作業班が三宅島に入島して作業を行う場合の作業環境測定実施手順

平成12年12月8日
 
 
作業班が三宅島に入島して作業を行う場合の作業環境測定実施手順
東京都災害対策本部
政府非常災害対策本部
(事務局国土庁、環境庁、
厚生省、気象庁、労働省)
 
 
 三宅島では、多量の火山性ガスが噴出し続けています。島内作業を安全に進めるため、以下の手順で環境測定を行い、緊急時に対処することが必要です。これらの事項を熟知し、安全の確保をお願いします。作業班には、東京消防庁、警視庁及び東京都現地対策本部員が同行することとし、かつ安全責任者を決め、安全の確保をした上で作業を行うこととします。
 
1 船舶での入港に際しての手順
 三宅島への入港場所は、風向、噴煙の方向等を考慮し、できるだけ噴煙の下流方向にならない位置を選択する。
(1)着用物
 ①防毒マスク(亜硫酸・いおう用の吸収缶を装着した全面形)
 ②その他安全用品(ヘルメット、安全靴、救命胴衣等)
(2)装備品 
 ①ガス連続モニター[二酸化硫黄、硫化水素、酸素](乗船前にバッテリの確認を行い、乗船中は連続作動させておく。)
 ②ガス検知管(二酸化硫黄5Lb(又は5Lc)、硫化水素(4LT及び4LL)、塩化水素14L)
 ③予備の吸収缶
(3)測定・対応
 ①ガス連続モニターの防毒マスクを装着しない場合の許容濃度基準(以下「許容濃度基準」という。)超過警報発生時(SO2 :2ppm,H2 S:10ppm)には、全員に対し防毒マスクの装着を徹底し、船舶でそのまま噴煙から離れる方向へ退避する。
  ただし、防毒マスクを装着し入港する必要がある場合には、全員が防毒マスクを装着し、現地災害対策本部と連絡し許可を得た上で、入港することとする。この場合のガス濃度の上限はSO2 :20ppm,H2 S:10ppmとする。
 ②常時、ガス連続モニターを監視し、測定値が上昇傾向を示した場合には、検知管等によるガス濃度測定を行い、許容濃度基準を超過した場合は①と同様の措置を行う。
 ③ガス検知器(ガス連続モニター、ガス検知管等)が検知しない場合でも、強い臭気を感じた場合には①と同様の措置を行う。
 ④②〜③で退避を行った場合は、退避後直ちに現地災害対策本部に無線で連絡する。
 ⑤入島の可否の状況、行動経過を逐次現地災害対策本部に無線で連絡する。
 
2 着岸・入島時の手順
(1)着用物・装備品
 1と同様とする。
(2)測定・対応
 ①着岸時に、ガス検知管でガス濃度を測定し、許容濃度基準を超過した場合は、全員に対し防毒マスクの装着を徹底し、噴煙から離れる方向に船舶で沖へ退避する。また、ヘリにより入島する時に、携帯しているガス検知器が許容濃度基準を超過した場合は退避する。
  ただし、防毒マスクを装着し上陸する必要がある場合には、全員が防毒マスクを装着し、現地災害対策本部と連絡し許可を得た上で上陸することとする。この場合のガス濃度の上限はSO2 :20ppm,H2 S:10ppmとする。
 ②ガス連続モニターの許容濃度基準超過警報発生時(SO2 :2ppm,H2 S:10ppm)にも①と同様の措置を行う。
 ③ガス検知器(ガス連続モニター、ガス検知管等)が検知しない場合でも、強い臭気を感じた場合には①と同様の措置を行う。
 ④①〜③で退避を行った場合は、退避後直ちに現地災害対策本部に無線で連絡する。
 ⑤入島時のガス濃度測定結果、行動経過を逐次現地災害対策本部に無線で連絡する。
 
3 作業場所への移動手順
(1)着用物
 ①防毒マスク(亜硫酸・いおう用の吸収缶を装着したもの)
 ②その他安全用品(ヘルメット、ゴーグル、安全靴等)
(2)装備品 
 ①ガス連続モニター[二酸化硫黄、硫化水素、酸素](測定状態にしておく。)
 ②ガス検知管(二酸化硫黄5Lb(又は5Lc)、硫化水素(4LT及び4LL)、塩化水素14L)
 ③空気呼吸器
 ④予備の吸収缶、ボンベ
 ⑤水(ペットボトル)
(3)測定・対応
 ①作業場所への移動は、風向等を考慮し、噴煙の下流部を通過しない方向を選ぶ。
 ②移動中は、ガス連続モニターを車の窓際に置いて監視を続ける。
 ③ガス連続モニターの許容濃度基準超過警報発生時(SO2 :2ppm,H2 S:10ppm)には、全員に対し防毒マスクの装着を徹底し、噴煙から離れる方向へ退避する。
  ただし、防毒マスクを装着し、引き続き移動する必要がある場合には、全員が防毒マスクを装着し、現地災害対策本部に連絡し許可を得た上で移動することとする。この場合のガス濃度の上限はSO2 :20ppm,H2 S:10ppmとする。
 ④常時、ガス連続モニターを監視し、移動中に測定値が上昇傾向を示した場合には、検知管等によるガス濃度測定を行い、許容濃度基準を超過した場合は③と同様の措置を行う。
 ⑤ガス検知器(ガス連続モニター、ガス検知管等)が検知しない場合でも、強い臭気を感じた場合には③と同様の措置を行う。
 ⑥④〜⑥で退避を行った場合は、避難後直ちに災害対策本部に無線で連絡する。
 ⑦検知管での測定時には、時刻、位置、濃度(検知管の種類、吸引回数、読み)を記録する。
 ⑧ガス濃度の測定結果、行動経過を逐次現地災害対策本部に無線で連絡する。
 
