「水は静かにスーッとやってきた」

平成11年台風第18号(平成11年9月)

水は静かにスーッとやってきた
~できなかった主人の供養~

(宇部市 90代 女性)

台風が上陸した9月24日はちょうど主人の祥月命日 。前日の23日には台風が来ることがわかっていたので、お寺の坊さんに「一日早く、今日拝みに来られたらどうですか」と電話をしたのですが、「いやいや、明日の9時には行きますから」と言われました。

翌朝7時ちょっと過ぎでしたか。かなり雨が激しく降っていたので、私は家の中に水が入らないようにサッシにタオルを当てたりしていました。そのうち、裏の入り口に2センチぐらい水がたまっているのに気づく間もなく、お風呂場も水でいっぱいになりました。私にはどうすることもできず、大声で2階の息子を呼びました。

息子が降りてきた頃には畳が浮き始め、背の低い私は胸まで水に浸かって、今にも溺れそうでした。で、息子が応接セットのテーブルの上に私を立たせてくれたのです。

都合の悪いことに、水は静かで、スーッと、いつ来たかわからないほどでした。そして、水が引くときも一気に引いてゆきました。残されたのは、近くの川の工事に使ったセメント混じりの泥の固まり。家中にへばりついて落とすのに本当に苦労しました。結局、その年の主人の供養はできず、10年たった今でも庭の隅にあの時の泥が残っています。

※祥月命日とは、故人となった月日のことで、年に1度巡ってきます。

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