東日本大震災(平成23年3月)
突っ込んだ質問への受け答えで乗客との信頼形成~車内は電気も暖房も自販機もトイレまで~
宮古市 40代 男性 鉄道会社職員
インタビュー日:2012年9月10日
三陸鉄道の北リアス線で列車運転中に地震に遭って臨時停車をした後、乗客の皆さんに2時間から3時間は待ちましょうとお話をしました。今までの津波の警報で、警報が注意報とか解除になる可能性も残っているのかなと思ったので。
皆さん、静かで、運転台に座ってる時間が長かったのですが、その間に、鉄道ファンのマニアの方が「地震のときはどういうマニュアルがあるんですか」とか、「ここの地形はどうなのですか」とか、いろんなことを聞かれ、全部きちんと答えて、安心して信じていただけたと思います。
列車を停止して3時間がたち、外も暗くなってきたので、年配の方が「どうするのだ」と言ってこられたのですが、その鉄道ファンの方が間に入って「運転士さんが待つとおっしゃっているので、待ちましょう」と言ってくれました。
外の状況はまったく分からなかったですし、足が悪い年配の女性もいらっしゃったので、列車にいるほうが安全なんじゃないかと、安全第一に考えて中にいました。ディーゼルカーですし、燃料満タンで出てましたので、暖をとれますしトイレもついてる。自動販売機にお茶とかジュースがありましたんで、お客さんにははっきりは言わなかったんですけど、朝、明るくなってから動いてもいいんじゃないかなと考えていました。
でも、19時を過ぎ、救助に来た消防の方たちのライトが見えたときはホッとしました。社員が線路を点検し、畑の平らな場所まで列車を動かして脚立をかけてお客様に降りていただき、迎えに来た車に移ってもらいました。
最後に、社員から聞いた被害情報をお伝えし、「この先は気をつけていらっしゃってください」と言うと、皆さんほっとしたような顔をされていました。鉄道ファンの方は列車に残る私に「列車監視御苦労さんです」とお茶を渡してくれました。
いつでも、様々なお客様を大切に乗せてきたからこそ、こうした想定外の状況でも、ふだんと変わらずに信頼し合えたのかもしれません。
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