三宅島島内における作業等の今後の進め方について

三宅島島内における作業等の今後の進め方について
 
平成12年12月8日
東京都災害対策本部
政府非常災害対策本部
 
 三宅島では依然活発な火山活動が続いており、当面は多量の有毒な火山ガスを放出する現在のような活動が続くものと予想されている。また、仮に火山活動が沈静化しても、島民の方が島に帰るまでには、道路や水道等の復旧や泥流対策などが必要である。
 このため、今後は、島民の島外避難が長期化することも念頭において、避難している方々への可能な限りの支援策を講じていくとともに、三宅島島内での必要な作業についても今後の作業方針等を再整理し、村、都、国が一致協力して作業の着実な実施を図ることとした。
 
1.当面実施する必要がある島内作業
 
 ①火山観測体制の確立
 【目 的】
   島民の帰島時期の判断、一時帰島等における安全確保等のための最も基礎となるものであり、必要な体制の確立を早期に図っておく必要がある。
 【作業内容と進め方】
  a.火山観測機器の設置・強化
これまで、都道周辺の主要な機器については整備が完了しているが、山腹に設置予定の機器については、天候等により三宅島への上陸が困難であったことなどから、設置が遅れている。このため、自衛隊の全面的な協力を得て、今月中を目途に自衛隊のヘリにより人員や設備の輸送を集中して行い(12月6日より開始)、主要なものの整備を完了する予定である。
 
  b.航空機による火山観測
   ・ガス観測
    海上保安庁と自衛隊のヘリに気象庁職員等が搭乗し、コスペック(紫外線相関スペクトロメーター)による火山ガス放出量の観測を実施してきており、今後も2日に1回の割で観測を実施する。
   ・火山観察
     警視庁と、東京消防庁のヘリに火山学者等が搭乗し、火山の活動状況を目視により観察してきており、今後も週に3回の割で観測を実施する。
   ・無人カイトプレーンによるガス採取
     必要に応じ、三宅島近海に待機している海上保安庁や海上自衛隊の艦船上から、GPSを搭載した無人カイトプレーンを発着させ、雄山から噴出しているガスを採取する。
 
 ②島内のガス観測体制の確立
 【目 的】
   島内作業等の安全確保や将来帰島した島民の安全確保のため、島の地上部での火山ガスの濃度を面的にリアルタイムで把握する体制を確立する必要がある。
 【作業内容と進め方】
   気象庁で3ヶ所、東京都環境局で3ヶ所の計6ヶ所に定点火山ガス観測装置を設置することとし、11月29日に設置完了した。
 
 ③ライフラインの維持等
 【目 的】
   火山ガスの放出の低下等、今後火山活動が終息した場合にも、島民が安全に帰島できるようにするためには、泥流対策や道路、水道等のライフラインの復旧等を行う必要がある。このため、火山活動終息後速やかにこれらの対策を行えるよう、各作業のベースとなる都道や電力の機能確保等を図っておく必要がある。
   また、火山観測機器等への安定した電力供給のためにも、既存の東京電力系統の保持が必要である。
   さらに、火山観測機器設置や補修等のためにも、都道や一部の林道等の啓開が必要となっている。
 【作業内容と進め方】
  a.道 路
    都道の主要区間及び火山観測機器設置等のために必要となる林道や村道の啓開作業を行う。
  b.電 力
    三宅島内燃力発電所の無人化工事の実施を東京電力に要請し、早期に電力の安定供給体制を整える。
  c.港 湾
    島内作業に必要な資材等の運搬のために、現在沈下している坪田港の復旧作業を実施する。
  d.泥流対策その他
    将来、本格的な泥流対策や各種ライフラインの復旧等を速やかに実施できるよう、これらのための現地調査、計画立案等を実施する。
 
 ④その他
  上記の各作業に併せ、島内の生物調査等も危険のない範囲で実施する予定である。
 
 
2.作業実施に当たっての安全確保等について
  これまでも、噴石や火砕流、火山ガス等に対する安全策をとって島内の各作業を実施してきているが、今後、山腹での作業展開も必要となるため、従前の安全対策の内容をより厳密なものとなるよう再吟味し、今回、当面の必要な基準や方針等を定めることとした。また、バックアップ体制についても再吟味し、必要な対策を加えることとした。
 
 ①火山活動状況に即した島内作業における危険性からのカテゴリー区分の設定
   現時点での火山活動の状況を踏まえ、三宅島の全域を危険性からのカテゴリー区分し、それぞれの区域での安全確保のための非常時の行動基準等を設定した。(別紙「三宅島島内作業におけるカテゴリー区分について」)
 
 ②島内作業等における火山ガス対策指針の改訂
   これまでも同様の火山ガス対策指針を作成し、島内作業者等に徹底し運用してきたところだが、防毒マスクを装着しての作業についての指針を作成していなかったため、今回そのような場合の対策の基準等を定め、これまでの対策指針を追加改訂した。 (別紙「三宅島島内作業における火山ガス対策について」、「作業班が三宅島に入島して作業を行う場合の作業環境測定実施手順」)
 
 ③火山噴火活動の監視体制の変更
   これまでは海上自衛隊P3Cにより上空からの監視を行ってきたが、地上の観測網が整備されたこともあり、上空からの監視に替えて、気象庁における観測データ及び遠望監視カメラ画像による監視体制とすることとした。山腹で作業をする場合には、これに加え、火山活動の異常を迅速に察知できるよう、火山専門家が同行することとした。また、状況に応じ、自衛隊機(P3C)等による上空監視も行うこととしている。
 
 ④緊急時のための三宅島近海での艦船の待機
   島内作業等においての安全確保に万全を期すため、これまでと継続して、海上保安庁と海上自衛隊の艦船が三宅島近海に待機し、非常時には海上保安庁、自衛隊、警視庁、東京消防庁のヘリと連携して、待避等のための対応をする。
 
 ⑤ヘリポートの設置
   島内作業、緊急時の対応等のため、三宅空港、三宅中学(神着)、阿古の3ヶ所にヘリポートを設置することとした。三宅中学と阿古においても大型ヘリが発着できるよう、鉄板等を敷設し、12月11日に完了予定である。
 
 ⑥緊急避難場所の確保
   今後、山腹での観測機器の設置、火山観測等の作業を安全確保しながら行うため、山腹の作業拠点には緊急時の待避用のコンテナシェルターを設置する。諸条件が整い次第来週にも設置予定である。
   さらに、長時間の火山観測や島内作業等のために、仮に火山の状況等から夜間も島内に常駐しなければならなくなった場合でも、適切な安全性が確保できるよう、既存の建物等に十分なガス対策等を講じた空間の設置等を検討することとしている。

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