全国防災まちづくりフォーラム:京都

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『第3回全国防災まちづくりフォーラム』の概要

1.実施要領


(1)開催趣旨
近年、個人や地域の諸団体、NPO等の防災まちづくりの活動が広がりを見せています。多くの場合それらの活動は、かつて地域に根ざしていたコミュニティの自主的な管理が衰退し、その空白を埋めるために新たな活動として展開したものであるといえます。したがってその多くは防災を主目的として始まったものではありませんが、何かのきっかけで防災に関心が高まった例も少なくありません。
一方、今までも何度となく防災対策の重要性が指摘されながら、大きな災害発生から時間が経つと、一人ひとりの市民や個々の団体等の中で防災意識が低下しがちになります。このため、市民の手による防災活動は、関心を継続させる面で苦労が多いといえます。
内閣府では、このような状況に鑑み、各地域における防災まちづくりの状況を報告しあい、ノウハウを交換し、相互を励ましあう場とし、永続的な活力を養っていただく機会とすることを目指し、昭和57年以来26年間開催している防災フェアに、平成17年度から「全国防災まちづくりフォーラム」と名付けた全国の防災まちづくりに関わる推進者が集う場を共催団体の皆様とともに設置しております。またこのような活動に対するノウハウの集約性を高めるため、先行事例の整理・分析と情報提供等に取り組んでいます。日頃から具体的な行動を実践する国民運動の一環としてもこのイベントを通じて各地域の防災まちづくりが活性化することが望まれます。
今年度も、平成19年8月24日~27日に京都で開催される「防災フェア2007inきょうと」の一環として、防災まちづくり関係者が、自らのすすめる防災まちづくり活動を相互に発表しあうイベントである「第3回全国防災まちづくりフォーラム」を、展示等とともに実施します。相互に研鑽していただける機会としても活用していただければ喜ばしいかぎりです。(「第3回全国防災まちづくりフォーラム全体概要」より)

(2)実施要領
1)日程
①第3回全国防災まちづくりフォーラム活動発表会・表彰式
平成19年8月25日(土)10:00~16:00
②パネルディスカッション「災害に強い街『京都』を作るために、企業・市民・行政・ボランティアは何ができるのか...私達の選択と目標」
平成19年8月26日(日)10:00~12:00
2)会場
京都市アバンティホール
3)実施主体
主催:内閣府、京都市、板硝子協会、(社)日本損害保険協会、防災推進協議会
後援:京都商工会議所
4)活動発表会・表彰式プログラム
ⅰ.活動発表会(12団体:京都市内団体6、県外団体6/ホールにて10:00~12:40)
ⅱ.表彰式(ホールにて15:20~16:00)
・参加:主催者・審査員・発表者とその関係者
・次第:参加団体紹介、全体講評、各賞発表・表彰式、主催者挨拶
5)各賞と審査基準・方法
①賞の種類

6)展示等(会場ホワイエにて)
・展示:防災まちづくりフォーラム参加団体(一部希望者)の展示
・その他:防災ガラス破壊実演(旭硝子)

2.実施概要


(1)活動発表会
(10:00~12:40※時間は実施時間/以下同様)
1)主催者挨拶、及び発表会ルール説明(開演後15分)
○挨拶
・内閣府参事官鳥巣英司氏
・板硝子協会調査役鹿島吉(よし)右(う)衛(え)氏
・(社)日本損害保険協会志鎌敬氏
○ルール説明(1団体発表持ち時間、審査投票の方法:事務局)
2)活動発表
①発表の順番、方法
開催地の活動グループと域外の活動グループが交代で発表。
1グループ10分間。発表の形、方法は自由。(発表は3部構成:小休憩を挿入)


発表団体プロフィールはこちら 別ウインドウで開きます (PDF)

⑤ブース展示
会場ホワイエに、発表団体(事前に希望した4団体)が発表会開催中、自由な形式で活動資料の展示ができるコーナーを設けた。

⑥防災ガラス破砕実験(13:00~)
会場ホワイエにて、防災ガラスの性能を体感できるガラス破砕実験を実施(旭硝子株式会社の協力による)。

 
(2)表彰式
1)伊藤滋審査員長全体講評

2)審査結果・表彰式



3)「楯」の授与
各地での「全国防災まちづくりフォーラム」開催を通して全国の防災まちづくり活動の発展とネットワーク推進を図る象徴である「楯」は、今回は第2回開催地名古屋より参加した「名古屋市中村区日吉学区連絡協議会」から、審査特別賞受賞団体「清水寺警備団」に手渡された。これにより「清水寺警備団」は次回「第4回全国防災まちづくりフォーラム」に参加、京都代表として活動発表を行い、第4回審査特別賞受賞団体にこの「楯」を手渡す役割を担う。