4 作業中の手順
 作業中は各作業毎に環境測定の責任者を置き、安全を確認しながら作業を行う。なお、労働安全の面から、安全責任者(原則として「酸素欠乏危険作業主任者」及び「特定化学物質等作業主任者」の資格を有する者、これらがいない場合には火山ガスの有害性に関して十分な知識を有する者)が必要となっている。
(1)安全責任者の装備品
 ①ガス連続モニター[二酸化硫黄、硫化水素、酸素](作業中は連続作動させておく。)
 ②ガス検知管(二酸化硫黄5Lb(又は5Lc)、硫化水素(4LT及び4LL)、塩化水素14L)
 ③防毒マスク(携行)
 ④空気呼吸器(作業前にボンベの圧力等の点検を行うこと)
 ⑤その他安全用品(ヘルメット、安全靴等)
 ⑥予備の吸収缶、ボンベ
 ⑦水(ペットボトル)
(2)作業員の装備品
 ①防毒マスク(携行)
 ②空気呼吸器(作業前にボンベの圧力等の点検を行うこと)
 ③その他安全用品(ヘルメット、安全靴等)
 ④予備の吸収缶、ボンベ
 ⑤水(ペットボトル)
(3)安全責任者による測定・対応
 ①噴煙の方向、風向きを常に意識し、緊急時の避難方向を決定しておく。
 ②ガス連続モニターの許容濃度基準超過警報発生時(SO2 :2ppm,H2 S:10ppm,O2 :18%)には、 直ちに作業者に防毒マスクの装着と避難の指示を行う。 
  ただし、防毒マスクを装着し、引き続き作業する必要がある場合には、全員が防毒マスクを装着し、現地災害対策本部に連絡し許可を得た上で作業を行うこととする。この場合のガス濃度の上限はSO2 :20ppm,H2 S:10ppmとする。
 ③常時、ガス連続モニターを監視し、測定値が上昇傾向を示した場合には、検知管等によるガス濃度測定を行い、許容濃度基準を超過した場合は、直ちに②と同様の措置を行う。
 ④ガス検知器(ガス連続モニター、ガス検知管等)が検知しない場合でも、強い臭気を感じた場合にも②と同様の措置を行う。
 ⑤②〜⑤で避難が完了したら、直ちに災害対策本部に状況を無線で報告する。
 ⑥ガス濃度の測定結果、作業経過を逐次現地災害対策本部に無線で連絡する。
(4)作業上の注意
 ①噴煙の方向、風向きを意識し、ガス濃度の上昇を予知する。
 ②窪地や谷部は無風時にガスが溜まりやすいので注意する。
 ③上陸前に防毒マスク及び空気呼吸器の装着方法等を確認する。
 
5 その他
 上記対策に掲げられたものと同等又はそれ以上の特別な安全装備により行われる緊急の救助活動や火山活動の調査等においては、この限りではない。
 
< 参考 > 
【ガス検知管による測定方法】
1 空気漏れ確認
  新しい検知管(両端をカットする前のもの)を吸引器に装着しピストンを引き、約1分後ピストンを90 ゜回しピストンが完全に戻ることを確認する。
2 測定
①検知管の両端を吸引器のカッターで折り、矢印の方向で装着する。
②ピストンの[100]の▲印とシリンダの赤線を合わせ、止まるまでシリンダーを引っ張る。
 (ピストンがロックされる。)
②約1分程度経過したら、ピストンを引っ張りながら右へ90°回し、ピストンが引き戻されない場合には吸引終了とし、引き戻される場合は再びロックししばらく待つ。(新しいタイプのものは、吸引が完了すると、にぎり部のインジケータの色が変わる)
③基準吸引回数が2回以上のものは、ゆっくりピストンを戻し、再度ピストンを引く。
④検知管の色が変化しない場合は、説明書の範囲で吸引回数を増すことができる。
⑤基準吸引回数で測定した場合は検知管の変色境界の数値を直読し、基準吸引回数以外で測定した場合は、説明書に従い補正倍率を掛ける。
⑥検知管の種類、吸引回数、読みを記録する。
 
3 検知管の種類と補正倍率の例
対象ガス 検知管の種類 吸引回数 補正倍率 最小目盛
硫化水素 4LT 1(基準) 1 0.2
2 1/2 0.2/2=0.1
4LL 1(基準) 1 2.5
2 1/2 2.5/2=1.25
二酸化硫黄 5Lb 2(基準) 1 0.2
4 1/2 0.2/2=0.1
8 1/4 0.2/4=0.05
5Lc 2(基準) 1 0.5
4 1/2.5 0.5/2.5=0.2
塩化水素 14L 1(基準) 1 1
2 1/2 1/2=0.5
 
4 他のガスによる妨害(干渉)
  検知管での測定では、他のガスにより+−の誤差を受ける場合がある。個々の干渉ガスについては説明書に記載されている。
  今回の測定においては、塩化水素(14L使用)の測定において、二酸化硫黄の干渉により+の誤 差が生じる可能性が高いので注意が必要である。

 

 検知管種類:塩化水素測定用(14L)
 干渉ガス :二酸化硫黄
 影響   :塩化水素の1/10以上二酸化硫黄が存在すると、真値よりも
       高い値まで変色する。
 

 
5 使用済検知管の処分
 ①使用後の検知管は、けが防止のため元の容器に戻す。
 ②硫化水素検知管には無機水銀を含有するので、特別管理産業廃棄物として法令に従って適正処分する。
 ③二酸化硫黄、一酸化炭素、二酸化炭素、ふっ化水素、塩化水素検知管は、産業廃棄物の「ガラス及び陶磁器くず」として適正処分する。
 ③その他の検知管については含有物質を説明書で確認し、法令に従って適正処分する。

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