、という声もあったが、参加者のやりがいや楽しみが格段に高まり、大好評だった。IT活用が普通に行なわれている今の時代に合ったやり方のひとつと思う。
 

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内閣府政策統括官(防災担当)

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