フォローイベント
~「災害に強い街『京都』を作るために、企業・市民・行政・ボランティアは何ができるのか...私たちの選択と目標」~
1)開催概要
ⅰ.開催趣旨
東南海・南海地震や、花折断層地震・琵琶湖西岸断層地震など、京都がかなりの被害を受ける地震の危険性が指摘されている。また、時間100ミリを超す集中豪雨による鴨川氾濫、さらには都市排水機能の麻痺による交通機関・地下街の水没、住宅街・工業用地・商業木の内水災害の危険性など、一般には知られていない都市の脆弱性も指摘されている。京都はベンチャー企業のメッカであり、伝統産業の中心地で、知る人ぞ知る物流拠点でもある。また、年間5,000万人(1日平均12万人)に上る観光客を受け入れている国際観光都市である。京都市において災害が発生した場合、被災した産業はいかに早期に事業を継続させるか、さらに災害に強いまちづくり、災害に強い産業基盤を形成するために、企業・市民・行政・ボランティアは何をなすべきかについてディスカッションする。
ⅱ.主管わたしたちの市民安全フェア2007inきょうと実行委員会
ⅲ.日時平成19年8月26日(日)10:00~12:00
ⅳ.場所京都市アバンティホール
ⅴ.プログラム(敬称略)
①挨拶・開催主旨説明NPO法人京都災害ボランティアネット理事長吉村雄之祐
②パネルディスカッション
コーディネーター:丸谷浩明(京都大学経済研究所教授・元内閣府防災担当企画官)
コメンテーター:青柳良明(京都府商工部観光・コンベンション室長)
枡田貞美(㈱JR京都伊勢丹総務図安全管理担当部長)
深尾昌峰(きょうとNPOセンター事務局長)
吉村雄之祐(NPO法人京都災害ボランティアネット理事長)
③防災寸劇(*途中休憩後に実施)
・学生のボランティア組織IVUSA京都国際ボランティア協会による(出演大学生20名)。災害発生時の大学での被災の姿と学生による救護活動を寸劇で見せる。
④簡易画像伝送装置Ku-sat実験(*途中休憩時に実施)
・ロビーにて:近畿地方整備局の協力により衛星を使った画像伝送実験を紹介
ⅵ.参加者約90名
2)パネルディスカッションの概要
①参加者コメント
丸谷(コーディネーター) :私は京都は防災対策が脆弱と感じている。町家では「赤いバケツ」が各戸に置かれ、これを置くことで地域コミュニティの認識もあると思うし、産業面では企業立地が周辺部まで進むなど産業は活発だ。しかし、何か起きたとき、伝統と観光、企業のコーディネートはどうだろうか、多数の観光客はどうなるのか、というところが私の問題意識だ。京都での災害危険性としては特に琵琶湖西岸断層地震の確率が高いが、市民レベルで話題になることは少ない。その他鴨川の氾濫リスク等水害の危険もある。問題は「京都ではしばらく大災害が起きていない」ことだ。ボランティア組織は外部への支援活動だけで、市内への受け入れ訓練などはしていない。まして、企業とどう連携を取るかというような話には至っておらず、厳しい状況だ。これまでさまざまな主体による話し合いがなかったので、ここでの議論を「キックオフ」として、参加者がメッセージを他に伝えられるようなものにしたい。
深尾: 「きょうとNPOセンター」は98年に発足した。市民社会を支えるのは市民自身であり、我々は中間支援の組織である。災害時のボランティア活動は阪神・淡路大震災以降一般化し、全国では社会福祉協議会が担う形が多いが、京都では情報共有が大切ということで、官民協働型で誕生した。私の課題意識は、官民連携の中で市民間連携をどう考えていくかにある。今回のパネラーは私以外は公務員だ。我々は行政依存になりがちだが、大震災のように官が機能しないとき我々がどうするか。今日、市民が街の仕事を担うようになってきており、“公共人材”のあり方に関心がある。市民安全の視点から、そうしたことを考えていけないか。また丸谷先生の言われるとおり、我々は外に向けたボランティアコーディネートはしてきたが、市域での経験がない。たぶん京都なら全国からボランティア等支援が来るはずで、これをどううまく社会の力に変えていけるかについては自信がない。私はこうした活動は「縦糸(地縁)」と「横糸(NPO等)」の日常的な構築しかないと考えており、京都では自主防災活動は盛んなので、これを活かしていかないといけないと思っている。また被災者自身が地域の情報を持っているので、これを全国から来たボランティアにどうつなげるか。また赤いバケツは常設されていても、都心部で地縁を持たない人との関係性をどう構築するか。客体→主体に変える取組みも課題だ。
桝田: 私は大阪生まれだが、京都には独特のものがある。一つは「京都力」(観光客5,000万人=国民は2年に1回京都に来る。その魅力はどこにあるのか)、二つ目は「1,200年前から継続する都市」(「古都」で終わっていないこの馬力、源は何か)、三つ目は「盆地、内陸の街」(大都市はたいてい港を持つが、京都は港湾も空港もない)。こうしたどこにもない力を災害対策にも活用し、よそにも活用支援することはできないかと考える。私のいるデパート業界は厳しく、伊勢丹の来客数は10万人/日あって、お客様は他にないものを求めておいでになる。京都の防災も国のマニュアルをベースにしながらも、京都らしいもの、個性的なものとする必要性を感じている。
