東日本大震災(平成23年3月)
夜の灯りで人がいるのを確認、食べ物を配って歩く
(名取市 50代 女性 農家)
あの日、膝ぐらいまで水がきたので、おばあさんを2階にあげて、1階の仏壇のロウソクやペットボトルの水などを全部2階に運びました。夜、ふとんを敷いて、おばあさんを寝かせる準備をして外を見ると、小さな灯りがポツンポツンと見えました。
「あ、人がいるな」と確認し、見える範囲の場所を覚えておき、翌日に食べ物を配って歩きました。とにかく避難所に行けない人の在宅避難と避難所避難との違いは大きく、避難所には余るほどの物資があったのに、家にいる私たちには何もありませんでした。
人手がたりなかったせいか、水が欲しいと言うと、少し離れたところに取りにきてくれと言われました。ツエをついている年よりにはそんなの無理なのに。そしたら、応援にきていた他県の水道局の人が「飲み水ありますか」って、一軒一軒回ってくれてね。本当に助かりました。
当時、産直*仲間がおにぎりや煮魚等を作って持ってきてくれて、食の有り難みが身にしみました。だけど、寒い時期だから次の日にはおにぎりはカチカチ。向こうは気をつかって、中に梅干しやらサケやらいろんなものを入れて作ってくれているでしょ。暖めて食べようとオジヤにするとすごい味になってしまうのです。
もったいないから捨てずに食べたけど、私が逆の立場でみなさんにお返しできる時には、何にも入っていない真っ白なおにぎりとおかずをあげたいなと思っています。
*産直とは、生鮮食料品や特産品などを卸売市場など通常の流通経路を通さずに生産者から消費者へ直接供給すること。
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