【国土庁クラブ、気象庁クラブ同時記者発表】地震被害に関する検討委員会の開催について平成12年12月20日国土庁・気象庁本年7月以降4回にわたり新島・神津島近海地震で震度6弱が観測され、10月6日に発生した鳥取県西部地震では、震度6強が観測されるとともに、平成8年から政府の初動体制等の判断の参考としている地震防災情報システム(DIS)における被害推計では、建物倒壊約8,000戸、死者約200人との結果が出たが、震度やDISの被害推計の割に実際の被害はかなり小さいものであった。被害が小さいことは幸いではあったが、被害推計が大幅に過大評価となったこと、国民一般の震度についての感覚と乖離があることのほか、政府の非常参集や応急対策等の防災行政上の判断等における問題もあり、地震挙動と被害との関係について十分吟味検証し、必要な見直しを行うこととした。このため、学識者や関係行政機関等による「地震被害に関する検討委員会」を設け、今月21日に第1回委員会を開催し、来年春までを目途に結論を得、早期にシステム等の見直しを行う予定である。1.第1回委員会①日 時 : 平成12年12月21日(木)10:00〜12:00②場 所 : 国土庁第4会議室(中央合同庁舎5号館24階)2.検討委員会の内容、委員名簿 (別紙)※ 会議冒頭頭撮り可 主催者挨拶、委員長挨拶まで議 事 録 12月21日の15時目途に議事概要を配布
問い合わせ先 国土庁防災局震災対策課 福島 眞司 内線 7225 直通 3501-5693
池本 伸一 7224
気象庁総務部企画課 横田 崇 内線 2225 直通 3214-7902
地震火山部管理課 加藤 孝志 4509 3211-8684
(別紙)地震被害に関する検討委員会について1.経緯現地の被災状況の把握に長時間を要した阪神・淡路大震災での経験を踏まえ、地震被害に関する諸情報の早期かつ的確な把握のため、幾つかのシステムの整備や改善がなされた。その一つは、震度が、それまで観測員の体感や目視等による揺れや被害状況に基づき発表されていたものを、平成8年2月に震度計のデータに基づく計測震度体系への変更である。もう一つは、この計測震度データを基に、地震発生直後30分以内に被害規模を大まかにコンピューターで推計し、政府の初動対応に資することを目的に新たに開発された地震防災情報システム(DIS)の早期被害評価システムであり、平成8年度から稼働している。両方とも、政府の緊急参集チームの参集や初動対応の検討・判断に活用されているなど、重要な災害時の情報となっている。また、震度情報は広く国民一般に提供されているものであり、DIS情報についても近々国民一般への情報提供が予定されている。しかし、新島・神津島近海地震や鳥取県西部地震においては、震度6弱や6強が観測され、鳥取県西部地震におけるDISによる被害推計では建物倒壊約8,000戸、死者約200人との結果が出たが、震度やDIS被害推計の割に実際の被害は小さいものであった。被害が小さいことは幸いではあったが、被害推計が大幅な過大評価になったこと、国民一般の震度についての感覚と乖離があることのほか、政府の非常参集や応急対策等の防災行政上の判断等における問題もあり、地震挙動と被害との関係について十分吟味検証し、必要な見直し等を行う必要がある。2.検討内容等計測震度体系もDISの被害推計手法も、主として阪神・淡路大震災での地震挙動、被害データに基づいて作成されている。今回、鳥取県西部地震において、被害推計等が過大評価となった要因としては以下の項目が考えられ、分析を行い改善する必要がある。①地震の特性鳥取県西部地震では、地震波形の周期が短く、建物に与える影響が小さかったと指摘されている等、阪神・淡路大震災とは地震の特性が異なっていた可能性がある。建物被害推計の方法に、このような地震特性の反映についても考慮する必要があるものと考えられる。②計測震度の算定等計測震度は、地震による被害との相関を高めるような算定手法の工夫がなされているものの、鳥取県西部地震など地震による被害様相と震度階級との間にはある程度のばらつきがみられる。このような状況から、計測震度の算定に当たっても、地震特性の加味の仕方など、なんらかの検討が必要と考えられる。③建物強度特性阪神・淡路大震災では、大都市の老朽木造密集市街地において多くの被害が生じたが、地方部の地震である鳥取県西部地震では被害が少なかった。この原因として、地域による建物強度特性の違いが影響している可能性も考えられる。全国各地の建物被害推計を実施する際に、この点について考慮する必要があるものと考えられる。④阪神・淡路大震災の実態データの十分な活用現行DIS開発時には、阪神・淡路大震災時の震度分布及び建物被害実態に関する詳細な実態調査データが整っていなかったために、実態データによる手法の妥当性に関する十分な検証が実施されていなかった。同震災後5年以上が経過し、建物被害に関する詳細な実態データが整い、また被害発生に関する各種の研究も進められている。これらの成果を活用した手法の再検証が必要と考えられる。⑤その他の要因その他、震度観測環境、地盤データベース整備水準による精度限界、地盤特性等、阪神・淡路大震災と鳥取県西部地震とでの状況相違などについても検討する。これらの要因について分析を行うとともに、データ入手の可能性や推計に要する時間等も考慮した上で、DISの被害推計手法を見直し、精度向上を図る必要がある。また、地震動と計測震度との関係についても、併せて吟味検討する必要がある。3.検討の進め方【検討体制】文献調査、阪神・淡路大震災、鳥取県西部地震等の過去の地震被害データを分析することにより、DISの被害推計手法の見直しを行う。この際、計測震度と被害との関係についても分析を行い、必要な見直しを経て、DISの被害推計手法に反映させる。これらの検討にあたっては、学識経験者や関係省庁で構成する地震被害に関する検討委員会(仮称)を設置し、審議を行う。なお、計測震度についてはワーキンググループで詳細なデータの分析を行う。【結果の取りまとめ等】DISについての当面の改善方策を平成13年春を目途にとりまとめ、速やかに当面のシステム改修を行う。地震被害に関する検討委員会 委員(五十音順)
阿部 勝征 東京大学地震研究所教授 地震学
◎
片山 恒雄
科学技術庁防災科学技術研究所長
耐震防災工学
○
菊地 正幸
東京大学地震研究所教授
地震学
坂本 功
東京大学大学院工学系研究科教授
建築学(木造)
中埜 良昭
東京大学生産技術研究所助教授
建築学(非木造)
廣井 脩
東京大学社会情報研究所教授
社会情報学
翠川 三郎
東京工業大学大学院総合理工学研究科教授
地震工学布村 明彦 国土庁防災局震災対策課長
横田 崇
気象庁総務部企画課防災企画調整官
小川 富由
建設省住宅局建築物防災対策室長
常田 賢一
建設省土木研究所耐震技術研究センター長
岡田 恒
建設省建築研究所第三研究部長
向田 正博
自治省消防庁震災対策指導室長
◎ 委員長○ 計測震度に関するワーキンググループ主査