青柳: 私は“戦略的公私混同論者”だ。官と民のよいところを私のようなものがキーステーションとなって進めていくといいと思う。観光客は京都府全体では7,200万人/年だが、交通の発達で日帰りが8割だ。宿泊する場合は京都の本質を知りたいためという人が増えている。反面、受入マインド=「もてなしの心」はどうか。お客は「京都に行けば快適で安全で楽しくできるはず」と思って来ると考えると、もてなしの心にはもっと深い意味を持ったものになるはずだ。安全安心対策もその一つと私は考えている。
吉村: 私は公務員(警察)、NPO(仕事以外)、伏見の造り酒屋の長男(家を継いでいない)という3つの顔がある。阪神・淡路大震災では兵庫の酒蔵が全壊したので、被災した蔵のためにうちで代行出荷したりもした。京都市は「学区」がコミュニティの基礎単位で、まちの拠点が学校だ(※明治初年に番組(・)を作り学校を作った。小学校は警察・銀行等も兼ね、自治の末端組織のセンターとなった。校門入口の鍵を学区の連合会長が持っていることは他都市にはない)。このこと自体、京都人は気付いていないのではないか。自主防災会の活動はマンネリ化し、後継者がいないなどと言われているが、組織率は100%で、もっと活動は伸びるはずだ。災害では避難所運営等復興まで長いスパンの活動が要るが、その訓練なども含め「学区」をキーワードにした活動ができるはずだ。また、企業は「地蔵盆」に金を出したり場所を貸したりしており、そうした付き合いを活かせないかと考えている。
②討論
丸谷: 被災直後は、自主防災組織は自分たちの街を守る活動はあるが、避難所にどういう人が入ってくるかは分らない。また、企業は何も動けず時間が浪費される。そのうち支援が外から来るが、裁けるのかなど、きちんとシナリオを考えていかないといけない。そういうことのためにはまず街の防災評価がないと、社長や自治会長の説得ができない。
吉村: 地縁や既存団体が形骸化している。やる気はあるが繋がっていかない。組織のあり方が「合わへん」、決められたことをこなすだけで手一杯で面白くない、というのが実態だ。当地の仕組みに組み込まれてきた自主防、自治会だが、イノベーションが必要ではないか。変革するときは過去を否定しがちだが、実績を見つめて、義務感だけでなく、もう少し楽しみモードでもいいのではないか。
桝田: 伊勢丹は東京や静岡、新潟など地震の多いところに立地している。企業としての守備範囲、行政・市民の守備範囲、その両者の繋がるところをどうするか、ということだが、タイムリーなきちんとした情報が必要だと思う。京都は今は全国一火災が少ない。消防団等住民パワーがあるからだ。京都の大学コンソーシアムには全国から来た20万人の学生パワーがある。また、防災管理の資格を持つ“お坊さんパワー”もある。
吉村: 活動には地縁と知縁がかみ合わないとうまくいかないと思っている。現場の目線が大切で「地縁」と結ばないとうまくいかない。京都人は気位が高く、人々をこちらに向かせるのは大変だ。何かというとレボリューションというが、この言葉は京都では簡単には使えない。既存のものを大切にしながら、塗り重ねて新しいものを作っていくのが、京都では大切だ。
青柳: 互いが何をやっている人か、といった出自を知っていることが役に立つ。ピンポイントでその人の役割を引き出せ、その人も意気に感じてやってくれる。無理やりお願いしても、興味、関心、楽しみがないと人は動かない。京都子ども会議での子どもの提案に、子どもの目線で観光マップを、というのがあったが、子どもや弱者の目線のマップは少ない。初めて京都に来る小中学生のための「小学生案内隊」を作りたいが、子どもだけでは危ないこともあるので、地域と一緒に考えていこうと思っている。京都人は京都のことを知らない。身近な寺院にどんな大事なものがあるか知っていたら、市民は一生懸命やると思うので、「文化財レスキュー」など、京都らしい防災活動にできると思う。
丸谷: (ここまでの討議を受けたまとめとして)自主防、消防団については出来るだけ楽しめることがこれからは大事だと思う。防災は継続が大切だが、やるべきことはきちんとやるとして、義務感だけでは気が重く、楽しみの方に力を入れないと続かない。歴史や業績が重なるとだんだん真面目なものになってくるが、「今の面白さ」を取り入れないといけない。もう一点は学生をどう活動に絡めるかということで、学生は社会に直接役立つことをやるのをフレッシュに感じるものだ。継続性や社会に出たとき忘れないことを考えれば、役割を与え、仕組みを作ってあげることが大事だ。
(小休憩:参加者は寸劇、実験を参観)


丸谷: 前半で「楽しんでやる」「学生等との組合せ」などキーワードが出た。「繋がる」ことは大変、という意識・経験もあると思うが、その辺を議論したい。
深尾: よく企業とのパートナーシップというが、NPOが企業と連携する場合コミュニケーション能力が乏しいと思う。押し付ける傾向がある。「NPOは思いと志だけで押す。『何でいいことをしているのに支援してくれないのか、応援しないとはけしからん』と言う。NPOは(バーター取引を持ちかける)総会屋より始末が悪い。早くそういう態度から脱却してくれ」というのが企業の言い分だ。相互にコミュニケーション能力を育てる必要があり、私は「ソーシャルマーケティング」の考え方が大事と思っている。企業は儲かればいいという段階から脱却しつつあるので、CSRなど、そうした視点ができてきている。NPOサイドもソーシャルマーケティングをしていかないといけない。企業に向き合うとき、どういうことが企業にとって役立つか、相手に素材を与えることが必要だ。ただ金を下さいでなく、地域での関係性のつむぎ方をNPO側が考えていく必要、双方が深めていく必要があり、善意の押し付けなどはダメだ。
桝田: 事業所はトップの意識が「安全は最大のサービス」でなく、「安全こそ最大の仕事」となるべきだ。公務員については「公務員全ボランティア制度」を提案したい。ボランティア受入などを考える際、自分でボランティアをやった経験がないと分らない。
青柳: 京都に来る企業の期待に応えるためには、例えば「災害に強い街」と言うにはデータが必要だ。京都市内は学区単位の活動が盛んなので、学区内の立地企業と協定を結び、何が出来るか考えあうのがよい。例えば備蓄や訓練面で進んでいる旅館・ホテルと地域とが協定を結び、地域とそうした情報を共有できるとよい。観光については、関西はもっと産業ツーリズムをやるとよい。工場などは危機管理や防災対策をやっているので、防災ツーリズムにも繋がる。
③質疑・まとめ
Q(会場:東京から来場) :父の実家が伏見だが、京都の街も最近バラバラなつまらない街になってきた。先日の中越沖地震では寺などが潰れているのを見たが、京都では坊さんや学生が一緒になって寺や町屋が壊れないまちづくりをやっているのか?耐震化は考えているのか?
桝田: 文化財レスキューは数十年前から、まず地域を町衆で守ろうということでやっている。ただ、耐震化は行政の役割責任となるので難しいから、今のところそこまではやっていない。
丸谷: 木造建築の耐震化はわが国の防災にとって重要なテーマだ。全国では市民組織でやっているところもある。京都でやるべし、という声をぜひ高めて欲しい。
最後にパネラーから一言ずつお願いしたい。
吉村: 「三方よし」という言葉がある(売り手よし、買い手よし、世間よし)。我々ボランティアも同じと思う。ボランティア活動はセンター作り等進んできたが、欠けているのは「相手の立場に立って考える」ということだ。地域や企業に対して、土足で踏みにじることにもなりかねないので、「地域は先生」「企業は先生」という態度が必要だ。自戒を含めてそう思う。
深尾: まちづくりのキーパーソンは「よそ者、若者、馬鹿者」といわれる。京都は寺院がコンビニより多い。寺院で、地域の中にもう一回溶け込もうと実践を始めているところもある。そういう京都の「資源」と自治会長等含めて、連携する姿を考えて欲しい。
桝田: 防災は継続が責務と思った。
青柳: 「もてなしの心」を深めていくことだ。情報、連携、企画の各フェーズを上手にファシリテートしていきたい。
丸谷: 今回防災フェアを開催してメリットを受けたのは京都ではないかと思っている。消防さんがこういう多くの方々と会い、仕事をやらねばいけなくなったのは初めてではないか。私は京都の企業などと知り合うことが出来た。このポテンシャルを活かすのは我々の仕事だが、こういう機会を真剣に活かして何年後かに発信していって欲しい。観光資源を持つ街の参考になるし、東京で帰宅困難者問題を考える人々などとも連携する契機になるとよいと思う。


(以上)

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